遊戯王GX 宝玉獣に選ばれし少女   作:アロイ

6 / 17
#5 お断り!衣装決めデュエル!

 

 アカデミアで月に一度のテストが行われている頃、カノンはモデルデュエリストとして撮影の仕事が入っていた。

 アカデミアがある孤島を離れ、撮影機材や人で溢れているスタジオで、様々な表情やポーズをしていた。

 

「ラスト! もう1枚いきましょう!」

「はい!」

 

 アイドルばりの弾ける笑顔をつくったカノンが、しっかりとポーズを決める。その腕には、ごついデュエルディスクが装着されてた。

 少女らしさを前面に押し出したガーリーな衣装と髪型なので、どこかアンバランスな絵面だった。

 

 

 

「カノンちゃん〜! 今日も最高の出来だったわよ♡」

 

 撮影が終わったカノンに、長身の人物が声をかける。少々変わった人で、女性のような仕草や口調で喋っているが、性別的には男性だ。

 名前を『真幅(まはば) 衣代(きぬよ)』といって、一色グループの専属デザイナーで、新商品の開発に携わっている。

 

「あなたの希望通り、そのペンダントにぴったり合うデザインだったでしょう?」

「えぇ。相変わらず、デザインに関しては天才的ですね」

「うふっ♡ 褒めすぎよぉ〜♡」

 

 予め、レインボーの宝玉が入ったペンダントを中心にして、衣装のデザインをまとめてほしいと依頼していた。

 それは完璧に実現されていて、真幅の仕事ぶりに文句のつけようがない。これからも、母の仕事を支えてほしい人材だ。

 

 ただ、真幅には一つだけ欠点がある。

 

「それでねぇ、次はこういう衣装にしてみようと思うの」

「またですか…」

 

 事ある毎に、奇抜すぎるデザインを勧めてくるのだ。その度に没になっているのだが、めげる様子がない。

 

「これって…」

 

 デザイン画を見たカノンの頬がひくっと引き攣った。

 

「そっ♡ おジャマイエローの着ぐるみよ♪」

「……」

 

 カノンは絶句した。

 

「この前までスランプ気味でね。いいデザインが思い浮かばなかったんだけど、あるときピンと来て、この衣装にたどり着いたの♡」

「これを…私が…?」

 

 現実を受け止めきれず、ただ自分に関係があるのかを質問する。

 

「戸惑う気持ちもわかるわ。アタシも少しだけ迷ったもの。おジャマが世界一似合う男の子がいたら話は別なんだけど…こればっかりわね」

 

 そんな色物男は、宇宙のどこを探しても見つかるはずがないとカノンは思った。

 

「まぁ、カノンちゃんなら何でも着こなしてくれるし、大丈夫よね?」

 

 想像するまでなく、おぞましい光景に身震いする。

 

「お断りします! こんな衣装着たら、一生の恥ですよ!」

「まっ! なんてこと言うのかしら!?」

「とにかく、絶対に着ませんから」

 

 取り付く島もないカノンに、真幅が顎に指を添えて、眉をぐにゃりと寄せる。

 

「う〜ん、だったらデュエルで決めましょう?」

「デュエルで…?」

「アタシが勝ったら、あの衣装を着てもらう。負けたら、カノンちゃんの好きにしていいわ」

 

 このまま下手に押し切られても困る。ここはデュエルで決着をつけて、すっぱりと諦めてもらおう。

 

「…わかりました。受けて立ちます」

「そうこなくっちゃ♪」

 

 人が捌けて広くなったスタジオで、2人がデッキをセットする。

 

「準備はいーい?」

「いつでもいいですよ」

 

 お互いに向き合い、デュエルディスクを構えた。

 

「「──決闘(デュエル)!!」」

 

カノン LP4000 VS LP4000 真幅

 

「私のターン、ドロー!」

 

 絶対に譲れない闘いが始まった。先行を取ったカノンが、デッキからカードを引く。

 

「《宝玉獣 トパーズタイガー》を召喚!」

 

 トパーズの宝玉が砕け、中から強面のホワイトタイガーが現れる。その頭部と脚からは、尖った刃が生えている。

 

 トパーズタイガー 攻撃力1600

 

「私はこれで、ターンエンド」

「アタシのターンよ! カードドロー!」

 

 真幅がディスクの空きスロットに、魔法カードを差し込む。

 

「アタシは《アームズ・ホール》を発動! デッキの一番上のカードを墓地に送って、装備カードを手札に加えるわ♡」

 

 支払ったコストが墓地スロットに吸い込まれる。その後、ホルダーからデッキを取り出し、目当てのカードをカノンにかざした。

 

