ホグワーツは世界一安全(仮)!   作:こんいろ

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#10 10月 ハロウィンの夜に

 セドリックへの誕生日プレゼントはすぐに届き、無事に誕生日に間に合わせることができた。

 選んでいたときのレイチェル達の会話からプレゼントだと察してくれたのだろう、ふくろうが運んできた包みには黄色のリボンがかかっていた。素敵な気配りに、レイチェルはまた次もあのお店で買い物をしようと心に決めた。この間は我慢したけれど、鏡やアクセサリーなんかも可愛いものがたくさんあった。値段も手ごろだったし、エリザベスやパメラ、それからアンジェリーナ達への誕生日プレゼントもきっとあのお店で買うことになるだろう。

 セドリックの誕生日の放課後、いつものように図書室で勉強していたセドリックに、レイチェルは鞄から包みを取り出して渡した。もちろん、「お誕生日おめでとう」の言葉も忘れずに。

 

「ありがとう、レイチェル。 わあ、すごく素敵だ。小物入れか何か?」

「オルゴールなの。マグルのヒットソングなんですって。マダム・ピンスが怒るから、部屋で聞いてみて。とっても綺麗な曲なの。私もセドとお揃いで銀色のを買ったのよ」

「何の曲なんだろう。調べてみるよ」

「パメラも知ってたから、有名な曲みたい……曲名は思い出せなかったみたいだけど。わかったら教えてね」

 

 セドリックに喜んでもらうことができて、レイチェルはとても満足だった。

 楽しいホグズミード休暇は終わってしまったが、今度はハロウィンがある。レイチェルはハロウィンが大好きだ。

 この間のホグズミードでも町中にハロウィンの飾りつけがされていてレイチェル達を楽しませてくれたが、やっぱりホグワーツのハロウィンは一味違う。ハグリッドが育てている小山のようなかぼちゃを見て、パメラが感心したように口笛を吹いてみせた。

 

「まるでかぼちゃの馬車みたいね! 今年のは特に大きくない?」

「女の子が口笛なんてお行儀が悪いわ」

「ねぇパメラ、かぼちゃの馬車って何?」

 

 エリザベスは眉を寄せたけれど、レイチェルはパメラの言葉が気になった。レイチェルが知らなくてパメラが知っていると言うことは、またマグルの生活様式か何かだろうか。レイチェルは見たことがないが、マグルは車や地下鉄以外にかぼちゃの馬車を使うのかもしれない。レイチェルの疑問に思い当たったらしいパメラは、ああ、と笑ってみせる。

 

「マグルの童話にあるのよ。美人で心優しいけど継母にいじめられてる女の子を、魔法使いがかぼちゃを馬車に変えて、お城の舞踏会に連れて行ってあげるって話。女の子はそこで見事王子様に見初められて、ハッピーエンドってわけ」

「へぇ。マグルの世界にもそんなに大きなかぼちゃがあるのね」

「違うわよ。普通のかぼちゃを大きくして馬車にするの」

「太らせ魔法を使ったのかしら。でも、マグルの前で魔法を使うなんて感心しないわ」

「物語の中の話でしょ、エリザベス!」

 

 その日のレイチェル達の午後の変身術の課題は、カボチャを馬車に変えること――――――ではなく、ティーカップを黒いコウモリに変えることだった。予習した内容と全然違うとエリザベスは嘆いていたが、レイチェルは2回目で無事成功させることができ、マクゴナガル先生に10点もらった。変身術は得意なのだ。

 ティーカップの花の模様がそのまま残ったパメラのコウモリが天井近くへと舞い上がっていくのをぼんやり眺めていると、目の前にガシャンとティーカップの山が置かれた。どうしたのだろうと手の主を見上げると、いつも通り厳格な表情のマクゴナガル先生がきびきびと言った。

 

「カップはたくさんありますから、どんどん変えてしまってかまいません。どうぞ、ミス・グラント」

 

 こんなにたくさんのカップをコウモリに変えてしまったら、部屋中コウモリだらけになってしまう。一体何に使うんだろうと思いながら、レイチェルはせっせと杖を振ってコウモリを量産していった。周りを見ると、皆同じようにティーカップと奮闘しながら首を傾げていた。

