俺のクラスメイトが全員東方キャラになっていた件   作:マジカル赤褐色

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俺の高1妹が人形使いなわけがない件

 

「………………あぁ、くっそ疲れた」

 

 

高校2年生のある日、俺はクソい異変に見舞われた。

クラスの生徒たちが現実入りして東方キャラに変わってしまうという大異変だ。

クラスメイトにとどまらず、他学年の先輩………さらには学園喫茶すらもが紅魔館と化した。

俺の通う学校学校はどんどん幻想郷に侵食されつつある。

このままじゃ…………学校が消える…………

 

 

「え?マジで?神じゃん、」

 

 

学校なくなるのは神すぎる。

そうだよこれはなんかの病気だ。もう学級閉鎖にしてしまおう。

そうすれば俺はハマってるゲームに時間費やせる。有意義な一日を送れそうだ。

 

だが…………それがそうもいかない理由がある。

 

 

 

俺はむしろ、家よりも幻想郷学校のほうがもう何倍も幸せだ。

それはもう郷ひ◯みの名曲の歌詞に出てきそうな数字ぐらいの倍率で。

家とは何か。そう、俺の血族が住む宿だ。

だから、俺以外にも住人がいるわけだ。

まぁつまりは…………家は俺一人ではない。

 

 

 

俺の家庭は父母と俺、そして高校1年生の妹が一人だ。

親父は今、仕事の都合上で単身赴任。

母は働きながら俺たち兄妹を養ってくれている。

 

────そんな複雑な家庭状況になったのは中学2年生からだった。

 

俺は母が働き先で心身ともに疲れ果ててから家では貼り付けたような笑顔で俺たちの面倒を見てくれる。

これが耐えられなくなって、俺は猛勉強した。

入りたかった高校を捨ててまで。数少ない友人と一緒に通おうとした学校の受験をやめてまで………

俺は、一人でこの学校を受けた。

なぜ俺はこの学校を受けたのか…………それは、制服がないからじゃない。学食が美味いからじゃない…………本当は…………

 

 

 

─────特待生入学して、学費を免除してもらいたかったからだった。

 

 

 

そうすればお袋の負担は減ると思って。

実際俺は中学時代の青春を完全放棄して努力し続け、見事………特待生としてこの学校に入学し、授業料を全額免除してもらえた。

このシステムがあった近くの学校…………もちろん遠くなら電車が必要。だから無し。

近くでそんなのが叶えられる学校はここしかなかったんだ。

 

 

妹はというと普通に私立の高校に通い、趣味や娯楽で家の金をジャブジャブ吸っている生活。

親父がよく稼ぐからなんとか保っているが、母を思いやって中学時代を捨てた俺とはまるで対照的だ。

俺自身の苦労に対してまったく見合わない動きをする舐めた態度の妹が嫌いになって、俺たちは不仲になった。

 

 

だから、妹がいる家が……………つらい。

 

 

 

 

 

「──────はぁ…………」

 

 

今日、喫茶店でフランに会って、妹について色々と考えさせられた。

だから俺は、今日は……………

 

妹に謝ろうと思っていた。

3年間ほとんど口らしい口を利きあったことがない仲だ。

謝れるかどうかも分からないが…………やるしかない。

そんな重い気持ちで俺は家の玄関の扉を開けた。

 

 

 

 

 

──────そして、まず最初に俺は肉を焼くジュージューという音を聞いた。

 

母は平日ほとんど働きづめだ。

だからこの時間に母が料理をしているはずがない。

てことは、妹が作ってるのか。

不仲な俺らは自分の料理しか作らない。妹は俺のを作らないし俺は妹のを普通は作らない。てか、作ったら嫌がられるし。

そういうものだ。

 

だから、肉汁の跳ねる音と、肉の焼ける匂いから、ハンバーグでも作っているのかと思うと少し羨ましく感じた。

このありふれた家庭感のある音も、俺の中では寂しい音になる。

そういう家庭で、育ったんだ。仕方がない。

こんな俺の辛さよりも、女手一つですべてこなして2人の高校生を育てる母のほうが、ずっと苦しいに決まっている。

 

 

 

 

 

「あら、おかえり。ハンバーグもうすぐできるから、早く手洗ってリビングに来て」

 

 

軽快すぎる妹の声を聞いて俺はメデューサに睨まれたかのように完全に止まった。

 

 

「お、おい?」

 

 

状況整理がつかない状態で俺はとりあえず手を洗って居間に来てみた。

 

すると、そこには─────

 

 

 

 

 

「こ、これは……………!」

 

 

テーブルの上に、ハンバーグが2皿並んでいるではないか!

