直線検事カルストンライトオ 事件解決も最速です   作:じゅぺっと

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謎解きは猫カフェのあとで

 

 

「誕生日パーティーとゴールデンウィークを満喫しました。トレセンではグレイウィークなる企画が進行中らしいですが灰色より白黒はっきりしている方が好きですね。私の髪のように」

 

 5月3日、直線最高速ウマ娘、カルストンライトオの誕生日でありゴールデンウィーク初日のお昼過ぎ。

 デュランダルとビリーヴとの猫カフェを満喫してうきうきしながら真顔で学園に戻るとスマホに電話がかかってくる。

 同期のウマ娘、ジャングルポケットからだった。ワンコールで電話に出るライトオ。

 

『頼むライトオ! フジ先輩の無実を晴らしてくれええええええ!!』

「うるさっ。無実は晴らすものではなく証明するものだ」

『こまけぇこたぁいいんだよ! とにかく今すぐフジ先輩の部屋まできてくれ!』

「わかりました、最速で駆けつけましょう」

 

 鼓膜が張り裂けそうな大声にウマ耳を押さえながらも、ライトオは走り出す。

 カルストンライトオの父親は検察官であり、真実をまっすぐ最速で追求する心根は彼女の性格に大きく影響を与えている。

 よってトレセン学園で事件が起こったときは直線検事カルストンライトオとして最速で事件を解決するのだ。

 

「カルストンライトオ、到着も最速です。おや、フジさんにポッケはともかくメノもいたのですね」

 

 フジキセキの部屋には自分を呼んだポッケに容疑者らしく困り顔のフジキセキ、それと警察ウマ娘のフェノーメノがいた。

 フェノーメノは、ライトオを見ると警官らしい敬礼のポーズを取る。

 

「ライトオ検事! 出動感謝するであります」

「メノがいるなら話が早い。事件概要の説明を頼みます」

「フジ先輩は悪いことなんかしてねぇ! なのにメノのやつがしつこく疑うんだ!」

「しかし、現状の捜査状況ではフジキセキさん以外に犯行は不可能であります!」

 

 ジャングルポケットがフェノーメノにガンをつける勢いで睨む。フェノーメノも強面で真正面から鋭い目を向ける状況は、まるでヤンキーと警察のいざこざのようだ。

 それを止めたのは、容疑者である寮長のフジキセキだ。

 

「まぁまぁポッケ。フェノーメノだって風紀委員の仕事としてやってるんだ。私が疑わしい状況なのも事実だしね。さぁフェノーメノ、もう一度説明してくれるかな?」

「はっ! 職務への理解、感謝するであります」

 

 メノは己の生徒手帳を開き、事件概要を読み上げる。

 

「事件の被害者は今年入学したカレンブーケドールさん。彼女は今朝から先輩に学校を案内してもらっており、部屋に帰ってくると不審な手紙を発見しました」

「どんな手紙だ?」

 

 メノが専用のビニールにいれた手紙を取り出す。綺麗なバラの絵が描かれた洒落たデザインだ。

 手紙の文面には、こう書かれている。

 

【カレンさんへ。今日君の部屋に入ってやるぞ。フフ、フフフフ。

 Ps. お風呂に浮かべた薔薇を回収すると、しめっている】

「腹立つ手紙ですね。よく破り捨てなかったと感心します」

「こんなバカげた手紙フジさんが寄越すわけねーじゃねーか!!」

 

 憤慨するポッケだが、メノは首を振る。

 

「問題なのは、カレンブーケドールさんが部屋を出てから戻ってくるまで彼女の部屋に入ったのがフジキセキさんしかいないことであります」

「寮長は全部屋のマスターキーを持っているからね。生活環境のチェックで定期的に部屋に入るのさ」

 

 今朝フジキセキがカレンブーケドールの部屋に入ったことは、寮長スケジュールからも確認できるらしい。

 

