遊戯王GX 宝玉獣に選ばれし少女   作:アロイ

17 / 17
#16 宝玉獣VS E・ヒーロー

 

 学園の代表を懸けて始まったデュエル。十代の場にはスパークマンと伏せカードが1枚ずつ。カノンの場にはコバルトの宝玉が1つだけだ。

 

カノン LP3800 VS LP4000 十代

 

「私のターン、ドロー!」

 

 宝玉獣は立ち上がりに時間のかかるデッキ。これくらいは許容範囲内だ。

 

「《宝玉獣 トパーズタイガー》を攻撃表示で召喚!」

『俺様に任せておけ、カノン』

 

 トパーズの宝玉が砕け、中から強面のホワイトタイガーが吼える。その頭部と脚からは、尖った刃が生えている。

 

 トパーズタイガー 攻撃力1600

 

「攻撃力1600…相打ち狙いってわけか」

「いや、トパーズタイガーには、相手モンスターに攻撃するとき、攻撃力を400ポイントアップする効果がある」

「なにっ!」

 

 相打ち以上の狙いがあり、十代にわずかな動揺が走る。

 

「いけ、トパーズタイガー! スパークマンを攻撃! トパーズ・バイト!!」

 

 トパーズが跳躍してスパークマンに飛びかかった。その口から牙を覗かせる。

 

「罠発動!《異次元トンネル-ミラーゲート-》!!」

「──!?」

「このカードは、バトル中のモンスターを互いに入れ替え、その戦闘を続行させる!!」

 

 戦闘を行うはずの2体が鏡のように反転して、立場が入れ替わる。十代の場にいるトパーズが、カノンの場にいるスパークマンに噛みついた。

 

 カノン LP3800(-400)→3400

 

「くっ…! やるなぁ…!」

「勝負はこれからだぜ、カノン」

 

 罠に嵌められたというのに、愉快そうにするカノン。

 

「いいぞー! アニキー!!」

「またライフを引き離したんだな!」

 

 本来与えられるはずだった400ダメージを食らったので、カノンの劣勢は続く。

 

「だけど、《異次元トンネル-ミラーゲート》の効果はエンドフェイズまで。このターンの終わりに、トパーズタイガーは私の場に戻ってくる!」

 

 トパーズのコントロールが再びカノンに。

 

 

「オレのターン、ドロー! 《強欲な壺》を発動して、さらに2枚ドロー!」

 

 十代が引いたカードは《融合》と《ヒーロー・シグナル》だ。これで、最強のヒーローを呼び出すことができる。

 

「来たぜ! オレは魔法カード《融合》を発動!! 手札のE・HERO、《フェザーマン》と《バーストレディ》を融合!!」

 

 融合素材となった2体の空間が歪み、渦巻いて混ざり合う。

 

「現れろ! 《E・HERO フレイム・ウィングマン》!!」

 

 ヒーローの本当の姿。ドラゴンの頭を模した右手に、背中の左側にだけある翼。バーストレディの赤と、フェザーマンの緑が入り交じっている。

 

 フレイムウィングマン 攻撃力2100

 

「出た! アニキのエースモンスターだ!」

「いいぞー! 十代ー!」

 

 いつもの勝ちパターンが決まり、翔と隼人が沸き立つ。

 

「さらに、《フレンドッグ》を攻撃表示で召喚!」

 

 黒い装甲に緑色の光るラインが入ったロボット犬が現れる。

 

 フレンドッグ 攻撃力800

 

「バトルだ! フレイムウィングマンで、トパーズタイガーを攻撃! フレイム・シュート!!」

 

 フレイムウィングマンが空を舞う。ドラゴンの右手から火炎放射が飛び出して、トパーズを焼き尽くした。

 

「ぐあああっ!!」

 

 爆発の衝撃がカノンを襲う。まだ十代には狙いがあった。

 

 カノン LP3400(-500)→2900

 

「フレイムウィングマンの効果発動! 破壊したモンスターの攻撃力分のダメージをカノンに与える!」

 

 ドラゴンの右手が開き、カノンに向けられる。奥から炎が迫り上がった。

 

「やった! カノンさんに大ダメージだ!」

「いや、フレイムウィングマンの効果を発動するためには、相手モンスターを墓地に送る必要がある。今回の場合はおそらく…」

 