 

 そんなレイチェル達の疑問は、ハロウィーンの夜に解き明かされた。

 大広間の天井には、レイチェル達が変身させたコウモリがバサバサと羽音を立てて飛び交っていたからだ。自分の魔法がハロウィンの飾り付けに貢献できたことに、レイチェルは誇らしくなった。

 

「嫌だ……あれ、私が失敗したコウモリだわ……」

「気にせずに食べなさいよ! わかりゃしないわよ、コウモリの羽にエリザベスって書いてあるわけじゃないんだから」

 

 シャンデリアの近くを飛んでいる半端な色のコウモリを見つけて、エリザベスが不安げな表情になる。呆れたように溜息を吐くパメラの言葉にはレイチェルも賛成だったが、パメラはもう少し気にすべきかもしれないとも思う。パメラが最初に失敗させた花柄のコウモリが、フリットウィック先生の頭の上で暴れているのにレイチェルは気がついてしまった。

 レイチェルはポークチョップの最後の一切れを自分の皿に取り分けた。空っぽになった金色の皿が蝋燭の炎を反射してキラキラと光っている。おいしいかぼちゃジュースを味わっていると、レイチェルの正面でシェパードパイを切っていたエリザベスがふいに口を開いた。

 

「ねぇレイチェル。私そう言えばさっき、この間の女の子を見かけたんだけれど……」

「女の子?」

「ええ。ほら、貴方が毎週図書室で一緒に勉強してる……」

 

 思い当たるのは1人しかない。ハーマイオニーだ。エリザベスは1度だけハーマイオニーに会ったけれど、まだそれほど親しくなってはいなかったはずだ。ハーマイオニーと何かあったのだろうか? レイチェルが気になって尋ねると、エリザベスは長い睫毛を伏せて言いにくそうに視線を泳がせた。

 

「その……泣いているみたいだったの……地下の、女子トイレで。ノックしたんだけれど、返事がなくて……」

 

 予想外のエリザベスの言葉に、レイチェルは驚いた。

 ハーマイオニーが、泣いていた? 地下の女子トイレで?あの、いつもピシッと背筋を伸ばして真っ直ぐ前を見ているハーマイオニーが?

 信じられない。一体何があったと言うのだろう。

 

「あ、私、それ聞いたわ」

 

 レイチェルがポカンと口を開けていると、急に誰かが話に入って来た。声の方を向くと、少し浅黒い肌の可愛らしい女の子が大きな瞳でこっちを見つめ返してくる。1年生のパドマ・パチルだ。

 パンプキンパイをおいしそうに頬張っていたパドマは、それを一端中断すると、困ったように肩を竦めてみせた。

「パーバティが言ってたもの。ハーマイオニーがロンに泣かされてトイレに閉じこもってるって」

 

 パーバティはパドマの双子の姉で、確かハーマイオニーと同じグリフィンドールの1年生だ。じゃあ、ロン……は誰だったっけ。名前を聞いたことはあるような気がするけれど。

 レイチェルが記憶の糸を辿っていると、「ハリー・ポッターといっつも一緒に居る赤毛の子よ。フレッドとジョージの弟の」とパドマが教えてくれた。ああ、なるほど。聞き覚えがあるはずだ。

 弟も双子の兄と同じで問題児なのだろうか……? 何にしても、あのハーマイオニーが泣かされるなんて大変なことだ。

 

「私、ちょっと様子を見に行って……」

「大丈夫よ、レイチェル。ホグワーツに入って初めてのハロウィンよ? きっともうグリフィンドールのテーブルでケロッとしてパーティーを楽しんでるって!」

 

 レイチェルが立ち上がろうとすると、パメラにローブの袖を掴んで引き止められた。

 そうだろうか。そうかもしれない。レイチェルはグリフィンドールのテーブルに視線を向けてみた。けれど、栗色の髪の生徒はたくさん居るし、レイブンクローのテーブルからは間にハッフルパフのテーブルを挟んでいるからよく見えない。レイチェルがやっぱり見に行くべきだろうかと迷っていると、大広間の扉が勢いよく開いた。

