俺のクラスメイトが全員東方キャラになっていた件 作:マジカル赤褐色
「やべぇぇぇぇ寝坊したぁぁぁぁ!!!!!」
俺の名前は『(名前)』。
寝坊した昨日よりさらに30分も遅れて起床をした高校2年生だ。
ある日突然、俺の通う学校の生徒たちが東方キャラに変わってしまうという異変が起きてしまった。
幼なじみの博麗霊夢、
隣の席の霧雨魔理沙、
体育のバレーでペアになった十六夜咲夜、
校内喫茶でお手伝いをしている紅美鈴、
一つ上の先輩生徒フランドール、
ついでに俺の実妹アリス。
ゆかいな仲間たちとともに迎えた異変開始2日目。
そんな事を考えている暇がないほどに俺は焦っていた。
昨日は外から俺の名を呼ぶ霊夢の声で目覚めたが、今日はそれがなかった。
霊夢のやつ、何をしているんだ…………
霊夢には幼なじみの性質を引きついだのか、俺とともに学校へ登校するという習慣があった。しかし、今日は俺の家に来なかった。
幼なじみ本人にもこんなことはめったに無かった。あるとしたら片方が病欠ということぐらい。
霊夢の方から俺を堂々の無視ということはつまり霊夢は今日俺と学校に行かないということだ。
風邪でもひいたのか。
まぁ、脇とヘソ丸出しのあんな純潔もクソもない巫女服で風邪を引かないのはおかしいので当たり前の結果だ。
いやしかしあの博麗霊夢が風邪で倒れるとは思えないし、部活で朝練とかそのあたりか。
─────ちなみに霊夢は本日俺を置いて朝早くに登校しており、その理由は次の日明らかになった
さて、あんな事情があるとは知らず。
今の俺は寂しさの反面救いがあったように思えた。
昨日のことは全て夢か幻だったのだ。
東方キャラが現実に現れるわけないよなー!
そりゃそうだわ、根本的な所を忘れていたよ。
そりゃもっと霊夢の脇見たかったとか、魔理沙と話したかったとか、一生咲夜さんと体育でペアになろうとか、美鈴にもう1回抱きしめてもらいたかったとか、フランを飼いたかったとかアリスのハンバーグもう1回食べたかったとか、他の東方キャラに会ってみたかったとか、ラーメン店主レミリアを見てみたかったとか、ワンチャン誰か彼女にできねぇかなと思ったりもしたんだが、現実はそうも都合よくできているわけがない。
生意気な妹に虐げられ、学校の中では全く目立たないモブキャラを発揮し、生まれて一度も彼女できない、全く青春を満喫できずこの世で最もつまんねぇ学校生活を送る苦労人の俺への神様からの1日プレゼントだと思えばさみしくない。
「さて、と……………今日からまた1日、頑張りますか!」
そんな悠長なこと言っている場合ではない。
遅刻寸前だ。こうなれば朝飯は抜きだ。食べてる時間があるなら走れってこと。
外着に着替え、鞄を取り、自室の扉を開き、玄関へと続く階段を素早く下りる。
よし今から靴を履くぞと思ったその時。
「ちょっとお兄ちゃん!遅いわよ起きるの!それにおはようも言わないし朝ごはんは食べないし!」
「あぁ、悪いな、今日はちょっと急いd…………あっ、」
そうだ…………霊夢いなくても今俺の前にいるそのアリスの時点で現実入りなんだわ…………
「せっかく目玉焼きも焼いてあげたのに…………朝ごはん食べないと、エネルギーは足りないし、勉強も身に入らないし、集中力も持たないわよ?」
我が妹アリス・マーガトロイドったら、通ってる学校の制服に着て青い調理用エプロンなんか身につけちゃって。
可愛すぎてお兄ちゃん失神しちゃうぞ。
「お、お前は母親か………………わかったよ、朝から早起きして俺の分まで焼いてくれたんだろうし。そのウィンナーだけ食ってくよ」
アリスがウエイトレスみたいに左手に乗せた平皿には会心の出来とみえる目玉焼きが1枚とめちゃくちゃ美味しそうなウィンナー3本にみずみずしいトマトが3個。
こんなかで一番美味そうなそのウィンナー食いたい。
「だーめ。卵は完全栄養食よ、朝ごはんに目玉焼き食べるのに卵食べなきゃ意味がないわ」
アリスはウィンナーをガン無視してフォークを目玉焼きに突き刺す。
「はい、あ〜んしたげるから口開けて」
「ちょちょ、だからウィンナーが良いって言ってr」
