ハーマイオニーとの勉強会の約束は3時だった。
試験が近づいてきたせいで、図書室はいつもよりも混んでいる。何とか窓際の日当たりのいい席を確保できたレイチェルは、ぼんやりと窓の外を眺めていた。ちらりと時計を見る。長針はちょうど1を指し示そうとしていたが、ハーマイオニーはまだ姿が見当たらない。
「レイチェル! 待たせてごめんなさい」
「ううん。大丈夫、気にしないで」
しばらくして、ハーマイオニーがやって来た。ここまでかなりの距離を走って来たのか、息を切らしている。大慌てで準備を始めるハーマイオニーに、そんなに慌てなくても大丈夫だと苦笑する。正面の椅子に向かったハーマイオニーを眺めていて、レイチェルはふと気がついた。
「ハーマイオニー、その髪…………焦げてる?」
ハーマイオニーのふわふわした栗色の髪。その毛先の一部が、炎で燃やされたかのように黒くなり、縮れてしまっている。
どうやら自分では気が付いていなかったらしい。ハーマイオニーは驚いた様子でしげしげと髪を持ち上げると、そのまま手で隠して、苦笑いを浮かべてみせた。
「何でもないの」
呪文に失敗でもしたのだろうか。ハーマイオニーにしては珍しい気もするけれど、たまにはそんなこともあるのかもしれない。レイチェルが鞄の中から今日ハーマイオニーに聞こうと思っていたマグル関連の質問のメモを探していると、ハーマイオニーが口を開いた。
「そう言えばレイチェル、レイチェルのお父様って、ルーマニアでドラゴンの研究をやってるのよね?」
「ええ」
それは確かにその通りなのだけれど、いきなりどうしたのだろう。と言うか、前にちょっと話題に出しただけなのに、覚えているなんてさすがだ。好奇心旺盛なハーマイオニーのことだし、ドラゴンの研究に興味があるのだろうか。そんな風に考えたレイチェルだったが、続けられた言葉は予想とは違った。
「ここからルーマニアまでって、何日くらいで手紙が届くかしら? その、大体でいいんだけど……」
「天気なんかにもよるけど……今はもう吹雪ってわけでもないし、早くて3日ぐらいかしら。遅くても5日以内には着くと思うわ。……けど、どうしてそんなことを?」
「えっと……ちょっと、興味があって」
「ふうん」
ルーマニアにペンパルでも居るのだろうか。でも、あの辺りに魔法学校ってあったっけ? もしかしたら、マグルの友達なのかもしれない。そんなことを考えながら、レイチェルはパチンと手を合わせた。そんなことよりも、ハーマイオニーに報告しなければいけないことがあったのだ。
「ねえ、聞いてハーマイオニー! 私、今日マグル学の授業でね……」
レイチェルは今日の授業であったあれこれを話して聞かせた。ハーマイオニーにしてみればたぶん目新しいことなんてきっと何一つないはずなのだけれど、レイチェルの話を誰よりも熱心に聞いてくれた。ハーマイオニーにとっては、「魔法界育ちのレイチェルがマグルの文化のどこを不思議に思うか」さえ興味の対象らしかった。マグルの道具に関する2人の議論は白熱する。
途中で少し騒がしくしすぎたらしく、マダム・ピンスに2人して叱られてしまった。