【カオ転三次】連木で腹を切る 作:苺ベリー
想像していたよりも多くの人に読んでいただけて、小躍りしてました。
感想、お気に入り、評価、感想、そして、感想。ありがとうございます。めっちゃ嬉しいです。
大暑の候。
ジメジメとした梅雨が開けたと思えば、気が付けば盛夏を過ぎて、日増しに暑さは増し、もはや暴力的ともいえる日差しの下、うだる熱気の中を涼しげに歩く少女が1人。
その少女は、長く美しい濡羽色の髪を腰の位置で揺らし、鼻歌を歌いながら歩く。
少女の通う学校までは、自宅から学校までの通学路には桜並木が続くが、可愛らしいピンクの花弁はもう昔に散っている。今は、青々とした生命力の溢れる若葉を見せつける。
少女が通う学校は、特別な事情がない限り生徒全員に部活動への所属を強制している。
少女も例に漏れず、そういった活動には参加しているのだ。
名前は『オカルト研究部』
名前のとおり、オカルトと言われるモノについての研究をする部活。部員は私ともう一人が居るだけの小さな部活動だ。部活動の最低人数を割っているが、何故か、御目溢しをされている。
同好会が割り当てられた場所は、新校舎が建てられてから使われなくなってしまった旧校舎の二階にある旧理科室だ。旧校舎は戦後に建てられた歴史ある建築物で、旧校舎への道も狭く石畳に舗装されている。
歩き辛い石畳の道を5分程歩いていくと、戦後の近代建築の様相を見せる旧校舎が見えてくる。
近づけば、ドラマの撮影に使えそうな程の歴史を感じさせる校門を抜けて、使われなくなって久しい下駄箱に靴を入れ、内履きに履き替えて、綺麗に清掃された古びた床板を踏めば、僅かに軋みを上げる。
木製の古びた扉に向けて、3度ノックを行う。
───はい、どうぞ。
凛とした芯の通った声が入室の許可を出す。
その声を聞いてドアノブに手をかける。ドアノブはネジが緩んでいるのかカタカタと音を鳴らす。
「ごきげんよう、千景さん」
「おはようございます、栞先輩」
ドアを開いた先は、少し狭い作りになっている理科室の面影を残す木製の棚や、フェノール樹脂製の実験台と四角い椅子が整然と並んでいる。
しかし、目を引くのは部屋のあちこちにある変な文字や、魔法陣の様な文様が描かれている。
その部屋の片隅にカーテンの隙間から陽光に照らされる少女が一人。オカルト研究部の長である『
一際目を引くのが、腰まで伸ばした白銀の髪だ。陽の光に照らされて月のように煌めく。そうやって見惚れていれば、手元の本へと送られていた視線を此方に向ける。アメジストのような美しい瞳と視線で交わる。
まさしく、花の顔と言うに過言はない。
「はわわ、スーパー美少女……!」
「ふふ、貴女もね」
そう、彼女こそこの部活に所属している理由なのだ。下世話な話だが、一目惚れである。こんな美少女と二人っきりで部活動をするなんて、夢のような青春だろう。彼女に会うために、放課後だけ学校に顔を出してる日もあるくらいだ。
しかし、そんな彼女の視線を独占していたのは、一冊の本だ。ブックカバーの掛けられた大きめの本がある。
「今日は、何読んでるんですか?」
「初心に帰ってG.D.ですよ」
「なるほど、オカルティストの初歩ですからね」
「そう言うことです」
本から視線を上げて、くつくつと少女は喉を鳴らす。そういった所作の一つまで絵になるような育ちの良さを感じさせる。
そして、栞はコホンと咳払いを一つ。
「チカゲくん。
私達は、2人だけとは言えどオカルト研究部です。学校に認められた活動をしているからには、何かしらの活動の成果を出さなければなりません」
「えぇ、理解しています」
「なので、これをします!」
栞の手には、折りたたまれた1枚の紙があった。広げると、ひらがなの五十音表が書かれている。そして、その上に鳥居がかかれ、その左右には『はい』『いいえ』の文字だ。
「……コックリさん、ですか?」
「はい、どうぞ」
キラキラとした瞳で、1枚の紙を差し出してくる美少女に若干気圧されながらも、その紙を受け取る。手にしてみて分かるのは、この紙は少し日焼けしているということだろう。折り目も何度も開かれたのか、強く曲ができている。
「なるほど、また依頼ですか」
「はい、同じクラスの方です」
このオカルト同好会の長である栞は、俗に言うところの『見える人』である。本人もそれを隠すことなく公言しているが、多くの人間は当然ながら本気にはしていない。
「依頼者は?」
