ラスボスにはラスボスをぶつけんだよォ 作:ヒャッハァー!
「久しぶりだね、ンフィーレア君。元気にしてたかい?」
「久しぶりですね、オルドナンスさん!帝国に前行ったと聞いてから、しばらく音沙汰がなかったので、心配してたんですよ?しばらく王国と戦争が起きていないとはいえ、それでも密偵と疑われて殺される、なんてありえない話ではないですから。」
ンフィーレアが言っているように、薬師や医術などの専門知識を持つ人間が、スパイとして派遣されることは珍しい話ではない。比較的その潜入した土地になじみやすいからである。そして、現状帝国と王国は停戦状態ではあるものの、いつまた戦争が始まってもおかしくない状態といえた。そのため、王国からの商人や旅行者などに、帝国では目を光らせていた。
そのため、ンフィーレアが心配するのも妥当だったといえるだろう。
「ハハハ、僕ぁこれでも生き汚くてね。そうそう簡単に死にはしないさ。」
「そうですか…。いや、良かったです。まだまだオルドナンスさんには聞きたいことが山ほどありましたから…。本当に生きていてくれてよかったです。」
「おやおや、僕の知識が目当てだったのかい?ひどい!やさしさで勘違いさせておいて!僕とは遊びだったのね!このスケコマシ!」
「あ、いや、すみません、そんなつもりは全くないんです。いや…。本当にオルドナンスさんの話すことは僕の知らないことばかりで…。だから、まだまだ教わりたいな、ってそう、思って…。」
「そうかい?いやぁ、照れるねェ。まぁ、冗談さ。君はエンリ君一筋だものねェ。ま、今日来たのは王国に帰ってきた次いでに知り合いの顔でも拝んでおこうかと思ってね。最近王国内じゃ冒険者や野盗も増えてぼちぼち治安も悪くなってきたから、薬もだいぶ売れそうだからねェ、王国に帰ってきたのはそういうわけさ。」
さらっと泣いたふりをやめると、
ちなみに言ってることは最近帰ってきたという部分を除き、事実である。そしてその原因はほとんど
無論、フェイスレスもただ手をこまねいていたわけではない。ある程度の知識や技術を学ばせ、元犯罪者たちを正規の職につかせたり、いくつかの産業を立ち上げて彼らを雇用したりもした。しかし、どうにもそれらすべてをカバーしきれてはいないのも事実だった。
「エ、エンリとはそんな!違いますよ…。そ、そういえば。薬…。前に頂いたレシピの中で、うまく調合が成功しなかったものがあったんですが…。」
「へぇ、どれだい?…あぁ、これか。もしかして、調合の際に魔力を大目に使っていないかい?僕のレシピはもともと魔力なしで作成するのを基本としているからね。使う魔法の種類をもう少し低いレベルのものに変えるか、もしくは魔力量を下げればうまくいくんじゃないかな?」
「…なるほど。そういうことか。なら、作成する際の器具と材料の管理をもう少し徹底して…。」
ンフィーレアはぶつぶつとつぶやき始め、懐から取り出したメモに何かをカリカリと書いていく。そしてそれがしばらく続き、やがてペン先の動きが止まると、顔を上げた。
「…これならうまくいく、か。どうかな…。」
「そうじゃのう、まさかマジックアイテムを使うことが悪影響となっておるとはな…。ンフィー、お前らしい失敗といえような。」
「そうだね…っておばあちゃん!?いつからいたの!?実験してたんじゃなかった!?」
そこには実験用の雑な衣服に身を包み、バンダナをまいた老女が座っていた。
「いつからて、おまえが「なるほど」といって書きだしたあたりからかのう。しばらく動かんから、オルドナンスさんと茶ァしばいて待っとったんじゃぞ?」
「そ、そうだったんだ…。ごめんなさいオルドナンスさん、ずいぶん待たせてしまって。」
「いやぁ、全然。実にいい茶葉だね。薬湯ってとこかな?」
「あぁ、まぁ薬屋じゃからの。調合は十八番中の十八番よ。自作じゃが、口に合ったならよかったわい。ハァ…。」
そういって憂鬱そうにため息をつくと、老女は自らも茶を飲んだ。
「…どうしたの?おばあちゃん。ずいぶん憂鬱そうだけど…。…やっぱダメだった?」
「どうしたもこうしたもあるかい…。ああ、そうじゃい、駄目だったわい。人生をかけて求めてたものの完成系だけ手渡されて、今まで得た知識すべてで洗いざらい調べてみても、ほとんど何も得られなければこうもなるわい。ハァ…。」
老女────リイジー・バレアレは落ち込んでいた。人生をかけて探求してきた「神の血」が目の前に出されたときは、本当に心から歓喜した。しかしいくら調べても、その作成法がまるでわからない。最高級の食事を出されたのに、いくら食べようとしても触れることすらできない。そんな気分であった。
「…ずいぶんと落ち込んでいるねェ。いったい何があったんだい?」
「それが、昨日偶然おばあちゃんが求めてた「神の血」というポーションが手に入りまして…。それで、僕とおばあちゃんで昨日から調べてたんですけど、どうにも結果が出なくてですね…。ここの設備じゃ無理なんじゃないかって、僕は一旦音を上げたんですけど…。」
「もう一人は今までずっと続けて、そしてここでうなだれてるというわけだネ。」
「もうね、無理じゃよ。材料すらわかんないんじゃもん。というかそもそも製造法すら既存のものと違う可能性すらあるんじゃもん。この設備で分析は無理じゃよ、ホント。」
明確に強い絶望のオーラ*1を漂わせている老女を傍目に見つつ、