 翔が小躍りでもするように喜ぶが、三沢が冷静に戦局を読んでいく。

 

「そんな手は通用しない! 破壊されたトパーズタイガーの効果! 墓地へは行かず、魔法&罠(マジック・トラップ)ゾーンに置かれる!!」

 

 トパーズの宝玉がカノンの場に残る。フレイムウィングマンの右手が下ろされた。

 

「そうだったー! 宝玉獣は墓地に行かないんだから、フレイムウィングマンの効果が効かないじゃんかー! あーどうしよう!?」

「アニキ…」

「十代…」

 

 宝玉獣との相性を見落としていた十代が、大げさに頭を抱える。それを見ていた翔と隼人も、頭を抱えたくなった。

 

「宝玉獣は十代にとって、天敵と言えるかもしれんな」

「でも、あの二人は似てると思うわ。デュエルしてるときの顔つきとか、特にね」

「フッ、確かに」

 

 明日香とカイザーが和気あいあいと雑談を交わす。

 

「こうなったら、フレンドッグでダイレクトアタックだ! いけぇ!」

「ぐうぅ…!」

 

 フレンドッグが駆動し、カノンを引っかく。わずか800のダメージとはいえ、ライフの差は歴然だ。

 

 カノンLP2900(-800)=2100

 

「オレはカードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

 油断はしない。自分が押しているが、彼女がこれで終わるはずがないという予感があった。

 

 

「私のターン、ドロー!」

 

 カノンがついに反撃に出る。

 

「魔法カード《虹の架け橋》を発動! 相手はカードを1枚ドローし、私はデッキから宝玉獣を特殊召喚する!」

「くるか…!」

 

 十代がドローし、カノンがデッキから目的のカードをかざす。

 

「出ろ!《宝玉獣 サファイアペガサス》!! その効果により、新たな宝玉を呼び出す! サファイア・コーリング!!」

『私に続け、ルビー!』

 

 サファイアの宝玉が砕け、中からペガサスが現れる。その蒼角に眩い光が集まり、新たにルビーの宝玉を呼び出した。

 

「また新しい宝玉獣か…!」

「ルビーカーバンクル効果発動! このカードを特殊召喚し、魔法&罠ゾーンの宝玉獣をすべて特殊召喚する! ルビー・ハピネス!!」

『ルビィィィーーッ!!』

 

 宝玉から現れたルビーの尻尾の宝石が赤く眩い光を放つ。そのエネルギーを注がれたトパーズ、コバルトの宝玉が砕け、場に現れる。

 

 ルビーカーバンクル 守備力300

 トパーズタイガー 攻撃力1600

 コバルトイーグル 攻撃力1400

 

「宝玉がモンスターに戻った!?」

「ルビーのおかげさ」

 

 モンスターを大量展開したが、このままでは攻撃力が足りない。

 

「さらに、《宝玉の解放》をトパーズタイガーに装備! 攻撃力を800ポイントアップ」

「──!!」

『ハァーッ!』

 

 表向きに立てられたカードが出現し、トパーズに攻撃力上昇エフェクトがかかる。

 

 トパーズタイガー 攻撃力1600→2400

 

「──バトル! コバルトイーグルで、フレンドッグを攻撃!」

 

 手始めに、十代のモンスターを減らしていく。フレンドッグが爆散した。

 

 十代 LP4000(-600)→3400

 

「ぐっ…戦闘で墓地に送られた《フレンドッグ》の効果発動! 墓地から《スパークマン》と《融合》の2枚を手札に加える!」

 

 十代の墓地スロットが光り、2枚のカードを排出する。

 

「トパーズタイガーで、フレイムウィングマンを攻撃! トパーズ・バイト!!」

 

 カノンが腕をバッと突き出す。トパーズが飛びかかり、鋭い牙で敵モンスターを粉砕した。

 

 トパーズタイガー 攻撃力2400→2800

 

「うあああーッ!!」

「ああっ! アニキのフレイムウィングマンがっ…!」

 

 十代 LP3400(-700)→2700

 

 宝玉獣たちの鮮やかな攻撃に、十代が押され気味になる。しかし、タダではやられない。

 

「っ…罠カードオープン!《ヒーロー・シグナル》!!」

「──!?」

 

 表向きに立てられたカードから、デッキに眠るヒーローへのシグナルが映し出される。

 

