【カオ転三次】連木で腹を切る   作:苺ベリー

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ライドウ、リマスターで復活!




7話

 

 

部屋というものは、不思議なものである。

 

その場に居る人によって、有り様すら変わっていくのだ。

通い慣れた一室だというのに、知らない人が居るだけで、まるで知らない場所に来たような気分になってしまう。

 

現在、『オカルト研究部』の部室である旧理科室は、ピリッと張り詰めた空気が広がっていた。いつもの、ぬるい空気とは違う空気がそこにはあった。

 

目の前に座る少女へと視点を転じる。

 

カーテンの隙間から刺す陽光に照らされて、鮮やかな稲穂色の髪。凛とした美貌。民衆の上に立つべき人と思わせるようなカリスマ性を感じさせる。

 

それが、目の前の少女『乃木若葉』である。

 

「コーヒーにミルクとお砂糖は?」

 

「お願いします」

 

栞は、最近導入したばかりのコーヒーサイフォンを使い、人数分のコーヒーを淹れる。

 

それを千景が、緊張気味にお客様の前へと運んだ。それに対して、真っ直ぐに一本の芯が通った姿勢を崩さずに座礼が返って来る。

 

「コーヒーどうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

思わず、千景も姿勢を正した。

 

「確認をさせていただきます」

 

「貴方は、私達に依頼をしたいということでよろしいのでしょうか?」

 

眼前の少女に釣られるように栞の姿勢もピンと伸びる。

いつもの3割増で美少女オーラを出している。それに当てられて、千景はメロメロである。

 

「はい、皆さん『オカルト研究部』へ依頼したく伺わせて頂きました」

 

「そう、ですか」

 

栞は目を細めて相手へ視線を投げる。

数秒間、見詰めた後に大きな溜息を零す。

 

「乃木若葉さん。

 貴方は、あの『乃木』でいいんですか?」

 

「……はい」

 

その問答は、一般の人間には意味のわからないモノだ。

しかし、栞と若葉の間には明確な符丁として成り立っているのだろう。取り敢えず、千景もそれっぽい顔をしておく。

 

そんな3人を横目に犬吠埼風が、千景へと耳打ちをする。

 

「のぉ、千景さんや」

 

「なんですか?風さんや?」

 

「あの『乃木』とは、なんのことかのぉ?」

 

「わたし も わかんない」

 

えっ?コイツあんな「知ってます」みたいな顔してたのに!?みたいな目でコチラを見てくる犬吠埼風の視線を微風のごとく受け流して、千景はそれっぽい顔を継続した。

 

「こほん、香川全域の霊的自治を担う【大赦】

 その政治中枢を担う乃木家の御令嬢が、何故此処を訪れたのかお聞かせ下さい」

 

「貴方なら、私達に頼らずとも大赦の人間を動かすことは可能でしょう」

 

まるで、魔女のような冷たい声が響く。

柔和な笑顔ではなく、少し意地の悪い顔をしていた。

千景はそんな顔もステキ……ってドキドキしている。

 

「これから、話す依頼には大赦の力を借りることも、乃木の力も頼れません。私は大赦の乃木としてではなく、乃木若葉という個人としてこの場にいます」

 

「……なるほど、分かりました」

 

若葉の言葉を聞いて、栞は静かに目を瞑る。

小さく息を吐いて、自分のマグカップへと手を伸ばした。その動作に合わせて、若葉もコーヒーを舐めるように一口飲んだ。

 

「のぉ、千景さんや」

 

「何ですか?風さんや?」

 

「話についていけないんじゃが?」

 

「ふむ、そうですな。

 大病院の院長の娘が、実家を通さずに町医者に駆け込んできてる感じじゃよ」

 

「おぉ、なるほど」

 

ウムウムと頷きながら、チラリと乃木若葉の方を2人で見る。なんか困った顔で頬をかいている。そんな様子を見て内心では、『むっ、この娘顔が良いな』なんて考えながらも、千景はキリッとした顔に戻った。

 

「んんっ!改めて依頼の内容をお聞かせ下さい」

 

「オカルト研究部部長として、御園栞が伺います」

 

「……お気遣い痛み入ります」

 

若葉は、深々と座礼を行う。

3秒間たっぷりと頭を下げた後、また姿勢をピンっと正して、口を開く。

 

「呪いを解いてほしいのです」

 

「呪いですか」

 

「見て頂ければ、早いかと……」

 

そう言って、少女はワイシャツのボタンを外し始める。

その行動に思わず悪い顔を崩して、栞は手をワタワタと動かして千景へ助けを求めるように視線を向ける。しかし、千景はカワイイ……!って視線を返すだけで役には立たない。

 