 

 

 

 

 突然響き渡った大きな音に視線が集まる。焦った様子で駆け込んで来たのは、防衛術のクィリナス・クィレル先生だ。普段からそれほど血色がいいとは言えないけれど、その顔はもはや青白いと言うレベルを通り越して、蒼白だった。ただごとではないその様子に、大広間はしんと静まり返った。

 

「トロールが……地下室に……」

 

 喘ぐようにしてそう言葉を搾り出すと、クィレル教授はバタンと床に倒れこんでしまった。瞬間、そこかしこから甲高い悲鳴が上がる。レイチェルも勿論びっくりしたが、周囲が先にパニックと化してしまったので驚くタイミングを逃してしまった。

 呆然と座り込んだままで居ると、今度は爆発音が起きた。ダンブルドアだった。生徒達の注意が集まったのを確認すると、ダンブルドアはトロールには教授達が対処するから落ち着くようにと穏やかな口調で言った。そして、生徒は監督生の引率に従って寮に戻るよう言い渡されたのでレイチェル達は大人しくその通り従った。

 デザートを楽しみにしていたので残念だけれど、トロールが出たのならそんなことは言っていられない。

 どうしてホグワーツにトロール。いきなりトロール。なんだってよりによって、せっかくのハロウィンの夜に。

 トロールの侵入だけでも謎だけれど、レイチェルにはもう1つ不可解なことがあった。隣を歩くエリザベスにこっそり囁く。

 

「……ねぇ、エリザベス。私の記憶が間違ってないなら、クィレル先生ってトロールの専門家じゃなかった?」

「確かそう仰ってたと思うけれど……」

「机上の空論ってやつなんじゃない?」

 

 トロールの恐ろしさがわかっていないのか、パメラが呑気な口調で言う。やっぱりそうなのだろうか、とレイチェルは首を傾げた。

 もしもトロールに遭遇したのがマクゴナガル教授やフリットウィック教授だったら、たった1人でも何とかしてしまったんじゃないかと思うのはレイチェルの勘違いなのだろうか。ホグワーツの教授たちは皆とても優秀な魔法使いだ。それなのに、しかも仮にも闇の魔術に対する防衛術の担当の先生が、たかが――――とは言ってもレイチェル達生徒にとっては脅威なのは間違いないけれど――――トロールくらいであそこまで取り乱すものなのだろうか。

 やっぱり、防衛術の教授のポストは呪われていて、年々新任の先生を見つけるのが難しくなってきていると言う噂は本当なのかもしれない。

 レイブンクロー生は全員無事に寮に戻ることができたが、1年生が怖がっているのもあって皆で談話室に居ることになった。

 こう言う時こそあの双子が居ればいいのに――――。レイチェルは一瞬そう思いかけたが、すぐにブンブンと首を横に振った。あの二人が同じ寮だなんて、毎日の授業が無法地帯になってしまう。

 

「もう寮から出ても構いませんよ! トロールは無事学校外に出されましたからな!」

 

 しばらくすると、肖像画からフリットウィック先生が入って来てそう告げたので、レイブンクローの生徒達はワッと歓声を上げた。けれど、パーティーはもうお開きになってしまったので、少し早いけれど休もうと皆談話室から出て寝室へと戻って行った。レイチェル達もそれに続いた。はぁ、と思わず溜息が出る。トロールの件が迅速に解決したことを喜ぶべきなのだろうけれど、せっかくのハロウィンパーティーが台無しだ。

 

「どうしましょうか。チェスでもする?」

「もう休みましょ。なんだか疲れちゃったわ。お風呂に入りたい」

「あ、じゃあこの間ホグズミードで買ったバスボムを使ってみない?」

 

 できるだけ空気を明るくしようと、レイチェルはこの間ホグズミードで買った袋からバスボムを取りだした。ピンク色でボールのような形をしていて、溶けると薔薇の花びらが湯船に浮かぶようになっている。

 レイチェルがバスタブにお湯を溜める準備をして戻ると、エリザベスとパメラがさっきの出来事について話し合っていた。

 