「こら………動かないで!……きちんと……食べな………さ、いっ!!!ほら、あ~んしなさい!あ〜ん、あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ん゙!!!」
「むごごごごごごごごごごごごごごごごご」
目玉焼きまるまるひとつ口の中に押し込まれる。
死ぬ死ぬ、フォークまるごと飲み込んでまうって。
半熟卵おいしい…………焼き加減は最高なんだけどなぁ。
「卵にはカルシウムや脂質やタンパク質はもちろん、ビタミンB群や金属性栄養素も豊富に含まれてるんだから、ウィンナーに甘えちゃだめです。あんなのただの添え物なんだから」
「ごくん………美味しかった。はい、じゃあウィンナーも………アリスの料理美味いんだよ全部。残さず食べたい」
「ふーん、」
アリスはフォークをウィンナーに突き刺すともう一度俺の口へ……………
ではなく、自分の口に持っていった。
「ちょっ、おい!?」
「気持ちは嬉しいけど朝ごはん食べる暇もないほどに遅れてるでしょう?ならウィンナー食べてる暇なんてないわね〜」
「オアー!!!図りやがったな鬼畜が!!!やめるんだ魔女め!!!」
俺の静止も虚しくアリスはフォークまるごとぱくっ、とウィンナーを食べてしまった。
「美味しい〜♪」
「お前墓まで許さんからな」
「やれやれ、たかだかウィンナーに大騒ぎするってお兄ちゃんもまだまだ子供ね………これに懲りたら早起きして、私の朝ごはん作るお手伝いでもすることね。味見ぐらいはさせてあげるわよ」
そのまま贅沢に残り2本をまとめて突き刺し、2本丸ごと咀嚼。
場に残ったのは奇跡的にトマト。
これは今から手を伸ばせば食えるかもしれん、
「あ、そうだ。主食もちゃんと取ってね。はい、これなら走りながら食べれるわよ」
そう言って食パンを俺の口に差し込んできた。
トマトを押し込む隙間が俺の口にはなくなった。
「
「いってらっしゃいお兄ちゃん。遅刻しないと良いわね〜」
「
俺は余ったトマトも残さずつまむ意地悪妹に背を向けて全速力で家を飛び出した。
やっぱ妹って生き物は駄目だ。滅ぶべし。
だがしかし遅刻するほうが一大事。大本命のウィンナーが虚しく消えれば遅刻してまであの場に留まる意味がない。
全速力で俺は食パン加えてベタな学園ドラマ主人公みたいに家を飛び出した。
そこからはもう地獄の疾走だった。
パンをくわえながら街中を走り回る俺の姿は誰がどう見ても、某ふしぎなポッケでかなえてくれる系国民的アニメの主人公さながら。
この上なく焦っている俺だったが、頭の中はお花畑だった。
(っしゃぁ…………アリスのあ〜んGETしたぜコラァ…………)
おそらく現在の地球上で最も可愛い妹の強引なあ~んを受けれた事自体にはある一定の幸福感は感じている。
さて、それはそれとしてやっぱり続くんですねこの異変。てか、現実なんですね。
改めて今回の異変は本物であることを悟る俺。
こんな可愛い妹にあ~んしてもらえる事の幸せは半端ない。生きていて良かった。
ハチャメチャな異変だが異変っていうのもほんとうに悪くない。
妹だけずっとアリスのまま変わらなかったら良いのに。優しいし可愛いし。
ほんと最高の妹ですわ。
ゆくゆく末はラブコメとかであるようなブラコン妹に化けて、実は俺とアリスは血の繋がっていない義理の兄妹であって徐々に惹かれ合って紆余曲折を経て最後2人は結ばれてそしてそのまま─────
「きゃぁぁぁぁぁ!!!!」
「ぶおぉぉぉぉぉ!!!!」
アウトな妄想をしていた瞬間に俺は何かに激突して倒れた。
「いたたぁ…………」
通行人の痛そうな声がする。
しまった…………前をぜんぜん見ていなかった。
そうだった、この道はY字路だ。
死角からやってきた通行人とぶつかってしまったようだ。
そんな、学園アニメにありがちな事故を引き起こすなんて情けない。
てか俺パンくわえてるから状況バッチリだわ。めっちゃベタな学園ドラマ始まったんだけど。
「す、すみません、前見てませんでした…………」
俺は通行人にいち早く謝る。
「いえいえとんでもない、私の方こそ走るのに夢中で前を見ていませんでした…………ごめんなさい!」
相手もどうやら急ぎのご用事だったそうだ。
─────あれっ?