「《フリント》を手札に加えて、さっそく発動よ!」

 

 自分のモンスターがいないにも関わらず、装備魔法を発動した。その対象になるのは1つだけだ。

 

「あなたのトパーズタイガーにプレゼントして、あ・げ・る♡ うふっ♡」

『があっ!?』

「トパーズタイガー…!」

 

 3本の鉄製触手がトパーズの全身に絡みつく。真幅の好きそうな、気味の悪い形をしていた。

 

「ヤダ!? すっごいチャーミングじゃな〜い!」

「このコたちまで、あなたの趣味に付き合わせないで下さい!」

「やぁねぇ。趣味じゃなくて仕事よ」

 

 真幅のセンスは余人の及ぶところではない。

 

「ちなみに、そのカードを装備したモンスターは、攻撃力が300ポイントダウンして、表示形式の変更も攻撃宣言もできなくなるから、気をつけてね♡」

「くっ…!」

 

 触手によって身動きが取れなくなったトパーズが、苦しそうな表情で呻き声を出す。

 

 トパーズタイガー 攻撃力1600→1300

 

「そして、モンスターを召喚…と言いたいところだけど、《アームズ・ホール》を発動するターン、アタシはモンスターを召喚できないのよねぇ」

 

 頬に手を当てて、残念そうにため息をつく。

 

「アタシはカードを1枚伏せて、ターンエンド♡」

 

 真幅の足元にセットカードが現れる。ほとんどがら空きのフィールドが、カノンには狙い目に見えた。

 

 

「私のターン! …よし!」

 

 ドローしたカードを確認して、カノンの顔に喜色が浮かぶ。

 

「出て来い! 《宝玉獣 サファイアペガサス》!」

 

 サファイアの宝玉が砕け、中から凛々しい瞳をしたペガサスが翼を広げる。その頭部から は、蒼い角が突き出ている。

 

 サファイアペガサス 攻撃力1800

 

「サファイアペガサスが召喚に成功した時、デッキの宝玉獣を1体、魔法&罠(マジック・トラップ)ゾーンに置くことができる!」

「そうはさせないわ! 永続罠オープン! 《エンペラー・オーダー》!」

 

 真幅が腕を突き出して、即座にセットカードを発動した。

 

「《エンペラー・オーダー》は、通常召喚成功時に発動するモンスター効果の発動を、無効にすることができるのよ!」

「なにっ!?」

 

 サファイアの蒼角に集まろうした光が、効果を無効にされたことで途切れてしまう。

 

「その代わり、発動を無効にされたプレイヤーは、デッキから1枚ドローする」

「くっ…!」

 

 カノンが相手を睨みながら、デッキのカードを引き抜く。

 

「だけど、サファイアペガサスの攻撃まで止められるわけじゃない! 行け、サファイア!」

 

 翼を大きく広げて飛び立つ。勢いをつけて滑空し、蹄で真幅を踏みつけた。

 

「キャアアア!?」

 

 ダメージの衝撃に金切り声を上げる。

 

 真幅 LP4000(-1800)→2200

 

 

「よくもやってくれたわね! アタシのターン!」

 

 ドローしたカードを手札に加え、モンスターをディスクに置いた。

 

「さあ、その姿を見せてちょうだい! 《マハー・ヴァイロ》ちゃんを召喚よ!」

 

 紺色のローブに身を包んだ魔法使い。不思議な装飾品をいくつも着けている。

 

 マハーヴァイロ 攻撃力1550

 

「この子は、アタシのコーディネートで、その魅力がより引き立つのよ。手札から装備カード《黒い(ブラック)ペンダント》を発動!」

 

 真っ黒な石がはまったペンダントが、マハーヴァイロの首に掛けられる。その効果により、攻撃力を500アップする。

 

 マハーヴァイロ 攻撃力1550→2050

 

「さらにこのとき、マハーヴァイロちゃんのモンスター効果で、自身に装備された装備カード1枚につき、攻撃力を500ポイントアップさせるわ!」

「合計1000ポイントのパワーアップか…!」

 

 マハーヴァイロの魔力が漲り、紺色のローブが風に吹かれるように揺れた。

 

 マハーヴァイロ 攻撃力2050→2550

 

「マハーヴァイロちゃんで、トパーズちゃんに攻撃! ホーリー・ライトニング!」

 

 マハーヴァイロが腕を上げると雷が集まった。両手を突き出して雷を放つと、トパーズタイガーが爆散する。

 

「ぐうううっ…!」

 

 爆発の衝撃にカノンが耐える。トパーズは宝玉と化して留まった。

 