「もう少しで来るそうですよ」
しかし、いるところには居るもので、本当に困っている人が彼女の噂を聞きつけて相談や依頼に来るのだ。正しく、藁にも縋ると言うやつなのだろう。
「それで、どうするつもりですか?」
「どうするとは?」
「本物だった場合です」
そう、彼女は『見える人』
それは、本物の幽霊等の存在の証明である。
「その時は、私が何とかします。
私は、御園栞なんですから」
「……はぁ、そうですか」
強い信念と決意の籠もった声に、投げやりな返事を返してしまう。
【御園】
この名前を聞けば、地元の人間は目を逸らす曰く付きの名前だ。この地に古くからある名家とされ、呪われた血筋、穢れた一族、供犠の一族、魔女の一門だとか。
馬鹿馬鹿しい風評被害を受けている一族だ。
その風評は、学校ぐるみでハブにされてる自分の耳にも入るほどだ。
「あっ、もう来るみたいですよ」
「ん?あの子ですか」
理科室の窓から、二人組が見える。
二人共見慣れた制服姿の少女だ。
角度の問題で、顔付きは見えないが何方が依頼者は一目で理解できた。
「一応、貴女の先輩ですからね?」
自分が不思議そうにしているのに気付いたのか、補足するように栞は説明する。
「あぁ、『同じクラスの方』ですもんね。その方とは仲が良いんですか?」
「ふふっ、今日初めてお話しました!」
「おぉ!小さな一歩ですが、我々にとっては大いなる一歩ですよこれは!」
そんな風に話しながら、栞は制服の裾を正してピシっ背筋を伸ばして、来客をまっている。
しばらくして、理科室のドアに控えめなノック音が響いた。
「どうぞ」
「しっ、失礼します!」
「……失礼します」
怖ず怖ずといった様子で、2人の来客はやって来た。一人は日焼けた肌が快活な印象を与える。もう一人は、なるほどと納得する。
この子が、依頼者だろう。
頬は痩け、深い隈ができ、腰まで伸びる茶髪を二つ結にしているが、その髪には艶はなく、白い肌は美しさではなく病的と言うべき白さだった。袖から見える手首は、骨と皮といった状態だ。
「いらっしゃい」
「わ、私は外で待たせていただきます!」
快活そうな少女は、酷く怯えた様子で深々と頭を下げる。そのまま、慌てて部屋の外へと逃げるように出ていった。
「……失礼な方ですね」
「仕方ありませんよ」
出て行った者から、改めて依頼者へと視線を向ける。彼女は、部屋の異様な雰囲気に気圧されてるのか、眼球が忙しなく動いている。
そんな依頼者に向けて、栞がパンと柏手を一つ鳴らす。
「大丈夫ですか?」
「っ……!す、すみません!あの子、こういうのって苦手みたいで……!」
「構いません。
さぁ、お掛けになって」
依頼者は、栞が促すままに向かい合うように椅子に腰掛けた。
「初めまして。
私は、御園栞です」
「あ、
えっと、そちらの方は……?」
「郡千景です。
自分は助手のようなものです」
想像していたよりも、依頼者は冷静なようでしっかりと会話が成り立っている。ただ、犬吠埼と名乗った少女は、聞いた話では中学生とのことだが、まるで老婆と見間違ってしまうような姿をしている。それは、容姿の問題ではなく、活力を感じさせないからだろう。
「では、早速ですが依頼の内容に入りましょう」
「あっ、はい。
あの、信じてもらえないかもしれないんてすけど……。
コックリさんが帰ってくれないんです」
「……ふむ、なるほど」
窶れた少女は、不安気にそう言った。
そして、今も周囲をチラチラと見回して、怯えを見せている。
「コックリさんに限らず【召喚した存在が帰らない】というのは、召喚術の失敗としてはよくある類です」
「特に、素人が聞きかじった知識で儀式を行って、重要なプロセスが抜け落ちていたり、禁忌を行ったりと、要因は様々です」
「あの、私はどうなるんでしょうか?」
「それを知るために、貴方の話を聞かせてください」
「話し、ですか?」
「はい、貴方が行ったコックリさんについて」
「わ、わかりました」
まるで、医者が問診を始めるかのような空気に、窶れた少女は困惑しながらも居住まいを正した。
「先ずは、コックリさんを行ったのはいつ頃ですか?」
「えっ、えっと、ちょうど1週間です」
「それは、何時に何処で何人で?」
「放課後の学校の教室で、私と友達の3人です」
「なるほど、ご友人の体調はどうですか?」
その質問に僅かに考える素振りを見せて、怖ず怖ずと唇を震わせながら、犬吠埼風は言った。
