Call of Duty : Kivotos Warfare 作:海藻サラダの佃煮
”怒声”
プライス大尉
タスクフォース141、CIA
サンクトゥムタワー
連邦生徒会の本部庁舎であり、同時にキヴォトス全土のインフラ制御システムを束ねる超高層建造物。サンクトゥムタワー。
その中段に位置するヘリポートに一機のUH-60 ブラックホークが舞い降りた。
「ブラボー現着。RABBITチームは前衛を。ブラボーチームは後衛だ」
「了解です。大尉」
「RABBIT3はブラックサイトに帰投次第プレデターでラズウェルと共に監視に当たれ」
「グヘヘ......、とうとうプレデターに触れる...! 」
「......変な事はしでかすなよ? 」
不気味な笑みを浮かべるモエに忠告しながらプライスはキャビンドアの縁を乗り越える。
地球上のどの建造物よりも高いであろうサンクトゥムタワーは、例え頂点から離れた中腹付近だろうとその高さはハッキリと地上との温度差が体感できる程だ。地上にいる時はあれだけ暑い暑いと言っていたサキでさえ、今となっては身を縮こませている。
「ブラボーからウォッチャーへ。タワーに到達した」
『ブラボー了解。既に
「もしもの時はRABBITに対処させるさ。ラズウェル、モエをよろしく頼む」
『えぇ。では、グッドラック』
CIAの支局長兼TF141の実質的なオペレーターであるケイト・ラズウェル(コールサイン:ウォッチャー)との交信を終えプライスが無線機から手を離したのと、待ち人がヘリポートに姿を現したのは同時であった。
「お待たせして申し訳ありません。ようこそお越し頂きました」
「プライス大尉だ。よろしく頼む」
連邦生徒会行首席政官と連邦生徒会長代行を兼任する少女──七神リンはようやっとその姿を現した。彼女は謝罪の言葉も程々にプライス大尉と握手を交わす。初めて見る大人の圧に若干たじろぐが、仕事柄感情を抑えるのには慣れている。
それよりも何枚プレートを入れているのか分からない程に分厚い防弾チョッキにマガジンポーチに満載された弾倉、極め付けはワンポイントスリングで固定されたアサルトライフルなど、過剰とも取れる重装備ぶりの方がリンの思考を奪っていた。いくら銃弾1発で致命傷な体とは言えど、行政機関の本部、国で言うところの国会議事堂などに相当する建物に訪れるにしてはかなり不相応な格好と言わざるを得ないだろう。
それでも相手はかの連邦生徒会長が直々に任命したお方。乱雑な対応など言語道断である。
「ではご案内しますので、私に付いて来てください──」
「行政官。質問があります」
踵を返したリンの背中に声が掛けられる。それも大人の声ではなく、自分らとそう歳は変わらないであろう幼い少女の声が。
咄嗟に振り向くと、そこには先程まで大人の影に隠れていたであろう少女の姿があった。
その姿を見て、思わずリンは目を見開く。
何せその全身はプライス大尉らと同じく防弾プレートに包まれていたのだ。そして手には独特な形状をした短機関銃が居座っており、右腰のホルスターには拳銃のグリップが覗く。左胸には心臓を庇うようにナイフがレッグホルスターに収められており、胸元には校章が刻まれていた。
連邦生徒会に所属するリンがその校章を見逃すわけがない。装備の質と共にリンは確信した。
───SRT特殊学園
連邦生徒会長失踪により無期限の活動停止に追い込まれた法執行機関。───そしてまだ確定では無いが、閉鎖が予定されている学園の一つでもあった。彼女の胸に刻まれた校章は、まさしくそのSRTのものであったのだ。
これは面倒臭い流れになりそうだ。リンの長年の経験がそう告げている。今は何よりも時間が無い。長話は避けたいのが本音だ。
「申し訳ありませんが、今は時間がありませんので。ご質問は控えてくださると喜ばしいのですが」
「時間は取らせません。SRT特殊学園の活動再開時期はいつ頃になるのか。それだけ教えて下されば、後は構いません」
「......連邦生徒会長が見つかり、再赴任すれば自ずと再開されるでしょう。お望み通り質問には答えました。行きますよ」
それ以降は特に返答も反論も無かった。だが背中へと突き刺される視線は相手が完全には納得していない証だということを、リンはよく分かっていた。