「ふむ、同室のウマ娘は?」

「同室のウマ娘は、4月末から11連休として実家に帰っているよ。外泊届けも受理している」

「……フジキセキさん。やはりブーケさんの部屋に入るとき鍵はかかっていたし、出るときも鍵を掛けたと認めるのでありますね?」

「うん、間違いない。ブーケちゃんは鍵を掛け忘れていないし、私も出ていく時きちんと鍵を掛けた。寮長として断言するよ」

「よって、このバラの手紙を贈ったのはフジキセキさん以外に考えられないであります。彼女が薔薇をモチーフした小道具を愛用しており、サプライズが好きなのは周知の事実でありますから」

 

 つまり、この部屋に入れたのはフジキセキだけ。手紙の文面はふざけているが、バラの描かれた手紙自体はフジキセキが贈ってもおかしくないことも疑いの一因になっているようだ。

 

「フジさん! そこはウソでも鍵はかかってなかったって言やぁいいじゃないっすか!」

「ポッケさん、偽証は犯罪であ゛り゛ま゛す゛!」

 

 またしても睨み会うポッケとフェノーメノ。フジキセキはため息をついて2人の頭をポンポンと叩いた。

 

「2人とも落ち着いて。とにかくブーケちゃんはその手紙を見て怖い思いをしてしまってね。1人でこの部屋で過ごしてもらうのも難しいし、犯人扱いされては私が彼女のメンタルケアをすることもできない。どうしたものかと悩んでいるのさ」

 

 フジキセキはあくまで被害者のカレンブーケドールを心配しているようだった。

 カレンブーケドールは今年入寮したばかり、親元を離れる寂しさもあるだろう。同室のウマ娘が一足先に帰省してしまい心細くもあったはずだ。

 そんな状態でこの不審極まる手紙を見つければ、怯えるのもムリはない。

 一通り話を聞いたライトオは、指をピンと立ててメノを指した。

 

「なるほど、紛れもない事件ですね。メノ、改めてフジさんが犯人だと思う理由について証言をお願いします。なにかムジュンが潜んでいるかもしれません」

「はっ! 了解であります」

 

 ライトオとメノは検事と警察の関係に近く、かつてメノが捜査した事件をライトオが解決して以来何かと頼られているのだ。懐かれているといってもいい。

 メノが改めて敬礼のポーズを取ったあと、生徒手帳を開いて証言を開始する。

 

「カレンブーケドールさんは今朝からお昼まで先輩と共に学校を回っていました。

 そして部屋に戻ると、バラの描かれた不審な手紙を見つけたのであります。

 その間部屋に入ったのは、マスターキーを持つ寮長のフジキセキさんだけ。

 バラの描かれた手紙をサプライズで仕掛けるようなウマ娘が他に心当たりがないこ」

「異議あり!!」

「うおおっ! この力強い異議……本官の捜査に何のムジュンが!?」

 

 勢いよく人差し指をつきつけるライトオに、驚きつつもなにか期待するようなメノ。

 彼女とて、頼れる寮長であるフジキセキが犯人だと思いたいわけでもないのだろう。

 しかし、ライトオはメノの言葉に首を振った。

 

「いや、ムジュンしているのはメノの捜査ではない。むしろフジさんとポッケの方だ」

「おいライトオ! おめーまでフジさんを疑うのか?」

「だっておかしい。バラの描かれた手紙をサプライズで贈るウマ娘に心当たりがない? フジさんとポッケに限ってそんなはずがない」

「2人にはこんな喜天烈な手紙を贈るような知り合いが!?」

 

 驚くメノに対して、フジキセキはやれやれとため息をついた。ポッケはポッケで悔しそうな表情をしている。

 フジキセキは苦笑しながらその名を挙げる。

 

「ライトオが言いたいのはオペラオーのことだね?」

「そうだ……こんな手紙、アイツの仕業に決まってるんだ! けどフジさんが……」

「ダメだよポッケ。寮長として、ポニーちゃんに無実の罪を擦り付けることはできない」

「ふむ、口止めでもしていたのでしょうか。オペラオーに疑いが向かないために。事情を話してください」

 