 カノン LP4000(-1250)→2750

 

「モンスターゾーンで破壊された宝玉獣は、魔法&罠ゾーンに置かれる宝玉となる!」

「あら奇遇ね。破壊された《フリント》にも特殊効果があるのよ!」

 

 装備モンスターが破壊されたにも関わらず、触手生命体のフリントが残っていた。

 

「《フリント》を装備しているモンスターが破壊された場合、フィールドにいるモンスターに取りつくのよぉ〜!」

 

 触手が自動的に、近くにいたサファイアに取り付いた。トパーズ同様、全身に触手が絡みつく。

 

 サファイアペガサス 攻撃力1800→1500

 

『くっ…! 体が動かないっ…!』

「サファイアペガサスまで…!」

 

 宝玉獣の苦しむ姿を立て続けに見せられ、カノンがギリッと奥歯を噛む。

 

「アタシはカードを2枚セット♡ これでターンエンドよ」

 

 まだ何かするつもりなのか、裏側のカードが2枚出される。

 

 

「私のターン!」

 

 カードをドローして、思考を巡らせる。

 

 モンスターを並べなければ勝つことができない。しかし、モンスターを出せばフリントの餌食となってしまう。

 それに、時間をかければかけるほど、マハーヴァイロに装備カードが集まり、手がつけられなくなってしまう。

 

 ならば早いうちに、片方だけでも脅威を排除しておく。

 

「私は《宝玉獣 アメジストキャット》を攻撃表示で召喚!」

 

 アメジストの宝玉が砕け、中からしなやかな猫が鳴き声をあげた。その胸元には、アメジストの宝石がブローチのように飾られている。

 

 アメジストキャット 攻撃力1200

 

「そして、魔法カード《宝玉研磨》を発動! このターンの間、宝玉獣1体の攻撃力を1000ポイントアップさせる! 私はアメジストキャットを選択!」

『ハァーーッ!!』

 

 吼えるアメジストに、攻撃力アップのエフェクトがかかる。

 

 アメジストキャット 攻撃力1200→2200

 

「大したパワーアップだけど、アタシのマハーヴァイロちゃんには敵わないわね」

 

 真幅の言う通り、攻撃力2550の《マハーヴァイロ》を倒すには、アメジストの攻撃力が足りていない。

 

 しかし、カノンには突破口が見えていた。

 

「いいや! この効果で攻撃力がアップした宝玉獣がバトルする間、攻撃されたモンスターの効果は無効化される!」

「なんですって!?」

 

 アメジストキャットの全身が硬質化し、より研ぎ澄まされた牙と爪を見せつける。

 

「バトルだ!」

 

 カノンがアメジストキャットで攻撃しようとすると、真幅が笑いをこぼす。

 

「フフ、甘いわねっ!」

「なに…!」

「リバースカードオープン! 速攻魔法《移り気な仕立屋》!!」

 

 先ほど伏せていたカードを発動する。

 

「このカードは、場にある装備カード1枚を、正しい対象となる別のモンスターに移し替えるのよ〜!」

『きゃあ!?』

「アメジストキャット…!」

 

 サファイアに取りついていた触手が、横にいるアメジストに飛びつく。

 

 アメジストキャット 攻撃力2200→1900

 サファイアペガサス 攻撃力1500→1800

 

「う〜ん、アメちゃんにもピッタリね♪」

「そんなカードを伏せていたのか…!」

 

 アメジストの代わりにサファイアが自由になったとはいえ、相手モンスターを倒すことができない。バトルフェイズが終了する。

 

「私はサファイアペガサスを守備表示に変更」

 

 カードを横向きに変えると、サファイアが首を下げて翼をたたむ。

 

 サファイアペガサス 守備力1200

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンド…。そして、アメジストキャットの攻撃力は元に戻る」

 

 苦い顔で次のターンに備えるカノン。

 《宝玉研磨》の効果も失われて、アメジストの硬化した体も元に戻る。

 

 アメジストキャット 攻撃力1900→900

 

 フリントもマハーヴァイロも除去することができず、まさに雁字搦めな状況で、相手にターンを渡してしまった。

 

 

「アタシのターン、ドロー! 《メテオ・ストライク》を、マハーヴァイロちゃんに装備!」

「またパワーアップか…!」

 

 新たな装備カードの発動で、攻撃力上昇のエフェクトがかかる。ついに、攻撃力が3000ポイントを超えてしまった。

 

 マハーヴァイロ 攻撃力2550→3050

 

「さぁ、アメちゃんを攻撃なさい! ホーリー・ライトニング!!」

「ぐわあああーッ!!」

 

