デュエルアカデミアノース校との友好デュエルが近づいている。今日の議題は、その代表選考についてだ。
昨年はカイザーこと丸藤亮が。しかし、今年は相手が1年生ということで、こちらも1年生を代表にすることとなった。
そのため、会議室には多数の先生の他に、カイザーも招かれていた。
「では問題は、誰を新しい代表にするかだ…」
鮫島校長が悩ましそうな声を出すと、会議を見守っていたカイザーが候補者を推薦する。
「一色カノンに、遊城十代」
カイザーが闘った中で、可能性に溢れた者たちだ。
「ゆ、遊城十代っ…!?」
その名前に、クロノスが過剰に反応した。
特待生のカノンはともかく、オシリスレッドである十代に関しては、先生たちの一部から、懐疑的な声が聞こえてくる。
「この二人なら、面白いデュエルを見せてくれると思います」
「うむ。この二人なら実力も申し分ない」
鮫島校長には異論がないようで、候補者を決定しようとする。
「(い、嫌ナノーネ。億が一にも、ドロップアウトボーイが代表になるナンーテ!)」
クロノスが顔を顰める。彼女が負けるとは思えないが、クロノスはこれまで何度も痛い目に遭ってきたのだ。保険をかけておきたい。
「校長! シニョーラ・一色の方がどう考えても、成績優秀ナノーネ。わざわざドロッ…んんっ…遊城十代を候補にする必要はないノーネ! それに、遊城十代を代表候補にするくらいなら〜ば、私は三沢大地を立候補させるノーネ!!」
ラーイエローの三沢は、オベリスクブルーの万丈目にも勝った男だ。候補者に選ばれるのに、反論の余地はない。
「では、こうしよう。三人を戦わせて、より多く勝った者を代表にするというのは。どう思うね、丸藤くん」
「それは、面白そうですね。三人による総当り戦ですか」
総当り戦は3日かけて行われる。第一試合はカノンVS三沢、第二試合は三沢VS十代、第三試合がカノンVS十代となった。
女子寮にあるカノンの部屋。そこで、三沢と十代とのデュエルが決まったことを、明日香から聞いた。
「三沢大地に、遊城十代…。知らないな」
「そういえば、あなたは十代とも三沢くんとも会ったことがなかったわね」
両名とも聞き覚えがないが、明日香は親しいようだ。特に、遊城十代に関しては呼び捨てにするほどの仲らしい。
「三沢くんはラーイエローのトップ。今年の受験生の中で、1番の成績で合格したのよ。あなたを除いてね」
「万丈目に勝った生徒が、そんな名前だった気がしたなぁ」
頭脳明晰な生徒。代表に選ばれるのも当然というわけか。
「十代はオシリスレッドだけど、入学試験でクロノス先生を倒してるわ。私や万丈目くんも、あいつにしてやられたし、実力自体はオベリスクブルー以上ね」
「へぇ、そんなに強いやつがまだいたんだ」
明日香や万丈目に勝ったとなると、相当期待できそうな相手だ。早く闘ってみたいとワクワクする。
「あとはそうね…あなたと同じく、デュエルモンスターズの精霊が見える、とかかしら。本当かどうか、私には分からないけどね」
「精霊が見えるかもしれない…。遊城十代、か…」
俄然興味が湧いてきた。茂木も精霊が見えるが、必要なとき以外は引きこもっているので、話が弾むことはない。ローズとも波長が合わないので、精霊が見える初めての友人ができるかもしれない。
カノンと三沢が闘うデュエル場には、大量の観客が押し寄せていた。その中には、大徳寺先生や鮫島校長の姿もある。
他にも、遊城十代の弟分の『丸藤翔』。コアラそっくりな留年生『前田隼人』の二人も、偵察も兼ねて観戦に来ていた。
彼らの近くに、二人の男女が歩いてくる。
「お兄さんに、明日香さん!」
明日香とカイザーの登場に翔が反応する。名前を呼ばれた明日香は、キョロキョロと周りを見渡す。
「十代はどうしたの?」
「それがアニキってば、起こしても全然起きないんだよ」
「そうなんだな。昨日の夜、遅くまでデッキの調整してたからって、寝坊したら意味がないんだな」
デッキ調整はもちろん大事だが、それと同じくらい偵察も大事だ。相手のデッキに何のカードが入っているのか分かれば、それだけデュエルを有利に進められる。
「もしかしたら、これから闘う相手のデッキを、知りたくなかったのかもしれないな」
「十代らしいわね」
話の途中で、司会を務めるクロノスのアナウンスが入る。
『シニョール、シニョーラ、お待たせしたノーネ。ただいまから、学園代表決定デュエルを始めるノーネ!』
待ちわびた生徒たちから歓声が響く。