「さ、3人とも、もう……」
その言葉を絞り出して、目尻に雫を光らせ、その窶れた身体を震わせ始める。
「おそらくですが、召喚された何かに貴方の命を吸われているのだと思います。
このままにしていれば、遠からず貴方も死にます」
栞が、淡々と自身の推察を述べているのを横目に、窶れた少女を視る。物質的な面だけでなく、より深い場所を覗いていく。
「そ、そんな!どうにかならないんですか!」
「私が、死んだら、妹が1人に……」
犬吠埼風という少女から繋がる縁を視る。
それは、一本の糸のように何処かへと伸びている。この簡易的な結界の外にいる小さな何かに、母子を繋ぐへその緒のようにその存在の為の栄養を供給している。
「落ち着いてください」
これは、召喚の失敗などではない。
召喚は間違いなく成功している。
契約は正しく成立している。
なんの力もない一般人が、悪魔との契約をしてしまっている。分不相応な存在を使役している代償が、その生命を直接食われているというところだろう。
「方法はあります」
「あるんですか……?」
「はい、その為には貴方の協力が必要です」
そんな事を考えながら、ボンヤリと窶れた少女を見ていれば、隣からバンっと大きな音が響いた。机には、A4サイズの五十音表だ。
「もう一度、コックリさんをします。
正しく召喚を行い、正しく退散させます。
儀式を完了させるんです」
「ぁ、あれをもう一度……」
窶れた少女は、酷く怯えた様子で俯く。
少女にとっては、友人を失って、自身の命も危うくなった儀式をもう一度しろと言うのだ。怯えるのも仕方ないだろう。
「大丈夫です。
貴方に怖い思いはさせません」
栞は、ハッキリと言葉を言い切ってから椅子から腰を上げて、窶れた少女の隣に向かう。床に膝をついて、視線を合わせてから、優しく抱きしめる。
「大丈夫、大丈夫です」
「わ、私、やります」
窶れた少女は、犬吠埼風は、小さくも確かに言葉をこぼす。
「必ず助けますから」
犬吠埼風の言葉に何よりも栞は嬉しそうに微笑んで、風の背中をポンポンと優しく撫でてから離れる。
「さっ、チカゲ君!
準備を手伝ってください。
先ずは、場の浄化です」
「了解です」
最初に、窓とドアに暗幕をかける。
次は、部屋の隅にあったダンボールを広げる。五芒星を円で囲った魔法陣が赤黒い何かの液体で描かれた、それを部屋の中心に置き、それぞれの角の延長線上に合わせて蝋燭を立てていく。
そんな事をしている千景の横で、栞は銀製のカップを用意し、少量の水をペットボトルから注ぐ。それとレターナイフを手に魔法陣の上へと立った。
「ATEH MALKUTH VE−GEBURAH VE−GEDULAH LE−OLAM AMEN」
「YOD HE VAU HE ADONAI EHEIEH AGLA」
何処ぞの神を賛美する言霊を唱え、手にした銀のカップとレターナイフを打ち合わせる。澄んだ金属音が空間を振動させる。
「御園栞が命じます。
速やかに退去しなさい!」
凛とした声が、共振を起こす。
それは、四方に存在する霊性への退去命令。
五芒星小儀式による退魔を成した。
「わぁ、いつ見てもすごいですね」
「……ふぅ、上手く行きました」
栞は僅かによろめきながらも、毅然と声を発してテーブルに向かった。そんな栞に心配そうな視線を送りながらも、同じくテーブルを挟んで犬吠埼風が向かい合う。
「では、コックリさんを始めましょう」
覚醒者:LV-1
成長傾向:魔
年齢:15歳
出生:4月24日
身長:169cm
耐性:━
スキル:━
魔女の一門の少女。
とはいえ、才能がロバなので名を連ねているだけで、覚醒も【悪魔】との【サバト】を行って、肉体を軽度の改造をしてやっとの覚醒であった。
しかし、才能限界も低く、覚醒でスキルを覚えることもなかった。一門の集まりにも呼ばれても端っこでご飯食べるだけの子です。
それでも、諦めきれずに親戚の優しいお姉さんに【黒魔術】や【ウィッチクラフト】等の技術を教えてもらっている。なんとか特定の状況下でのみ、魔法を使うことが出来る。
覚醒者:LV-0.5
成長傾向:力・体
年齢:15歳
出生:5月1日
身長:163cm
耐性:━
スキル:━
普通の女子中学生。
友人に誘われて、【コックリさん】を行った。
結果として、成功してしまったのだが本人は半覚醒程度であり、契約悪魔を賄うMAGを払いきれずにHP払いをしている。