 

しかも、炊きたてご飯も茶碗2杯、さらにアサリの味噌汁つき!

そして、妹の箸を中心に広がるその食卓の向かいに、俺の箸が丁寧に置いてあったのだ。

 

 

「そ、そんな馬鹿な……………」

 

 

どういう事だ?

まさか、俺がそうだったように、妹側も俺たちの不仲について何か思うところがあったわけか?

にしたって、この変わりようはおかしい。

俺はすごく気まずそうにしながらモジモジと話しかける予定だったんだぞ!?

こんな大胆に動けるのか我が妹は!

 

奇跡なのか偶然なのかミラクルなのかなんなのかよくわかんない状態で机を前に立ち尽くす俺に、妹がてくてくと歩いてきた。

 

 

「────お兄ちゃん、何やってるの?ご飯、冷めちゃうわよ?」

 

「────あぁ、いや………こんなの久しぶりすぎて………固まってた」

 

「久しぶり?何が?」

 

「いやいや…………お前が俺に飯を作ってくれるなんて、何年ぶりかなって思ってさ…………」

 

 

正直、感動している。

 

 

「はぁ。何を言ってるのかわからないわね。昨日も作ってあげたじゃない。お兄ちゃんったらずっとゲームしかしないから、私がいつも作っているんだから」

 

「そうだな………って、ちょちょちょちょえ!?」

 

 

そんなはずはないという事実をスルーしかけた自分に驚きながら俺は気まずさにさっきからずっと見ていなかった妹の顔に思わず頭を向けた。

 

そして俺は、さらなるとんでもない事実を知ってしまう。

 

 

 

 

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

 

ここしばらく、ほとんど会話していないから妹の声を忘れてしまっていたが、よく考えればさっきからこの声は妹じゃない。

しかも妹はこんなに清楚で出来た女の子ではない。もっと生意気でクソ人間だった。

それがなんだ、今は──────

 

 

 

 

「ど、どうしたんだお前!?なんでお前が俺の家にいるんだよ!!!」

 

「なんでって………私はこの家の娘だからよ………」

 

「嘘だ!俺の妹はそんな清楚キャラじゃない!こんな優しい妹はどこを探しても見当たらなかったぞ!俺の妹を返しやがれこの野郎!精神が錯乱しているのか!?何か変なもん食ったか!?頭ぶつけたか!?そ、そうだ名前!自分の名前言ってみろ、この!」

 

 

いつもの妹なら俺の剣幕の反動で大反発してくる所でも、冷静に「はぁ………」とため息一つ付くと、呆れた顔で俺の妹は口を開いた。

 

 

「私の名前はアリス・マーガトロイドですが。それが何だっていうのよ。それに、お兄ちゃんさっきからずっと失礼なんですけど」

 

「あはっ、終わったわこんちくしょう」

 

 

そうかー。次はそう来るかー。

学校と関係ない俺の妹が東方キャラに変わる展開は流石に予期してなかったわ。

 

生意気な年下ギャル妹がこんな清楚な金髪美少女になるのはちょっといくらなんでもルールおかしいと思う。

あーそうか…………俺の妹はアリスなんですね…………そうですか。

 

─────いや、さすがにキャスティングミスだろ。

 

 

「どうやら、精神錯乱していたのは俺の方だったらしい」

 

「そうね、いつもの事だけども」

 

「ぐお…………ッ!!!」

 

 

そうだわ、俺の妹の性格を良くしたらたしかにクールビューティーになるから辛辣な言葉は確かに飛んでくるわ。

あー、これはたしかに解釈一致するキャスティングだわ。

 

 

「いいから。早く食べたらどう?それとも、私が食べる?」

 

「ノーノーノーノーノーノー。タベルゼッタイ」

 

 

アリスハンバーグはスクラッチくじの1等でも食えない。絶対に食べぇる。

 

 

「いただきます!………………うんめぇ……!!!」

 

 