『オベリスクブルーからは、一色カノン!』
『そして、ラーイエローからは、三沢大地!』
向き合う二人。カノンからの第一印象としては、賢そうな顔をしている程度のものだった。
「こんなに早く君と戦えるなんてね。宝玉獣デッキの一色カノンくん。その実力、確かめさせてもらう」
「カノンでいいよ。楽しいデュエルをしよう」
三沢からは、自信に満ち溢れている様子が感じられる。
「君が闘ったデュエルは可能な限り研究させてもらった。他にも、ひとづてに聞いた宝玉獣のカードを分析し、完成したのがこのデッキだ!!」
「へぇ、そんなに私の宝玉獣のことを考えてくれたのか」
所謂メタデッキと言われる、ピンポイントな対策を施したデッキ。相手への理解度が重要となってくる高等戦術だ。
『では、始めるノーネ!』
クロノスの仕切りで、カノンと三沢がデュエルディスクを構えた。
「俺のターンだ! ドロー!」
三沢がカードを引く。
「《
鉄でできた素体に、紫色の装甲を着けている。剣と盾を武器にしているマグネットモンスターだ。
磁石の戦士Ω- 攻撃力1900
「いきなり攻撃力1900のモンスターか」
「これからが本番だ!」
三沢が手札のカードを1枚引き抜いた。
「さらに俺は、永続魔法《禁止令》を発動させてもらう!」
「あのカードは…!」
カノンが驚きに目を見開く。三沢の場に真っ白な看板が立てられた。その効果により、カード名を1つ宣言する。
「《禁止令》がフィールド上にある限り、君は《宝玉獣 ルビーカーバンクル》をプレイできない!!」
「なに!?」
禁止令の看板に、“宝玉獣 ルビーカーバンクル”の名が刻まれる。
「宝玉獣とそのサポートカードで構成されている君のデッキは、モンスターが1種類でも欠けるだけでバランスが崩れてしまう。取り分け、《宝玉獣 ルビーカーバンクル》が封じられてしまうと、一気に動きを制限されるはずだ」
「まさか、ルビーを禁止されるとはね…」
宝玉獣デッキをよく研究している。この三沢大地という男。カノンが思っていたよりも、ずっと厄介な相手かもしれない。
「ルビーカーバンクルは宝玉獣の要。カノンは苦しいデュエルを強いられそうだ」
「えぇ」
カイザーがカノンと闘った経験から、デュエルの行方を予測する。
「1枚伏せてターンエンド! (フフ…驚いているようだな。だが、俺の宝玉獣封じはこんなものじゃないぞ)」
三沢が胸中でほくそ笑む。彼のデッキには、さらなる対宝玉獣用のカードが眠っていた。
「私のターン、ドロー!」
カノンが引いたのは、“宝玉獣 ルビーカーバンクル”のカード。禁止令がある今は使うことができない。
「それなら《宝玉獣 トパーズタイガー》を召喚!」
トパーズの宝玉が砕け、中から強面のホワイトタイガーが吼える。その頭部と脚からは、尖った刃が生えている。
トパーズタイガー 攻撃力1600
『あんなモンスター、オレ様がやっつけてやるぜ!』
「バトルだ! トパーズタイガーで、磁石の戦士Ω-を攻撃!」
トパーズが敵モンスターに飛びかかる。
「攻撃力の低いモンスターで攻撃!?」
「無茶なんだな!」
翔と隼人が驚くが、三沢は冷静にそのタクティクスの意図を把握する。
「(トパーズタイガーには攻撃力を400ポイントアップさせる効果がある。ここは──)」
瞬時に回答を導き出し、行動に移す。
「リバースカードオープン!《マグネット・フォース・マイナス》!!」
『があっ…!』
カードから赤い電磁波が飛び出し、跳躍するトパーズに当たった。
「このカードは発動後、モンスター1体を対象として装備カードとなる! そして、このカードを装備したモンスターはマイナスの磁気を帯び、マイナスモンスターとなる!」
「トパーズタイガー…!」
トパーズの全身からマイナスの磁気が迸る。さらに、磁石の戦士Ω-からも磁気が迸っていた。
「磁気モンスターは同じ磁気同士の場合、バトルは無効となり終了する!」
磁石の戦士Ωはマイナスモンスター。マイナス同士は磁力が反発し合い、トパーズは弾き飛ばされてしまう。
「私の宝玉獣のこと、よく勉強してるな」
「調べたさ。君に100%勝利するためにね」
デュエルは机上の空論だけではない。三沢には、それを実現できるだけの頭脳とタクティクスがあるのだ。
「俺のターンだ! 俺は《
鉄でできた素体に、オレンジ色の装甲を着けている。棍棒と盾を武器にしているマグネットモンスターだ。
磁石の戦士Σ+ 攻撃力1800
「磁石の戦士Σ+で、トパーズタイガーを攻撃!
