直線検事カルストンライトオ 事件解決も最速です 作:じゅぺっと
更新速度は最高速とはいきませんができる限り頑張ります。
「最近はメカウマ娘の研究が流行っているらしいがやはり私はメカよりメシの方が好きだな。だってメカは食べられないから」
その事件は、カルストンライトオがにんじん畑でのトレーニングを終えた時に起こった。
収穫した野菜を管理する倉庫から、お助けキタちゃんことキタサンブラックの叫び声が聞こえたのだ。
「待てっー! にんじんドロボー!!」
「キタサンの声だ。なにやら事件の匂いがする行ってみよう」
ウマ娘カルストンライトオは最高速のウマ娘であり、検事の父親を持つ。
父曰く、最速の事件解決こそ検事の務め。よってライトオは最高速で悲鳴の聞こえた倉庫まで駆けつけた。
「フム。どうやらキタサンはもう一つの搬入口に向かったようだ」
野菜倉庫は、各野菜が999個入るコンテナが用意されておりそれなりに大きい。よって、搬入口も2つ用意されていた。
追いかけようかと思ったが、出口からどこ向かったかわからない。
ライトオは一旦倉庫を調べることにした。
「にんじんドロボー、と言っていたが……少なくともぱっと見でにんじんは減っていないな」
にんじんのコンテナを見たが、何百本ものにんじんが溢れかえりごっそり盗まれた形跡はない。
ついでに他のコンテナも見てみたが、明らかに減っているものはなかった。
ライトオがコンテナを覗き込んでいると、キタサンが倉庫に戻ってきた。明らかに肩を落としている。
「うう……また捕まえられなかった……ってライトオさん! どうしてここに?」
「キタサンの叫び声が聞こえた。何があったのか聞かせてほしい。私がこの事件を解決してやろう」
キタサンとライトオは大豊食祭で知り合った。
キタサンはまだデビュー前ながらいつも張り切って畑を耕してにんじん作りに貢献しており、理事長に認められて同期のドゥラメンテと共ににんじん畑の管理を任されている。
「……実は、一週間前から毎日にんじんが一本ずつ無くなっているんです。私が倉庫に入ると、今日もコンテナの前に帽子を深くかぶったウマ娘がいて……必死で走ったのに追いつけなくて……」
キタサンが俯いて拳を握りしめる。数百本あるにんじんとはいえ一つ一つ丹精込めて作ったものだ。それを目の前で盗まれて悔しくないわけがない。
「他に犯人の情報は? ドゥラメンテからは何か聞いていないだろうか」
「ドゥラちゃんには、まだ言えてなくて……倉庫の管理は私に任せてって言ってあるから、自力で犯人を捕まえたいんですけど……ごめんなさい、他に手がかりはなくて」
犯人の風貌は帽子を被っていてわからない。
毎日一本ずつ盗む目的も不明。
だが、ライトオはピンと立てた指で自分の頭をトントンと叩き不敵な笑みを浮かべた。
「フッ……十分だ。これまでの情報を一直線に繋げれば、既に犯人は999%わかっていると言っても過言ではない」
「ぜったい過言ですよね!?」
驚くキタサンに、やれやれと言いたげにライトオは肩をすくめて説明する。
「まずこの倉庫だが、誰にでも入れる場所ではない。鍵を開けられるのは学園教師、大豊食祭メンバー、そしてキタサンのように畑を任されたものだけだ」
「あっ……確かに!」
「さらに、キタサンはまだデビュー前の稚魚だが速さは決して雑魚ではない。君から逃げ切れるのは同じくトレセン生徒のウマ娘だけだろうな」
「ありがとうございます……でも、やっぱり悔しいです。私がもっとテイオーさんみたいに速ければ」
自分を責めるキタサンに、ライトオは腕をピンと伸ばして彼女の肩に手を置いて諭した。