「自分のモンスターが破壊された時発動! デッキまたは手札から、E・HEROと名のつくモンスターを1体召喚する! 来い、《E・HERO バブルマン》!!」

 

 水色のヘルメットと装甲に、マントと二本のボンベを背負っていた。ノズルの筒口が取り付けられた腕を交差して腰を落とす。

 

 バブルマン 守備力1200

 

「さらにバブルマンの効果発動! このカードが召喚された時、オレの場に他のカードが存在しなければ、デッキから2枚ドローすることができる!」

 

 十代がカードを引く。これで、手札は6枚にまで補充された。

 

「だけど、私にはまだサファイアペガサスがいる! やれ、バブルマンを攻撃だ!!」

 

 飛翔したサファイアが蹄で踏みつけ、バブルマンを爆散させる。

 

「ぐうぅ…!」

 

 十代が爆風から身を守る。怒涛の連続攻撃に、彼女が注目されている理由を体感する。

 

「(カノンと宝玉獣、こいつらマジ強ぇ〜! 一枚一枚は、大した攻撃力があるわけじゃないが──)」

 

 大した攻撃力という部分が引っかかり、十代がハッと顔を上げる。

 

「カノン! もしかして、お前まだエースモンスターを出してないんじゃないか!?」

「え!? なんで分かった…!?」

 

 誰にも教えていないことを、宝玉獣の戦い方から推理して、言い当てられる。

 

「まだエースが出ていないだと!?」

 

 発覚した衝撃の事実に、カイザーたちも度肝を抜かれる。十代のデュエルセンスには侮れないものがある。

 

「そこを読んでくるなんて、ただ者じゃないね…!」

「それじゃあ、やっぱり」

「ああ。まだ出してないよ、私のエースカード! 7体の宝玉獣が合体した究極の姿“レインボードラゴン”を!!」

「…っ!」

 

 観戦していた生徒含め、全員が息を呑む。

 

「なんだよ、そんなのがあるなら、さっさと見せろよ!」

「それは駄目だね。レインボードラゴンはとっておきの、とっておきの、とっておきだからね! それに、相応しい場にならないと!」

 

 本当は持ってないだけだが、ハッタリをかましておく。そっちの方が面白そうだ。

 

 

「にゃろう…!なら引きずり出してやる! オレのターン、ドロー!」

 

 挑発とも取れる言葉に、十代の闘争心に火がついた。

 

「《スパークマン》を攻撃表示で召喚!」

 

 フレンドッグで回収していたスパークマンが、再び立ちはだかる。

 

 スパークマン 攻撃力1600

 

「そっちがその気なら、オレもヒーローに相応しい場を用意させてもらうぜ!」

 

 ディスクの横にある専用スロットが開く。十代がそこにカードを置くと、元の形に収納された。

 

「フィールド魔法《摩天楼(まてんろう) -スカイスクレイパー-》を発動!!」

「これは…!」

 

 ソリッドビジョンに反映されていく。二人を取り囲むように、所狭しと高層ビルが立ち並んでいく。夜空に満月が浮かんでいた。

 

「スパークマンで、トパーズタイガーを攻撃!」

「なに!?」

「スカイスクレイパーの効果は、自分よりも攻撃力の高いモンスターと、E・HEROがバトルする時、その攻撃力を1000ポイントアップさせる! スパークフラッシュ!!」

 

 スパークマン 攻撃力1600→2600

 

 装備魔法で強化されているトパーズの攻撃力2400を上回った。雷がトパーズの体を流れ、爆散する。

 

 カノン LP2100(-200)→1900

 

「ぐぅ…! 墓地に送られた《宝玉の解放》の効果発動! デッキから宝玉を呼び出す!」

 

 新たにアンバーの宝玉が場に増えた。

 

「オレはカードを4枚伏せ、さらに永続魔法発動!《悪夢の蜃気楼》!!」

 

 すべての手札を伏せたので、内1枚はフレンドッグで回収した《融合》のカードのはずだ。

 

「これでターン終了だ。さぁ、見せてみろよ。レインボードラゴンを…!」

 

 そう簡単に呼べれば苦労はないと、カノンは苦笑いを浮かべる。

 

 

「私のターン、ドロー!」

 

 カノンのターンが始まり、十代の場にあるカードが反応する。

 