それでも言葉に出されない以上、気に留める必要は無い。ツカツカと多少の大股早歩きでリンは先頭を進み始めた。
特に会話もなく、やがて一行はエレベーターへと辿り着く。元々貨物運搬用と兼用で設計されたタワーのエレベーターは、重装備の人間を多数乗せても警告灯の一つも灯さなかった。
本当にこの人たちで大丈夫なのだろうかという不安な気持ちを、あの連邦生徒会長が選んだのだからきっと大丈夫だろうと上書きしながらリンはエレベーターのボタンを押し込んだ。
高層建造物故、移動を円滑に行えるように並のエレベーターの数倍の速度が出せるようにセッティングされたそれは、マイナスGと共に勢いよく降下を始めた。一応来賓が体調を崩したり、恐怖心を与えないためにこういった時は事前にエレベーターの速度を緩めておくものだが、彼ら彼女らの佇まいを見れば、そのようなもてなしは不要であろう。
「───今更ですがプライス大尉。もう既に詳細はお聞きですね? 」
沈黙に耐えかねたように、リンが口を開く。
「あぁ。ブリーフィングでバッチリとな」
「......覚悟は、出来ていますか? 」
「俺は軍人で、これは命令だ。俺個人の覚悟だとか、そういう話では無い」
「......そうですか。では、どうか頼みます。
「生徒に銃を向ける教師か。面白くないジョークだ」
「それでも生徒の皆さんはそうお呼びしますよ。勿論、私も」
やがてマイナスGによる浮遊感がピタリと収まり、目の前の扉が開かれる。
「───では」
「あぁ」
月雪ミヤコ
タスクフォース141
D.U.外郭地区
「コンタクト! 」
サンクトゥムタワーから一歩外に出てみれば、そこは戦場だった。
鳴り止まない銃声。鼓膜へ直接響く爆発音。無線機からは怒鳴り声。
───どうしてこうなった?
確かエレベーターから降りて来て早々、連邦生徒会へわざわざ足を運んできたクレーマーの方々に絡まれ、それに七神首席行政官が静かにキレて、そこからいつの間にか話題がTF141へと移って、実はプライス大尉が連邦生徒会長から直々に連邦捜査部”シャーレ”という超法規的機関の顧問に任命されていたという初耳の真実が明かされて───
ならば早速そのシャーレのオフィスとやらに行きましょう、となったところでこの騒動である。
どうやら連邦生徒会の行動スケジュールを何らかのルートで入手した何者かにより、連邦生徒会に恨みを持つ現地の不良生徒が収集されこの騒ぎを引き起こしているらしかった。
「邪魔です」
まだ状況は飲み込めていないが、兎にも角にも目の前には敵がいる。そして上からはオールウェポンズフリー。つまり自己判断で好きに撃っていいと命令されている以上、戦わないわけにはいかない。
現にミヤコは近くに接近していた敵勢力である不良生徒、現地用語で言うところの”スケバン”と呼ばれる存在に向けて.45APC弾の雨を降らせたところである。しかもフルオートで、30連装マガジンが空になるまで一発も余すこと無くだ。
ミヤコが構えるベクターの発射速度は、恐らく量産されたSMGの中では最速であろう脅威の1200発/分。一秒で18発の弾丸を発射するのだ。いくら相手がキヴォトス人だろうと、流石にオーバースペックである。
そんな暴力の化身みたいな銃を、ミヤコは真顔かつ容赦なくランボーよろしくフルオートで振り回していた。
当然そんなゲームみたいな運用法は現実では推奨されていない。過度な連射は加熱により銃身が傷つき、寿命低下にも繋がるし、何よりも弾持ちが悪い。当然ミヤコはそんなこと百も承知である。
だが今のミヤコはとにかく腹の虫が治まらないのだ。別にクレーマーの方々が皆さん揃いも揃って大層立派なモノをお持ちだったことに嫉妬してたりだとか、プライス大尉が”相棒”である自分に隠し事をしていたことに腹を立てている訳では無いのだが。決して。
「いくらなんでもやりすぎなんじゃ.......」
そんなトリガーハッピーなミヤコを見ながらそうポツリと零したのは、ツーサイドアップの菫髪を持った少女、早瀬ユウカであった。
彼女の手にはSIG社製のMPX短機関銃が豪勢にも二丁握られており、良くも悪くも平凡的な性能のMPXの火力を圧倒的な投射力でカバーする戦法を取っていた。
