直線検事カルストンライトオ 事件解決も最速です   作:じゅぺっと

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攫われる落ち葉、天高くウマ肥える秋(前編)

 秋も深まり、冬の近づく頃。カルストンライトオは、清掃活動の落ち葉集めを最速で終えた。

 

「たくさん集めたので焼き芋をするために、余っていたじゃがいもをもらってきたら落ち葉がなくなっていた。何故だ」

 

 焼き芋をするのに十分な量の落ち葉が、ものの5分ほどですっかりなくなっていた。今日は風もなく吹き飛んだとも考えられない。

 じゃがいもを手にウキウキの真顔だったカルストンライトオが首をひねる。

 

「なぁ、アンタ今落ち葉が無くなったって言ったか?」

「話を聞かせてもらおうか、アタシたちのシマに関わることなんでな」

 

 そんなライトオの周りにガラの悪いウマ娘達が集まってきた。ライトオを逃がすまいと囲んでいる。

 ライトオは動じることもなくじゃがいもを抱えたまま答える。

 

「なんだお前たち。焼き芋はできなくなったがこれは私のじゃがいもさんだ。じゃがいもが欲しければ食堂に行くがいい」

「芋に興味はねぇんだよ! 落ち葉の話を聞かせろつってんだ!」

「アタシたちの落ち葉もこの前盗まれたんだ! 落とし前をつけさせなきゃ気がすまねぇ!」

「厶、落ち葉泥棒なんて奇特なやつもいたものだ。これは事件かもしれない。詳しく聞かせてもらえないだろうか?」

 

 ライトオの父親は検察官であり、ライトオも事件解決の心得を教わっている。

 即ち、最速の事件解決こそ被害者と犯人のため。まず情報を集め、ロジックによって一見関係ない情報を一直線に繋げ、犯人を導き出すのだ。

 しかし、ガラの悪いウマ娘達は興奮しているのかいきり立っている。

 

「話すのはオメーだ! さぁ、洗いざらい知ってることを━━」

「キャンキャン吠えるんじゃねえ、下がってな」

「シ、シリウス先輩……!」

 

 その時、ガラの悪いウマ娘達に圧のある声をかけたウマ娘がいた。緑のスーツを着こなし、天狼星の流星を持つ彼女の名前はシリウスシンボリ。

 生徒会長シンボリルドルフと並ぶトレセン学園の最上級生であり、ルドルフの定めた規律に馴染めないアウトローたちをまとめ上げている。

 彼女自身かなりヤンチャなようで、小型飛行機を乗り回すこともあるとマンハッタンカフェから聞いたことがあった。

 

「シリウス先輩、落ち葉泥棒について知っていることを教えて欲しい。この事件、私が一直線に解決してみせる」

 

 相手が何者だろうと発言を控えるライトオではない。いつも通り直球で聞くと、シリウスは狼のように鋭く歯を見せて笑った。

 

「いいぜ、教えてやる。ただしその前に一つだけ聞かせろ。お前が集めた落ち葉から離れたのはどれくらい前だ?」

「そうだな、最速でじゃがいもを貰ってきたからこうして話している時間も含めてまだ10分も経っていない」

「お前ら、聞いたな? 犯人はまだ近くにいる。大量の落ち葉を持っているやつを見つけて捕まえてこい。 散れ!」

「敢えて相手の要求を呑み、スマートに話を聞き出す……流石っす、シリウス先輩! そこに痺れる憧れるぅー!!」

「いいから早くいけ!」

 

 シリウスがドンッ!と足を踏み鳴らすと、ガラの悪いウマ娘達は犯人探しのため散り散りに走っていった。

 シリウスはやれやれと頭を振りつつ、ライトオに向き直る。

 

「ま、こういうこった。後は私たちに任せな。この人数で探せばすぐにでも犯人は見つかる」

「そうかもしれない。でも約束は守ってほしい。落ち葉泥棒について知っている事を話してもらおう」

「……物好きな嬢ちゃんだ。いいぜ、約束だしな。まず、この前私たちがキャンプファイヤーをやろうとしたらルドルフが規則を盾に拒否しやがった。生徒だけで火を使うのは危ないだとよ、子供扱いしてくれるよな?」