 単刀直入にライトオが聞く。今名前が挙がったのはテイエムオペラオー。

 たいそうな派手好きの歌劇マニアでよくバラを持っているのをライトオも知っているし、フジキセキやポッケとは何かと縁のある仲だ。バラの描かれた不審な手紙と聞いて2人が彼女を連想しなかったはずがない。

 フジキセキはオペラオーについてこう話してくれた。

 

「彼女は今日、今朝から体育館でオペラ公演をしていてね。ブーケちゃんが部屋を出て戻るまでの時間はずっと舞台の上にいたことをたくさんのポニーちゃん達から聞いているんだ。

だから、オペラオーが犯人だということはあり得ないよ。部屋の鍵も持ってないしね」

「なるほど、たくさんの観客達に姿を見られていた。おまけに部屋にも入れない。完璧すぎるアリバイです」

「オペラオーさんといえば、前人未到の年間無敗を成し遂げた世紀末覇王。本官も天皇賞春の歌劇を鑑賞したことがありますが見事なものでした。新入生が大勢集まるのも納得です」

「デビュー前は誰もいない客席に向けていつまでも歌っていたのにね、立派になった……」

 

 目を細めて懐かしむフジキセキ。寮長である彼女にとってはオペラオーも可愛い後輩の1人なのだろう。

 しかし、フジキセキを誰より尊敬するポッケにとっては面白くない。

 ライトオの胸ぐらをつかむ勢いで、しかし縋るように懇願する。

 

「なぁライトオ……きっとオペラオーのやつがなんかアリバイトリックでオペラを抜け出して、なんとかしてブーケの部屋の鍵を開けて手紙を置いたに違いねぇんだ! フジさんの無実を証明してくれ!」

「けど、ポッケもそう思ってトップロードに聞いたらずっと1人で舞台に立っていたと言われたんだろう? ドトウがうっかりアヤベやトプロの衣装を泥で汚してしまってオペラオーが1人で舞台に立つしかなくなったって」

「いかにもあの世代らしいハプニングですね」

「けどこのままじゃ、フジさんが犯人になっちまう……!」

 

 ポッケが歯噛みする。聞く限りオペラオーがこの部屋に手紙を置くのは不可能だろう。

 メイショウドトウの突発的なドジで一人舞台を演じざる得なくなったなら、事前にアリバイトリックを作ることもできない。

 だがライトオはポッケの手を取り真剣に見つめて言った。

 

「ポッケの言い分もわかります。私はフジさんやオペラオーとはそこまで深い仲ではありませんが、こんなおちょくった手紙を贈るのはきっとオペラオーのしわざにちがいありません」

「ライトオ……! わかってくれっか……! アイツ、こないだもトプロにモーニングコールするとか言ってオレにまで妙な手紙送りつけてきやがったんだぜ……!」

「ああ、そういえばポッケはトップロードと同室だったな。トップロードさんも騒がしいのに囲まれて落ち着かないだろうに」

「イヤミか! 騒がしいのはオメーも大概だろ!!」

「ポッケさん! 声が大きすぎるであ゛り゛ま゛す゛!!」

「どっちもうるさい。けどオペラオーが同期の同室にも手紙を贈るというのは重要な情報な気がする」

 

 ナリタトップロードはお人好しなのでオペラオーのサプライズにいつも楽しそうにしているが、巻き込まれるポッケにはたまったものではないのだろう。フジキセキが疑われているのもあって、なかなかストレスがたまっているようだ。

 

「しかしライトオ検事、オペラオーさんのアリバイについてはどうお考えですか?」

「それについては一旦無視しましょう。『この手紙を書いたのはオペラオーか?』まずそれを確認したい」

「なるほど……手紙を書いたのが誰かわからないことには、犯人を断定できないでありますね」

「フジさん、オペラオーは今どこにいるかわかりますか?」

「まだ体育館にいるんじゃないかな? 連絡してみるよ」

 

 フジキセキがオペラオーに連絡を取ると、まだ体育館でオペラの余韻に浸っているらしい。

 ライトオ、ポッケ、メノ、フジキセキは4人でオペラオーの待つ体育館に向かった。

 足を踏み入れた瞬間、高らかな声が迎えにくる。

 