リニア・セイバー!!」
「ぐぅ…!」
電磁波を迸らせた棍棒で、トパーズを一突きにする。
カノン LP4000(-200)→3800
「続けて、磁石の戦士Ω-でダイレクトアタック!」
「ぐああああっ…!!」
カノン LP3800(-1900)→1900
「くっ…破壊されたトパーズタイガーの効果発動!」
トパーズの宝玉が留まる。そんなデュエルリング上の光景に、翔が目をごしごしと擦った。
「あれ…? おかしいな。破壊されたはずの宝玉獣が、フィールドに残ってるぞ?」
「ほんとなんだな。ソリッドビジョンが故障でもしたのかなぁ?」
理解が追いつかない二人に、明日香が解説をする。
「あれは、宝玉獣の効果よ。破壊された宝玉獣モンスターは、
「えー!? それって無敵ってこと!?」
「どうかしら。このデュエルに限っては、あまり良い方向に転がるとは思えないけれどね…」
明日香がカノンに視線を向けると、デッキのカードをドローをしていた。
「私のターン! 《宝玉獣 コバルトイーグル》を攻撃表示で召喚!」
コバルトの宝玉が砕け、中からオレンジ色のたてがみを生やした鷲が現れる。胸を覆う革の防具には、コバルトの宝石が飾られている。
コバルトイーグル 攻撃力1400
「さらに手札から、魔法カード《受け継がれる宝玉》を発動! 魔法&罠ゾーンの宝玉を1つ墓地へ送ることで、コバルトイーグルにその宝玉獣の攻撃力を加える!!」
『あとは任せたぞ、イーグル!』
『おうよ!』
トパーズの宝玉から黄色いオーラが立ち昇り、その力をコバルトイーグルに分け与えた。
コバルトイーグル 攻撃力1400→3000
「攻撃力3000…! やはり一筋縄ではいかないようだな」
「たとえルビーを封じようとも、私と宝玉獣の絆は破れない!」
そう強く言い放ち、バトルフェイズに移る。
「コバルトイーグルで、磁石の戦士Ω-を攻撃! コバルト・ウィング!!」
『これが、トパーズとオイラの力だ!』
「ぐわあっ!!」
黄色いオーラを纏ったコバルトが羽ばたいて、敵モンスターに突っ込んでいく。磁石の戦士が爆散した。
三沢 LP4000(-1100)→2900
バトルを終了し、カノンがさらに戦力を追加する。
「魔法発動!《虹の架け橋》!! 相手はカードを1枚ドローする。そして、私はデッキから新たな宝玉獣を特殊召喚!」
三沢がカードを引く。そして、カノンはデッキから目的のカードをかざした。
「出ろ! 《宝玉獣 エメラルドタートル》!!」
エメラルドの宝玉が砕け、中から殻に籠った亀が現れた。その甲羅からはエメラルドの結晶が突き出ている。
エメラルドタートル 守備力2000
「エメラルドタートルの効果で、このターンに攻撃を行ったコバルトイーグルを、守備表示に変更する」
『よくやったな、イーグルよ』
『へへん、どんなもんだい!』
コバルトが地上に降りて、羽をぴったり閉じる。
コバルトイーグル 守備力800
「あえてアタッカーではなく、守備を固めてきたか」
ルビーカーバンクルが禁止されている今なら、妥当な戦術だろう。
「私はカードを2枚伏せて、ターンエンド」
カノンが空きスロットに2枚のカードを差し込んだ。
「俺のターン、ドロー!」
三沢が引いたカードを確認して、カッと目を開く。
「(来た! これで、完璧な宝玉獣封じのコンボが揃った)」
そのカードを手札に加え、別のカードを取り出す。
「俺は《マスマティシャン》を攻撃表示で召喚! このカードは、召喚時デッキからカードを1枚墓地へ送る!」
白ひげを伸ばした、博士のような小人が現れる。その効果で、デッキトップを墓地スロットに送った。
マスマティシャン 攻撃力1500
「さらに、手札から《マグネット・コンダクター・マイナス》を発動! 自分の墓地のマイナスモンスターを手札に戻す。《磁石の戦士Ω-》を手札に」
三沢の墓地スロットが光り、カードが排出される。これで、マグネットモンスターの真髄が発揮できる。
