直線検事カルストンライトオ 事件解決も最速です   作:じゅぺっと

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消えたヒシミラクルのスクール水着! ウソツキは誰だ?

 

 

「最高速を極めるためにはトップスピードに乗るまでにスタミナを失わないことも重要。あと最近暑くなってきたから泳ぎたい」

 

 直線最高速ウマ娘、カルストンライトオは水着でトレセンの屋内プールにやってきた。

 ライトオが最高速で準備運動をしていると、何やら騒がしい声が聞こえてきた。

 

「ミラ子ちゃん! 水着はどうしたんですか!」

「な、なくなっちゃった……」

「トップロード殿! ミラ子を信じてやってはくれまいか? 水着は何者かに盗まれたのじゃ!」

 

 視線を向けるとプールサイドに水着姿のナリタトップロードにノーリーズン、そしてプール嫌いで有名な制服姿のヒシミラクルがいた。

 

「事件のようですね。何事ですか?」

「あっライトオちゃん。実はミラ子ちゃんが……」

「わたしのスクール水着が盗まれたの。え~んえ~ん」

「おのれ犯人……水着なくしてはプールに入れん! トップロード殿、今日はプールトレーニングは中止して犯人を捜そうではないか!」

 

 ヒシミラクルの泣き真似はびっくりするほど白々しい。だが水着がなくなったのは事実のようだ。ノーリーズンが胸の前で腕組しながらトレーニング中止を訴えている。

 

「事件ですね。わかりました。この直線検事カルストンライトオが最速で解決してみせましょう」

 

 カルストンライトオの父親は検事であり、真実をまっすぐ最速で追い求める志はライトオにも受け継がれている。

 ゆえに近くで事件が起こったときは直線検事として最速で事件を解決するのだ。

 

「えっ……最速で解決しなくても……」

「ライトオちゃん、ありがとうございます! ミラ子ちゃんのトレーナーさんからお願いされていますし、早く見つけて一緒にプールトレーニングをしましょう!」

「任セロリ。私とあなた達は友達じゃないけど私の友達のポッケやダンツとあなた達は友達。この程度の事件一瞬で解決してやる」

 

 この3人の人となりはライトオもある程度把握している。よってライトオの中ではもう真実にたどり着いていた。

 ライトオはノーリーズンの方を向くと、ノーリーズンはニヤリと笑った。

 

「これは面白くなってきたぞ! ライトオ殿の検事としての活躍は聞いておる。その真っ直ぐな瞳から逃れられる犯人は一人もおらんとな! さぁ始まるぞ、ライトオ殿の名推理がっー!!」

 

 ノーリーズンが両手を振り上げて声をあげる。

 さっきまで腕組していて見えなかったが彼女の着ている水着の胸元にははっきり『ヒシミラクル』と書かれていた。

 

「恐らくノーリーズンがうっかり水着を忘れたのでヒシミラクルが自分が泳ぎたくないがために水着を貸した。なのでノーリーズンはずっと腕組して胸元の名前を隠していた。そうだろう?」

「一瞬で全部バレた!? なにやってるのノーリーズンちゃん!」

「おおっとこれはうっかりしてもうた! ワシとしたことがライトオ殿の眼光に圧されて胸元を隠すことを忘れてしまったようじゃ!!」

「絶対わざとだよね!? ノーリーズンちゃんのウソツキー!」

「聞いた通りのウソツキですね、私の近くにはいないタイプです。ではトップロード、判決はお任せします」

 

 ヒシミラクルとノーリーズンがはっとトップロードを見ると怒りでわなわなと震えている。2人で共謀してトレーニングをサボろうとしたのだから当然だろう。

 それでもトップロードは、模範的な委員長として努めて冷静に言った。

 

「ありがとうライトオちゃん。2人とも。詳しく……自分の口で説明してください。私は今すごく冷静さを欠こうとしています」

「ああっトップロードちゃんの目が鋭くなった! もとはと言えばノーリーズンちゃんが水着を忘れてきたせいだし早く謝って!」

「承った。トップロード殿……ライトオ殿の推理どおり全ては水着を忘れたワシの責任じゃ。ミラ子を責めんでやってくれ」

 

 ノーリーズンは切腹を受け入れる武士の佇まいでプールサイドに膝をつく。

 両手を広げ、おもむろに手でプールの水をすくった。

 

「そしてこれは……ワシからの宣戦布告じゃあああ!!」

「なにやってるのさー!?」

 

 トップロードの体に水をぶちまけるノーリーズンにヒシミラクルが目を飛び出す勢いで突っ込んだ。

 トップロードも水着なので別に問題はないが、頭を冷やすどころか火に油を注ぐ行為なのは明白だろう。

 まだなにも言わないが既にトップロードの表情はプリティーの欠片もない鬼の形相になっている。

 

「あああごめんねトップロードちゃん! でもほんとに全部ノーリーズンちゃんが悪い訳じゃなくてわたしも体よくプールをサボろうとした側面は無きにしもあらずというか……」

「仲良いですねあなた達。まるで学園の問題児コンビのようです」

 

 ヒシミラクルはハンカチで濡れたトップロードの顔を拭きながら謝る。

 ……が、もはやこの怒りは収まることをしらないと判断したのだろう。

 

「わたしを無理矢理プールにいれようとするトップロードちゃんなんてこうだ! もう一発!!」

 

 深呼吸をして覚悟を決めたあと、ヒシミラクルもプールの水をすくって、トップロードにぶちまけた。

 トップロードは2人の言い分を聞いたあと、判決を下す。

 

