夢への旅路   作:梅のお酒

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 オリ主は原作で披露したぼっちちゃんのCDジャケ案(ウロボロスのやつ)をかっこいいと思う感性の持ち主です。


第26話 時の階段(後)

 ひとしきり時間が過ぎた後、私達はライブハウスの奥の方にあるテーブルを囲む様に四人で椅子に座っていた。

 

 「いやー、びっくりしたヨー。まさか志麻が泣くのを見られるなんて」

 「ぐっ……。頼むから忘れてくれ」

 

 顔を赤くした志麻が目線を逸らしながら懇願する。

 正直、私も人前で泣いちゃったから恥ずかしいのは同じなんだけどね……。

 

 「突然でごめんなさいね。えっと……清水さん?」

 「イライザでいいヨー。美空の事は二人から聞いてたから会えて嬉しいネー」

 

 そう言って清水さん、もといイライザは隣に座っていた私にハグしてきた。

 日本ではまず無かった挨拶に何だか懐かしい気持ちになりつつ、私も彼女にハグを返す。

 

 「ありがとう。これからもよろしくね、イライザ」

 「エヘヘ。よろしくー」

 

 ニパーっと人懐っこい笑顔を浮かべるイライザの後ろにブンブン揺れる尻尾を見たような気がして、自然と笑みが零れた。

 

 「そもそも、きくりも美空が戻って来た事を知っていたなら言えよ」

 「言わなかったからこそ感動的な再会になったでしょ?」

 

 志麻がきくりに対して恨み言を吐くも、本人はどこ吹く風といった様子。

 臆する事無く、悪戯っぽい笑顔でそう言ってのけた。

 ほんと、イイ性格になったものだわ。

 

 「でも、美空が来たって事は、遂にSICK HACKもフォーピースバンドとしてスタートするって事だよネ!」

 「は?」

 「え?」

 

 興奮した様子で言うイライザに対して、素で疑問符を浮かべてしまった。

 

 「違うノ?」

 

 一方、さも当然といった様子でイライザも不思議そうな顔をしている。

 どういう事かきくりに詰め寄ろうとする前に、きくりが相変わらず呑気な笑顔を浮かべながら話し始めた。

 

 「違うってイライザ。今日美空が来たのは、単純に皆に紹介したかっただけだよ」

 「Oh……ソーリー」

 

 スパッときくりが言い切った事で自分の勘違いだと悟ったイライザは、こちらが申し訳なる位意気消沈して素直に謝った。

 

 「いいのよイライザ、気にしてないから。それに申し訳ないけど、私まだ誰かとセッションは出来ないんだ」

 「……やっぱり、まだ病気が良くなっていないのか?」

 「うん。日常生活と一人での練習は大丈夫なんだけど、一緒に演奏するとね」

 

 慎重に言葉を選びながら尋ねてくる志麻に感謝しながら、されど悲観的になりすぎないように私は答えた。

 

 「そうか……。いや、体の調子が良くなってるんだったらそれで良いんだ。……ん? だが、それが分かるという事は誰かとセッションしたのか?」

 

 おぉ、流石志麻。頭の回転が速い。

 私も結束バンドの事を話したかったし、丁度良い流れだ。

 

 「私、下北沢で働いててさ。たまたま星歌さんと再会して、今は妹ちゃんのバンドを教えているんだ」

 「へぇ、伊地知先輩にも会っていたのか」

 

 懐かしい名前が出て来た事に志麻は少し驚いた様子だった。

 私はいそいそとスマホを取り出し、喜多ちゃんがアップしたライブの切り抜き動画を皆に見せる。

 

 「まだ結成して三ヶ月くらいだけど、良いバンドよ」

 「ほぅ、三ヶ月でこのレベルは凄いな」

 「Yes! それに、フレッシュな感じが可愛いネー」

 「でしょー? 私の一押しはこのギターの子なんだ。一緒に路上ライブもやったんだけど、ヨヨコちゃんの良いライバルになれると思うよ」

 

 皆でスマホを見ながらそれぞれの感想を述べていると、動画が終わったタイミングできくりが私の方に顔を向けて言ってきた。

 