「はっーはっはっは! ボクの劇場へようこそ諸君、今日の公演は終わったがメイン曲のアンコールくらいは受け付けようじゃないか!」  

「ここは体育館だ、テメーの劇場じゃねぇ……すぐにその余裕面を剥がしてやる!」

 

 声の主はもちろんテイエムオペラオーだ。朝からたくさんの観客の前でずっと一人芝居を続けていたのに声が枯れるどころかその挙動に一辺の揺らぎもない。

 オペラオーを疑うあまり食って掛かるポッケを笑顔で迎え撃つ様はかつてのジャパンカップのようだ。

 しかしライトオはそんな空気などお構いなしにオペラオーに手紙をつきつけた。

 

「結構です。オペラとか5分で眠くなるので。そんなことよりこの手紙を書いたのはあなたですか?」

「ふふ……直線検事ライトオさん、君の物語も聞いているよ。この事件についてもフジさんから教えてもらったが生憎、ボクには関係ないね」

 

 手紙を見もせず肩を竦めるオペラオー。完全に我関せずといった態度だ。

 

「ではオペラオー、あなたが知る限りの事件に関する証言をしてください。少し気になることがあります」

「いいだろう! 神明裁判に挑むローエングリンのように堂々と歌おうじゃないか!」

「歌は結構です。簡潔に、率直に、一直線にお願いします」

 

 世紀末覇王相手だろうとライトオの真実への最短ルートは揺るがない。歌はなしでオペラオーに証言を開始させた。

 

「ボクは今朝からずっとこの体育館でオペラを披露していたのさ。観客達とトップロードさんが証人だよ。

 被害に遭われたブーケドールさんだったかな? 彼女とは全く面識がないね。

 それとも、その手紙をボクが出した証拠でもあるのかい?」

 

 だいたいフジキセキやポッケが口にしていたのと同じ証言だ。これといったムジュンはない。

 

「フム、少しゆさぶってみるか。トップロードが見ていたといったが、同期のアヤベさんはどうしたのだろうか?」

「アヤベさんならドトウと一緒に衣装の洗濯をしてもらったよ。ずいぶん泥だらけになってしまったからね」

 

 アヤベさんとはオペラオーの同期であるアドマイヤベガのことだ。冷たく素っ気ない態度だがなんやかんやオペラオーやタキオンにも付き合ってくれるのでビリーヴみたいなウマ娘だとライトオは思っている。

 

「カレンブーケドールとは何の関係もないのだろうか?」

「……ああ、フルネームはそうなんだね。もちろん無関係さ。なんなら彼女本人に確かめてみたまえよ」

 

 自信満々に胸を張るオペラオー。この様子では本当に赤の他人なのだろう。

 ここでライトオは件の不審な手紙を改めて観察し、思ったことを口にした。

 

「それにしてもこのバラの絵は曲線だらけですね。もっと直線的に描いた方が美しいと思います。漢字の薔薇を見習うべきでは?」

「おや……そう思うかい? いいだろう、今度は君好みの直線的に美しい薔薇を描こうじゃないか!」

「ありがとう、手描きのバラのイラストすごいですね」

「それほどでもあるとも!」

 

 体育館の中に、気まずい沈黙が流れた。

 オペラオーは余裕たっぷりにウインクをするが、今の失言は誤魔化せない。

 

「そこを動くな! 確保ーーーー!!」

「やっぱオメーの仕業じゃねーか!!」

「はっーはっはっは! ボクを捕まえられるものなら捕まえてみたまえ!」

 

 ポッケとメノが勢いよくオペラオーに突撃する。しかしオペラオーも一瞬で距離を取って逃げ出した。

 3人が体育館から飛び出していってしまい、フジキセキがため息をつく。

 

「やれやれ、いけないポニーちゃんだ。立派になったかと思えばこんな手紙を出すなんて」

「しかし、フジさんもこの事件の犯人がオペラオーだとは思っていないでしょう」

 