2丁拳銃ならぬ2丁短機関銃スタイルの貴方にだけは言われたくないという本音をグッと抑え込みつつ、ミヤコは返す。
「ホローポイント弾を容赦なく撃ってくる相手に、やり過ぎも何もないでしょう。───そもそも、あなた達は何故当然のように付いて来ているのですか」
「流石にあの流れで、そのままタダで帰れる訳ないでしょ。それに帰ろうにも駅がこのルート上にあるんだから、無茶な話よ 」
「......はぁ。民間人に負傷者が出ると面倒なのですが」
「なっ...! 民間人って! 私、これでもうちの学校では生徒会に所属していて、それなりの扱いなんですけど!? なんで私が───」
「お喋りは済んだか? 」
───低い男の声。
ビクリ、と振り返ると、そこには骸骨フェイスの男が銃と共に突っ立っていた。そこに生気といった気配は無く、まるで幽霊のように。
「ひぁ!? 」
「...っ! ち、中尉。あまり驚かせないでください」
「別に驚かせる気は無かったのだが。まぁいい。RABBIT1。プライスからの伝言だ。前進しろ」
「......それだけですか? 」
「ヘイロー馬鹿のお前らには、これだけ伝えとけば十分だろ。もしもの時は俺とRABBIT4が援護する」
「民間人が数人同伴してますが」
「敵に提供する的は多いほうがいい。狙いも分散できる」
ゴーストから告げられた言葉に、ミヤコは察する。
ただその場に偶然居合わせただけの民間人を利用してでも、道を切り拓けと。
別に民間人の彼女たちも、戦いを拒否している訳では無い。現にユウカは先程から9mm弾の雨を降らせ続けている。
だが、それでも本来守るべき立場の人々に戦闘を強制させるこの現状に、ミヤコは少しだけモヤッとした。
「......分かりました。デッキ配置は? 」
「左翼は大尉とギャズが、右翼はソープとRABBIT2が抑えてる」
「では私達はこのまま直進しましょうか。中尉とミユは援護、頼みますよ? 」
「ぁ...。わ、私のこと、ちゃんと覚えててくれてたんだ......」
「当然ですよ。───では、”民間人”の皆さん。行きましょう」
サンクトゥムタワーと
───鼻をつく火薬の臭い。響く轟音。
サンクトゥムタワーを出発してから暫く経っても喧騒は絶え間なく続くどころか、より一層激しさを増していた。唯一の救いは、そこには鉄さびにも似た、血なまぐさい赤い臭いが漂っていなかったことぐらいだろうか。
最初の銃声が鳴った時にはまだ太陽は真上にあった筈なのに、いつの間にか陽は傾き、高層ビルの隙間からは茜色が漏れ始めていた。車や建物の残骸や瓦礫が黒煙と共に転がる様は、まるでSF小説の一節を切り取ったかのようだった。
そんな街中を、少女らは駆ける。
市街地は車や建物など身を隠せる場所が多く、射線が通りにくい。そのため、自然と交戦レンジが長いスナイパーライフルなどは不利になり、取り回しの聞く短機関銃やカービンライフルが輝く。そういった状況において、短機関銃を使用するミヤコやユウカはそのポテンシャルを遺憾なく発揮できるのだ。
「ユウカさん! 右、マークスマン4人です! 」
「分かった! 」
返答から直ぐ。乾いた銃撃音。そして質量を伴った落下音。
ミヤコが思っていたよりも、ユウカの射撃の腕は悪くない。消去法でカバー役として選ばれながらも、こうしてSRT出身のミヤコと共に連携を決められてる以上、生徒会役員の名は伊達では無いだろう。(本人曰く計算がどうだの、理論的にこうだのらしいが、ミヤコの脳内にはロクに記憶されていない)
これは自分も負けてられないと、ミヤコの闘志に火が入る。
側面のマガジンキャッチボタンを押し、マガジンリリース。残り数少ない弾倉を叩き込む。
先程から盾にしているSUVの左側面から腕と銃だけを出し、今度は2点バーストで直ぐ側にまで迫っていた三人組の不良生徒にフォーティファイブをお見舞する。左翼と右翼の二人は退けられたが、残り一人を取り逃がしてしまう。
刹那。反撃の銃撃が飛んでくる。
しかし、反動を制御しきれていないのか、銃弾はミヤコらに命中弾を与えることはなく、手前のSUVに吸い込まれていった。
(銃声が重い...。5.56mmでは無さそうですね。恐らく、7.62mm......。当たったら痣ができそうです)