 「実は、折角だから美空にも会って欲しい子達がいるんだ。たぶんそろそろ来ると思うけど……」

 「おはようございます」

 

 きくりが言い終わったと同時位に、入口の方から別の声が聞こえて来た。

 

 「あ、来た来た。おーいヨヨコちゃーん! こっちこっち!」

 「え? あ、はい」

 

 名前を呼ばれると、眼鏡をかけた勝気そうな顔立ちの女の子が早歩きでこちらに近寄って来た。

 ヨヨコって名前、もしかして。

 

 「あの、姐さん。こちらの方は?」

 

 目の前まで来たヨヨコちゃんは恐る恐るといった感じで私を一瞥した後にきくりに問いかけた。

 そりゃそうか、顔見知りの中にスーツ着た知らない大人が居たら誰この人ってなるよね。

 

 「前に話した事あるじゃない? SICK HACKの創設メンバーの美空だよ」

 「えっ。じゃあ、この方が!?」

 

 うん? 何だか随分と大きいリアクションだな。

 とりあえずそこは置いといて、まずは大人として先に自己紹介しないと。

 

 「初めまして、藤原美空と申します。SIDEROSの大槻ヨヨコさんよね?」

 「は、初めまして! ……あれ? どうして私の名前を?」

 「きくりが教えてくれたのよ。凄いレベルのバンドが後輩にいるってね」

 「姐さんがそう言ってくれたんですか!?」

 

 私の言葉を聞くと、目をキラキラさせながらヨヨコちゃんはきくりの方を見た。

 あまりも嬉しそうだから思わずきくりも「ま、まあね」と少したじろいでしまう程だった。

 どうやら、ものすごくきくりに懐いているみたいね。

 今はアレな感じだけど、それでもきくりの事を慕ってくれる後輩が居る事に思わず感慨深くなってしまった。

 

 「私もSIDEROSの曲聞いたけど、プロも目じゃないレベルだと思ったよ」

 「ありがとうございます! 『幻のメンバー』にそう言って頂けるとは光栄です!」

 「あはは。そんな大層なものじゃないよ」

 

 相変わらず目をキラキラさせながらヨヨコちゃんは言うけど、あまり言って欲しくないあだ名をまた聞いて私は内心ため息を吐いてしまう。

 ……いや、本人に悪気はないしそこをとやかく言うのは栓の無い事か。

 本人は純粋に好意でこちらを見てもらっているみたいだから、私は努めて笑顔を作りながら話を続けた。

 

 「皆からは名前で呼ばれてるから、大槻さんも気軽に呼んでね」

 「あ、それなら私も名前で呼んでください」

 「オッケー。じゃあ、これからもよろしくねヨヨコちゃん」

 「よろしくお願いします、美空さん」

 

 私が笑顔を浮かべながら握手を求めると、ヨヨコちゃんも緊張しながらも応じてくれた。

 うぉ。この手の感触、とんでもない密度の練習を重ねている人だ。

 才能に胡坐をかかない努力家、これは超が付く強敵ね。

 頭の片隅でそんな事を考えつつそれはそれ、これはこれと切り替える。

 折角会ったからにはもう少しアイスブレイクはしておきたいわよね。

 

 「私、Metallicaがきっかけでバンドを始めたからさ。SIDEROSの曲聞いてビビッと来て好きになっちゃった」

 「あ、私もメタリカが好きで曲作りの参考にしてるんです!」

 「おー! 同士よ!」

 「そういえば、姐さん達も最初の頃はメタル・ハードロック系だって聞いた事があるんですけど」

 「あー。あの頃は私が作詞も作曲も全部やっていたから趣味バリバリな感じになってたのは否めないのよねぇ」

 「だからと言って、CDジャケットまであのセンスは困ったけどな……」

 「あったねぇ、そんな事……」

 

 私とヨヨコちゃんちゃんが話している横で、志麻ときくりが死んだ魚みたいな目でポツリと呟いた。

 