妹の手料理なんて中々味わえなかった。それも特典にプラスされる。

だがそもそもが美味しい。

まずナイフで切った時の、挽き肉の感触。

わずか二引きで切り離せるほどの柔らかさと中まで焼き色が出るこの絶妙な焼き加減、焦茶色の断面を銀色に輝かせるじゅわぁ、とあふれんばかりの肉汁。

それは肉の内に収まりきらず、肉を伝って外側から皿の面に染み込み、金色の煌めきとなって鮮やかな水たまりを作り出す。

一口に入れた時、口を閉じる前から感じる肉汁や肉本体を帯びた熱気が食べた時の味を賞味の前から口を準備万端にする。

完全にハンバーグモードの口になってしまった俺の舌に追い打ちをかけるように千年待ちかねたハンバーグの肉の感触。

歯でひと噛みにばらけていく肉の繊維の一つ一つが美味しい。

見た目、音、匂い、味、感触、五感の全てで至極の逸品を味わえる、五体満足な人間で生まれることができたことを心の底から誇りに思える一口だった。

母さん、俺を健康に産んでくれてありがとう。

牛さん、尊い命を賭してこんな美味しいものを食べさせてくれてありがとう。

卵農家さん、このハンバーグを作らせてくれてありがとう。

ニンニク生産者さん、この味を作ってくれてありがとう。

なによりアリス、こんな極上の料理をお兄ちゃんに食べさせてくれて本当にありがとう。

 

 

「………………お兄ちゃん?なにフォーク持った状態で勇者みたいなポーズ取ってるの?」

 

「これは世界を救う一品だ」

 

「はぁ。そうなんだ…………」

 

 

……………母さんがこれ見たらなんていうんだろう。

学校ではそうはいかなくても、さすがに俺の家の中じゃあ、母さんはまだ正常な思考のはずだ。

こんなの、何かの間違いだ。

 

俺の妹がこんなに可愛いわけがない。

 

……………………わからん。わからんわからん。

これは…………なんだ……………

 

ただ、一つわかったことがある。

この異変が俺の家でも発生するということは、この異変の概要が明らかになったわけだ。

 

 

「お兄ちゃん?なんでそんなすました顔で推理ごっこしてるの?」

 

「つまり、この異変は俺の学校ではないんだよ。俺はてっきり学校を起点に異変が起きているのだと思っていた。だが、それは違う、」

 

「はぁ」

 

「学校ではない。この俺自身が異変の起点になっているわけだ。異変が起きる場所は学校じゃない。俺を取り巻く環境で起きているわけだ、つまりそういうことだな?」

 

「お兄ちゃんが壊れちゃった。上海ー。目を覚まさせて上げる方法とかない?」

 

 

俺があれこれ考えている間に、アリスが何かに呼びかけると部屋の扉を開けて手のひらサイズの人形がトムと◯ェリーに出てきそうなサイズのハンマーを持ってきた。

その図体で持てるんかとか色々疑問はあるがもういいや。

 

 

「ちょ、おい待てなんか色々言いたいことあるからぜんぶ言わせて」

 

 

その人形はどう操ってるのかとかその人形はどっからでてきたのかとかなんでそんなに怪力なのかとかそのハンマーどっから持ってきたのかとかなんで兄貴を殴ろうと思っているのかとか色々言いたいことある。

 

 

「もういいわよ人形たち。1回ぐらい頭打ったら治ると思うし」

 

「ごぉぉぉぉぉぉん!?」

 

 

容赦なく側頭部をハンマーで殴られて俺は家壁に頭だけめり込んだ。

 

 

「…………我が妹よ、お兄ちゃんの頭部を鈍器で殴打するという行為になんの抵抗も無いのかね」

 

 

さすがの元妹も鈍器では行かんかったぞ。

不思議な力が働いているのかなぜかこんな殴られ方をしても俺にケガは全くないらしいが。

 

 

「…………ふぅ、なぁアリス、」

 

 

頭を抜いて倒れ込む。

 

 

「なぁに、お兄ちゃん」

 

 

彼女が蒔いた種とは言え、俺の身を案じて席を立ってここまで来てくれたことが嬉しい。

 

 

「──────すまん、なぁ………」

 

「え………?」

 

「お前に、優しくしてやれなくて………な………」

 

 

俺の妹は今でも許せんが………それでもアリスはアリス。

俺がやって来たことは果たして幻想郷の少女たちに受け継がれているのかどうか。

霊夢と幼なじみだったり俺のことを知らんやついたり境界はめちゃくちゃだが、もし俺がアリスを大切にできていないんだったら、それは行けないんだと思って一度謝らなくてはいけないと思った。

それに…………それは元妹にも、言おうとして言えなかったことだ。

本人に言うのは気まずいし難しいけど、アリスになら、言えそうだ。

 

 

「………………………………………………………」

 

 

アリスはただそれを真顔で黙って聞いていた。

何か言ってくれないと気まずいな。

また変なことを言ってるのか、と呟かれるのを俺は期待していたが。

すると、

 