そうしている内に、ボタンが全てが外された。その季節感を間違った長袖を脱げば、キャミソールの首元からは、赤黒い火傷を負ったように爛れている。

 

「……っひ……」

 

「っ、それは……?」

 

その服に隠されたモノは、少女の美しい柔肌などではなかった。その肌は、蛇の鱗のように赤黒く爛れていた。その爛れた皮膚からは、僅かに出血も合ったのか凝固した黒い瘡蓋が痛々しく残っている。

 

「呪い、呪いですか」

 

千景は『せっかくの美人さんなのに勿体ない』という、何とも現金な理由と、傷付いた少女への同情によってちょっとだけヤル気になっている。

 

年頃の少女にとって、この疵は見せることすら怖い物だろう。それを見ず知らずの自分達に見せるということは、それほど解決したいと願っているのだろう。

 

「栞先輩、代わって貰ってもいいですか?」

 

「千景さん?

 乃木さんは構いませんか?」

 

今回の依頼は郡千景という個人が動くべきなのだろう。

 

態とらしく所属と立場の確認を行い、自身の所属する組織との関係性を否定してまで、この場にいるという事は、彼女にとって『オカルト研究部』への立ち入り自体が、リスクになるということだろう。

 

そこまで、理解していて子供に無理をさせるのは忍びない。そう思うのが人情というものだろう。

 

「は、はい、お願いします」

 

「微力ながら、御協力させてもらいますね」

 

無駄な思考を一度リセットして、眼前の少女へと集中する。実験台に肘をついて身を乗り出すようにして、無遠慮に鱗のように爛れた皮膚をまじまじと見る。

 

「何か、わかりますか?」

 

ぎこちなく硬い声で、千景へと問いかける。

流石にまじまじと肌をみられるのは、恥ずかしいのか僅かに視線を泳がせている。

 

「何処かで、ヘビでも虐めました?」

 

「いえ、そのようなことは」

 

ふむ、そんなふうに声を出して顎の下を撫でる。

お巫山戯の雰囲気から、少々真面目に目の前の少女『乃木若葉』を見つめてみる。

 

「少し視ますね」

 

「はい、お願いします」

 

チャンネルを切り替えるように、視点を変える。

 

瞬間、視界が明るく照らされる。

朝焼けの空のような黄金に燃える。

光源は、眼前の少女だ。

 

炎に包まれた乃木若葉の姿があった。

 

「おぉ?ふむふむ」

 

視界に映るのは、金色の炎に身を焼かれる少女。

炎はまるで翼のように若葉の身体を覆い隠し、その身を浄化するように火に包む。まるで、呪いを食らうように焼いている。

 

「何かとせめぎ合っている?

 蛇の呪いはある。でも、これは蛇を啄む鳥?」

 

千景が、霊視を行い見えたものを口に出す。

その言葉の中に何か思い当たるものであったのか、若葉は僅かに身を竦めた。

 

「千景さん、それは【魔女の目】ですか?」

 

「いいえ、専門家に比べれば手習いものです。

 

 もう少し詳しく見てみますね」

 

目を凝らす。

心を澄ませて、心を空にする。

目ではなく直感に任せるように世界を捉える。

 

空いた心に招き入れるように、若葉から発せられる情報を己の内に受容する。それを細かく分類分けし、ラベリングを施していく。

 

「『黄金の炎』『赤い翼』『蛇を啄むもの』」

 

「……ガルーダ?

 いや、そんな大物なわけないし……」

 

乃木若葉を包む炎は、それ自体には悪性であるとは思えない。破邪、病除、守護、そういった神徳とされる物の在り方が強く定義されている。炎というものは、古来より『破壊と再生』の象徴であった。

 

ならば、この乃木若葉を包む炎は『再生』の類だと考えるのが妥当であると、千景は結論付ける。

 

だとしても、あまりにも弱々しい。

仮に予想通りの存在が、加護か何かを与えているならば、この学校諸共に本能寺にされている。

 

おそらくは、分霊の分霊の分霊位まで劣化しているか、そもそも見当違いなのだろう。

 

「逆に蛇の方は全然見えないし」

 

「んー、違うのかな?