地面に落ちた俺のくわえていた食パンがコッペパンに変化している。
「…………えっ?」
「あっ、ごめんなさい…………私のパン…………」
お主もパン食っとったんか。
これじゃホントにベタな学園ドラ────
「あっ」
「あっ」
あっ、じゃねぇわ。
尻もちをついて二人して互いの顔を見て眼と眼があった瞬間に、俺は絶対これ異変だと確信した。
そこにいたのは、黄緑色の髪で白と青の巫女服(なお形状)の俺らと同年代ぐらいの女子だったのだ。
「お前、うちの学校の……………」
「あなたは、私のクラスの…………」
あっ、マジすかクラスメイトですか。
「2年3組の『』だ、どうも」
「同じく東風谷早苗と言います!よろしくお願いします、『』さん!」
彼女は守矢の風祝、東風谷早苗。
幻想郷のもう一人の巫女であり、霊夢のライバル的存在。
俺を支点に広がるこの学園ドラマでの彼女の扱いはたしかに霊夢と似て非なるものになるようだ。
霊夢は俺と幼なじみの安定ルート。
そして当然の運命の出会いから始まる早苗ルート。
なるほどなぁ…………てか、常識に囚われない巫女のわりになんかヒロインとしてめちゃくちゃベタじゃない!?
ぶつかる場所も、ぶつかるタイミングも、互いに遅刻しそうなこの状況も、2人揃ってパンくわえて登校しているのも、もうすべてがベタな学園ヒロインのムーブだ。
もう今どきこんなヒロイン流行らないって。
「『』さんはこんな時間にお一人で登校ですか?」
「そういう早苗さんこそ大丈夫なの?時間的に遅刻寸前じゃない?」
「えっ?いやぁ………あははっ、そんなワケないじゃないですか〜!やだなぁ。これでも私、身持ち固いんですよ?」
「いやだから俺が遅刻寸前だから言ってるんだよ」
この時間帯に俺と同じ格好で走っている時点でお前はどう考えても遅刻寸前だろ。
「だ、大丈夫ですよ!急げば間に合います!」
急いでも間に合わないからパンくわえながら走ってるんだろ。
「た、たぶん…………どこかしら奇跡が起こると思うので…………」
「遅刻で神頼みって相当追い込まれてるじゃん」
「だ、だって…………今日寝坊しちゃったんですもーん!!!動画配信サービスで好きなアニメ深夜まで一気見してました…………」
よし素直でよろしい。
俺はきのう深夜までゲームしてたから寝坊した。
「あーなるほどなぁ。気持ちは分かる。昼寝と違って朝って起きれんよな」
「はい…………どうしよう、このままじゃ神奈子様と諏訪子様に叱られちゃいますよ…………」
いやさらっと追加で2キャラ現実入りさせるなよお前。凄いなこの常識破り風祝。たしかにその辺については認める。
「親か?」
「大切な先輩方です。私にずっと良くしてくれた人たちなんです…………」
うーわ、3年生か。
今日学校探したら確定で見つかるわ。
「こんな話してる間にも時間は経つぞ。早く行こう、」
「はい!そうですね。一緒にダッシュで…………うっ………」
走り出そうとしたら早苗さんがスタートダッシュを止めてしまった。
「なっ、どうしたんだ?」
「うっ、さっき…………転んだときに…………」
「すり傷…………」
早苗さんの白い膝には転んだ拍子に擦りむいた跡がついていた。
「す、すまん…………俺のせいで、」
「い、いいえ!前を見なかった私が悪いんです………ぜんぜん歩けるので心配しないでください!あとで保健室に行ってから遅刻理由書を発行すれば大丈夫だと思います」
「……………わかった、」
俺は早苗さんの提案を受け入れた。
この学校には遅刻した場合、その遅刻が交通機関の延着や怪我や病院通い、天候などやむを得ない事情であった場合は職員室で証拠を提示すれば遅刻理由書の発行を申請できるシステムがある。
これがあれば遅刻が公欠扱いになって遅刻にカウントされなくなるのだ。
たとえば今回の場合は保健室の入室記録が証拠となる。
転んだとて何も起こらなかった俺は堂々の遅刻だが、怪我をした早苗さんは別だ。
そうか俺も自傷行為を行えばよかったのか。
なんて冗談はさておき、怪我人を前にしてやることなんて一つに決まってる。
「悪い早苗さん、少し身体に触れるぞ」
「えっ、『』さん………?わ、わわっ!?」
「そんな脚でこっからの距離歩けるワケねぇだろ?」
俺は早苗さんに背中を向けると両脚を掴んで持ち上げ、俺の背中におぶった。
「人を背負う経験少ないし、運動神経もないからバランスは安定しない。腕でしっかり俺から落ちないようにしててくれ」
スポーツはEスポーツしかしない俺は人を背負って走るだけで精一杯だ。安全運転までは保証できない。
ここから先は見通しの悪い道も信号もほとんどない。とにかく走り続ければたどり着く。