「…良ければ僕にも見せてくれないかい?ま、あまり意味がないかもしれないけどさァ。一応何か手掛かりでもつかめるかもしれないしネ。」
「あぁ…。そうですね。煮詰まっていたところですし…。いいよね、おばあちゃん。」
「そうさな…。ハァ…。」
「じゃぁ、こちらです。オルドナンスさん。」
そういって、ンフィーレアが店の扉を開けて、奥の方に案内する。そして扉の向こうに置かれた様々な器具や薬品の向こうに、ひときわ赤く輝く小瓶が一つ。
それを見た
そして何滴か赤い液体をピポットで吸い取り、そのフラスコの中に垂らす。しかし、しばらくしても何も反応はなかった。
「やはり…
それを見た後に、
「そうだね。まぁ…。おそらくだが、これはまず、まともな方法で作られたものじゃないね。手製のものにしては不純物が少なすぎる。だが、魔法で作られたものにしては、秘められている魔力が少なすぎる。おそらく、先ほど言っていたように、本当に根本的な調合方法から異なるのだろうネ。
ま、ともかく単純な化学的な反応として治癒をしているわけではない。おそらくはまず、魔法的作用に類似したものであるのは間違いないヨ。まぁ、簡単に調べた程度でわかるのはこの程度ってとこかね。」
「なるほどのう。ま、基本的にわしらと同じ結果じゃのう。まぁ、裏付けが取れたんならそれで十分、としとくかの。…なぁ、お主のツテで研究を支援してくれそうなところはないかの?」
「ま、そうだねェ。わかったよ。ま、とりあえずできるだけ声をかけてみることにするヨ。ああ、少しサンプルをもらってもいいかい?金は払うからさ。」
そういって
「…ふむ、なるほど。これの正しい価値はわかっておると言ったとこかの。まぁええわい。どのみち出資を得るためにもある程度サンプルを渡す必要性はあるしの。まぁくれぐれも、持っていきすぎるなよ?」
「ハハハ、わかってるさ。数滴もらえりゃそれでいい。仮に研究することになれば、君らにまた報告するよーん。」
「…そうか。また身辺が安定したら連絡せい。これからのほかのポーションの流通についても話していきたいしの。」
「あぁ、もちろんだとも、リイジー。」
そういって、男は先ほど採取した薬品を小瓶に数滴たらすと、また懐にしまった。
⚙⚙⚙
「それじゃ、また会えることを楽しみにしてるよ、ンフィーレア君。まぁ、ここしばらくはここら周辺にいるから、またすぐに会うだろうがね。」
「えぇ、それではまた。」
そういって、
「あぁ、そうだ。このあと、護衛を雇ったあとに、トブの大森林まで行って薬草を採取してくるんだが、何か欲しい薬草はあるかい?」
「トブの大森林…ですか。」
ンフィーレアの髪に隠れた表情が、すこし変わったように見えた。
「あぁ。その後近くの村々を回って薬を売り歩くから、帰ってくるのは少し遅くなるだろうけど…。」
「…もしかして、その寄る村って…。」
「ん?いやまだ決めてないかな。…あぁ、ンフィーレア君、なるほどね?そうだね、たしかにカルネ村によるっていうのもいいかもしれないネ。あそこは大森林と一番近いからね。手紙でも持っていくかい?」
「な、なるほどって何ですか!…。あの。その採取、僕もついていくことはできませんか?」
「うん?…なるほど、たしかにエンリ君は美人だからね。独占欲ってやつかい?」
「えっ、いや、そんな!ただ…。すこし、最近、定期的にしていた便り
がなくて…。それで少し、心配になって…。」
「なるほどね?そういう理由ならもちろんウェルカムさ!じゃ、僕は宿に戻っていく準備をしているから、君に護衛を雇うのは任せていいかい?ちょっとさっき手持ちの金は払ってしまってね。悪いんだけどちょっと立て替えてくれないかい?まあ、後で必ず返すからサ。」
「はい、わかりました。…なら、少し、実力に関わらず、個人的に雇いたい人たちがいるんですが…。大丈夫でしょうか?決してオルドナンスさんの損にはならないと思うんですけど…。」
「あぁ。もちろんさ。雇う人選は、すべて君に任せるよーん。」
⚙⚙⚙
「んで、ンフィーレア君が雇ったのがこちらの方々、というわけだネ。よろしくたのむよーん。」
「えぇ、よろしくお願いします。」
「よろしく」
「うむ、よろしくである!」
「おう!よろしく頼むぜ、兄ちゃん!」
「あぁ。こちらこそよろしくたのむ。」
「そうか。こちらは欠片も宜しくするつもりはない。口を開くな
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王国内の人たちの評価
わんこ系騎士 「ナイアー様、ですか?正直、苦手です。いろいろと教えて、鍛えてもらっているのにいうのにこんなことを言うのは非常に申し訳ないのですが…。いまだにあの誘拐事件のことに関しては、許せていません。」
薬師 「すごい人ですよ。薬師としても、錬金術師としても尊敬できる人です。それに時々行商で見つけたいろいろなアイテムを持ってきてくれます。一番面白かったのは、糸で操る小さめのゴーレム?でしたね。」
ちなみにフェイスレスはンフィーレアのことだいぶ苦手、好きか嫌いかで言うなら嫌いよりです。そりゃ「天才イケメン錬金術師(ちょい根暗、告白うじうじ迷ってる)、しかもルート外れると闇落ちする」なんてフェイスレスからしたら過去の自分を見てる感覚になるからね。仕方ないね。なので割と今回はンフィーレアのことは最初から最後まで思考を誘導してます。まあ、前の人生の反省もあって、使い潰す気はないようですが。