 小さくて見えてないだけの可能性もある?」

 

ガタンと音を立てて、千景は四角い椅子から立ち上がる。そのまま、若葉の下に向かう。立ち上がろうとした若葉の肩を押さえて、座った姿勢のままにする。

 

「乃木さん、私の目を見てください」

 

「は、はい」

 

若葉の頬に手を当てて、アメジストの瞳を覗き込む。

栞先輩と同じ色だなぁ、なんて考えながらも千景と若葉は視線で交わる。

 

視るという行為は、受容する行為である。

目という入力器官を通して、外界を認知し、自身の内に取り込む門である。

 

「少し、我慢してください」

 

これは、その応用である。

目を逸らさせないように、頬に手を当てて瞼を指で開く。

相手の視覚という入り口から不正に侵入する。

 

相手に郡千景()を受容させる。

 

「……っ……っ!」

 

眼球から脳へ、脳から精神へ、精神から霊へ。

その中身に触れ、撫で回して形を確かめる。

自分の霊の保護等の技術を持たないのか、触れたそこは柔らかく剥き出しの感触を錯覚させる。

 

その柔らかな中身を掻き分けて、乃木若葉の奥底まで無遠慮に触れて、深く深く奥へと潜って行く。

 

そして、黒い鱗の蛇と目が合った。

 

「ぁ、ぅっ……」

 

「うん、奥に隠れてますね。

 奥に逃げて出てくる気がない感じですね。

 

 もう大丈夫ですよ」

 

「っ、はっ……ぁ……っ!はぁっ!はぁっ……!」

 

若葉は、呼吸をすることを思い出したかのように大きく息を吸って、自分の胸元を確かめるように触れる。

 

「はい、分かりましたよ」

 

「千景さん、分かったんですか?」

 

不安そうに成り行きを見守っていた栞が、心配そうに若葉に視線を送りながらを問い掛けてくる。

 

「ちゃんと分かりましたよ

 えーっと、香川だと【土瓶神(トンボカミ)】が一般的かな?

 呪われていると言うより、取り憑かれてますね」

 

「と、トンボカミ?」

 

椅子にちょこんと座って静かに成り行きを見ていた犬吠埼風が、小首を傾げて千景の言葉をオウム返しに聞き返す。

 

「はい、説明しますが……

 その前に乃木さんは大丈夫ですか?」

 

「はい、問題ありません」

 

青褪めて、冷や汗を滲ませる若葉を見れば、問題無しとはどう考えてもありえないのだが。本人は依然と振る舞い、声には出さない。

 

「んー、流石に霊視ニキみたいにはいかないかぁ」

 

「霊視……にき?」

 

「何でもないです。

 取り敢えず、乃木さんは無理せずに甘い物どうぞ」

 

スクールバッグから、キャラメルの入った箱を手渡す。

若葉は、大人しく受け取ってキャラメルを一つ口に運んだ。

 

「では、食べながら聞いて下さいね」

 

「今、霊視によって見えたのは『蛇』

 淡く黒い鱗に金の首輪をした蛇でした。

 

 類推するに【トウビョウ】と言われる悪魔です」

 

千景は、席には戻らずに教室の黒板の前へと移動する。そこに霊視によって得た【トウビョウ】のイメージを絵に起こす。それは、やけに可愛らしくデフォルメされた首輪付きの黒蛇であった。

 

「【トウビョウ】というのは、願望成就の儀式によって人為的に生み出される存在です」

 

「土瓶に蛇を入れて、神を祀るように大切に育てて、蛇の死後に守護神として守ってもらうって感じのヤツですね」

 

「使い魔のようなものですか?」

 

「まぁ、そんな感じです」

 

トウビョウの簡単な説明に対して、栞は『使い魔』と聞き返す。それは、魔女としての意見から来るものだろう。

 

「でしたら、何故乃木さんの身体を傷付けるのでしょうか?」

 

「おそらくですが、身体に付いている痕と火傷のような傷には、それぞれ別の原因があると思います」

 

「別の原因ですか……」

 

千景は原因自体には大凡の見当はついている。

あとは、それを確かめるだけで良いのだが、その方法に少々問題があるのだ。とはいえ、ここまで来てしないのも心残りが出来てしまいそうだ。

 

「乃木さん、その呪いの正体を調べるために協力してください」

 

「っ、わかりました」

 

若葉は、僅かに身を強張らせる。

その様子に「さっきので怖がらせちゃった」と内心で反省しながら、出来るだけ優しく声を掛けながら、そっと近付いていく。

 

「大丈夫ですよぉ、痛くないからねー」

 

若葉の手を取り、しっかりと診る

鱗のように爛れた皮膚に触れる。

傷自体は真新しく化膿した様子や、皮膚病のような特徴はない。どちらかというと、あまりにも疵が綺麗に整いすぎている。

 