 ライトオが確認する。今はっきりしたのはあの手紙を書いたのがオペラオーということだけ。

 オペラオーのアリバイは完璧であり、ブーケドールとは赤の他人である以上オペラオーが今日ブーケドールの部屋に侵入し手紙を置くなど不可能なのだ。

 

「そうだね、でも真犯人はさっぱりわからないよ。ライトオに心当たりはあるのかな?」

 

 その問いかけに、ライトオはオペラオーにも負けない自信満々の真顔でピンと立てた指を振った。

 

「もちろんです。既に真実への道は一直線。いやむしろもうゴールしていると言っても過言。フジさん、寮長権限でカレンさんを呼んでくれますか?」

「ブーケドールちゃんかい? 呼ぶことはできるけど、私が疑われている以上怖がってしまうんじゃないかな……」

 

 あくまでブーケドールを気遣うフジキセキ。しかしライトオはチッチッチと指を振った。

 

「いえ、そっちのカレンではありません。オペラオーの同期、アドマイヤベガの同室。カワイイのカリスマであり同じ名をもつカレンブーケドールから頼られたであろう先輩。

 この事件の犯人は、カレンチャンです」

 

 フジキセキは驚いた顔をしたが、すぐにライトオの言わんとすることを理解し、カレンチャンを呼んでくれた。

 待つ間、ライトオはメノに必要な情報を調べてもらうためにスマホで連絡した後、フジキセキに話しかける。

 

「そうだフジさん。少し芝居に付き合ってほしい」

「おや、ライトオも演劇に興味があるのかい? 意外だな、もちろん構わないよ」

「相手はあのカレンチャン。デュランダルから聞く限り彼女が簡単に口を滑らすとは思えない。あなたの力が必要です」

 

 ポッケは何を言ってもオペラオーを捕まえるまでは満足しないだろう。放っておくことにして体育館でカレンチャンを待つと、程なくして彼女はやってきた。

 

「はーい、半袖でグレイなカワイイカレンチャンでーす!」

「やぁカレン。今日もとってもカワイイね。グレイウィークの企画もあるのに呼びつけてすまない」

「ほう、半グレなのですね。今日のあなたにはよくお似合いです」

 

 カレンチャンはグレイウィークの企画のために用意されたであろう、灰色の衣装を可憐に纏っている。

 その笑顔は相変わらず完璧に作られていて、本心は伺えない。

 

「それで、カレンに聞きたいことがあるってなんでしょう? 電話じゃできない、体育館の隅でおはなし……あはっ、珍しいシチュエーションでドキドキしちゃいます♪」

「おや、デュランダルからは時折ジャーニーさんと一緒に体育館裏で誰かとおはなししていると聞きますが。まぁさておき、今日カレンブーケドールさんに起こった事件は知っていますか?」

「あっ、ブーケちゃんからLANEで聞いてますよ! 変な手紙が来て怖い思いをしたって……だからゴールデンウィークはカレンのお部屋に泊めて上げることにしたんです」

「おや、同室のアヤベさんはいいんですか?」

「アヤベさんなんて知りません。ゴールデンウィーク中はずっとオペラオーさん達とオペラ公演ツアーをするそうですから」

 

 つーん、と拗ねたような表情を作るカレンチャン。計算された可愛らしいものだが、ちょっと怒っているようにも感じられた。

 

「だけど丁度よかった。実はここにあなたを呼んだのはあるお願いをするためです。改めて事件を説明しましょう」

 

 ライトオは淀みなく、台本を読み上げるように今日起こった事件を説明する。

 ブーケドールの部屋に不審な手紙が届いたこと。彼女はたいそう怖がったこと。

 そして疑われたのが寮長のフジキセキであること。オペラオーには完璧なアリバイがあり、捜査の結果犯人はフジキセキ以外に考えられないことを伝えた。

 フジキセキが、丁寧にカレンに頭を下げる。

 

「私はやっていないのだけど、疑わしいのが私しかいない以上しばらく寮長としては謹慎処分を受けるしかない……その間、ブーケちゃんのことを頼んでもいいかな?」

 

 それを聞いたカレンの表情から、どんどん血の気が引いていく。彼女らしくもなく、慌てて反論した。

 

「ま、待ってください! オペラオーさんに完璧なアリバイって……今日のオペラはアヤベさんの出番もたくさんあったはずですよ!