着弾の衝撃により作動した、キヴォトスでは微塵の役にも立たないであろう警報装置を鳴り響かせるSUVの影で、ミヤコは冷静に考察する。
結果として相手が十分な脅威に成り得ることを導き出すと、懐からある物を取り出す。
ミヤコの手に握られたのは、その形状から『アップル』の愛称で呼ばれているM67手榴弾。かの米軍お墨付きの代物だ。
ピンを抜き取り、安全レバーを放したまま2秒程度わざと放置。こうして起爆までの時間を調整することで、相手側へ着弾すると同時に投げ返す隙すら与えずに即爆発するという算段だ。
「フラグ、アウト! 」
掛け声と共に手榴弾がミヤコの手から離れる。10mほど宙を舞ったそれは、綺麗に相手が隠れている物陰へと転がり落ちていった。
「───! 」
叫び声が声になる前に手榴弾は炸裂。内部から飛び出た184gの炸薬と、それによって生み出される破片と衝撃は半径15mに絶対的な破壊をもたらす。
爆発から10秒あまり。そこからは何も起こらなかった。
「行きましょう」
周囲の安全を確保したと判断したミヤコはユウカの肩を叩いて合図を送り、前進。
遠くからは微かにだが、サキが使用しているM250機関銃の連射音が聞こえてきた。サキが使用しているM250が吐き出すのは、まだキヴォトスでは流出していないであろう、新型の6.8×51mm弾。そこに標準装備のサプレッサーが加わることで、その唯一無二の発射音は遠くからでもハッキリと認識できる。
味方との合流が近いと、多少安堵した時であった。
「マシンガンだ! ロシアの連中から貰ったマシンガンを持って来い! 車ごとだ! 」
不意に怒鳴り声が街中に響いたかと思うと、次の瞬間には唸るようなエンジン音。
時速数十km/hで現れたそれは、ミヤコたちの前に躍り出たかと思うと、急停車して───
「マシンガン!! 」
気付けば、ミヤコは本能的に叫び、近くの放置車両の影に転がり込んでいた。
それと同時に轟音と衝撃。地面を見れば、先程まで立っていた道路は、コンクリートがえぐり取られていた。
一口に機関銃(マシンガン)と言っても、その種類は様々で、5.56mmや7.62mmみたいな小銃と共通の弾丸を使用するタイプもあれば、12.7mmや14.5mmと言った、生物相手には過剰火力な代物を撃ち出すタイプもある。
音やコンクリートのえぐりよう、そしてわざわざピックアップトラックの荷台に銃座を固定している辺り、現在進行系で対峙しているのは、恐らく後者の部類であろう。
いくらヘイローのご加護があれど、直撃すればほぼ確実に病院コース。ミヤコの額に汗が伝った。
「隠れても無駄だぜぇい? その車ごとぶち抜いてやる! 」
銃座がクルクルと回転を始める。直接は見えていないが、感覚で分かってしまう。
残念ながら車という物体は身を隠す遮蔽物にはなっても、映画やゲームのような銃弾を防ぐ盾にはなり得ない。軍用に強化されたものならまだしも、一般車はそこらの一般人の蹴りで凹んでしまうほどのペラペラな鉄板しか持っていないのだ。
「ど、どうすればいいの...?」
すぐ側のユウカが零す。その声も、体も、震えていた。
───あぁ。だからこの方法は嫌だったのに。
とりあえず、民間人の彼女らだけでも逃さなければ。
揺動用の
「銃手がやられた! スナイパーだ! 伏せろ! 」
一瞬、何が起こったか分からなかった。唯一分かったことは、銃手の頭が撃ち抜かれ、無力化されたことのみだった。
唖然としていると、無線から感アリ。
『俺たちを忘れてもらっちゃ困るな』
「......中尉でしたか。お見事です」
『止まっている的を外す方が難しいだろ』
さっきからやけに敵の数が減っていたかと思ったら、そういうことだったのか。陰ながらも、援護射撃はキッチリと行われていたのだ。
頼りある援護に感謝しつつも、ミヤコの苦難は消えない。銃手は無力化された。だがトラックと機関銃本体は未だ健在なのだ。銃手を交代されればまた振り出しに戻るし、仮に機関銃を扱える人材がいなくても、トラックで突っ込まれればひとたまりもない。
手榴弾を投げ込もうにも、どうやら相手のトラックはある程度の防弾加工が施されているようで、フロントガラスには防弾板まで貼り付けられていた。それこそ燃料タンクの真下に転がさせて誘爆でもさせない限り、一撃撃破は厳しいだろう。
