夢への旅路   作:梅のお酒

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 音楽関係の描写はぼざろ二次創作における鬼門だと思います。
 事前に自分なりに色々調べてはいますが、これおかしくね? な描写があったらごめんなさい。



第5話

 結束バンドとの顔合わせが終わった次の日の土曜のお昼過ぎ、私は再びSTARRYに訪れていた。

 今日はお店がオープンするまではスタ連で、その後はそのまま皆でバイトとのこと。

 懐かしいなぁ。私も昔は練習しながらバイトもして、必要なお金をやりくりしてたっけ。

 頑張る彼女達の事を考えると、自然と笑顔とやる気が湧いてきた。

 

 昨日、私が結束バンドの相談役を引き受けることが決まった後、ベースとドラムの演奏も見たいですと言われたので軽く演奏すると、その後はどうやったら上手くなれますかと色々質問攻めにあってしまった。(主に圧が強かったのは虹夏ちゃんと喜多さんだけど)

 ふんすかふんすかと鼻息荒く聞いてくる彼女達をひとまず宥めて、私は早速事前に考えていた『まず教えるならここから始めてみよう』ということを実践してみた。

 それは至極単純で、基礎練習であった。

 正直、やる内容はオーチューバーとかがやってる初心者向け動画とそう大差はない。

 ただ、動画で見るのと実際に生で教わるのは全然違うと思うし、活動を始めたばかりの彼女達だからこそ、今ここで基礎を確認するのは大事だと私は考えていた。

 ひとまず昨日は、10分くらいで出来る各楽器の基礎練習を教えた。

 私が説明しながら実際にやってみて、その様子を誰か一人がスマホで撮影し、グループロインに送ることで一つの練習教材が出来上がる。全楽器をその場でやったのは、他の人が何をやってるのか少しは知っておいた方が良いという私の持論もあるからだ。

 そして、基礎を疎かにしてはいけない事と、私も梶原店長のお店に行った時や家で練習する時も欠かさずこの基礎練習をやっていることを伝えると、皆素直に返事をしてくれた。

 いずれはこれ以外の練習用動画や毎回のスタ連や路上ライブをクラウドストレージに共有して、コメントを残しつつ何時でも皆が確認出来るようにしたいんだけど、お金がかかるからそこら辺は今後次第かな。

 こんな感じで一通りの事を教えていたら結構いい時間になってしまったので、ひとまず昨日は解散ということになった。

 終わる時もちゃんと挨拶してくれて、会ったばかりなのに皆いい子だなぁ、と思わず感激してしまった。

 

 

 

 「おはようございまーす」

 『お、おはようございます!』

 

 私がスタジオに入ると、結束バンドの皆は緊張した様子で挨拶をした。

 そんなに固くならなくてもいいのに、と思いつつも、まぁしょうがないかと思うところもある。

 なぜなら、今日は結束バンドの演奏を私に披露することになっているからだ。

 昨日の顔合わせの最後に土曜日もスタ連をやると聞き、それなら結束バンドの現状の実力が知りたいという事で演奏してもらうことをお願いした。

 これは、私としては早目に皆の実力を知った方が今後の方針を立てやすいという極めて単純な理由だ。

 けど、練習している時は元気だった彼女達は、演奏の事をお願いすると急にしおしおと勢いがなくなってしまった。

 あまりの変わり身に私が理由を聞くと、

 

「あの、実はまだ自分たちの曲が出来てなくて……」

 

 と、虹夏ちゃんが申し訳なさそうに答えた。

 たぶん、皆は私が未だに曲が出来てないことに怒るのかと思ったのかもしれないけれど、正直私は活動が浅い彼女たちのことだから起こりえる可能性の一つとしてそのことは予想していた。

 なので、特にその部分を問い詰めるということはせず、普段スタ連で練習している曲でいいよ、と答えた。

 さらに、

 

 『現状の皆のレベルを正しく知りたいだけだから、ありのままを演奏すればいいよ』

 