 「えー。どんな感じだったノ?」

 「確か、鎧を着たドラゴンみたいなバイクに乗った魔法使いとかだったな」

 「他にも、ギターの形をした槍を持った巨人の大行進とかもあったよね」

 「すごく……中二病デス……」

 「何ぃ!? お主らにはJudas PriestやBlind Guardianをリスペクトしたあの絵の良さが分からぬのか!?」

 「そ、そうですよ姐さん! あれはダサいんじゃなくて様式美という名の芸術なんですよ!」

 「ヨヨコちゃん、分かってくれる!?」

 「すまん、あれだけは理解出来ない」

 「あの時ばかりは銀ちゃんにも相談したしねー」

 「美空、結構キテるセンスの持ち主なんだネ」

 「ちくしょー! どいつもこいつも好き放題言いやがって!」

 

 何よー! あのファンタジックでパワフルさ溢れる絵のどこが悪いの!?

 私が慟哭すると不憫に思ったのかヨヨコちゃんが慰めてくれた。うぅ、ヨヨコちゃん優しい。

 あ、ちなみにその時のジャケットは結局三人でそれぞれの楽器を構えている所を俯瞰で撮影するという無難な感じになりました。

 

 

 

 

 そんなこんなで途中アクシデント(?)がありながらも、私達は楽しくお喋りをしていた。

 そこそこ時間が経った後、入口の方から何人かの足音が聞こえたのでそちらに顔を向けると

 

 『おはようございまーす』

 

 という挨拶と共に三人の女の子が入って来た。

 

 「あんた達、遅いわよ!」

 「遅いも何も、時間通りじゃないすか」

 「ヨヨコ先輩が早すぎるんですよー」

 「あんまり怒ってばっかりだと血管切れちゃいますよ~?」

 

 三人の姿を見るや否や、ヨヨコちゃんがお冠といった様子で立ち上がる。

 でも三人にとってはいつものことなのか、マスクをした子は面倒くさそうな顔をしたり、おっとりした子は困った顔をしたり、ゴシック衣裳な子は変わらずにニコニコしていたり三者三様の反応だった。

 

 「今日は姐さん達との大事な合同ライブの練習なんだから、それくらいの気合を見せなさい!」

 「そんな運動部じゃないんすから……」

 

 尚もヒートアップするヨヨコちゃんを尻目に、マスクを付けた子がやれやれといった様子でため息を吐く。

 

 「……あらぁ? そちらのお方は?」

 「スーツ姿のお姉さん……。もしかして、レーベルからのスカウトさんですか!?」

 「あ、待ちなさい!」

 

 話を逸らせそうな存在と認識したのか、ヨヨコちゃんの静止を無視して三人はスタスタと私の方に近づいてくる。

 三人とも見た事ある顔だから、挨拶するには丁度良いタイミングだ。

 私も椅子から立ち上がって、声をかけた。

 

 「初めまして、藤原美空と申します。SIDEROSの長谷川さん、本城さん、内田さんよね?」

 「あ、これはご丁寧にありがとうございます。ドラムの長谷川あくびです」

 「ギターの本城楓子です」

 「ベースの内田幽々です~」

 

 私がお辞儀をしながら挨拶をすると、三人も丁寧に頭を下げて挨拶をしてくれた。

 

 「いやー、しかし遂にウチらもスカウトされるくらいのバンドになったんすね」

 「ヨヨコ先輩のしごきに耐えた甲斐があったねー」

 「うふふ。石の上にも何とやらですねぇ」

 「聞こえているわよ! っていうか、姐さん達を差し置いて私達がスカウトされるなんて有り得ないでしょ!」

 

 相変わらず火でも吐くんじゃないかって勢いでヨヨコちゃんが詰め寄るけど、それでも三人はマイペースに話を進める。

 

 「え、じゃあ藤原さんは何者なんですか?」

 

 長谷川さんが疑問を浮かべると、ヨヨコちゃんは待ってましたとばかりに得意げな顔で答えた。

 

 「美空さんこそ、姐さん達の師匠でありSICK HACKの礎を築いた『幻のメンバー』よ!」

 「という事は、廣井さんのお友達……?」

 

 うーん、うーん……。ヨヨコちゃん、やっぱりその呼び方は止めて欲しいなぁと私が心の中で唸っていると、長谷川さん達三人はあっけに取られた様な表情で私の事を見ていた。

 

