夢への旅路   作:梅のお酒

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 サブタイはそれっぽいのが入れられそうなら入れてくスタイルです。


第4話 Metal Master

 星歌さんと再会した週の金曜日、仕事終わりに早速私はSTARRYを訪れ、星歌さんと一緒にスタジオに入室した。

 

 「全員いるな」

 

 星歌さんがスタジオを見渡して、声をかける。

 中には4人の女の子がいて、一度練習を止めると横一列に整列し、私と星歌さんと向かい合った。

 

 「この人が、話に出てた私の後輩の藤原だ。藤原、挨拶頼む」

 

 事前の打ち合わせ通り星歌さんに促されて、私は一歩前に出て、一礼してから自己紹介を始めた。

 

 「初めまして、藤原美空と申します。星歌さんには学生の時にお世話になっていて、最近たまたま再会しました。その時に皆さんの事を聞いて、何かお手伝い出来ないかと思って、今回こうして顔合わせをさせてもらうことになりました。やるからには皆さんが良い方向に進めるよう精一杯頑張りますので、よろしくお願いします」

 

 皆の緊張をほぐせるよう、笑顔を浮かべて私は話をする。

 その甲斐あってか、幾らか皆の空気が柔らかくなったのを感じた。

 ふぅ、社会人経験を積んでてよかった。昔だったらグイグイ行き過ぎて、余計に皆を困惑させてたかもしれない。

 私の自己紹介が終わって、今度は結束バンドの子達が自己紹介を始めてくれる。

 っていうか、星歌さんから聞いてたけど結束バンドって面白い名前だね。

 

 「ドラムの伊地知虹夏です! 今日は私達の為にありがとうございます!」

 

 まず挨拶したのは、星歌さんと同じ金髪をサイドテールにした虹夏ちゃん。

 わ~、すっかり大きくなったねぇ。

 昔、一回だけ会ったことあるんだけど、その時虹夏ちゃんはまだ小さかったから流石に向こうは覚えてないか。けど、元気そうでよかった。

 

 「ベースの山田リョウです。よろしくお願いします」

 

 次に挨拶をしたのは、クールビューティーという言葉がぴったり当てはまる雰囲気を持つ山田さん。

 うわっ、すごい整った顔立ち! モデルさんでも通用するんじゃないかな。

 思わず同性の私でも見惚れてしまうくらい綺麗な子だ。

 

 「ギターボーカルの喜多……郁代、です! よろしくお願いします!」

 

 その次に挨拶したのは、太陽の様に明るい雰囲気を持つ喜多さん。

 この子が一番今どきのTHE・女子高生って感じかな。お洒落だしフレッシュさが溢れてるし、確かにフロントマンに向いてそう。

 ただ、自分の名前をすごい嫌そうに言ったのは何でだろう……。

 

 「あっ、えっと……、リードギターの、後藤、ひとり……でしゅ! よ、よろしくお願いしまふ……!」

 

 若干噛みながら最後に挨拶したのは、ピンクジャージが目立つ後藤さん。

 うん、この子が一番インパクトあるんだよね。格好もそうだけど、ずっとソワソワしてて挙動不審だし。

 まぁ、たぶんすごい人見知りなんでしょう。そんな人は世の中いっぱいいるし、お互いに追々慣れていければいいんじゃないかな。

 ……ふふ、どことなく雰囲気があの子に似ているかも。

 こうしてお互いの自己紹介が終わり、私が一人ずつ握手を求めると、皆それに応じてくれた。

 第一印象は良い感じで終われた、かな?

 けど、流石にこれで今日は終わりですってわけにはいかないのよね。

 

 「え~っと、私は皆の事を少しは星歌さんから聞いてるんだけど、逆に皆から私に聞きたい事ってあるかな?」

 「はい」

 「山田さん、どうぞ」

 

 私が問いかけると、早押しクイズばりに先に手を上げたのは山田さんだった。

 

 「藤原さんは、どのくらい演奏出来るんですか?」

 

 あー、やっぱりそうだよね。そこは大事だよね。

 虹夏ちゃんが『もっと言い方あるでしょ!?』ってすごい顔をしながら詰め寄ってるけど、私は全然気にしない。むしろ、早々にこの質問が来てくれて嬉しいくらいだった。

 だって自分よりも下手くそな部外者にあれこれ言われるのは面白くないだろうし、こういう質問を率先して聞いてくるということは、山田さんはそれだけ結束バンドの事を大切に思っているのだろうと私は感じた。

 

 「藤原、あまり深読みしなくていいぞ。リョウはアホだから聞きたいことをそのまま聞いただけだ」

 

 え、そうなの? 冷静で頭良さそうな見た目してるのに?

 まぁ、星歌さんの言ったことはさておき、山田さんにチョークスリーパーをかけてる虹夏ちゃんを宥めながら、私は話を進める。

 虹夏ちゃん、私は大丈夫だから。山田さんの顔がブルーマンみたいになってるからやめてあげて。

 

 「そこは私も大事だと思ってて、今日はギターを持って来てるから演奏してみるね」

 

 そう言って、私は仕事前にSTARRYに寄り道をして、職場に持ってくと置き場所に困るので星歌さんに預かってもらっていた自分のギターを取り出す。

 時間がもったいないのでいそいそと準備を始め、ギターをアンプに繋いで、軽くボンボンと音を出して調整する。

 一通りの準備が出来たら、私は皆に声をかけた。

 

 「準備出来ましたので、宜しくお願いします」

 

 ペコリ、と私は一礼する。

 そして、皆の視線が私に集まるのを感じた。

 

 この感じ、久しぶりだな……。

 

 この人はどれだけ演奏が出来るのか、どんな音楽を見せてくれるのかという好奇心や期待。

 星歌さんとセッションした時にはなかった、他人に見られるという感覚。

 

 大丈夫。

 

 見てくれる人も、音楽も、敵じゃない。

 

 

 

 

 ──敵がいるとしたら、それは、自分自身だ!!