「そして俺は、場の“磁石の戦士Σ+”と手札の“磁石の戦士Ω-”を墓地へ送り、《超電導戦士 リニア・マグナム
「マグネットモンスターの合体能力か…!?」
マグネットモンスター二体が変形し、両肩に大砲のような武器を搭載した巨大ロボットに合体する。
超電導戦士リニアマグナム± 攻撃力2700
「超電導戦士リニアマグナム±で、エメラルドタートルを攻撃! マグナム・レールガン!!」
「くっ…!」
両肩の大砲から電流が流れて、エネルギー砲を射出した。エメラルドタートルが爆散した衝撃に、カノンが耐える。
「さらに、マスマティシャンで、コバルトイーグルを攻撃だ! バトル・カリキュラム!!」
どちらも守備表示だったため、カノンにダメージはない。
だが、三沢の攻撃はこれで終わりではなかった。
「手札から、速攻魔法《パワーオフ》発動! プラスマイナスモンスターを、元々のモンスターに分離!!」
「なに!?」
2体のマグネットモンスターが着地する。
磁石の戦士Σ+ 攻撃力1800
磁石の戦士Ω- 攻撃力1900
「これで、君のライフは0だ!」
「まだだ! リバースカードオープン!《宝玉の遊撃》!」
「──!?」
予期せぬ追撃にも、カノンは対応してみせる。
「バトルフェイズ中にモンスターが特殊召喚された時、魔法&罠ゾーンから宝玉獣を特殊召喚し、その攻撃力と守備力を500ポイントアップ! エメラルドタートル!!」
『カノンに手出しはさせん!』
エメラルドの宝玉が輝き、カノンの前に現れる。
エメラルドタートル 守備力2000→2500
「そう簡単にやられはしないか」
「当然」
三沢の場にエメラルドの守備力を超えるモンスターはいない。手札のカードを意味ありげに見つめて、空きスロットに差し込んだ。
「…俺は、カードを1枚伏せてターンを終了する」
このターンの終わりに、《宝玉の遊撃》で特殊召喚されたエメラルドは、魔法&罠ゾーンに戻る。
「私のターン、ドロー! 《強欲な壺》を発動し、さらに2枚ドローする」
カノンが引いたのは“宝玉獣 サファイアペガサス”と“宝玉の集約”だ。
「(よし! サファイアペガサスで宝玉を呼び出して、宝玉の集約で攻撃力を3000上げれば、私の勝ちだ!)」
そう結論づけたカノンがカードをかざす。
「出ろ!《宝玉獣 サファイアペガサス》! サファイア・コーリング!!」
『ハァーー!!』
サファイアの宝玉が砕け、中からペガサスが現れる。その蒼角に眩い光が集まり、新たにアンバーの宝玉を呼び出した。
サファイアペガサス 攻撃力1800
そこで、すかさず三沢が動き出す。
「このときを待っていたぞ! お互いの場にあるカードが5枚以下のとき、この永続罠《宇宙の収縮》を発動できる!!」
三沢の場にあるのは《宇宙の収縮》を含め、禁止令、マスマティシャン、磁石の戦士2体の合計5枚。
カノンの場にあるのも、サファイア、アンバー、エメラルド、コバルト、伏せカードの合計5枚だ。
「このカードがある限り、お互いにフィールド上に出せるカードは5枚までとなる!!」
「なに!?」
フィールドの空間がグンと収縮されるような感覚に陥る。
「これが、君のために考え抜いたタクティクスだ! 俺の計算に間違いはない!!」
「くっ…!」
度重なる宝玉獣封じに、カノンはじわじわとした苦しみに苛まれていた。
「さすがはラーイエロートップの三沢だ。カノンの宝玉獣は、モンスターゾーンと魔法&罠ゾーンを駆使して闘うデッキ」
「つまり、宝玉獣だけで場が埋まってしまうカノンには、決め手がない?」
「そういうことだ」
現に、カノンが当初発動する予定だった《宝玉の集約》を、使うことができなくなっている。
「だが、モンスターでの攻撃は可能。サファイアペガサスで、マスマティシャンを攻撃! サファイア・トルネード!!」
サファイアが蒼角を振り下ろすと、大きな竜巻が敵モンスターを粉砕した。
三沢 LP2900(-300)→2600