「ここで永続魔法《悪夢の蜃気楼》の効果発動! このカードの効果で、相手のスタンバイフェイズに、自分の手札が4枚になるようにドローする!」

 

 十代の手札は0枚。4枚の手札を一気に補充した。

 

「なら、こっちもドローさせてもらう! 《レア・ヴァリュー》を発動! 2つ以上ある宝玉を1つ墓地へ送ることで、デッキから2枚ドローする!」

 

 トパーズとアンバーの宝玉の内、トパーズの宝玉が光の粒子となって消える。

 

「《宝玉獣 アメジストキャット》を召喚!」

 

 アメジストの宝玉が砕け、中からしなやかな猫が鳴き声を上げる。紫水晶のブローチが胸元に飾られている。

 

 アメジストキャット 攻撃力1200

 

「バトルだ!」

「慌てるなよ、カノン。オレは速攻魔法《クリボーを呼ぶ笛》を発動! デッキからハネクリボーを特殊召喚する!」

 

 すかさず他の伏せカードも発動した。

 

「そして、リバースカードオープン《非常食》! 自分フィールド上の魔法・罠カード1枚を墓地へ送ることで、1000ポイントライフを回復する! 墓地に送るのは、“悪夢の蜃気楼”と“クリボーを呼ぶ笛”だ!」

「やっぱり、そんなカードを伏せてたか…!」

 

 2枚のカードがフィールドから消える。《非常食》とのコンボで、見事に《悪夢の蜃気楼》のリスクを回避してきた。

 

 十代 LP2700(+2000)→4700

 

「頼むぜ、相棒! 《ハネクリボー》を特殊召喚!!」

『クリクリ〜!!』

 

 毛玉のような体に天使の翼。愛くるしい姿をした、十代の相棒だ。

 

 ハネクリボー 守備力200

 

「ハネクリボーで、私の攻撃が止められるかな?」

「もちろん、これで終わりじゃないぜ。さらにオレは、《進化する翼》を発動!! 場のハネクリボーと手札2枚を墓地に送り──」

 

 悪夢の蜃気楼で補充した手札4枚の内2枚のカードが、墓地スロットに吸い込まれる。

 

「──《ハネクリボーLV10》を特殊召喚!!」

 

 その小さかった翼は、友達を守れるだけの大きな翼に進化する。

 

 ハネクリボーLV10 攻撃力300

 

「これが、ハネクリボーの進化した姿…!!」

 

 目を見張るカノン。十代が真の力を始動させる。

 

「効果発動! 《ハネクリボーLV10》を生贄に捧げることで、相手の攻撃表示モンスターをすべて破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!!」

 

 その身を呈して、敵を殲滅する。ハネクリボーLV10の体からピンクの光が差し込んだ。

 

「この効果を受ければ、カノンのライフは0になる…!」

「万事休すか…!?」

 

 決着がつくかに思われたが、カノンが咄嗟に1枚のカードをかざす。

 

「そうはさせない! 私は手札から、速攻魔法《ルビー・ブラッド》を発動!」

「──!?」

 

 活路を見出そうとする姿に、十代が目を見開く。

 

「フィールド上のルビーカーバンクル1体を生贄に捧げることで、このターン中、私は効果によるダメージを受けない!!」

「なに!?」

「いけ、ルビー!」

 

 ルビーがハネクリボーLV10の翼にかじりつく。

 

『ルビィ!』

『クリクリ〜!?』

 

 張りついたルビーに気が動転し、精霊同士の喧嘩が起きる。怒ったハネクリボーLV10の体が、一際強い光を放った。

 

「だが、モンスターの破壊は止められないぜ!」

「うああっ!!」

 

 フィールド上の宝玉獣が爆散する。コバルトの効果を破棄し、サファイアとアメジストの宝玉が残る。カノンの魔法&罠ゾーンには、アンバーを含めた宝玉が3つあった。

 

「すまないイーグル。…私は《ルビー・ブラッド》の効果で、デッキから1枚ドローする」

 

 次のターンを耐えしのぐには、伏せカードが重要になってくる。

 

「相棒同士の闘いは、互角ってところかな」

「どうやらそうみたいだね」

 

 ハネクリボーとルビーカーバンクル。その闘いの結果は、両者痛み分けだ。

 

「私はカードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

 がら空きの場で、毅然とした振る舞いをする。

 