 「三人ともどうしたの?」

 「あ、すいません。廣井さんのお友達なのにすごいまともそうな人でびっくりしちゃって……」

 「一緒になって四六時中お酒飲んでる人かと思ってました」

 

 長谷川さんと本城さんが答える。

 あー、こりゃアレか? 慕ってくれるヨヨコちゃんが珍しくてやっぱり他の人からみたらきくりの素行は目に余るものらしい。

 

 「……ん~。でも、憑いている子は同じ位大きそうな感じですねぇ」

 

 と、黙って私の事をしげしげと見ていた内田さんが何やら不穏な事を言い始めた。

 視線は私、というよりは私の後ろの空間をじっと見ている。

 当然、振り返ってもそこには何も居ない。

 

 「えっと、内田さん? ついてるって、どういう意味?」

 「あ、藤原さんごめんなさい。幽々ちゃんはそういう存在が見えるみたいなんですよ」

 

 冷や汗をかきながら尋ねる私に、長谷川さんがしれっと答えた。

 

 「あ、アハハ。面白い子だね~。そういうキャラ付けなのかな?」

 「残念だが美空、幽々の力は本物だぞ」

 

 離れて見ていた志麻が真剣な表情で言った。

 ……え? マジで? 志麻もそっち方面に感覚が強いのは知ってるから、じゃあ本当に……!?

 

 「いやーーー!! やだーーー!!」

 

 恥も外聞も捨て、私は志麻に抱き着いた。

 

 「美空、もしかしてお化け嫌いなノー?」

 「ゾンビみたいなクリーチャー系は大丈夫だけどジャパニーズホラーみたいなジメっとした感じは駄目なの!」

 「うふふ。そんなに怖がらなくても大丈夫ですよぉ。ちょっと気難しい感じはしますけど、心を開けば藤原さんを守ってくれますよ」

 「気難しいって何!? 私、選択肢でも間違ったら死ぬの!?」

 「やれやれ。この様子じゃそういう存在のたまり場なきくりの家には行けないな」

 「はぁー!? ざっけんじゃないわよ! 私きくりを家にあげちゃったじゃない!」

 「ぐ、ぐるじい……。美空、このままじゃ私があの世に……」

 「まぁまぁ、藤原さん。仲良くすれば皆良い子達ですよぉ」

 「出来るわけないでしょー!!」

 

 店内には私の叫び声が響き渡り、あやうくきくりを締め落としそうになりそうだったのを何とか志麻が止めてくれた。

 

 

 

 

 「ふぅ、ふぅ……。皆、取り乱してごめんなさい」

 「いえいえ。面白いものが見れて楽しかったです」

 

 私が皆に謝ると、長谷川さんがフォロー(?)してくれた。

 とりあえず、帰ったらお塩を部屋の中に盛っておかないと。

 こほん、と咳ばらいをした後に私は気になった事を尋ねる。

 

 「ところで、さっきヨヨコちゃんが合同ライブって言ったけど、どういう事なの?」

 「あぁ。来月にSICK HACKとSIDEROSが同じ日にここでライブをやるんだ。今日はその進行確認と練習だな」

 「折角ですから美空さんも練習を見てくれませんか? ご意見を頂きたいです」

 

 志麻が教えてくれると、熱気の籠った眼でヨヨコちゃんが提案してきた。

 少し思案した後、私はキッパリと言い放った。

 

 「いや、私は帰るよ」

 「えー? ちょっと位はいいでしょー?」

 

 きくりが口を尖らせながらブーブー文句を言うのに対して、ポンポンと頭を撫でながら答える。

 

 「今見ちゃったら、当日の楽しみが無くなるでしょ?」

 

 ニッと笑いながら言うと、言わんとしている事を察したのかきくりの表情がパァっと明るくなった。

 

 「見に来てくれるの!?」

 「まぁね。こんな機会滅多にないし、結束バンドの皆も勉強に良いしね」

 「あ、じゃあ後で日程連絡するね! チケットは私が奢るから!」

 「別にいいわよ。良い演奏には対価を払ってなんぼなんだから」

 「そもそも、きくり奢れる程お金あるノ?」

 

