夢への旅路   作:梅のお酒

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 原作と違う展開を書く時は本当にこれで良いのかな……とぼっちちゃんばりの情緒不安定になりながら書いてます。


第7話

 「後藤さん、お家の人に連絡しなくて大丈夫?」

 

 STARRYを出てから少しして、藤原さんは私にそう聞いてきた。

 

 「え?」

 「ほら、晩ご飯の事とか、ちょっと帰りが遅くなる事とか連絡しなくていいのかなって」

 

 藤原さんの言葉を聞いて、私は思わず『あっ』と声を出してしまう。

 疲れで頭が上手く回ってなかったから、そこら辺の事をすっかり忘れていた。

 

 「そ、そうですね。ちょっとロイン送っておきます」

 

 私はそう答えて、急いでお母さんにロインを送った。

 藤原さんの事はまだ家族にも話していないけど、とりあえず『皆とご飯を食べて帰ります』とだけ送っておけば大丈夫なはず。

 

 「お、送りました」

 「ううん、こちらこそ急にごめんね。ちなみに、後藤さんってどこに住んでるの?」

 「えっと、最寄り駅は金沢八景っていう駅です」

 「……それってどこら辺?」

 

 どうやら藤原さんは知らないみたい。

 まぁ、ここからかなり遠いからそれが普通だよね……。

 

 「なんていうか、こう……神奈川の出っ張ってる所の根っこの海沿い部分っていうんですかね……」

 「へ?」

 

 私の下手くそな説明でも通じたのか、藤原さんは急いでスマホで何か調べている。

 

 「下北沢から一時間半かかるの!? ごめんね、そんなに遠いとは思ってなかった。あ、丁度いいからあそこでいい?」

 

 そう一息で話した藤原さんが指さした先には、お高め志向のファミレスがあった。

 

 「あ、はい。大丈夫です」

 「じゃあ、行こうか」

 

 そう言って、また私の手を引いて歩き始めた。

 な、何か、押しの強い感じが喜多さんと似ている気がする。

 やっぱり、適当に理由をつけて帰れば良かったかもしれない……。

 

 

 

 

 「いらっしゃいませ、何名様ですか?」

 「2人です」

 「それでは、こちらへどうぞ」

 

 店員さんに案内されて、私と藤原さんは4人掛けの席に座った。

 お客さんはそう多くなくて、広々と使えるのは少しありがたいかも。

 

 「ドリンクバーは頼むとして、他に好きなもの何でも頼んでいいからね」

 

 そう言って、藤原さんは私にも見えるようにメニューを開いてくれた。

 

 「ほ、本当に良いんですか?」

 「いいよ~。ハンバーグでもステーキでもデザートでも食べたいだけ食べな」

 

 いつもはソイゼみたいなお手頃価格なお店で、今日みたいなお高め系のお店は行かないからなのと空腹もあって、私のお腹が思わずグゥっと鳴ってしまった。

 は、恥ずかしい……。

 けれど、藤原さんはニコニコとお母さんみたいに笑顔を浮かべたまま待ってくれていた。

 ……ほ、本人が良いっていうから、良いよね? あまり待たせちゃうのも悪いし、良いよね?

 

 「じゃ、じゃあ。これをお願いします」

 「オッケー。あ、すいませーん!」

 

 藤原さんが近くにいた店員さんに声を掛けて、注文をしてくれる。

 私が頼んだのはハンバーグ、ご飯、サラダ、コーンスープも付いてるフルセットメニュー。

 藤原さんはパスタとサラダのセットを頼んでいた。

 い、いつもよりお腹がすいてるとはいえ、やっぱり注文しすぎたかな……?

 

 「あの、ありがとうございます。ご馳走になっちゃって……」

 「気にしないでいいよ、誘ったのは私だし。あ、それと後藤さんは何飲む?」

 「え、あ、コーラで」

 「了解~。取ってくるからゆっくりしてて」

 

 そう言って、藤原さんはドリンクバーに向かっていった。

 って、私のバカ! そこは気を利かせて私が取りに行くところでしょ!