 

「オレのターン、ドロー!」

 

 十代がドローと同時に、攻撃を仕掛ける。

 

「スパークマンでダイレクトアタック!」

 

 とどめは刺されないが、残りライフは300となる。何かの拍子で終わりかねないので、防いでおきたい攻撃だ。

 

「リバースカードオープン! 罠カード《ルースジェム》! 魔法&罠ゾーンの宝玉獣を特殊召喚し、攻撃力を1000アップさせる! ただし、その宝玉獣は効果が無効となり、攻撃できない」

 

 サファイアの宝玉が輝き、カノンの場に現れる。研磨されているが、置物のような役割となってしまう。

 

 サファイアペガサス 攻撃力1800→2800

 

 スカイスクレイパーの効果込みでも、サファイアの攻撃力は越えられない。これで攻撃が止まったと思ったが──十代は、にやりと笑った。

 

「読んでたぜ!」

「──!?」

「オレは手札より、速攻魔法《英霊の闘魂》を発動! このカードはバトルフェイズ限定で、ライフを半分払って発動できる!」

 

 非常食でライフを回復したのは、このためだ。

 

 十代 LP4700(-2350)=2350

 

「その効果で、墓地に眠る戦士族融合モンスター(英霊)1体を、召喚条件を無視して自分フィールドに特殊召喚する!!」

「なにっ!?」

「蘇れ! マイフェイバリットモンスター! 《E・HERO フレイム・ウィングマン》!!」

 

 右手を掲げる十代と共に、同じポーズをした英霊がフィールドに舞い戻る。

 

 フレイムウィングマン 攻撃力2100

 

「墓地に送られない宝玉獣に、フレイムウィングマンの効果は効かない。だけど、効果が無効になっているならどうかな…!!」

「──っ!?」

 

 サファイアは墓地に送られて、その攻撃力分2800のダメージを受ける。

 

 摩天楼の頂上に、フレイムウィングマンが

佇む。背後にある満月と重なり、その姿に影がかかる。

 

「フレイムウィングマンで、サファイアペガサスを攻撃! ──スカイスクレイパー・シュート!!」

 

 フレイムウィングマンが頭から飛び降り、炎を纏いながら、サファイア目掛けて突っ込んでくる。

 

 フレイムウィングマン 攻撃力2100→3100

 

「カノンの残りライフは1900…!」

「この攻撃で、アニキの勝ちが決まるっす!」

 

 フレイムウィングマンが迫る中、カノンが腕をバッと払った。

 

「罠発動!《ラスト・リゾート》!! このカードは、相手モンスターが攻撃してきた時、デッキからフィールド魔法を発動!」

「なに!?」

「相手のフィールド魔法があるとき、相手はカードをドローできる」

 

 十代がデッキから1枚引く。カノンがディスクの横にある専用スロットに、カードを置いた。

 

「私はデッキから、フィールド魔法《虹の古代都市-レインボー・ルイン》発動!!」

「新しいフィールド魔法!?」

 

 そのカード名に、聞き覚えのあるカイザーと明日香が反応する。

 

「あれは…!」

「亮とのデュエルで使ったフィールド魔法…!」

 

 夜空が蒼天に晴れて、虹の橋が架かる。摩天楼が沈んでいき、嶺雲(れいうん)の地に在る古代ローマの遺跡に二人は降り立った。

 

「アニキのフィールド魔法が…!」

「まずいんだな!」

 

 フィールド魔法は、お互いの場に共通して1枚しか存在することができない。よって、十代のフィールド魔法は墓地へ送られる。

 

「これで、フレイムウィングマンの攻撃力が上がることはない!」

「くっ…!」

 

 フレイムウィングマン 攻撃力3100→2100

 

「迎え撃て! サファイアペガサス!!」

 

 優位が逆転する。サファイアがその場で翼をはためかせて突風を起こす。フレイムウィングマンとぶつかり、爆発が発生した。

 

「うわあっ!?」

 

 十代 LP2350(-700)=1650

 

 戦闘が終わり、煙が晴れる。十代の場にはフレイムウィングマンが残っていた。

 

「フレイムウィングマンが破壊されていない…?」

「へへっ、《英霊の闘魂》の効果で特殊召喚されたモンスターは、このターンの戦闘では破壊されないのさ」

 