 イライザに痛い所を突かれたのか、きくりはムグッと押し黙ってしまった。

 無理してカッコつけようとしなくていいってのに。

 

 「……結束バンド? それって、最近姐さんが言ってたバンドですか?」

 

 会話を聞いていたヨヨコちゃんが、さっきとは一転して鋭い目つきで問いかけて来た。

 

 「うん。私、今はその子達を教えているんだ」

 「そう、ですか。ちなみに、その子達のレベルって藤原さんから見てどうですか?」

 

 陽炎の様に揺らめく気迫を漂わせながら、ヨヨコちゃんは質問を続ける。

 

 「そうね。今はまだ卵だけど、いずれはきくりやヨヨコちゃん達にも迫る位になれると私は信じてる」

 「……負けないですよ」

 

 ふふふ、良いわね。トップを目指す人間特有のギラついた闘志を感じる。

 そして、ヨヨコちゃんがこうだからこそ、他のメンバーも高いレベルでパフォーマンス出来ているんだということが知れた気がした。

 

 「ヨヨコ先輩、そんな怖い顔しなくてもいいじゃないっすか」

 「そうですよー。藤原さん、ごめんなさい。ヨヨコ先輩、廣井さんがそのバンドに取られちゃったから拗ねてるんです」

 「まぁ、そこが可愛いんですけどね~」

 「はぁ!? そ、そんな訳ないでしょ! ただ姐さんが気にするバンドだからどんなレベルなのか知りたかっただけよ!」

 

 ギャイギャイとヨヨコちゃんが騒ぐ程、他の三人からからかいの声が飛んでくる。

 長谷川さん達は口では文句を言うけど、ヨヨコちゃんを慕っている様でその光景が微笑ましかった。

 

 「じゃ、これ以上長居すると邪魔になるから行くわね」

 「美空、またネー」

 『お疲れ様でした』

 

 イライザとSIDEROSの皆の声に軽く手を振りつつ私は踵を返す。

 

 「美空!」

 

 扉の前まで来た所で、一際大きい声できくりが私の名前を呼んだ。

 

 「絶対! 必ず見に来てね!!」

 

 子供みたいに声を張り上げそういうきくりに、私は笑顔で返す。

 

 「心配しないで! 必ず見に行くから!」

 「約束だよ!」

 

 両手をブンブン振り回すきくりに軽く手を振り、今度こそ私はFOLTを後にした。

 さて、また休日出勤は避けたい理由が出来ちゃったな。

 チケットも、まぁ今回は私の奢りって事で結束バンドの皆を誘ってみますか。

 先々に出来た楽しみを胸に秘め、今後の計画を練りながら私は帰路に就いた。

 

 

 

 

 美空さんが帰った後、しばらく姐さんは静かだった。

 けど、やがて体をブルブル振るわせた後、いつも以上に騒がしい声をあげて叫んだ。

 

 「っしゃあーーー!! 今度のライブ、いつも以上に気合入れて行くよ!!」

 「いつも最初からそれくらいのやる気を出せよな」

 「ホントだネー。美空には感謝しないと」

 

 志麻さんもイライザさんも呆れながら言うけど、その表情はすごい嬉しそうだった。

 火のついた姐さん達に負けられない。

 そう思った私は、あくび達に向き直って声をかける。

 

 「いい、あんた達! 美空さんもそうだけど、その結束バンドとやらが来るには無様な姿は見せられないわよ!」

 「はーい。分かってますよ」

 「こうなったヨヨコ先輩は」

 「止められませんからねぇ~」

 「はいはい。あなた達、準備が出来たなら早速始めるわよ」

 

 いつの間にか居たのか吉田店長が手を叩きながらそう声をかけると、早々に全員で練習に取り掛かり始めた。

 結束バンド……どんなバンドか知らないけど、絶対に負けないんだから!!

 




 この話の裏では結束組が江の島観光をしていますが、原作から特に変更ない場合はこんな感じのナレ死っぽい感じで話が進行しています。
 なので、山田との歌詞相談だったり虹喜多コンビのぼっちハウス訪問もあったものとしてお考えください。
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