「…………………だめです、『』さん」
「何が?…………ほい、走るぞーっ………と!!」
俺は自分が遅れないために走っていたが今度はただの人助けだ。救急車よりも速く走ってやる。
「そんなことしたら、『』さんが大遅刻になっちゃう、【先生】がきっとかんかんに怒りますよ」
「んなことはわかってんだ!でもそれがどうした、他人の身を案じることにたかだか1日の成績なんて視野に入らないさ!早苗さんを無事に保健室に送り届けるまで…………俺は死んでも自教室には向かわねぇ!!!!」
「授業サボりたいだけではないんですか?」
「うるせぇ!台無しなこと言うな!行くぞ!捕まってろよ!」
8割当たっているのが悔しい。
そんなことはお構い無しに俺は細い足で地面を踏みしめる。行き先は学校の保健室に決まってる。
誰かのために生きることも、誰かの頭の片隅に置かれることも、何一つ許されてこなかった俺でも、悩める人を見捨てるほどの腐った心は持ってない。
英雄的行動を取りたかったわけでは決してない。ヒーローごっこがしたいわけでも、ベタな学園ドラマ主人公がしたかったわけじゃない。
俺はただ、早苗さんを助けるという意志だけでこの脚を動かしている。
そうでもなきゃ、人を背負って学校まで走ってそれで遅刻して怒られるなんて死んでもごめんだ。
でもそれとこれは別問題。
たとえ、異変であろうと、いまだに夢か幻かもしれない僅かな可能性が残っていようと俺は今この現実に生きている。
俺は、ただ目の前にいる人を助けるだけだ!
「……………………ズルいです、『』さん」
「早苗さん?」
「そんないい人………うちのクラスにいたら、私、きっと悪い生徒に見えちゃいます…………」
「大丈夫だ、早苗さんのワルなんて俺らの日常よりはぜんぜん健全で利口だろうから」
「………えへへ、ありがとうございます、『』さん」
「ちょっと!?背中撫でるな!?気が散る………うひやぁぁぁぁぁ!!!くすぐったい…………ちょ、おま、お前、落ちるぞ!!!」
あーあ、結局遅刻確定だな。
まぁでも、どうせあのまま走っても遅刻か。
俺の運命はそう、最初に彼女とぶつかった時点から狂い始めていたってこと。
奇跡的な出会いが、俺たちの朝を特別なものにした。
これこそまさに、「神様の思し召し」だな。
そういえば、昨日の霊夢を思い出したな。
昨日は霊夢に背中を抱えられて、猛スピードで空を飛んだりもしたっけ。
今日は俺が早苗さんを背中に背負って、遅くながらも、確実に前へ進む。
硬派な学園幼なじみヒロインと、
ベタな学園ご都合ヒロイン。
─────この学校には2人の神の使いが居る。
「ほんとうに…………優しいんですね、『』さん。まるで…………神さまみたい………」
「───────────────────」
しかし。
早苗さんを背負ってなんとか学校に着いたその3分後。
「保健室が、なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいいいいいいいいい!!!!!!!!!」
なんと、保健室が消滅していた。
「ん、見ない顔だな。あんたら…………この先に用事でもあんのか?」
「…………………あ、あんたは一体………」
「ここは【迷いの廊下】。ここを抜けた先には保健室があるが…………普通の生徒が進もうとすれば、」
その人は、ぐーぐー寝ている早苗さんを背負っている俺のもとまで歩み寄って一言。
「……………廊下が、永久ループするぞ」
「───────────は?」
そして俺は、今日一日で、この学校の本格的な幻想郷化を目の当たりにするのだった。
この度、活動休止期間より復帰いたしました!みなさんお久しぶりです作者のマジカル赤褐色です。
数日程度の予定変更ですが予定より少しだけ早く復帰できて嬉しいです。
今回は入り組んだシナリオになっていますが、アンケートが終了して私の自由にさせていただけるということなのでもうやりたい放題しましたw
アンケートにご協力いただいた皆さん、ご協力感謝いたします。ありがとうございました!
もしかしたらまた今後の方針でアンケート取るかもしれない……というか絶対に取ります。密かに計画していることが一つだけあるので。まぁ、もっとストーリーが進行してキャラが増えるまでやらないのでしばらくは普通のシナリオをお楽しみください。
もちろんここまでに出てきた今後の展開へのトリガーはすべて回収していくのでご安心ください。
この日では「保健室から始まる学校そのものの幻想郷化」、次の日では「霊夢が早起きして学校へ行った理由」について迫ります。
改めまして2025年も本作とマジカル赤褐色をよろしくお願いいたします!