「少し我慢してねー」

 

千景が抱き締めるように引き寄せて、若葉の首筋に顔を埋める。そのまま肌に鼻先を触れさせて、ゆっくりと胸元まで降りていく。

 

少女特有の甘い香りと、僅かな汗と鉄錆びた血の香り。

 

「っ……!」

 

「大丈夫、痛くしないから」

 

鎖骨の下に口付けをするように唇を触れさせる。

汗と僅かに血の滲んだ肌へと、千景は赤い舌を這わせた。

 

血とは多くの情報を含んでいる。

その人間の健康状態であったり、遺伝子の配列による要素。そして、それら以上に【血】というのは霊的に人物を写し出す。

 

その血の中から情報を引き出す方法は、科学的なアプローチではなく、もっと原始的な方法だ。

 

「この野性味のある味わい、ピリッと舌先で痺れるような辛味、鼻の奥をスーッと抜ける爽やかな香り……!」

 

ガイア連合という組織に所属する一部の人間の中で、マイナーながらも広まっている【悪魔食】という文化がある。ピクシー、ジャックフロスト、エンジェル、等の【悪魔】を食べるというだけの話なのだが。

 

しかし、この【悪魔食】は奥が深い。

 

甘味、塩味、酸味、苦味、うま味、これらを五味と呼ぶ。

しかし、覚醒者という存在は味覚を取っても超人的である。五味に加えて、新たな味覚を獲得しているのだ。

 

郡千景もまた、【悪魔食】を嗜むことがある。

怖いもの見たさに食べては、お腹を壊して『二度と食べない!』と決意しては、ジャックフロストにイチゴシロップを掛けて丸かじりしたり、ピクシーをガブガブしてみたりと繰り返してきたのだ。

 

その経験から、導き出される答えは───

 

 

 

 

 

「これは、テング・フレーバー!」

 

 

 

 

 

 

 





(こおり) 千景(ちかげ)
覚醒者:LV-26

ちゃんと修行をして覚醒したタイプなので引出しは色々あるタイプ。内丹術、現代魔術、陰陽術、その他色々な技術や学問を浅く広く修めている。その中でも得意なのは、気功術(房中術)である。

ミナミィ「覚えの良い子でした……❤」
殺生院「丹田に力を込めるのです……!」


御園(みその)(しおり)
覚醒者:LV-1

霊能力者としては、才能がない。
本当に才能がないので、呪われた人を見ても「傷痛そう、大丈夫かなぁ?」くらいの情報しか得られない。

ちなみに、身長169cmのFカップ(B88)である。
本人としては、スタイルの良さが少しコンプレックス。なので、私服などは体のラインが隠れるような服を好む。

でも、中学生なのでジャンルは【ロリ】なのだ。
そう、中学生は【ロリ】


犬吠埼(いぬぼうざき) (ふう)
覚醒者:LV-1

良くわかんないけど、怖いから大人しくしてた。
ホラー耐性がミジンコ並みである。

怖いなぁって見守ってたら、千景がお客さんの首筋をペロペロし始めてビビってた。えっ?何してんのこの子……?ってなってた。


乃木(のぎ) 若葉(わかば)
覚醒者:LV-2
成長傾向:力・速
年齢:14歳
出生:6月20日 
身長:163cm 
耐性:━
スキル:【突撃】

地方霊能自治組織【大赦】に所属する少女。
大赦内部において非常に有力な名家である乃木家の令嬢でもある。また、有名な大天狗の血を汲む家系でもあり、血統書付きの良い母体である。

基本的には、修行のために山奥で生活し俗世と関わらないように育てられている。1年の半分以上は山奥で生活しており、学校の出席日数は大赦の方で何とかしている。

しかし、効率的で機能的な修行法の確立が成されていないため、星霊神社でちゃんとした修行をした事がある人間なら、多分困惑するような修行をしている。「えっ?霊地でもない山に籠もっても意味なくない?まぁ、でも緑は心を癒してくれるからなぁ……うんうん」くらいの修行をしてる。

とはいえ、勇者部所属の結城友奈と比べると実戦経験に欠けるため、異能者としての格は落ちる。

千景曰く、テング風味

〈悪魔食について〉


「ヒーホー!かき氷シロップは全部同じ味だホ!オイラは食べても美味しくないホ!シロップが原因じゃないホー!?ザラメを擦り付けないでほしいホー!!!」
「こんにちは、お姉さん。私のこと捕まえて、どうするつもりなの?え?食べる?わわ、どうしよどうしよ!あわあわ」

サバイバルビュアー!!!

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