「それにしても、どうしてトロールがホグワーツに入ることができたのかしら?」

 

 エリザベスの疑問はもっともだ。ホグワーツはそう簡単に外部から入り込めないようになっている。古代から今に渡って、ありとあらゆる魔法で守られているのだ。禁じられた森にはトロールは居ないはずだし、もしも野生のトロールがお腹を空かせて偶然この辺りにやって来たのだとしても、ホグワーツよりも近くのホグズミードに行くだろう。

 

「誰かが引き入れたんじゃない? 問題はそれが誰かだけど」

「いくらウィーズリーズでもあんなことはしないでしょうしね! ハロウィンの余興にしては物騒すぎるわよ。あの2人は、ジョークとそうじゃない範囲がわかってるもの」

 

 それはつまり、レイチェルがあの双子に落とし穴にはめられたり糞爆弾をぶつけられそうになったりしたことは、パメラにとっては面白い冗談だったと言うことだろうか? そう聞きたい気持ちはあったものの、確かにレイチェルもあの二人の仕業だとは思えなかったので、口をつぐむことにした。論点はそこじゃない。

 

「考えたって仕方ないわ。手掛かりが何にもないんだもの」

 

 レイチェルは肩を竦めてみせた。レイチェル達が考えたところで答えが出るとも思えないし、こんなこと先生方だってとっくにわかっているはずだ。レイチェル達よりもずっと経験豊富な魔法使いと魔女なのだから、彼らに任せておくのが賢明だろう。

 その日レイチェル達は久しぶりに3人で一緒にお風呂に入って、いつもより早めに眠りについた。

 

 

 

 

「ア、ア、ア、アクロマンチュラは、ヒトの言葉を話、話すことが、できます。お、主にジャングルに生息していて、く、くく、黒い毛がびっしり、か、体を覆っています。す、鋭いハサミと毒を持ち、に、肉食で、出逢ってしまった時の対処法としては、まず、め、目くらましとして光を出し――――」

 

 クィレル教授の説明に合わせて、レイチェルはカリカリと羽根ペンを動かした。午前最初の授業は闇の魔術に対する防衛術だ。

 レイチェルはクィレル先生のことが嫌いじゃない。レイチェルのお気に入りのマグル学は元々クィレル先生が担当していた科目だし、きっとマグルに対する理解はレイチェルよりもずっと深いはずだ。

 吃音があってちょっと聞き取りにくいし、ニンニクのにおいがひどくて授業が終わる頃には制服や髪に染み付いてしまうし、生徒と目が合っただけでビクビクしてるし、色々と難もあるけれど――――授業内容はまともだし、説明も丁寧でわかりやすい。それだけに、昨日のクィレル教授の行動は、レイチェルには少し残念に思えた。

 やっぱり、闇の魔術に対する防衛術って、知識だけじゃダメなのかしら。経験を積まないと。本当は防衛術なんて習得しなくてもいいくらい平和に過ごせるのならそれが1番だけれど、運悪く危険な魔法生物に遭遇するかもしれないし……実際に闇の魔術を使う人間だってまだ魔法界に居るのだから、対処法を知っておかないといざと言うとき困るだろう。レイチェルは教科書に隠れて小さく溜息を吐いた。けれど、闇の魔術に対する経験なんて授業以外にどこで得ればいいのだろうか。

「ちょっと危険な魔法生物を探して実際に呪文を試してみたいの」なんて言ったらおじさんとおばさんは腰を抜かしてしまうだろう。セドリックも猛反対するに決まっている。もしかしたら母親は、行ってらっしゃいといつも通りレイチェルを送り出してくれるかもしれないけれど。ありえる。

 

「なあ、知ってるか、レイチェル」

「何、ロジャー」

 

 レイチェルがそんなことを考えていると、後ろの席に座っていたロジャー・デイビースがレイチェルの背中を羽根ペンでつついた。誰かに話したくて仕方がないと言った表情でレイチェルを手招きすると、耳元でヒソヒソと囁く。音量こそ小さいけれど、その声は弾んでいた。

「昨日のあのトロール、ハリーポッターが倒したらしいぜ!」

「……ハリー・ポッターが?」

 