「そういうのいいですストレス溜まるので。あなたたちが集めた落ち葉はどうなったんですか」

 

 会話をぶった切るライトオ。シリウスは少々顔をしかめたが、約束した手前答えてくれた。

 

「ともかく、火種集めのために私たちは落ち葉を集めた。清掃活動ならアイツも文句は言ってこれねぇ。ところが、夜になると集めたはずの落ち葉はすっからかんときたもんだ」

「あの人数で集めた落ち葉がまとめて無くなっていたのですね。わかりました。では早速調査を開始します」

「……強情な女だ。私たちみてぇなアウトローは信用できねぇってか?」

 

 落ち葉が盗まれた地面を見つめるライトオにシリウスが声を掛ける。

 ライトオは視線を外さず自分の思うままに口にした。

 

「アナタの統率力は聞いています。警察の犬のように、必ず容疑者たちを見つけてくれるでしょう。しかし、容疑者が本当に犯人か考えるのが検事の務めと父が言ってました」

「へぇ、アンタの父親は検察官なのか。それで、何か手がかりは現場にあるのかい?」

「ええ、早速ですが、タイヤの跡を見つけました。二つのタイヤが一直線に走り去ったようです」

 

 ライトオが見つめる地面には、よく見ると車輪の跡が残っていた。

 

「犯人は台車の類を使ったようですね」

「だろうな。人であれウマ娘であれ、落ち葉をまとめて運ぶなら何かに乗せるしかねぇ。ここはグラウンドだ。手押し車でも使ったんだろ。で、それがなんだ?」

「ええ、問題は犯人が何を使って運んだかです。私の見立てでは━━」

 

 その時、シリウスのスマホに着信が入った。ライトオも推理を聞くことなく、彼女は電話に出る。

 

「……犯人を見つけたか。どこにいる? そうか、畑だな。すぐ行く。私直々に吐かせてやるよ」

「畑。大豊食祭で使われている畑ですか」

「ああ、そこに大量の落ち葉の上に寝転がるウマ娘を発見したらしい。本人は知らねぇと言い張ってるらしいがな」

「私も同行します。位置について、よーいドン」

「私より先に行くんじゃねえよ! クソッ、速ぇなあいつスプリンターか!」

 

 こと一直線の短距離走でライトオより速いウマ娘は存在しない。直行するライトオを後ろからついていくシリウス。

 畑に近づき、ライトオが角を曲がるとガラの悪いウマ娘達が口々に問い詰める声が聞こえた。

 

「お前がやったんだろ……」

「お前がやったんだろ!」

「トレセンプールの底に沈めっぞコラ!!」

 

 ……畑に着く頃にはライトオのスタミナが切れ、シリウスの方がギリギリ先着した。

 

「クッ、曲がり角さえなければ。しかし私を追い抜くとはやりますねシリウス先輩」

「この私に追いつけねぇかもと思わせるほどの速さとはな……お前、名前は? 覚えておいてやるよ」

「カルストンライトオ、最速です。そして今は直線検事としてこの事件を最速で解決します」

 

 今は検事として名乗りを上げ、畑に入る。

 そこには確かにライトオの集めた落ち葉の束が移動していた。畑なだけあって、周辺には手押し車や台車、小型トラックまである。

 そして、落ち葉絨毯の中に沈み込んで半べそをかいている白い髪のウマ娘がいた。

 

「ひえ〜ん、私何もしてないよ〜」

「なんだヒシミラクルか。とりあえずペンギンのように寝そべっていないで起きてもらおう。それは私の落ち葉です」

「落ち葉に所有権とかあるの!? わけわかんないけどとりあえず助けて!」

「フッ、お前が犯人でなければ助けてやろう。さぁ、話を聞かせてもらおうか」

 

 ライトオが盗まれた落ち葉に寝そべっていたのはのんびりで普通のウマ娘、ヒシミラクルだった。彼女が犯人なのだろうか? 

 

                          つづく

 

 




いくつか話を思いついたので続けることにしました。
カルストンライトオはヒシミラクルと真逆の速度で動くので新鮮です。
事件は後編で解決します。
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