 マハーヴァイロから繰り出された雷攻撃が、アメジストに直撃して爆散する。そのダメージの衝撃がカノンを襲う。

 

 カノン LP2750(-2150)→600

 

「《フリント》の効果発動よぉ〜!」

 

 宝玉と化すアメジストから外れた触手生命体が、再びサファイアに取りつく。

 

「うふふっ♡ 観念して、アタシの新衣装を着ることね♡」

「まだ私のターンが残っている…!」

 

 すでに勝った気でいる真幅に、カノンがわずかな可能性を口にする。

 

「勝ったも同然よ。《メテオ・ストライク》には、守備モンスターの守備力を攻撃力が上回っている分だけ、相手にダメージを与える効果がある。これで、次のターンに壁モンスターで固めようとしても無駄だもの♡」

 

 攻撃力3000超えのモンスターが貫通ダメージを与えてくれば、カノンのライフではもたない。

 

「何をしようと、《フリント》が場にある限り、カノンちゃんに勝ち目はないわ!」

 

 この状況を覆せるような宝玉獣が、カノンのデッキには眠っている。それさえ引ければ、逆転のチャンスも生まれる。

 

「──私のターン、ドロー!」

 

 カノンが引いたカードは、頭の中で思い描いていたモンスターだった。

 

「来た! 私は《宝玉獣 コバルトイーグル》を召喚!!」

 

 コバルトの宝玉が砕け、中からオレンジ色のたてがみを生やした鷲が現れる。胸を覆う革の防具には、コバルトの宝石が飾られている。

 

 コバルトイーグル 攻撃力1400

 

「コバルトイーグルの効果発動! 宝玉獣と名のつくカードを選択し、デッキの一番上に戻す! 戻れ、サファイアペガサス!」

『シャーー!』

 

 コバルトが威嚇するように羽を広げると、青い光となったサファイアがデッキに戻ってくる。同時に、装備対象を失ったフリントが機能を停止する。

 

「装備モンスターが破壊ではなく、デッキに戻されたことで、《フリント》の寄生効果は発動されない!」

「ま、まさかそんな方法で攻略するなんて…!」

「私の宝玉獣にそんな物は必要ない! 消え失せろ!」

 

 フリントが自爆し、完全に破壊される。

 

 無理やり押し付けられたデザインは着るつもりがないという、カノンの意思の表れだった。

 

 ついに厄介なカードを破り、反撃に出る。

 

「魔法発動《宝玉の導き》! 魔法&罠ゾーンに、宝玉獣が2体以上あるとき、デッキから新たな宝玉獣を特殊召喚!」

 

 カノンの場にはトパーズとアメジストの宝玉がある。ホルダーからデッキを取り出し、目的のカードを相手にかざした。

 

「再び飛翔しろ! 《サファイアペガサス》!」

『おぉッ!』

「サファイア・コーリング!」

 

 舞い戻ったサファイアの蒼角に眩い光が集まり、新たにルビーの宝玉を呼び出す。特殊召喚による発動のため、《エンペラー・オーダー》の効果には引っかからない。

 

「さらに魔法発動、《レア・ヴァリュー》! 魔法&罠ゾーンに宝玉が2個以上あるとき、1個を墓地に送り、デッキから2枚ドローする!」

 

 アメジストの宝玉が光の粒子となり、カードを補充する。カノンの手札が4枚に増えた。

 

「これで勝利のピースは揃った!」

「なんですって!?」

 

 勝利宣言をするカノンに、真幅が目を見開く。

 

「ルビーの魔法効果! このカードを特殊召喚し、魔法&罠ゾーンにいるトパーズタイガーを呼び出す! ルビー・ハピネス!!」

『ルビィ!』

 

 ルビーの尻尾にある宝石が赤く眩い光を放つ。そのエネルギーを注がれたトパーズの宝玉が砕けて現れた。

 

 ルビーカーバンクル 攻撃力300

 トパーズタイガー 攻撃力1600

 

「魔法ゾーンから特殊召喚!?」

 

 サファイア、コバルトを含む4体の宝玉獣が場に並んだ。さらに、魔法カードをかざす。

 

「《魔法石の採掘》を発動! 手札を2枚捨て、墓地に置かれている魔法カードを手札に加える!」

 

 コストにしたカードが墓地スロットに吸い込まれ、代わりに1枚のカードが排出される。

 

「私が加える魔法カードは、《宝玉研磨》!!」

「そ、そのカードは…!」

「トパーズタイガーを対象に発動! 攻撃力は1000アップし、バトルの間、相手モンスターの効果を無効化する!」

 