 得意げな顔でそう言って、十代が手札のカードをかざした。

 

「そして、魔法発動!《英雄変化(チェンジ・オブ・ヒーロー)-リフレクター・バトル》!! E・HEROと名のつく融合モンスターとの戦闘で破壊されなかった、サファイアペガサスの元々の攻撃力分のダメージを、相手に跳ね返す!!」

「なにっ!?」

 

 フレイムウィングマンが、フェザーマンとバーストレディに分離する。反射鏡となった2体が、バトルエネルギーを跳ね返した。

 

「ぐうううっ!!」

「どうだ、カノン!」

 

 予期せぬダメージを食らって、顔をしかめる。

 

 カノン LP1900(-1800)=100

 

 続けて、十代が次のターンを見据えた策を講じる。

 

「永続魔法《好敵手(とも)の姿》!! このカードがフィールド上に存在する限り、お互いの攻撃力が一番高いモンスターは攻撃表示となり、相手はそのモンスターに攻撃しなければならない!!」

 

 次のターン、カノンはスパークマンに攻撃できず、フレイムウィングマンと強制的にバトルさせられるというわけだ。

 

「カードを1枚伏せて、ターン終了だ!」

 

 万全とは言い難い。それでも、十代は懸命にカノンへと立ち向かう。

 

 

「私のターン、ドロー! 《強欲な壺》を発動し、さらに2枚ドロー!」

 

 カノンの手札が5枚にまで補充される。勝利への道筋は見えた。

 

「魔法カード《宝玉の天秤》を発動!」

 

 アンバーの宝玉と、ルビーの宝玉が天秤にかけられる。

 

「墓地から、攻撃力が一番高い宝玉獣を魔法&罠ゾーンに、攻撃力が一番低い宝玉獣を自分フィールドに特殊召喚する! 現れろ、《宝玉獣 ルビーカーバンクル》!!」

『ルビィー!!』

 

 ルビーの宝玉が砕け、中からカーバンクルが現れる。その額と尻尾の先には、丸いルビーの宝石が埋まっている。

 

 ルビーカーバンクル 攻撃力300

 

「さらに、魔法発動《宝玉の共鳴》! 自分フィールドに宝玉獣が2体以上存在する場合、その内の1体の攻撃力に、もう1体の攻撃力を加える!!」

『私の力を受け取るんだ、ルビー』

『ルビッ』

 

 サファイアが首を下げると、ルビーがその蒼角に触れる。2つの力が共鳴し合い、サファイアペガサスの攻撃力2800がルビーに加算される。

 

 ルビーカーバンクル 攻撃力300→3100

 

「ルビーカーバンクルが、フレイムウィングマンの攻撃力を上回った…!!」

「だが、十代のライフは削り切れない」

 

 今のままでは、戦闘破壊するので精一杯だろう。カノンが新たな魔法カードでパワーアップさせる。

 

「私は手札から、《スピリチュアル・フェザー》を発動! 自分のライフが相手より少ない場合にのみ発動可能。このターン中、天使族の光属性モンスター(ルビー)の攻撃力は、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分だけアップする!!」

「──なっ!?」

『ルビィィィ…!!!』

 

 力を漲らせたルビーの背中から、幻の翼が生える。それは、サファイアペガサスの翼に酷似していた。

 

「いくぞ、十代!!」

「来い、カノン!!」

 

 腕をバッと突き出して、カノンが決着をつけにいった。

 

「ルビーカーバンクルで、フレイムウィングマンを攻撃! ルビー・フェザー・ソニック!!」

『ルゥビィィィーーーッ!!!』

 

 虹色に光る軌跡を残しながら、ルビーが空を駆け抜ける。フレイムウィングマン一直線に飛んでいく。

 

 ルビーカーバンクル 攻撃力3100→5200

 

「この攻撃が通れば…」

「アニキ…!」

「十代…!」

 

 険しい表情をした十代が必死に食らいつく。

 

「罠発動《ヒーローズ・ガード》!! このカードは、バトルによる破壊からE・HEROを守り、墓地のE・HERO、“バブルマン”を除外することで、オレのダメージを半減する!」

 

 ルビーが激突したことで、フレイムウィングマンが爆散する。差し引き3100ダメージの半分、1550ダメージを食らう。

 

「ぐわあああッッ!!」

 