 何かもう、色々と駄目だ……。今日だけでまた自分の駄目な所がいっぱい浮き彫りにされていく……。

 藤原さんの中では私の評価ポイントがどんどん下がってるんだろうな……。

ギターも下手くそな上に気の利かないミジンコでごめんなさい……。

 

 「後藤さん、大丈夫?」

 

 私がウジウジしていると、自分の分と一緒に飲み物を取ってきてくれた藤原さんが心配そうな表情をしていた。

 し、しっかりしろ私! あまり変な所を見せすぎて藤原さんが結束バンドとは付き合えませんとかってなったら一大事だぞ!

 

 「だ、大丈夫ですよぉ、ふへへ……」

 「そう? じゃあ、ひとまずお疲れ様~」

 

 変な笑い方をしちゃった私を特に気にせず、藤原さんは乾杯をしてくれた。

 あ、これって陽キャっぽいことやってるかもしれない。

 ちょっと憧れていた仕事帰り(?)の乾杯に、私は嬉しくなりながらコーラに口を付けた。

 喉がカラカラだったから、なんかすごく美味しく感じる。

 

 「今日の練習、大変だった?」

 

 私がグラスをテーブルに置くと、藤原さんが問いかけてきた。

 

 「えっと、そうですね……。普段より集中してすごい疲れましたけど、充実感もすごかったです。皆で休んでる時も、上手くなれた気がしたって話してました……」

 「……そっか。そう言ってもらえると嬉しいな」

 

 私が答えると、藤原さんはどこか儚げな笑顔を浮かべた。

 ……なんだろう、今まで見せてた笑顔とはちょっと違う気がする。

 

 「あ、それと後藤さん、よくMetallica知ってたね」

 「は、はい?」

 

 私がちょっとした違和感を覚えた後、藤原さんはすぐにパッと表情を明るくして別の話題を振ってきた。

 

 「ほら、私が皆の前で演奏した時に曲名言ってたじゃない」

 「あ、えっと、ネットで『ギターソロ かっこいい』とかで検索して色んな曲を聴くのが好きなんです」

 「私もやるやる~。いや~知ってる人がいて嬉しかったよ~」

 「藤原さんは、洋楽が好きなんですか?」

 「思い入れがあるのはそうかな。ただ、基本的には音楽に貴賎なしだと思ってるから、邦楽もクラシックも、ゲームの音楽とかも聴いたりするね」

 「やっぱり、色んな音楽を聴いた方がバンド活動に活かせるんですか?」

 「全部が100%そう、とは言わないけどね。けれど、色んな音楽を聴いた方が聴いた時はしっくりこなくても、後から他の音楽を聴いた時に化学反応が起きて新しい曲に繋がったりすることはあるよ」

 「な、なるほど……」

 

 他にも教えてもらった方法以外の練習のやり方とかも聞いてみると、藤原さんは嬉しそうに答えてくれた。

 あれ? もしかして今、私って普通に会話できてる?

 藤原さんが話しやすい空気を作ってくれてるのはあるけど、あまり変にアレコレ深く考えずに会話ができるって事がなんかすごい嬉しい……!

 こ、これなら、もう少し聞きたい事聞いても大丈夫かな?

 

 「あの、藤原さんはどうしてそんなに演奏ができるようになったんですか?」

 「う~んとね……」

 

 藤原さんは少し目線を上にして、首を傾げながら考えた。

 

 「私、小学生の半ばから高校1年の1学期まで父親の仕事の都合でアメリカで過ごしてたんだ」

 

 ……は?

 

 「その時にクラスメイトがMetallicaを勧めてくれて、この曲を演奏できるようになりたいって思ってギターを始めたの。後は友達やその家族とかからギターの事以外にもベースやドラムの事も習いながらバンド活動をして、って感じかなぁ」

 

 想像の斜め上を行く答えに、私は固まってしまった。

 な、何その陽キャを通り越した漫画の主人公みたいな話!?

 美人さんの上にそんなかっこいい経歴だなんて、私みたいな陰キャコミュ障が会話させてもらうだけで恐れ多いのに……!

 

 「後藤さんは、どうしてギターを始めたの?」

 「ぶえ!?」

 

 青春コンプレックスに爆発しそうになってると、今度は藤原さんが質問してきた。

 こ、この流れで私のギター始めた理由を言うのは地獄すぎる!!

