呪術×妖怪モノ。スケッチブックを添えて   作:久保サカナ

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これまでのあらすじ

呪術師になりたい夏油傑少年、術師殺しに弟子入り志願してしまう


基本的にブレーキのない少年

◇◇◇ side 栗原渚◇◇◇

 

「弟子にしてください!!僕は強くなりたいんです!!」

 

スグル君はいきなりそう言うと甚爾さんの方に向かってガバっと頭を下げた。

甚爾さんはポカンとしているが私も正直驚きだよ…でも小学生男子って考えるとこの唐突な行動も納得…なのかな?

 

「あー、とりあえず頭上げろ」

「はいっ」

「そもそも何で強くなりたいんだお前は」

「強くなって呪術師になって弱い人たちを守りたいんです!」

「悪いことは言わねぇ、やめとけ」

「即答!?」

 

そこまで言うと甚爾さんは頭をがしがしと掻いて改めてスグル君と向き合った、目がやけに昏いというか嫌なことを無理矢理思い出そうとしている人間の顔をしている。

 

「呪術界ってのはドブのヘドロがマシに見えるくらいドロッドロに腐った世界なんだよ、”世のために呪霊を祓う“なんてお題目を掲げちゃいるが呪霊よりも醜い連中がウジャウジャ居る」

「そんなになんですか」

「具体的には?」

 

スグル君の食い付きが凄いなぁ、まぁまだ小学生だし大人にやめろって言われても素直に引き下がるわけないよね。ましてやスグル君は術式という超能力を手にしてしまったわけだし。

 

「”我が家の出身でなければ術師にあらず、術師にあらずば人にあらず“とか抜かす連中が御三家つって絶大な権力を持ってんだよ…ひでぇもんだぜ、ガキを呪霊でいっぱいの部屋に押し込んで死んだらそれまでみてぇな教育という名の拷問してやがる、奴らにとっては優秀な術式を持たねぇ奴らは自分の子供であろうと猿と一緒だ、生き残ってもいくらでも代えの効く肉盾以下か女なら孕み袋にされる、動物園のチンパンジーの方がマシな扱いされてるぜ」

「そんな…」

「酷い…」

 

これには私も絶句だ、呪霊を祓うのが仕事なのに実の子供にそんなモロ虐待を通り越して殺人未遂な真似をするなんて…なんか前世で大庭君に貸してもらったfateってゲームと小説にそんなシーンあったな。あれは流石にフィクションだと思っていたけれどそういうことがリアルで行われている業界ってことか。

 

「あと、これは裏の事情になるんだがな。呪術界は上層部の連中による新人潰しが横行してるんだよ、将来有望な新人を目障りだって等級違いの任務…とてもじゃないが勝てねぇ呪霊や呪詛師と戦わせて死んだら“事故死”として処理したりがまかり通ってる、お前みたいなのはまず餌食になるだけだ」

 

うわぁなんかすごい業界の闇を聞いてしまったぞ、これスグル君みたいな人間はすぐに消されるってことじゃないか。隣のスグル君の顔をチラッと見ると憤りとショックで真っ青になってる。まだ社会のしゃの字も知らない小学生にはだいぶ刺激が強いな!?

 

「しかも自分たちでそんな真似をしておいて人手が足りねぇ!って万年人材不足でヒィヒィ言ってんだ、上層部の連中は前線に出るわけねぇから仕事は前線に出る連中に割り振られる事になってソイツらは過労死寸前までコキ使われてる、笑っちまうだろ?」

 

ブラック通り越して暗黒通り越してダークネス業界ですね、まぁ人手が足りてたら年間行方不明者と怪死者が述べ1万人超えの国になってないか…多分私たちが呪霊のことを知らずに平和に過ごしてこれたのは前線に出ている人たちとそれを支える人たちの頑張りのおかげなんだろうなぁ。それでも守り切れないのが死んでしまっている1万人ってことか。

 

それにしても甚爾さんやけに詳しいな、呪術業界の下請けをやってるって言ってたからそのせいだろうか。

 

「俺がやけに詳しいなって疑問に思ってるだろ。俺な、御三家の出身」

「えーと、つまり…」

「実体験って…コト!?」

 

思わずちいかわみたいな泣き声出そうになっちゃった…そりゃあ嫌なところが詳しいはずだよ!というかこれ呪術界って聞いた限りギリギリのラインを自転車操業してかろうじて保ってるって感じだなぁ。

いや、甚爾さんが嘘をついてる可能性もゼロじゃないけど嘘ついてどうするのって感じだし…このタイミングで嘘や過大表現を使うなら私たちを危険な業界に入れないように慮ってくれての嘘や過大表現だろうしね。