「……よくわかりました。2人揃って怒られたいみたいですね、私もうカンカンです! こうなったらミラ子ちゃんのトレーナーさんも呼んで缶々でカンカンしてもらいますからね! これを聞いたらノリ子ちゃんのトレーナーさんだってこう、カンカンカンですよ!」

「カンカンうるさい。普段はバクシンオーが称賛する模範委員長なのに何故こうなるのか」

 

 トップロードの語彙力が吹っ飛んだ。やれやれと肩をすくめるライトオ。

 

「うわーん! 許してトップロードちゃん! 5月は一生懸命頑張ったんです! トレーナーさんのカンカンはご勘弁を!」

「なんと、我が軍師に直訴するとは! いやぁ久しぶりに叱られてしまうのう! これは参った!」

「なんでちょっと嬉しそうなんだこの2人。そんなにトレーナーに怒られたかったのか?」

「さぁまずはミラ子ちゃんの水着を脱いで着替えますよ! ついてきてください!」

 

 半べそのヒシミラクルと困り顔のノーリーズンだがどこか楽しそうだった。ナリタトップロードも態度は怒っているが本気で腹を立てている感じはしない。

 それを見て、ライトオは満足げに頷いた。

 

「お互い相手のせいにせず自分の非をしっかり認めて罰を受けようとしていたからな。やはり悪いことをしてしまったら正直に最速で謝るのが一番だ。そして最速で罪を認めさせるのが検事の務め。これで事件解決ですね」

「いやぁしかしライトオ殿! さっきワシのようなウソツキは近くにいないと言ったが━━それはムジュンしておるのではないか?」

「なんだと? デュランダルもビリーヴもお前のようによくウソをついたりはしない」

 

 ノーリーズンがトップロードに引き摺られながらニヤリと笑った。

 

「サクラバクシンオー殿。ワシもさまざまなウソツキを見てきたが彼女ほどの大ウソツキは見たことがないのう。ワシが地獄の閻魔大王なら舌を引っこ抜いて本音を聞き出すところじゃ! ……本当に心当たりはないか? 直線検事ライトオ殿」

「バクシンオーちゃんはウソなんかつきません! さぁ、着替えますよ!」

 

 ノーリーズンの姿が更衣室に消える。ライトオはノーリーズンの言葉の意味を考えた。

 ライトオが最近バクシンオーと会話したのは視聴覚室でのナカヤマフェスタとの賭博レース疑いと全国興業でのビコーペガサスがヒーロショーの外側で悪役を蹴り飛ばした疑い。

 

「確かにバクシンオーはどちらも真実とは違う方に誘導しようとしていた。だがいつもどおりの早とちりだろう。もう少し落ち着いて考えればウソツキ呼ばわりされることもなかったのに」

 

 自分のことは最高速で棚にあげて一笑に付そうとするライトオ。しかしその時の一つの言葉が気になった。

 

【……ライトオさん。残酷な真実をつきつけるより、都合の良い嘘で上手く騙し続けてあげるのが年上の役目ではありませんか?】

「まさか、わざとだったのか? いや、何の根拠もない。仮にバクシンオーが少しウソをついていても、やつが事件を起こしていない以上検事の出る幕ではない」

 

 事件と関係ない他人の言葉を疑っていては余計な遠回りをしてしまう。ライトオはそう自分を納得させ、プールトレーニングを始めることにした。

 一方その頃。ある2人のウマ娘が人気のない空き教室で話をしていた。

 

「グランアレグリアは本気で三階級制覇……マイル、中距離、そして短距離GI勝利を目指していマース。マイルはワタシ、中距離はクリスエスが教え……短距離のコーチにアナタが付けばもはやオーガにバット。真剣に考えてもらえまセンカ?」

「お断りします。……1人のウマ娘が三階級GIを制覇するなんて幻想にすぎないのです」

 

 話を持ちかけているのは西部劇のようなアメリカンウマ娘にしてマイル王タイキシャトル。

 そして持ちかけられているのは、模範的学級委員長にして短距離王のサクラバクシンオーだ。

 

「本気で叶わぬ夢を見させるほど、それを失ったときの苦しみは計りしれません。グランさんがマイル女王になりたいならマイルで勝たせてあげればいいじゃないですか」

「バット、アナタが夢見た全距離制覇すら叶えられるほどのポテンシャルがグランアレグリアにはありマース! 彼女にとっては3200も2マイル、かつてのアナタのような志もってマス!」

「忘れちゃいましたよ、全距離制覇なんて言葉……ウマ娘は己の距離適性から逃れることはできないのです。それは、タイキさんもわかっていることでしょう?」

 

 サクラバクシンオーは、はっきりと首を振った。タイキシャトルは大きく肩を落とす。

 そして、ガチャリと物々しい金属音がした。タイキが腰の拳銃に手を掛けたのだ。

 

「とても悲しいデース……わかってもらえないなら、生姜がありまセン……」

 

 教室に一発の銃声が響いたのを、ライトオや他のウマ娘が聞くことはなかった。

 




ノーリーズン誕生日おめでとう。久しぶりにヒシミラクルがわちゃわちゃしてるのを書きたいなと思ったら大体こんな感じに。

あと先日この作品がハーメルンの二次創作日間ランキング10位に入ってました。恐らく初めての経験なので嬉しいです。
ゆるいコメディしか書けませんが、自分なりに頑張ってなるはやで書いていこうと思います。
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