とも付け加えた。

 それを聞いてその時は皆少し気が楽になったようだけど、やはりどうしても自分達よりもレベルが上の人の前で演奏する緊張感は拭えないようだ。

 彼女たちがどのレベルを目指しているのかはまだ聞けていないけど、今後はもっと多くのオーディエンスの前で、それこそ自分たちの事を値踏みするような眼で見てくる人もたくさんいるわけだから、こればかりは徐々に慣れていくことを願うことしか出来ない。

 

 「では、よろしくお願いします!」

 

 準備が出来たことをフロントマンである喜多さんが代表して声をかける。

 そして、私が頷くと、演奏が始まった。

 曲はとあるバンドの曲で、アニメのオープニングにも採用されたものだ。

 知ってる曲でよかったと安堵しつつ、彼女たちの演奏に耳を傾ける。

 同時に、音源を脳内再生しつつ、手元の手帳に各々の所感や問題点をメモしていった。

 

 

 

 「はい、お疲れ様でした」

 

 曲の演奏が終わり、私が声をかける。

 結束バンドの皆は一曲演奏しただけだが、その顔には疲労感が滲んでいた。

 お疲れのところ悪いけど、まだ大事な部分が残ってるんだよね。

 

 「それじゃ、皆一回集まって」

 

 私が手招きして、皆で輪を作るように椅子に座る。

 

 「早速で申し訳ないけど、今の結束バンドの感想を言わせてもらいます」

 

 そう私が告げると、皆の顔に緊張が走る。

 

 「一言で言うと……もったいないな、と思いました」

 

 その言葉を聞いてこれから言われることを予感したのか、皆の肩がビクッと震えた。

 

 「まず、メンバー間の実力差が極端。現状だと、山田さんとその他3人って感じかな」

 

 この感想に対して、喜多さんと後藤さんはあらかじめ覚悟をしていたようだけど、一番悔しそうなのは虹夏ちゃんだった。

 おそらく、先輩としての自負はあったけど、いざ評価されると後輩と同じレベルという事がショックだったのだろう。

 けれど、私は敢えてそれを無視し、続ける。

 

 「次に、まずベースとドラムというリズム隊に分けた場合、虹夏ちゃんはリズムを作る側なのに周りに合わせようとしすぎ。安定したリズム供給は確かに大事だけど、そもそもの基礎技術が足りないから自信が持てなくて消極的な演奏になっちゃってる。もっと自分がリズムを作って引っ張るっていう意識を持たないと、ただのメトロノームになって曲が死んじゃうよ」

 「は、はい……」

 「山田さんは技術は頭一つ抜けてるけど、虹夏ちゃんとは逆で自分だけの感性で弾きすぎ。個性は大事だけど、それと自分の世界に籠るのは別っていう意識を持って一番上手い先輩として周りを支えないと、バンドとして成立しなくなるよ」

 「……分かりました」

 「次にギター2人で、後藤さんは1人でパニックになって突っ走っちゃってる。あがり症だとしたら克服するにはとにかく経験が必要だけど、スタ連に加えてそれこそ1人で路上ライブするくらいの荒療治をしないと改善していくのは難しいかな」

 「うぅ……。ぜ、善処します……」

 「喜多さんは、正直一番厳しい。カラオケなら上手いのかもしれないけど、バンドのフロントマンとしては声量が全然足りない。スポーツ選手並みに体に気を配んないとライブでの歌い方は身につかないし、経験値が一番少ないからこそ使える時間全てを練習に費やさないと足を引っ張って終わっちゃうよ」

 「……ご指摘……ありがとう、ございます……」

 

 私が一息で言うと、皆目に見えて落ち込んだ。

 初手から厳しい意見だと思う。

 けれど、相談役をやるには皆が目を背けたくなることを指摘するのが私の役目であり、なにより音楽に対して私は嘘をつきたくなかった。

 これで皆から私との関係を打ち切られても構わない。

 たとえ、それが汚い大人のエゴと思われようとも、これが私の覚悟だ。

 ……とは言え、言いっぱなしで終わるのも大人としてどうかと思うので、皆に声をかける。

 

 「はい! それでは皆さん、今の私の意見を聞いて思ったことを遠慮なく正直にお願いします!」

 