 

ふとスグル君の方を見るとまだ諦めきれないという顔だった、スグル君ってば結構強情だよね。私としては友達にそういうヤバそうな業界には入って欲しくはないなぁ…。でも術式という力を持ってしまった以上縁を切る事も出来なさそうだし…そもそも妖怪ウォッチを手に入れた私も例外じゃないよね。

 

そうこうしていると「ご飯出来たわよー!」という恵子さんの声が聞こえたのでひとまず昼食をご馳走になることにする。どうやら冷やし中華のようだ、妖怪たちの分もある。

「本当は大やもりくんの分も買って来てたんだけどね」とは恵子さん談、でもお世辞にも広いとは言えないので召喚はしない。ごめんねやもりくん、でも引きこもりの君がいけないのだよ。

冷たい麺の喉越しと酸味の効いた汁、色とりどりの食材のハーモニーに舌鼓を打っているとウィスパーがふと声を上げた。

 

「そういえば昨夜スグル君のために情報収集をしていたのですが呪術高専とやらはどうなってるんでウィス?」

「呪術高専?」

「そう呪術高専とは!「平たく言えば呪術師を育てる学校だな」ワタクシの台詞ゥ!!」

 

台詞を取られてムキー!!!となってるウィスパーに対してしてやったりという顔をした甚爾さん、昨夜ウィスパーにやられた事を見事にやり返してるなぁ。

 

「呪術師にも学校があるのかウィスパー?」

「ハイ、スグル君!御三家や呪術師の家系以外にも呪術の素質を持つものが存在する以上、正しい知識や技術そして呪詛師にならないように教育を施す機関…それが呪術高専でウィス!卒業後も任務の斡旋やサポートもしてくれる御三家を除けばまさしく呪術界の要でウィスね」

 

ウィスパーはPadをスワイプしながらそう説明する、この執事なりに考えてはいるんだろうな。スグル君も「よし、将来はそこを目指して〜」と呟いている。

 

「甚爾さん、”コイツ人がせっかく隠してたのに何で言いやがったんだ“みたいな顔してるけど、短い付き合いで分かったことといえばスグル君は1度決めたら一直線というかブレーキが存在しないタイプだから止めるよりかは正しい道に誘導する方が建設的ですよ」

「そうよぉ、というか貴方はあえて言っていないみたいだけど呪いってのは見える人間に寄って来るものなんだから1度でも関わった以上は自分の身と手の届く範囲を守る術くらいは学ぶべきよぉ」

 

難しい顔で黙り込んだ甚爾さんに恵子さんが「良いじゃない甚爾君」と声をかけた。

 

「昨夜ね、呪霊に襲われた時に1番辛かったことは『もう甚爾君に会えなくなっちゃう』って事だったの。誰だって死んで大切な人に会えなくなるのは辛い事だわ…甚爾君は呪術師の悪いところばかり言うけれど呪術師って昨夜のこの子たちや甚爾君みたいに『大切な人を守る』ことや『また誰かを大切な人に会えるようにする』っていう大事なお仕事でしょ?せめて自分と自分の周りを守れるくらいは教えてあげても良いんじゃない?」

「恵子…」

 

ハッとした顔の甚爾さんに対して恵子さんは「それにね…」と続ける。

 

「ぶっちゃけると甚爾君って自他共に認めるヒモじゃない、せめて“近所の小学生に護身術を教える”くらいのボランティアの実績が無いとご近所さんの目が痛くて…いやね、私がバリバリ稼いで甚爾君を養うつもりではいるんだけどね」

 

「よし、坊主。いや夏油、明日からお前に身体作りと実践的な格闘術を教えてやる、厳しく行くから覚悟しろよ」

「本当ですか!?」

「やったでウィスねぇスグル君!」

 

まずは情に訴えて気が緩んだところに正論をぶつけて言うことを聞かせる、恵子さんってば良い人なのは間違いないけど結構尻に敷くタイプなんだなぁ。というか甚爾さんヒモだったのか…。

 

「何はともあれ良かったね、スグル君」

「何言ってんだ栗原、テメーもだぞ」

「えっ」

「呪いってのは見える奴に寄って来るんだ、テメーも例外じゃねぇ」

「まぁまぁ渚、これから妖怪を探すにせよ身体作りは必要よぉ」

「えーと、よろしくお願いします?」

 

これが後の特級呪術師、栗原渚の将来が決まった瞬間であるとはまだ誰も知らないのであった

 

 

 




今回も難産だったので評価をください!

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