紅魔館の中に足を踏み入れると、ユウスケは夕食までの間、自室で待つように指示されました。咲夜に案内されて広大な廊下を進み、彼はようやく自分の部屋に辿り着きます。
「それでは、御夕飯になりましたらお呼びいたします」と咲夜は一礼して、他の仕事へと向かいました。
部屋の中を見渡すと、客人用とはいえ、豪華で立派な家具が整然と並んでいます。その高級感に圧倒され、「壊したら怖そうだな…」と内心少しだけ心配しつ、見回していました。しかし、目の端にふかふかとしたベッドが映ると、その誘惑に勝てず彼は吸い込まれるようにベッドに倒れ込みました。
「こんな柔らかいベッドがあっていいのか、埋まるんじゃね?……zzz」と、気づけばユウスケはそのま眠りに落ちてしまいました。
しばらくして、彼は違和感を感じて目を覚まし、時間を確認するために時計を見ました。どうやら30分ほど寝ていたようです。何かが引っかる感覚で目を開けると、体が動かないことに気づきました。その正体を確かめるため、彼はゆっくり顔を横に向けました。
すると、金髪の幼女吸血鬼、フランドール・スカーレットがユウスケの体にしっかりと抱きついて、彼をじっと見ていました。彼女の目は無垢な好奇心で輝いていました。
(魔理沙といいこの世界の金髪はこんなのだろうか)
ユウスケは、ほんの一瞬混乱しながらも笑みを浮かべ、「おはよう、取り敢えず放してもらっていい?」と声をかけました。
フランドールは彼の問いに驚きながらも、「しゃべった。あなたもしかして人間の男?」と返してきました。
「そうだよ。レミリアさんに呼ばれてね。」と優しく答えるユウスケ。
「ふーん、お姉様がね。人間の男なんて初めて見たわ。」とフランドールは興味深そうに彼を観察し続けました。
二人の間に不思議な静けさが流れます。それは彼女の無邪気な視線の中に潜む、未知なる世界への好奇心と、ユウスケの心にほんのりとした温かさを届けていました。
フランは、好奇心いっぱいにユウスケを見上げた。「ねぇ、人間ってどんな生活をしているの?」
ユウスケは少し考え込みながら答えた。「うーん、外の世界では大学、つまりこの世界でいう大人が通う寺子屋で本を読んだりして勉強していたよ。その大学が終わったら、たまに休みをもらいつつ、死ぬまで働く生活だね。幻想郷に来てからは霊夢さんの家にお世話になってたよ。」
フランドールは興味深そうに頷き、「ふーん。そんなに働いて辛くならないのかしらね」と問いかけた。
「辛いけど、そうしなきゃ生きていけないからね」とユウスケは苦笑しながら答えた。
「お兄さんはこっちの世界ではやりたいことあるの?」とフランドールが続ける。
ユウスケは少し考え込みつ、「今はまだ何も。でも、勉強やアルバイトの重圧から解放されて、肩の荷は降りている感じがするよ」と答えた。
フランドールは少し嬉しそうに、「やりたい事がないなら、私、屋敷の外に出てみたいの。今日連れて行ってとは言わないから、また来るときにでも遊びに連れてって」と頼んだ。
「いいよ。フラン」とユウスケは優しく答える。
そんな和やかに会話をしていると、扉がノックされ、中からレミリアの声が響いた。「入るわよ。てかなんで電気消してるの?目が悪くなるわよ?」
ユウスケは焦って、「待て、レミリア。電気をつける前に…」と警戒を示そうとしたが、レミリアは既に電気を点けていた。彼女はフランドールがユウスケに抱きついている姿を見て、驚いた。
「フラン!あなた、男性に抱きつくなんて何してんのよ!」とレミリアはびっくりして声を上げた。
ユウスケはすぐに落ち着かせようと、「子どもなんだから、そんなに怒らなくても」と言った。
しかし、レミリアは真面目な顔で答える。「ユウスケ、あなた知らないのでしょうけど、その子も吸血鬼で、見た目は幼いけど495歳よ!」
「えっ…」とユウスケは絶句した。
このやり取りを見ていたフランドールは、悪戯っぽく笑い始めた。「クッ、お姉様、何言ってるの?フランはまだ何も知らない子どもだよ?ただ寂しいから抱きついてるだけだよ」。