悩んでいると、ふと一人の少女を思い出す。
”民間人”その2。羽川ハスミ。彼女が持つライフルは精度を高めた折り紙付きの代物。それにノンスコープながらも、彼女の狙撃の腕は一流である。本人曰く直感に近い狙撃法というが、彼女の狙撃の腕を持ってしてなら防弾板の間にある狭いバイザー越しに運転手を無力化できるかもしれない。
思い立ったが吉日。市街地戦に向かない武装故、後方に待機させていたがここは手をお借りしよう。
「ハスミさん。お願いがあります。あの車の運転手を撃ち抜けますか? 」
「徹甲弾を使用すれば十二分に可能かと」
どうやら既に同じことを考えていたらしい。ミヤコが声を掛けた時点で、ハスミは既に近くの瓦礫にバイポットを立て、銃身を固定。射撃準備を済ませていた。
「っ」
照準を安定させるため、息を止める。それと同時に銃口から徹甲弾が射出。
弾道は寸分狂わず、見事にバイザーをすり抜けフロントガラスを突き破った。
気絶し、脱力した運転手の体がハンドルに倒れ込んだのか、けたたましいクラクションが騒音となって響く。
「スズミさん、今です! 閃光弾! 」
「はい! 」
ミヤコの掛け声と共に”民間人”その3。銀髪の少女、守月スズミがM84
190デシベルの壊滅的な轟と、神々しささえ覚える100万カンデラの閃光が敵を襲う。
「ぐぁぁっ!!?? 」
狼狽える敵に.45APCが、9mmパラベラムが、.303ブリティッシュが襲いかかる。
『RABBIT2から1へ! 援護する! 』
『俺の分も残しとけよ! 』
無線機からサキとソープの声が交互に聞こえてくる。どうやらテクニカル出現の報を受け、こちら側に駆けつけて来たらしかった。
次の瞬間にはサキの持つM250が6.8mmの集中豪雨を降らせ、撃ち漏らしはソープが持つFN SCAR Mk.17 から放たれた7.62mmが丁寧に頂いた。
「RABBIT1。無事だったか」
「えぇ。民間人含めて何とか無事ですよ...。それよりもRABBIT2。あなたのほうが重症に見えますが...」
脚と腕の止血ベルトを指さしながら、ミヤコは言う。
「機関銃を撃つのに夢中になっていたら、いつの間にかすぐ近くにまで敵がいてな...。私としたことが、不覚だった」
「それで、怪我の具合は? 」
「同行していたゲヘナ風紀委員に手当して貰った。安心しろ。なんら活動に支障は無いぞ」
「...次からは気を付けて下さいね? 」
チラリと視線を移すと、サキらに同行していた”民間人"その4。火宮チナツが大きくため息を付いたのが見えた。サキはSRT時代からガンガン突っ込むタイプの戦法ばかり取っていたので、怪我が絶えなかった。TF141入隊後は多少鳴りを潜めていたが、今回個別行動をするにあたり、SRT時代の癖が再発してしまったのだろう。後で礼と謝罪を入れなければ。ミヤコは思った。
「そういえばキャプテンとギャリック軍曹は? 姿が見えませんが」
「あの二人なら先に行ってる。血眼でロシア人を探し回ってるってよ」
「そうですか。あのお二人方なら恐らくお丈夫でしょうが、私達も急ぎましょう」
進み始めたミヤコの背中に、思い出したかのようにソープが声を掛けた。
「──そういえばミヤコ。この騒ぎの首謀が誰か、聞いたか? さっき行政官から無線で伝えられたんだが」
「判明したのですか? 生憎戦闘に夢中だったもので......。教えてくださると嬉しいです」
「ワカモだ。この前とっ捕まえた、あの仮面女と同一人物だ。矯正局から脱走したらしい」
ソープから告げられた報告に対するミヤコの第一の感想は、驚きよりではなく、やっぱりそうかと、半ば呆れであった。
「...やはり、ヴァルキューレに引き渡すべきでは無かったですね。いくら証拠不十分と言えど、CIAに留めて置くべきだった」
「同感だ。担当の尋問官は情けでも掛けたのか? 」
「ここで愚痴を零したってどうしようもない。また捕らえてやればいいだけさ。行こう」
一行は再び戦場を進み始めた。
連邦捜査部オフィスまで、残り3km。
─────チェックポイント到達─────
評価、感想、お気に入り、とても励みになります。週一ペースの亀更新ですが、今後ともよろしくお願いいたします。