 皆が『え?』と同時に声をあげたが、手でマイクを持つジェスチャーをして虹夏ちゃんから尋ねる。

 

 「えっと、悔しいです!」

 「正直、腹が立ちました」

 「生まれてきてごめんなさい……」

 「めちゃくちゃ辛いです!!」

 

 約1名、なんかアレな感想があったけど、今はスルー。

 一拍置いて、もう一つ質問を投げかけた。

 

 「じゃあ、皆、バンドを辞めたくなった?」

 『思わないです!!』

 

 今度は皆、声を揃えて答えてくれた。

 

 「その気持ちがあれば、大丈夫」

 

 力強い彼女達の返しに、私も目を真っ直ぐに見据えて答えた。

 

 「今はまだ、他のバンドよりも劣っているかもしれない。けれど、だからといってこれからのあなた達がそのまま終わると決まったわけじゃない。昨日の自分よりも強くなることを諦めなければ、皆はもっと上を目指せる可能性を感じました」

 

 ゆっくりと、皆に私は話を続ける。

 

 「正直、一番びっくりしたのも喜多さんで、まだ始めて3ヵ月も経ってないんでしょ? それなのに、ここまで演奏もボーカルも出来るって、普通は皆羨ましがるよ」

 「そ、そうなんですか?」

 

 自覚が無かったのか、喜多さんは意外そうな表情をする。

 いやいや、そもそもギターって始めて1ヶ月で9割の人が辞めるって言われてるくらいだからね。

 コードの間違いや声の出し方といった問題点はあれど、『演奏しながら前を見て歌う』という見た目以上に複雑な動きを今の段階でそれっぽく出来ているというのは、間違いなく喜多さんは才能がある側の人間だと感じた。

 

 「課題はたくさんあるけれど、一つずつ克服すればもっと上手くなれるポテンシャルが喜多さんにあるから、自信を持っていいよ」

 「──頑張ります!」

 

 さっきとは打って変わって、目に光を宿らせて喜多さんは返事をした。

 そして、他の3人にも言葉をかけていく。

 

 「虹夏ちゃんも、ほとんど自己流で逆によくここまで身に付けたなって思った。合わせようとしすぎちゃうって事は全体を感じることが出来る良い視野の持ち主ってことだから、演奏の基礎の部分を見直すだけでも格段に良くなるはず。すぐにドラムが練習出来る環境っていうのも大きなアドバンテージだから、どんなことでも疑問を感じたら相談して」

 「お願いします!」

 「山田さんは技術的な部分で安心感があるのは大きいね。逆に言えば、指摘した皆とどう合わせるかという所だけにフォーカスすれば、それだけでバンドにとっては大きなプラスだもの」

 「色々と試してみます」

 「後藤さんは、私も経験あるけど結局は積み重ねの我慢比べなんだよね。ソロの路上ライブは置いといて、まずは皆の音にじっくり耳を傾けて、多少の弾き間違いはしょうがないって割り切っちゃう。そしてとにかく合わせることに集中して、毎回のスタ連を無駄にしないことから始めていけばすぐに感覚が掴めると思うよ」

 「や、やってみます……」

 

 私がフォローの言葉をかけると、虹夏ちゃん達も少しずつ目に光が戻るのを感じた。

 指摘するだけしてそのままってのは本人達にとって辛いだけだからね。厳しい事は今後も言うけど、音楽を嫌いになって欲しくないという思いもある。

 ……あ~! けど、言葉で伝えるって難しいな!

 情熱を持たないと伝わらないけど、だからといってそれが先行しすぎると温度差が出ちゃうし……。

 ここら辺は、私自身も色々勉強していかないとなぁ。

 

 「その上で、さっきの演奏なんだけど……」

 

 ひとまず頭を切り替えて、私はもう少し踏み込んだ改善点を結束バンドの皆と話し込んでいくのであった。




 美空さんの指摘はそれぞれが作中で言われている事を土台にしてみました。
 ただ、山田って人間性の部分は言われまくってますけど演奏の部分はほとんど言われてないはずなので、それっぽい理由を考えるのが難しかったです。
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