Deadpool: Sanctified Timeline 作:タピオカ&ピスタチオ
決着戦の始まり
ドォォォン――ッ!!
再び爆音が夜空を裂いた。
地平の向こうで、紫の閃光が弾ける。
その中心から放たれる波動は、現実の布をねじ曲げ、風と重力を狂わせていた。
龍斗はバイクのスロットルを全開にし、黒煙の中を突き抜ける。
装甲スーツのHUDに映し出される無数の警告――「時空干渉率・上昇」「エネルギー汚染・警戒」――。
それでも彼の眼差しは、迷いひとつなく前を見据えていた。
「……やはり、“奴”だ。」
ヘルメット越しに呟いた瞬間、通信機がノイズを吐く。
『Yo!こっちはウェイドだ!お前、また先に行ってんだろ!?俺の見せ場カットすんなって!』
「……ここは危険すぎる。来るな、ウェイド。」
『来るなって言われたら余計行きたくなるタイプなんだよ、俺。ヒーローの宿命ってやつ?』
通信が途切れる。
龍斗はわずかに息を吐き、バイクを停止させた。
前方の空間が歪んでいる。まるで、世界の一部が“上書き”されているかのようだった。
その中心――
巨大な紫の球体と、それを囲む六枚の石板。
空気は震え、重力が断続的に反転する。
そして、その前に立つ影。
「やはり来たか……“死神”龍斗。」
ロッツォ。
その身体はかつてのぬいぐるみのような姿を保ってはいたが、毛並みは灰色に焼け焦げ、瞳は紅蓮の光を宿していた。
周囲の大気が、彼の発する波動に引きずられて揺らめく。
龍斗:「ロッツォ……その装置は何をしている。答えろ。」
ロッツォはゆっくりと振り返り、口角を吊り上げる。
「答え? 簡単なことさ。“神の瞳”を覚醒させているんだ。ストーンの力を超えた、“選ばれし血”の器をな。」
龍斗:「“血族”とは何を意味する? お前の言う“彼女”とは誰だ。」
「まだわからないか? お前たちが追っている存在――“彼女”こそ、この宇宙の調律者だよ。
TVAも、ストーンも、全てはその目を欺くための“虚構”だ。」
紫の光が閃く。
瞬間、龍斗の足元が崩れ、重力のベクトルが反転する。
地面が空へと落ち、空が地に沈む。
“世界”そのものが裏返る錯覚。
龍斗は反射的に体勢を立て直し、二丁のデザートイーグルを構える。
弾丸にはTVA製の“時間干渉弾”が装填されていた。
「……お前の言葉に価値はない。だが、ここで止める。」
バンッ――!!
二発の銃声。
弾丸が空間を裂き、ロッツォの胴を貫く――はずだった。
しかし次の瞬間、弾道が途中で“消えた”。
否、別の時間軸へ転送されたのだ。
ロッツォ:「クク……効かないさ。この空間は私の“箱庭”。過去も未来も、私の意志で書き換えられる。」
龍斗はわずかに表情を変えることなく、腰のホルスターから短刀を抜く。
刃が青白く輝くと同時に、彼の身体が一瞬だけ霧のように揺らいだ。
「なら――時間ごと、斬り裂くだけだ。」
ドガァァン!!
二人の間で、爆発的な光と音が弾ける。
ロッツォの掌から放たれる“神の瞳”のエネルギー波が、龍斗の刀身にぶつかり、空間が歪曲する。
大地が崩壊し、時間の流れが断続的に遅延する。
ロッツォ:「君の力……やはり異質だ。“彼女”と同じ波動を感じる。」
龍斗:「黙れ!」
閃光の中、龍斗の姿が消え、次の瞬間、ロッツォの背後に現れる。
鋭い一閃。
ロッツォの肩口から火花が散った。
「クク……やるじゃないか、“死神”……だが、これはまだ――序章だ。」
ロッツォの身体が粒子状に崩れ、空間の裂け目へと消えていく。
残されたのは、紫に光る残滓と、脈動する“神の瞳”のみ。
龍斗は膝をつき、データ端末を起動する。
画面に浮かんだ文字列を見て、彼の目が鋭く光る。
> 『EM Project:Phase 02 ―対象はE.J.』
「……E.J.? まさか……エマ・ジェスナー……?」
風が止み、空間が再び静寂を取り戻す。
龍斗は立ち上がり、夜空を見上げて小さく呟いた。
「ロッツォ……お前の狙いが、もし彼女にあるなら――絶対に、許さない。」
そして、遠くでまた稲妻が閃いた。
“神の瞳”の中心に、微かに少女のシルエットが浮かび上がる。
物語は、次の段階へと動き出す――。