 

 

 

 

 「っ!」

 

 雑多な感情を吹き飛ばすかのように、私はギターを奏でた。

 

 「マスターオブパペット……!」

 

 演奏するやいなや、後藤さんの驚き混じりの声が聞こえた。

 おぉ、女子高生でこの曲を知っているのか。めちゃくちゃ嬉しい!

 後藤さんが言ったように、私が演奏したのはアメリカのバンドMetallicaのMaster of Puppetsのギターソロ部分。

 一曲丸々だと8分以上あるから、流石にこの場で全部は演奏出来ない。

 けれど、このギターソロは速弾きの上30秒くらいあるから、曲を知らない人でも私がそれなりの腕前を持っているという事は感じてくれると思う。

 それに、私がこの曲を選んだのは、私自身この曲に強い思い入れがあるからだ。

 小学生の頃、クラスメイトに初めてこの曲を聞かせてもらった時、体に電流みたいな衝撃が走ったのを今でも覚えている。

 歌詞の意味も分からなかったけど、ただただ聞いたことのなかった重低音の音が、ギターソロが格好よくて、私はどんどん夢中になった。

 そして、気づいたら自分でもギターを始め、この曲が演奏できるようになりたいと毎日練習に没頭していった。

 演奏する上では、確かに技術も大事だ。

 けれど、それだけじゃなくて感情が、曲に対する熱い想いが合わさった時が。

 音楽は、何十倍にも輝きを増すということを、一番伝えたかった。

 

 

 

 区切りよくギターソロ部分を終えると、私は改めて皆の方に顔を向けた。

 

 「こんな感じです。ありがとうございました」

 

 始めた時と同じように、またペコリと一礼をする。

 皆ポカンとした表情を浮かべていたけれど、すぐに大きな拍手を送ってくれた。

 

 「ちなみに、ベースもドラムもこれくらい演奏できるからな。こんな人間、他にいないぞ」

 

 星歌さんが楽しそうに笑いながら補足を付け足すと、皆さらに驚きの表情を浮かべた。

 

 「あ、あの! 作戦会議いいですか!?」

 「許可します!」

 

 虹夏ちゃんがテンパりながら言ってきたので、少しでも落ち着いて話せるように私も明るく返してあげた。

 結束バンドの皆は壁際に集まり、こちらに背を向けて作戦会議を始めた。

 

 (どどどどどうしよう!? 想像よりもすごい人が来ちゃった!)

 (っていうかプロですよプロ! 伊地知先輩、このお誘い受ける以外なくないですか!?)

 (し、しかもベースもドラムもこのレベルって、もしかして宇宙人なんじゃ……!?)

 (みんな落ち着け。こういう時こそ一回冷静に考えるのが大事ふんどし!)

 (お前が一番落ち着け!!)

 

 本人たちはヒソヒソ話してるつもりだろうけど、全部聞こえてるんだよね。山田さん、どっから大根なんか取り出したんだろ。

 しかし、どうしたものか。

 ひとまず、私が人に教えられるくらいの技術は持ってるということは伝わったと思う。

 けれど、それがまた相談役として信頼の置ける人物かどうかに繋がるかと言えば必ずしもイエスとは言えない。

 でもでも、活動を始めたばっかりの彼女達からしたら、アドバイスをくれる人は欲しいという需要は満たしてると思うし……。

 う~ん、このままじゃ埒が明かない。ここは大人として、私の方から歩み寄らないと。

 

 「ちょっといい?」

 

 私が声をかけると、結束バンドの皆は一斉に振り返り直立不動で気を付けをした。

 軍隊かな?

 

 「えっと、とりあえず、私が皆が納得するくらいの腕前は持ってるっていう認識で大丈夫?」

 

 そう問いかけると、4人は無言で赤べこのようにカクカク首を縦に振った。

 うぅ、何だかこっちがカツアゲしてるみたいな気分になってくる。星歌さんは人の気も知らないでニヤニヤ笑ってるだけだし。

 とにかく、あてにならない人は放置して、話を進めなくちゃ。

 

 「それでね、星歌さんから聞いてるかもしれないけど、そんなに気を遣わなくていいからひとまずお試し期間みたいな感じで始めてみるのはどうかな? もし嫌になったらそこで言ってくれればいいから、ね?」

 

 私の方が背が高いので、皆と視線が合うように、少し屈みながら提案する。

 若干間が空いたけど、虹夏ちゃんが他の3人に顔を向けると皆が同時に頷き、こちらに向き直った。

 

 『お世話になります! よろしくお願いします!』

 

 そう口を揃えて、お辞儀をしてくれた。

 どうなるかと思ったけど、結論が出て良かった。

 私は改めて皆と握手をして、この先の事に想いを馳せた。




 選曲に関しては100%作者の趣味です。ギターソロで一番最初に思い浮かんだのがこの曲でした。これからも劇中で実在の曲が出るとしたらこんな感じの選曲になると思います。
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