しかし、レミリアはそれに負けじと、「フラン!清純ぶるのは止めなさい!あなたがいつもパチュリーから恋愛小説を借りているの、知ってるんだからね!」と反論した。
フランドールは軽く手を挙げて、「あーあ、お姉様がバラしちゃうんだ。ごめんなさい、ユウスケお兄様。フランは確かに人間の男を会ったのは初めてだけど、その手の知識は495年生きてるから知ってるんだ」と、いたずらっぽく微笑んだ。
フランドールは、ユウスケを見上げて言った。「でもお兄様、騙しちゃったけどフランとお外に行く約束忘れないでね?忘れるようならキュッとしてドカーンしちゃうよ?」
ユウスケは微笑みながら、「忘れるわけないだろ、フラン。」と優しく答えました。
「それはそうと、忘れるところだったけど食事の時間よ。早くしないと冷めるわよ」とレミリアはテーブルへと誘導しました。
「はーい」と応じて3人は食卓へ向かい、席に着きました。
テーブルには、スクランブルエッグにライス、ウインナー、それにスープが並んでいました。
ユウスケは一口食べて、「もぐもぐ、おいしー。博麗神社ではキノコやお吸い物だったから、久しぶりに洋食を食べたよ」と嬉しそうに言いました。
レミリアは満足げに、「本当?作った甲斐があってよかったわ」と微笑みました。
ユウスケは不思議に思いつつ、「あれ?咲夜じゃなくてレミリアが作ったの?」と尋ねました。
咲夜は控えめに微笑んで、「いつもは私が作るんですが、お嬢様がどうしても作りたいとのことでしたので、私が手ほどきしながら教えていました」と補足しました。
「私より咲夜の料理の方がよかった?」と少し心配になりながらレミリアが尋ねると、
ユウスケは即座に、「レミリアが一生懸命作ってくれたんだから、文句なんてあるはずないさ」と答えました。
その言葉を聞くと、レミリアは満面の笑みを浮かべ、「えへ」と嬉しそうに頷きました。
「明日は私がお作り致します」と咲夜が次の機会を準備しつ。
フランドールは尋ねました。「お姉様が料理、お兄様本当に美味しい?」
レミリアは妹の問いに少し怒りつも、「あんた、失礼ね。これでも頑張って作ったのよ」と応じました。
フランドールは一口もぐもぐと食べて、「お姉様の料理に味がする!凄い成長してる!」と感慨深げに褒めました。
レミリアは妹にも褒められ、隠しきれない笑みを浮かべました。
「さて、ユウスケ。今宵は貴方の話を聞かせて。例えば、なぜ私達の容姿を見ても何も思わないのかとか」と、レミリアは問いかけます。
ユウスケは少し困ったようにつ、「何ともって、普通に可愛いけどね。外の世界では、レミリア達は普通に、僕じゃなくとも可愛いと言うよ」と答えました。
レミリアはため息を吐き、「ユウスケの外の世界が羨ましいわ。私だけならともかく、フランは生まれた直後に『悪魔の妹』とまで言われたのよ?信じられる?」と嘆きました。
咲夜は疑問に思って、「逆にこの世界の美しいとされる女性はどうなのですか?」と問いかけました。
「まあ、正直に言うとよくないけど、モテはしないだろうね」とユウスケは慎重に答えました。
「全くの逆転ですか。因みに私は?」と咲夜は興味津々で尋ねます。
「スタイル良くてめちゃくちゃキレイ。大人の女性」とユウスケが答えると、
咲夜は少し赤くなりながら、「ちょっとトイレ行ってきます」と立ち上がり、足をぷるぷるさせつ退出しました。
フランドールは期待に満ちて、「私とお姉様は?」と聞き、
「どっちも子供みたいで可愛いよ」と言いながら彼女の頭を撫でると、フランドールは笑顔を浮かべて喜びました。
レミリアは、自分の笑みを隠しつ、「今晩は部屋で休んで。明日、パチュリーのところに行きなさい。能力について調べてもらえるわよ」と提案をしました。
こうして、ユウスケは紅魔館での新たな一日を楽しみ、彼の幻想郷での冒険は、さらに深まっていくことになりました。