 伏せカードのおかげで、ギリギリで持ちこたえた。

 

 十代 LP1650(-1550)=100

 

「これでフレイムウィングマンの破壊は免れた! オレは《ヒーローズ・ガード》の効果で、デッキからカードを1枚ドロー!」

 

 十代が冷や汗をかく。《好敵手(とも)の姿》がなければ、スパークマンを攻撃されていて、ライフはとっくに消し飛んでいた。

 

「お互いにライフポイントは100…」

「まさに、死力を尽くした闘いだな」

「アニキ…」

「気張れぇ、十代!」

 

 とどめをし損なったカノンだが、十代に笑いかける。

 

「やるな、この攻撃を耐え切るなんて」

「お前の攻撃、めちゃくちゃ効いたぜ…!」

 

 カノンが温存しておいた手札を使う。

 

「魔法カード《宝玉切断》!! デッキから宝玉獣を墓地へ送り、そのモンスターの攻撃力か守備力より、低い攻撃力を持つ相手のモンスター1体を破壊する!」

 

 《宝玉獣 エメラルドタートル》を墓地スロットに送る。エメラルドの守備力は2000。これで、攻撃力2000未満のモンスターを破壊できる。

 

「私はスパークマンを破壊!」

「っ…!!」

 

 スパークマンが真っ二つに切断される。十代に余力を残したままターンを渡す気はない。

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

 ルビーに付与されていた魔法効果が消える。攻撃力と姿が元に戻った。

 

 ルビーカーバンクル 攻撃力3100→300

 

「これで、7種すべてが揃った…」

「お兄さん…?」

 

 意味ありげなカイザーの呟きを、翔の耳が拾う。

 

 

「オレのターン──!!」

 

 十代がデッキに指を添える。もし逆転のカードを引けなければ、《好敵手(とも)の姿》の効果で、サファイアペガサスに攻撃しなければならない。そうなれば、ジ・エンド。ゲームオーバーだ。

 

「(これが正真正銘ラストチャンス…オレのすべてを懸けるぜ…!!)」

 

 カードに触れる指先に力を込める。空を裂くように引き抜いた。

 

「ドロォー!! ──来たっ!!」

 

 それは、十代が待ち望んでいたカード。

 

「オレは魔法カード《死者転生》を発動!! 手札を1枚捨て、墓地から《E・HERO スパークマン》を手札に加える!!」

 

 墓地スロットが光り、カードが排出される。これで準備は整った。

 

「さらに、オレは伏せていた《融合》を発動!!」

「まさか…!」

「場の《フレイムウィングマン》と、手札の《スパークマン》を融合!!」

 

 融合素材となった2体のE・HERO空間が歪み、渦巻いて混ざり合う。

 

「──《E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン》を召喚!!!」

 

 眩い光の中から、その姿を現す。白銀の装甲と輝ける光の翼をまとい、二つの強さを手に入れた閃光の使者。

 

 シャイニングフレアウィングマン 攻撃力2500

 

「新たなE・HERO…!? だけど、攻撃力2500じゃ、サファイアペガサスの攻撃力には届かない!!」

「それはどうかな?」

 

 十代が自信を覗かせる。

 

「《シャイニング・フレア・ウィングマン》は、オレの墓地のE・HEROと名のつくカード1枚につき、攻撃力を300ポイントアップする!!」

 

 墓地にいるヒーローは4体。その力を受けて、シャイニングフレアウィングマンが輝きを増していく。

 

 シャイニングフレアウィングマン 攻撃力2500→3700

 

「攻撃力3700…!?」

 

 サファイアペガサスの攻撃力を完全に上回った。

 

「究極の輝きを放て! ──シャイニング・シュート!!」

 

 シャイニングフレアウィングマンが天空を駆ける。

 

 ──その瞬間、カノンの胸元にあるペンダントが虹色に輝き出した。

 

「なんだ!?」

「虹…?」

 

 デュエル場がざわめきと共に、虹のオーラに包まれるが、カノンに驚きの色はない。

 

「罠カード発動──《虹の伝説》!!」

「なに!?」

 

 このカードは宝玉獣が7種揃ったときのみ、ルビーカーバンクルを対象として発動できる専用罠。

 

「カーバンクルの伝説。それは太古の昔、カーバンクルが竜神に進化したと言われる、逸話のことさ!」

 