 

「─────なんか、私も………ごめんなさい」

 

「アリス………?」

 

「その…………お兄ちゃん相手だと、なんか………恥ずかしくて、優しくするの……イヤになるというか」

 

 

そんな………乙女みたいに口を押さえてピンクの頬でそんな可愛いことを言われたらお兄ちゃん覚醒しちまうぞおいおいおい。

 

 

「ファぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「うわキモっ……」

 

「───────────────」

 

 

きょうわかったこと

俺、バカとか死ねとかだいたいの誹謗中傷に対する耐性あるけど妹の「キモい」だけはキツかった。

 

 

「まぁなんだ………兄妹………なんだしな?父さん帰ってくるまでの間は仲良くしよう、アリス」

 

「……………うん!」

 

 

 

 

 

男子高校生の夢、妹が美少女になるパターン。

俺はついにそのキセキを掴み取ったわけだ。

 

 

 

 

俺とアリスはその日を仲良く過ごして、布団についたわけだが…………

 

 

 

 

 

━━━━━俺のクラスメイト━━━━━

 

俺の幼馴染 博麗霊夢

俺の隣の席 霧雨魔理沙

 

────学園喫茶FrandoutorCoffee────

 

体育でペアになった 十六夜咲夜

学園喫茶の店番 紅美鈴

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

学園喫茶店長 3年フランドール

ラーメン店長? OBレミリア

 

────────────────────

 

──────俺の家────────

 

俺の妹 アリス・マーガトロイド

 

─────────────────

 

 

 

 

さて、どういうことだか。

俺の周囲を中心にこの異変は発生しているということだが、どうなっているのか。

いまいち世界の広がり方に決まりがない。

ただ、今回ついに俺のクラスメイトじゃない、俺の家の人間が東方化しだした。

ただ、思ったのはまだ男の東方化を見てないな。

といっても東方の男キャラなんてたしかにかなり数限られているのだが。

あとは…………全員女子高生ってところか。

まぁさすがにそうだよな。

男子高校生の俺のことだ。関わる………というかまぁ、話せる権利がある女の子のお相手はだいたい中高生女子だ。

うーん。なるほど、同世代女子の東方キャラ化………そのうち、俺と関係ないところでも起こりそうだな。

この異変の調査は長引きそうだな…………霊夢や魔理沙に助けてほしいが自然体の彼女らにとってはこれは異変にはならんし。

やっぱ、時間を重ねるしかないかー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、この異変は、もはやいちいち考察しているのではどうしようもないほどに加速していくことになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が後に『学園幻想郷化異変』と呼ぶようになったこの異変は……………

 

 

 

 

 

 

 

 

皮肉にも、次の朝から、

 

 

 

より大きく、そして本格的に拡大していくことになるのだった。

 

 

 




あけましておめでとうございます、作者です。
この度実は前々から他作品でも宣言しておりました通りお休みに入らさせていただきます。
期間は2月の頭まで。 多忙と体調不良が原因です。
せっかくのお正月を、もっと盛大な企画で皆さんとお祝いしたかったのですがこんな味気ない形になってしまって申し訳ありませんでした。今年のお正月はみなさんお家でゆっくりお過ごしください。
2月からはまた再開して、よりいっそうハチャメチャになった学園幻想郷化異変の物語が始まっていく予定なので、これまでご愛読になってくださった皆さん、気に入っていただけたのでしたらまた来月の連載もご覧いただけると作者感激でございます。
皆さんの温かいご支援とご愛読で私も生きていけます、ぜひ、今年1年も本シリーズと作者マジカル赤褐色をよろしくお願いします。
皆様のご期待に応えられるような作をお作りできるように、頑張っていきたいと思います。

最後になりますが前々から取っていた方針についてのアンケートですが、これの集計は復帰と同時に行い、その日に締め切りたいと思います。
具体的に何日復帰かは目処を立てていないのですが、だいたい2月の2日、3日ぐらいにしようと思っています。
そこでアンケートは締め切らせていただいて、今後の方針のほうを決定させていただきます。一応現在は私の勝手にさせていただけるという形になりそうですがもし毎話アンケート分岐によるストーリー展開式にしたいという方がいましたら、今月中の投票をお急ぎください。

それでは読者の皆様良いお正月をお送りください。
また来月お会いしましょう、それでは!

俺は今後の展開に対してどう向き合えばよいのだろう。

  • 神の定めた運命の通りに。
  • 何人もの【俺】に意見を聴く。
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