「《マスマティシャン》が破壊されたことで、特殊効果発動! カードを1枚ドローする!」
もはやカノンに打つ手はない。三沢にターンが回る。
「このターンで決めさせてもらう。俺のターン、ドロー! 《強欲の壺》を発動!」
三沢が手札を補強して3枚に増やす。
「そして、魔法カード《
「…っ!」
三沢がコストを支払うと、カノンのデュエルディスクの墓地スロットが光り出す。
「強欲の壺を、2回も使うなんて…!」
「だが、三沢の手札は最初のターンから1枚しか増えていない。単に引き直したのでなければ、ヤツには他の狙いがあるはずだが…」
カイザーが二手三手先を読む。
三沢が一気に勝負を決めにいった。
「手札から、儀式魔法《リトマスの死儀式》を発動!! フィールドか手札から八星分の生贄を捧げ、《リトマスの死の剣士》を儀式召喚する!」
レベル4の
リトマスの死の剣士 攻撃力0
「このカードは罠の効果を受けず、戦闘でも破壊されない! まさしく、死の剣士ッ!!」
倒すには魔法カードが不可欠。それが制限されているカノンの現状は、三沢の思い描いた理想そのものだろう。
「そして、フィールドに罠カードが存在するとき、つまり《宇宙の収縮》がある今、その攻撃力・守備力は3000となる!」
「なに!?」
リトマスの剣が、永続罠カードから赤いオーラを吸収する。“宇宙の収縮”をデッキに入れたのは、ここまで考えてのことだったのか。
リトマスの死の剣士 攻撃力0→3000
「さらにこの瞬間、墓地にある《カーボネドン》の上に、10枚のカードが積み重ねられた!」
このデュエル中、そんなカードは存在していなかった。
「いつの間にそんなカードを──あのときか!?」
「ああ、マスマティシャンの召喚時効果で、墓地に送られていたのさ」
ならば、“二重魔法”を使ったのは墓地の枚数を増やすためか。
「《カーボネドン》は瞬間的に、巨大な圧力を受け、ダイヤモンドに変化する!」
「ダイヤモンド…!?」
宝石の名にカノンが反応する。
「モンスター効果発動! このカードを除外することで、《ダイヤモンド・ドラゴン》を特殊召喚する!!」
カーボネドンが進化し、全身がダイヤモンドでできたドラゴンとなった。
ダイヤモンドドラゴン 攻撃力2100
「宝石の名を冠するモンスターは、君だけの専売特許じゃない」
「っ…」
カノンが押されている。眉をきつく寄せ、苦しげな表情を浮かべていた。
「すごいや、三沢くん! このまま、カノンさんに勝っちゃうんじゃないか!?」
「おれもそう思うんだな!」
翔と隼人が興奮気味に身を乗り出す。
「リトマスの死の剣士で、サファイアペガサスを攻撃!」
『ぐはっ…!』
リトマスが駆け出して、双剣を振るった。サファイアペガサスが爆散する。
「ぐっ…サファイアペガサスの効果は発動しない!」
カノン LP1900(-1200)=700
「これで終わりだ! ダイヤモンドドラゴンの直接攻撃! ダイヤモンド・ブレス!!」
ダイヤモンドの砂塵を口から噴射する。その攻撃が届く前に、カノンが腕をバッと払った。
「リバースカードオープン!《宝玉の双璧》!! 」
「──!?」
サファイアとトパーズの幻影が飛び出す。ダイヤモンドブレスから、後ろのカノンを守る。
「デッキからアメジストの宝玉を置くことで、宝玉獣が戦闘で破壊されているターンの戦闘ダメージを0にする!」
この罠を発動するためには、デッキから宝玉を置く必要がある。そのため、サファイアペガサスは墓地に送らざるを得なかったのだ。
「ギリギリでダメージを防いだか。だが、それは1ターン、命を長引かせたに過ぎない!」
三沢の言う通り、カノンは追い詰められている。
「これでフィールドが4つの宝玉で埋まったな」
「たった1枚のカードで、この状況を覆さなければいけないというわけね」
その圧倒的優位にも関わらず、三沢は慢心することなく、全力で目の前の少女に立ち向かう。