 ルビーが威嚇するように踏ん張りをきかせる。その気迫がオーラとなって立ち昇った。

 

「《虹の伝説》の効果!! フィールドの“宝玉獣 ルビーカーバンクル”は《究極宝玉神 レインボードラゴン》としても扱い、その元々の攻撃力を4000とする!!」

「──っ!?」

 

 カノンが腕を伸ばして天を指す。

 

「7体の宝玉獣が揃ったとき、世界を繋ぐ光がこの地に蘇る! 見ろ! 宝玉獣の軌跡! 蘇れ! ──レインボードラゴン!!!」

 

 フィールドと墓地から7つの宝玉が飛び出し、空に虹を描く。ルビーにドラゴンの幻影が重なった。

 

 ルビーカーバンクル(究極宝玉神 レインボードラゴン) 攻撃力4000

 

「これが…!!」

「レインボードラゴン…!!」

 

 その存在感に圧倒される十代たち。しかし、カノンの狙いは他にある。

 

「さらに、この瞬間! 《好敵手(とも)の姿》の効果により、相手の攻撃はレインボードラゴンに進化したルビーに移り変わる!!」

「ハッ…!?」

 

 シャイニングフレアウィングマンが標的を変更する。天空から突撃し、レインボードラゴンに向かっていった。

 

「やれ、レインボードラゴン! ──レインボー・リフレクション!!!」

 

 咆哮を轟かせる竜の幻影。宝玉の力が合体した虹色のオーラを、強大な光線として撃ち放った。

 

「すっげぇ…!!」

 

 十代が気圧されながらも笑みを浮かべる。

 

 シャイニングフレアウィングマンが、虹色の光に呑み込まれた。

 

「うわぁ!?」

「何も見えないっ…!」

 

 爆発の余波がデュエル場に広がる。次に二人の姿が見えたときは、すでに決着がついた後だった。

 

 十代 LP100(-300)→0

 

 デュエル終了の電子音が鳴り、ソリッドビジョンのモンスターたちも消える。死力を尽くした二人の闘いは、カノンの勝利で終幕する。

 

 ついに憎き相手の負け姿を見ることができたクロノスは、ニヨッと気持ちの悪い笑みを浮かべる。マイクを握る手にも力がこもるというものだ。

 

『勝者! オベリスクブルー、一色カノン!! アナタが、我がデュエルアカデミアの代表ナノーネ!!』

 

 意気揚々とした宣言に、デュエル場の観衆がどよめく。

 それに気を良くしていたクロノスだったが、意外なほど静かな十代の姿に、段々と焦り始めた。

 

「ま、まぁ…ドロップアウトボーイにしては、よく頑張った方ナノーネ」

「先生…」

「シニョーラ・一色をあそこまで追い詰めたのは、誇ってもいいことナノーネ」

 

 少し薬が効きすぎたかもと、クロノスが慰めの言葉をかける。

 

 十代が俯いた顔を上げると、そこには暗さの欠片もない笑顔があった。

 

「いや〜、先生に褒めてもらえるなんて、オレってば大したヤツなんだな〜!」

「なっ…だ、騙したノーネ!? 今の言葉は撤回するノーネ!」

「やーだよ! オレ聞いちゃったもんねー!」

「ぬぅ…!」

 

 あっけらかんとした十代に、クロノスが赤っ恥をかかされたと腹を立てた。

 

「十代」

 

 カノンに名前を呼ばれた十代は、少し悔しそうな顔をして、カノンを褒め称える。

 

「お前のエースモンスター、シビれたぜ!」

「あれは仮の姿だけどね」

「仮の姿?」

 

 何を言ってるんだという顔になる。

 

「本当のレインボードラゴンは、まだ私のデッキにないんだ」

「えぇー!?」

「レインボードラゴンが手に入ったとき、私の宝玉獣デッキは真の姿を現すのさ…!」

 

 これ以上強くなるのかと驚いたが、十代には心躍る感情があった。

 

「オレも協力するぜ、カノン! そんなにスゴいモンスターなら、オレも早く闘いたいしな!」

「私も、一番に相手するなら十代だと思ってた」

「楽しみにしてるぜ!」

 

 お互いに好敵手(とも)として認め合う。二人が握手を交わすと、観客席から惜しみない拍手が送られた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。