 オペラオーさんなら人の部屋に勝手に入るくらいわけないですし……」

「ほう、まるでオペラオーが犯人だとでも言いたげだな」

「だって……あんなふざけた手紙、オペラオーさん以外の誰が出すんですか! フジキセキさんが疑われるなんて、おかしいです。なにか見落としがあるかもしれません、カレンも手伝って━━」

「異議あり!!」

「きゃああ!!」

 

 ライトオが勢いよく指を突きつけて叫んだ声が、体育館の中に響く。カレンチャンは驚いてたたらを踏んだ。いつも冷静な彼女が、明らかに動揺している。

 

「なぜ、オペラオーの出した手紙の内容まで知っているのでしょうか? いえ私の口から言いましょう。あの手紙はカレンチャン、本来あなたに届いたものだからです」

「はうっ……!」

「ポッケは言っていた。トップロードにサプライズを仕掛けるための手紙が自分にも来たと。ならば、アヤベの同室であるカレンにも手紙が届いていたはず」

「カ、カレンはそんな手紙……」

「待った!!」

 

 狼狽えるカレンチャンと真実をつきつけるライトオの間を、フジキセキが手で遮る。

 レディを庇う騎士のような振る舞いで、フジキセキはカレンを弁護する。

 

「ライトオ、カレンはきっとブーケちゃんからLANEで手紙を見たんだよ。私のために捜査してくれるのは嬉しいけど、これ以上カレンの手間を取らせるわけにはいかない。

 ━━私が、謹慎処分を受けるよ」

 

 フジキセキは心底申し訳なさそうにしている。言葉の内容もカレンを信じ己の処分を受け入れるものだ。

 さっき芝居を頼んだライトオですら、本気でそう思っていると感じてしまうほどだった。

 

「ま、待ってください! ア……カレンのせいなんです! フジキセキさんはなにも悪くありません!」

「やっと白状してくれましたね。ドトウのドジでオペラオーのアリバイが完璧になり、フジさんの演技力がなければあなたのムジュンは暴けなかったでしょう」

「ライトオ、少しネタバラシが早いんじゃないかな? 手品のオドロキには余韻も大事だよ」

「すみません、私演技とか手品とか苦手なもので」

 

 カレンチャンは少しポカンとしたが、すぐにフジキセキの言葉が演技だったことに顔を赤くした。

 フジキセキが、ペロリと舌をだす。頼れる優しい寮長だが、同時にいたずら好きなのもジジツだ。最も彼女は、きちんと相手を選ぶわけだが。

 

「まっ、まさか……騙しましたね! 今のなし! リテイクを要求します!」

「ここは撮影所ではない。さぁ、最速で真実を話してもらおう」

「ううう……カレンは……すっごく悪い子でした……」

  

 カレンが自白する。ブーケドールに学園を案内するという名目で一緒に行動して鍵をそっと盗み、5分ほど離れるといって急いでブーケドールの部屋にオペラオーの手紙を置いて戻り、鍵をそっと彼女の鞄に戻した。

 一応ライトオも、メノにブーケドールが今朝一緒にいた先輩がカレンチャンであること。案内してもらっている間、5分間でも別行動をしなかったか確認させている。

 

「カレン相手にロジックでムジュンを探していたら本当にゴールデンウィークが終わってしまう。

 フジさんに頼んで正解だった。逆にポッケとメノはこの場にいなくてよかった。絶対2人とも演技できない」

 

 問題なのは、カレンはオペラオーと違って余計な口を滑らせてくれそうにはないこと。

 なので彼女の良心に訴えることにしたのだ。ライトオの知る限り、カレンも無関係の相手に罪を押し付けて笑えるタイプではないはずだから。

 

「ライトオさんも結構な棒読みでしたけど、わりといつも通りで騙されました……」

「思えばオペラオーのアホみたいな自白もフジさんへの疑いをそらすためにわざとだった気がする。フジさんは後輩に慕われていますね」

「そうですね……変なことばかりするのに配慮があって、ふざけた王様……だから、アヤベさんも……」

「それで、カレンはどうして可愛い後輩のブーケちゃんにこんなことをしてしまったのかな?