「俺は、魔法カード《リトマス・ニュートラル》を発動! 自分フィールドの《リトマスの死の剣士》の攻撃力を、ターン終了時まで元々の数値とすることで、俺はその差分だけライフを回復する!」
「──っ!?」
リトマスの剣が、魔法カードから青色のオーラを吸収する。紫色のオーラになったリトマスの攻撃力が元に戻る。
リトマスの死の剣士 攻撃力3000→0
三沢 LP2600(+3000)→5600
「さ、3000ポイント回復ゥ!?」
「ライフの差は4900…勝てるわけないんだな」
翔と隼人が三沢の勝利を確信する。ここから逆転するビジョンが見えない。
「ターンエンド。そして、攻撃力は再び3000となる!」
リトマスの死の剣士が、永続罠カードから赤いオーラを吸収した。
リトマスの死の剣士 攻撃力0→3000
「三沢くんの宝玉獣封じは完璧だわ」
「こうも対策されては、アイツでも為す術がないか…」
万事休す。誰もが諦める絶望的状況の中、カノンの目には希望の光が宿っていた。自らのデッキに指を添える。
「このドローにすべてを懸ける…!」
カノンのデッキには、一発逆転のカードが残されている。それさえ引ければ、形勢は自分に傾く。
「私のターン、ドロー!!」
空を裂くような運命のドロー。
「──来たっ…!!」
「まさか引き当てたというのか、千載一遇のチャンスを…!?」
「ああ! 今からそれを見せる!!」
カノンが逆転のカードをバッとかざした。
「魔法カード発動!《宝玉の氾濫》!!」
「──!?」
「このカードを発動するには、魔法&罠ゾーンの宝玉を4つ墓地へ送らなければならない。その重い代償として、お互いのフィールド上のカードをすべて墓地へ送る!!」
「なんだと!?」
アンバー、エメラルド、コバルト、アメジストの宝玉が《宝玉の氾濫》のカードに集まる。
それぞれのオーラが輝き出し、フィールドが宝玉の光に呑まれて消えた。デュエルリングの上がガラ空きになる。
「くっ…これで、勝負は振り出しに戻ったというわけか…!」
そう目算する三沢に、カノンが現実を突きつける。
「《宝玉の氾濫》には、まだ効果が残っている! この効果で相手フィールドから墓地へ送ったカードの数だけ、自分の墓地の宝玉獣を特殊召喚できる!!」
「それじゃあ…!?」
「ああ! 4体の宝玉獣を特殊召喚ッ!!」
4つの宝玉が同時に砕ける。中からサファイア、アンバー、トパーズ、コバルトが一斉に現れた。
サファイアペガサス 攻撃力1800
アンバーマンモス 攻撃力1700
トパーズタイガー 攻撃力1600
コバルトイーグル 攻撃力1400
「っ…! まさかそんな手が残されていたなんて…!?」
墓地から氾濫する宝玉獣に、三沢が圧倒される。その合計攻撃力は6500ポイントだ。
「すべての宝玉獣たちで、ダイレクトアタック!!」
カノンが腕をバッと突き出して、4体の宝玉獣で総攻撃を仕掛ける。
「うわああああーーッ!?」
大量にあったはずの三沢のライフが、次々と宝玉獣に削られていく。その猛攻が止む頃には、ライフが0になっていた。
三沢 LP5600(-6500)=0
デュエル終了の電子音が鳴り、ソリッドビジョンのモンスターが消える。
『勝者──オベリスクブルーの“一色カノン”!』
そう告げるアナウンスにより、歓声があがる。
「あの状況から逆転するなんて…!!」
「計算では計りきれない女か、一色カノン」
そう言い残して、カイザーが背を向ける。
「と、とんでもないんだな…」
「アニキ、こんな人相手に勝てるのかなぁ…」
呆然とする隼人と翔が不安をこぼす。三沢の敗北により、カノンと十代の対戦は確実なものとなった。
「また一から計算し直しか」
「次に闘うときは、私の宝玉獣デッキはもっと進化してるよ」
「だったら、それも計算に入れるまでだ」
カノンと三沢が、目と目でお互いの強さを認め合う。
明日の第二回戦を挟んで、いよいよカノンは遊城十代と闘うことになる。