「焦る気持ちはよくわかる。しかし真の最高速になるには毎日を自分にできる最速で走っていくしかない。今は犯人を捕まえて安心してニンジンを食べられるようにすべきだ。あのニンジンは一本食べるだけでもスピードが上がる気がするからな」
「……そうですね! お助け大将として、事件解決もお助けしてみせます! 張り切っていこー!!」
「フッ、その意気だ。ではキタサン、君以外で野菜の管理を任されているウマ娘をリストアップしてほしい」
「はい! それならすぐに!」
キタサンはスマホを取り出し一つの表を見せてくれた。
どうやら野菜コンテナの管理表のようだ。5つの野菜に対してそれぞれ任されているウマ娘達の名前が書かれている。
にんじん…キタサンブラック、ドゥラメンテ
にんにく…シュヴァルグラン、ヴィブロス
じゃがいも…ライスシャワー、ニシノフラワー
とうがらし…ハルウララ、オルフェーヴル
いちご…カレンチャン、ファインモーション
「一つ確認したい。ドゥラメンテ、そしてシュヴァルグランはキタサンと同学年だったな?」
「はい、ドゥラちゃんもシュヴァルちゃんもクラスでも畑でもよくお喋りするんですよ! 2人がにんじんドロボーをするなんて私たちの友情に誓って考えられません!」
「そうか。では犯人は多分そのどちらかだ。言いづらいがな」
「私たちの友情が最高速で否定された!?」
尻尾をピーン!とさせて愕然とするキタサン。
「毎日一本ずつ、わざわざキタサンの目の前で盗む。そんな事ができるのは、キタサンの行動スケジュールを把握しているものだけだ。そしてこの表の中でキタサンと親しいのはこの2人なのだろう」
「ぐ、偶然かもしれないじゃないですか!」
「一度だけならな。だがここの一週間ずっとそうなのだろう? 偶然ではあり得ない」
「うう……でも、それならヴィブロスちゃんとも仲は良いんですよ!」
その時、野菜倉庫に一人のウマ娘が入ってきた。
帽子を目深に被り、目元を隠している気弱そうなウマ娘だ。
「キタさん……ライトオ先輩と、何の話をしてるの?」
「シ、シュヴァルちゃん!? どどどどうしてここに!?」
明らか様に動揺するキタサンに首を傾げる彼女はシュヴァルグラン。
短距離専門のライトオはにんにく畑に入らないのでよく知らないが、マイラーのデュランダルは時々一緒に畑仕事をしており、曰くとても気弱だが芯のある子だそうだ。
「いや、野菜の管理だけど……ライトオ先輩、ここは野菜の管理を任されたウマ娘以外立ち入り禁止ですよ」
「なに、実は最近ここでにんじんドロボーが出没しているそうだ。その事件の調査のためにここに来た。そして今私は君かドゥラメンテ、もしくはヴィブロスが犯人ではないかと疑っている」
ライトオがなんら臆することなく人差し指をシュヴァルに突きつけた。
シュヴァルはその指から目をそらすように帽子をギュッと抑えた。ライトオの勢いに怯えているようだ。
「僕が……にんじんドロボーの犯人? ムリ、ムリですよ! 僕なんかがキタさんから逃げ切れるわけがない……キタさんだって、そう思うよね?」
「うぇっ!? え、えーと、シュヴァルちゃんだって速いんだからムリなんかじゃないよ!」
「じゃあ、キタさんは僕を疑ってるんだね……」
「そ、そんなことないよ! 私は、シュヴァルちゃんを信じてるもん!」
「じゃあ、さっきヴィブロスの名前が聞こえたけど……僕の妹を疑ってるの?」
「ち、違うよ!? ライトオさん……やっぱり、2人はにんじんドロボーなんかじゃないですよ!」
にんじんドロボーの犯人を絞り込んでいたところにタイミング悪く現れたシュヴァルグラン。
帽子をかぶってオドオドしているシュヴァルグランの瞳の奥には何が隠されているのだろうか。
(……なにか、違和感がある。シュヴァルが犯人かはわからないが……彼女は、何かを知っている気がする)
つづく