ホグワーツは世界一安全(仮)!   作:こんいろ

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パメラのいじめ対策法(4)

 ホグワーツでの生活が始まって1ヶ月が経つ頃には、パメラも階段が動いたり肖像画が喋ったりすることにすっかり慣れてしまっていた。そして、色々な人から話を聞くうちにわかってきたことだけれど、純血だとか混血だとかについての魔法界の事情は、どうやらパメラが思っていた以上に根深い問題らしかった。

 

「次の授業もスリザリンと一緒?」

「そう。できるだけグリフィンドールとスリザリンを一緒にさせないためだと思うわ。……たぶん」

 

 パメラが顔を歪めると、レイチェルが困ったように肩を竦めてみせた。レイチェルも、スリザリン生はあまり好きじゃないらしい。と言うか、ホグワーツの生徒のほとんどがスリザリン生を嫌っているらしかった。多くの魔法使いにとっては、純血主義は時代遅れで恥ずかしいことだと考えられているらしい。しかし、その一方でどんどん数が減っていく純血を珍重する動きもあるのだと言う。魔法界デビューしたばかりのパメラには理解しがたいけれど、色々と複雑らしい。

 そして、授業が始まってわかったことだが、レイブンクローはスリザリンとの合同授業がかなり多い。

 

「あんな簡単な魔法もできないなんて。ジョーンズ、お前、本当に入学許可証が届いたのか?」

 

 マグル生まれだと言うだけで、いちいちスリザリン生に絡まれることにパメラはうんざりしていた。パメラが変身術で針にするはずだったマッチを耳かきに変えてしまっただとか────この方が難しいはずなのに何故とマクゴナガル教授に不思議がられた────呪文学で浮かせるはずだった羽根を爆発させてしまったとか────フリットウィック教授にもっと肩の力を抜くようにアドバイスされた────どうでもいいじゃないか。放っておいてくれればいいのに。

 

「自分だってその簡単な魔法で羽根をバラバラにしてたでしょ、モンタギュー。まさか、あれで羽根が『浮いた』なんて思ってるの?」

「うるさいぞ、グラント!」

 

 痛烈なレイチェルの一言に、モンタギューはサッと顔を赤くしてどこかへ行ってしまった。どうやら図星だったらしい。

 同じ純血でも、どうしてこうも違うのかしら。パメラには不思議だった。

 

「ありがと、レイチェル」

「あんなの気にしない方がいいわよ、パメラ」

「最近は、犬がキャンキャン吠えてるようなものだと思うことにしてる。まともに相手してたらキリがないもの」

 

 別にスリザリン生が何を言ってこようと、いちいち傷ついたりしない。最初は驚いたけれど、もう慣れた。マグルの学校にだってああ言うタイプは居た。が、とにかくうるさい。面倒くさい。

 卒業までこれが続くのかと思うと、パメラはうんざりした。純血だとかマグル生まれだとか、本当、心底馬鹿馬鹿しい。そもそもマグルのことなんてよく知らないくせに、何を根拠に馬鹿にしているのだろう。意味がわからない。血が血がって、マグルの病院で輸血とかされたら自殺しそう、あの人達。

 

「輸血って何?」

 

 声に出ていたらしい。好奇心いっぱいの瞳でパメラを見るレイチェルに、パメラは拙いながらも自分の持てる知識を総動員させて説明する。が、いまひとつレイチェルにはピンと来ないようだ。仲良くなってわかったこと。レイチェルはマグルのことに関してものすごく強い興味を示す。魔法使いなら皆こうなのかと思っていたけれど、レイチェルはちょっと特殊らしい。

 

「って言うか、魔法使いは大怪我したらどうするの? 病院ってあるの?」

「聖マンゴがあるわ。呪文で直したり、魔法薬使ったり。専門知識がある癒士じゃないと無理だけど」

「え? たった1か所だけ?」

「個人でやってるとこもあるらしいけど、イギリスで大きいのは聖マンゴだけ。だってそんなに必要ないでしょ? 煙突飛行粉を使えばすぐ着くし……」

「フル……、ごめん、何て?」

 

 お互いに相手の知識を計りかねているせいで、レイチェルとパメラの会話はいつもこうなる。あーでもないこーでもないと言いながら廊下を歩いていると、向こうから黒い巻き毛の少女がやって来るのが見えた。薔薇色の頬に、お人形みたいに整った顔。ぴんと背筋を伸ばして歩く姿は毅然としていて、いかにも名家のお嬢様と言った雰囲気を醸し出している。嫌な奴に会ってしまったと、パメラは顔を顰めた。

 

「あ、エリザベス……」

「行きましょ、レイチェル。薬草学の授業はあっち」

 

 レイチェルの手を引いて、パメラはその場を去ることにした。

 先日の大広間での出来事を思い出すと、胃の中がムカムカして、血が沸騰するような怒りが湧いて来る。

 パメラはスリザリン生が嫌いだ。純血だか何だか知らないけれど、生まれや血筋で人を見下すなんて時代遅れもいいところだ。顔を合わせる度に馬鹿にされて、呪いをかけられて、好きになんてなれるはずがない。それでも、面と向かって直接言って来るだけまだマシだ。腹が立ったら言い返せるし、呪いをかけられたってはね返すことができる。

 だから────

 

『大変だな、穢れた血と同室なんて』

 

 ギュッと拳を握り締める。震えそうになる唇を噛みしめた。困った顔はしているけれど、レイチェルはパメラの後についてきてくれたし、握った手を振りほどこうともしない。レイチェルが何も言わないことが、パメラにはありがたかった。慰められたいわけでも、同情されたいわけでもない。ただ、悔しくて、腹立たしい。

 

 面と向かって何かされるのはまだマシだ。だって、ちゃんと反撃することも言い負かすこともできるから。

 だから、影で人を馬鹿にしてクスクス笑っているような、エリザベス・プライスみたいなのは大嫌いだ。

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