 けど悲しいかな、私のオツムじゃ上手くごまかせる理由が思いつかない……。

 

 「わ、私は……、テレビで人気バンドのメンバーが昔は暗い人間だったって話を聞きまして……。それで、だったら自分もギターを始めれば輝ける人間になれるのかなって思って始めたんです……。けど、藤原さんとは真逆で結局友達も作れなくて、バンドも組めないまま中学まで過ごしました……」

 

 自分で言ってて涙が出そう……。

 藤原さんもリアクションしづらいだろうし、きっと呆れてるんじゃないかな……。

 

 「私も、最初から上手くいったわけじゃないよ」

 

 え?

 想像とは違う返答に顔を上げると、藤原さんは優しい笑顔でこっちを見ながら話を続けた。

 

 「引っ越したばかりの頃は英語が喋れなくてね、学校でもずっと1人で過ごしてた。けど、たまたまクラスメイトが音楽を勧めてくれて、下手くそな英単語とジェスチャーで必死に感想を伝えたら、友達の輪に入れたの」

 

 言われてみれば、そうだ。小学生の頃なんて英語の授業なんてまだそこまでやってないだろうし、そんな中海外に引っ越ししたらコミュニケーションは大変なはず。

 藤原さんだって、大変な思いをしているはずだったんだ。

 

 「きっかけがあれば、人は変われるよ」

 

 黙って聞いていた私に、そう諭すように言ってくれた。

 その言葉は、不思議と私の心の中に染み込んでいくのを感じた。

 

 「それに、後藤さんは今はバンド活動もバイトも頑張ってるじゃない。ギターもバイトも、始めてすぐ投げ出しちゃう人だっているんだから、もっと自分に自信を持って大丈夫だよ」

 「……ありがとうございます」

 

 私は、そう返事するのが精一杯だった。

 今までそういう風に考えたこともなかったし、暖かい言葉にさっきとは違う意味で泣きそうになるけど、ここで泣いたらせっかく励ましてくれた藤原さんに申し訳なくなっちゃう。

 

 「お待たせしました~」

 

 ここでタイミング良く、店員さんがご飯を運んできてくれた。

 

 「あ、来た来た。ごめんね後藤さん、説教臭い話になっちゃって。冷めない内に食べようか」

 「は、はい」

 

 たぶん、藤原さんは私が涙ぐんでいるのに気づいていたのかもしれない。

 けれど、それ以上は何も言わないで、一緒にご飯を食べてくれたのが嬉しかった。

 

 

 

 

 それから、私と藤原さんはご飯を食べながら色々お話をした。

 どんなバンドが好きだとか、かっこいいギターソロの曲はどれだとか。

 藤原さんが知ってて私が知らない曲を教えてくれたり、逆に私が知ってても藤原さんが知らない曲を教えたりもした。

 オーチューブで曲を検索して、こんな感じの曲だって教えあって、英語の歌詞の和訳を教えてくれて、新しい発見があるのが楽しかった。

 藤原さんは本当に楽しそうに話をしてくれて、年上のお姉さんというよりかはまるで同級生と話をしているみたいで、ご飯を食べ終わった頃には最初の緊張感はすっかりなくなっていた。

 そうして、ご飯を食べ終わって私が3杯目のジュースをおかわりしたあたりで、ふと疑問が湧いた。

 

 「あの、藤原さん」

 「うん?」

 「えっと、お話ってこういうことだったんですか?」

 

 私は、今になって感じた事を質問した。

 正直、あまり私と2人だけで会話しなくても大丈夫な話っぽいと思ったんだけど……。

 

 「……そうだね。実は、聞きたいことがあったの」

 

 藤原さんも飲み物のグラスを置いて、今度は真剣な目をしながら私に問いかけてきた。

 

 

 

 

 「後藤さんって、ギターヒーローじゃない?」

 

 

 

 

 氷にヒビが入る様な音が、私の頭の中に響いた。




 美空さんにラーメン全増しトッピング並みの設定が明かされていく。
 これくらいじゃないと結束バンドのコーチ役は出来ないんじゃないかと思いました。
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