 よほどの理由があるんだろう?」

 

 フジキセキが優しくカレンを包み込んで話を聞いて上げる。カレンは涙を目に滲ませていった。

 

「カレン、グレイウィークの企画を進行させながらゴールデンウィーク中にアヤベさんとデートするための時間も必死に作ったんですよ……それなのにアヤベさん、昨日いきなりゴールデンウィーク中はずっとオペラオー達と去年のクリスマス劇のリバイバル公演で部屋には戻らないって言われて……」

「ああ、可哀想に。オペラオーはよく思い付きで人を巻き込むしアヤベも自分のことは後まわしにしがちだからな……」

 

 カレンもアヤベとの時間がほしかったのに、全部オペラオーが持っていってしまった。

 そんな時、あのふざけた手紙が届いてカレンチャンの中でなにかがキレたらしい。

 

「オペラオーの手紙で騒ぎを起こして罪を押し付ければ、仕返しができる。ついでにブーケドールも自分を頼ってゴールデンウィークも一緒にいられる。一石二鳥というわけですね」

「でも……こんなの、全然カワイくないですよね。ブーケちゃん、思ったより怖がっちゃったし、カレンはどうしてこんなこと……」

 

 カレンは演技ではなくボロボロと泣く。自分のしたことに対して罪悪感を覚えているのはライトオの目にも明らかだった。

 フジキセキは少し考えて、寮長としてカレンに申し付ける。

 

「そうだね、新入生を怖がらせるなんていけないポニーちゃんだ。罰として━━ブーケドールちゃんにちゃんと事情を話して、それからゴールデンウィーク中は一緒にいてあげること。彼女、この事件の前から親元を離れて寂しいけど今は帰れないみたいだからね」

「はい……フジキセキさんにも、ごめんなさい」

「いいんだよ、寮長だからね。さて、ポッケとオペラオーはまだ追いかけっこ中かな?」

「メノへの事件解決の連絡はもう済ませてあります、最速なので。ブーケドールさんへの簡単な説明をして戻ってくるでしょう」

 

 事件が解決し、今後の処理も決まったところで。体育館の外から、トレセン全体に響き渡る声がした。

 

「しゃあああああ!! やっと捕まえたぜオペラオー!!」

「はっーはっはっは! 簀巻きにされるなんてかわいそうなボク! 衣装もまだ直りそうにないし体力も使ってしまってこれでは明日からの公演も中止せざるを得ない!」

「どうやら決着がついたようですね、さすがポッケです」

「ライトオもお疲れ様、噂は聞いていたけど見事最速で事件を解決してくれたね、私からもお礼を言うよ」

 

 容疑者だったフジキセキが紳士のように恭しく頭を下げる。まるで舞台役者のように美しかった。

 そして手のひらでライトオの胸元を示すと、いつの間にかポケットにバラが1本入っていた。ライトオでも気付かない早業だった。

 

「ちゃんとしたお礼はゴールデンウィーク中にするとして、今日のところはバラの香りでおやすみ、私からの誕生日プレゼントだ。事件を解決すると寝ちゃうんだろう?」

「こういうことを平気でするから今日疑われたのではありませんか? だが……確かに……スヤァ」

 

 ライトオは推理も最速だが頭のスタミナも少ない。意識が途切れ、その場に倒れ込みそうになるのを、フジキセキが支えた。

 

「さぁ、ゴールデンウィークはまだ始まったばかり━━みんな、よい休日を!!」

 




カルストンライトオ誕生日おめでとう&フェノーメノも実装おめでとう。
フェノーメノのキャラストが全部『一、×××』となっていてこれにはライトオもご満悦。
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