 ロジャーの話によると、昨日のトロールの騒動はこうだった。

 1年生の女の子がトロールを相手に力試しをしようと1人で地下の女子トイレに向かって、それを止めようとしたハリー・ポッターとその友達が協力してトロールを倒した、と。そして、1年生達の功績にマクゴナガル教授が10点与えた。

 でも、エリザベスの話から考えると噂は少し間違っている。地下の女子トイレ……たぶん、その女の子と言うのはハーマイオニーのことだろう。でも、ハーマイオニーはちゃんと自分のできることとできないことをわきまえている賢い魔女だ。まだ自分には知らないことがたくさんあると、いつも口癖のように言っている。

 そのハーマイオニーが、トロールを倒そうなんて無謀なこと考えるわけがない。彼女はきっと、元々女子トイレに居たのだ。マクゴナガル教授もきっとそのことに薄々気づいているのだろう。でなければ、きっとグリフィンドールの砂時計のルビーはもっと減っている。下手したら退学処分でもおかしくない。マクゴナガル教授ならそれくらいやる。

 つまり、レイチェルの考えによると、トロールの居る危険な場所にわざわざ自分から出向いたのはハーマイオニーじゃなく、ハリー・ポッターとそのハーマイオニーを泣かせた双子の弟の方である可能性が高い。

 一体何を考えているのだろう。レイチェルには理解できない。別に理解したいとも思わないけれど。

 大人の魔法使いでも手こずるトロール相手に、1年生が何をできると言うのだろう。ハリー・ポッターは少し自分の力を過信して、思い上がっているのかもしれない。勉強熱心なハーマイオニーならともかく、普通の1年生は今頃はまだ、せいぜい物を浮かせるくらいしかできないのに!

 トロールを倒したのは確かにすごい。けれど、それは結果論だ。運が悪ければ、死んでいたかもしれない。

 寮に戻りなさいと言われたのに、それに従わずに――――ハーマイオニーが心配だったと言うのはわかるけれど、それなら先生に知らせればよかったはずだ。3人まとめてトロールに襲われたら一体どうするつもりだったのだろう。

 皆は勇敢だと感心しているみたいだけれど、あまりにも考えなしで、無謀だ。

 

「そう思わない、セド」

「どうかな……でも、無事だったんだし、やっぱり1年生がトロールを倒すって言うのはすごいよ」

「……やっぱり私がおかしいの?」

「レイチェルの言い分もわかるよ。感じ方は人それぞれでいいんじゃないかな。無理に周りに合わせる必要はないよ」

 

 昨夜の一件の噂はあっと言う間に広がって、誰もが「ハリー・ポッターは勇敢だ」「まだ1年生なのにトロールを倒すなんてすごい」「友達のためにトロールに立ち向かうなんて優しい」と口々に褒めそやしている。レイチェルはまた少数派だ。少数派どころか仲間すら見当たらない。

「誰か昨日のハリー・ポッターの行動は無謀で馬鹿げていると思う人は居ませんか?」と大声で言いながら大広間を闊歩すれば仲間が見つかるかもしれないが、大多数の顰蹙を買うのは間違いないだろう。勿論実行する気はない。

 困ったように苦笑するセドリックに、レイチェルは溜飲を下げる。

 クィディッチの一件でも感じたけれど、今回のことではっきりした。ハリー・ポッターはどうやら、自分は特別だから多少規則を破ってもいいと思っているらしい。結果さえ素晴らしければ、どんな手段を取ったって構わないと思っているのだ。先生の言いつけを背いて死ぬかもしれなかったけれど、生き残ったから大丈夫。そんな風に。たぶん、きっと、おそらく。

 こんなこと、セドリック以外の誰にも言えない。エリザベスやパメラだって、ハリー・ポッターの冒険をすごいことだと感心していた様子だった。セドリック以外になんて、言えるわけがない。でも。でもだ。

 

「素敵な最年少のシーカー」「トロールを倒して勇敢」皆が賞賛するそのどちらも、レイチェルは素直に賛成できない。

 レイチェルはたぶん、ハリー・ポッターが好きじゃない。

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