 トパーズタイガーの全身が硬質化し、より研ぎ澄まされた牙と爪を見せつける。あちこちに生えた刃が鋭利に光る。

 

 トパーズタイガー 攻撃力1600→2600

 

「マハーヴァイロに攻撃! トパーズ・バイト!!」

「ま、まずいわっ…!」

 

 トパーズが飛びかかると、慌てて真幅がリバースカードを開く。

 

「罠発動《ホーリージャベリン》! 相手モンスターが攻撃してきた時、その攻撃力分だけアタシのライフを回復する!」

 

 ホーリージャベリンを手にしたマハーヴァイロが、前に向かって投げる。穂先からバリアが展開され、トパーズのエネルギーを吸収した。

 

 真幅 LP2200(+2600)→4800

 

「トパーズタイガーが攻撃するダメージステップの間、このカードの攻撃力は400ポイントアップする! 貫け、トパーズ!」

『ウオォーッ!』

 

 ライフを回復できても、攻撃まで防ぐことはできない。バリアを壊して、マハーヴァイロに向かっていく。

 

 トパーズタイガー 攻撃力2600→3000

 

 トパーズの研磨された爪で、弱点を的確に捉える。相手の攻撃力は2050ポイントまでダウンした。

 

「イヤアアアーー!? マハーヴァイロちゃーーん!!」

 

 自分のモンスターが爆散したことで悲鳴を上げる。

 

 真幅 LP4800(-950)→3850

 

「もう許さないわ…!」

 

 真幅が目を吊り上げて怒る。

 

「持ち主から離された《黒い(ブラック)ペンダント》の呪いが発動する! 500ポイントのダメージを喰らいなさい!」

「ぐぅっ…!」

 

 ペンダントから千切れた黒い宝石が光り、カノンに黒い電撃を食らわせる。

 

 カノン LP600(-500)→100

 

「カノンちゃんの残りライフは100。そのモンスターたちでは倒すことは不可能よ!」

 

 カノンの攻撃可能なモンスターで与えられるダメージは3500ポイント。真幅のライフを削り切るには、わずかに届かない。

 

「オーホッホッホ! これでアタシの勝ちは決まったも同然ねぇ〜!!」

 

 高笑いをする真幅に、カノンが不敵な笑みを浮かべる。

 

「それはどうかな?」

「──!?」

 

 カノンが足元に伏せられていたカードを発動した。

 

「リバースカードオープン! 《ダメージキャプチャー》!! 受けたダメージの数値分を、私のモンスター1体の攻撃力に加える!」

 

 黒い(ブラック)ペンダントの効果ダメージ分、500ポイントがコバルトの攻撃力になる。

 

 コバルトイーグル 攻撃力1400→1900

 

「こ、攻撃力1900ぅ!? ていうことは…!」

「モンスターの合計ダメージは4000!!」

「ひいっ!?」

 

 真幅が頬を両手で挟んで息を呑む。カノンが左腕を突き出した。

 

「行け! サファイア、ルビー!」

「キャーー!?」

 

 サファイアが上から滑空して踏みつけ、その背に乗っていたルビーがジャンプして、口からビームを吐いた。

 

 真幅 LP3850(-2100)→1750

 

「これで最後だ! コバルトイーグルの攻撃! コバルト・ウィング!!」

『ヒャッハー! オイラの見せ場だぜ!』

 

 コバルトが羽を広げて、低空飛行で相手に突進する。ソリッドビジョンだが、真幅が思わず頭を庇う。

 

「キャアアアーー!?」

 

 体をすり抜けたが、ライフは削られていく。

 

 真幅 LP1750(-1900)→0

 

 デュエル終了の電子音が鳴り、ソリッドビジョンのモンスターも消える。

 

「ふぅ…」

 

 懸かっているものが大きかっただけに、疲労の色も濃い。真幅の方を見ると、こちらに背を向けて座り込んでいた。

 

「うぅ…。また…またボツなのね…」

 

 よよよ…と目を押さえながら泣く後ろ姿に、思わず同情してしまう。

 

 少し可哀想だったかもしれないと、カノンが声をかける。

 

「あの──」

「ま、ボツになったもんは仕方ないわ。次はこの衣装なんてどうかしら、カノンちゃん!?」

 

 まったく気落ちしてない様子で、別のデザインが描かれた紙を突きつけられた。例に漏れず奇抜な衣装で、カノンの頬が引き攣る。

 

「もう勘弁して下さい!」

「もう1回デュエルよ〜! オーホッホッホ〜!」

 

 真幅の高笑いする声が、撮影スタジオに響いた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。