アカデミアで月に一度のテストが行われている頃、カノンはモデルデュエリストとして撮影の仕事が入っていた。
アカデミアがある孤島を離れ、撮影機材や人で溢れているスタジオで、様々な表情やポーズをしていた。
「ラスト! もう1枚いきましょう!」
「はい!」
アイドルばりの弾ける笑顔をつくったカノンが、しっかりとポーズを決める。その腕には、ごついデュエルディスクが装着されてた。
少女らしさを前面に押し出したガーリーな衣装と髪型なので、どこかアンバランスな絵面だった。
「カノンちゃん〜! 今日も最高の出来だったわよ♡」
撮影が終わったカノンに、長身の人物が声をかける。少々変わった人で、女性のような仕草や口調で喋っているが、性別的には男性だ。
名前を『
「あなたの希望通り、そのペンダントにぴったり合うデザインだったでしょう?」
「えぇ。相変わらず、デザインに関しては天才的ですね」
「うふっ♡ 褒めすぎよぉ〜♡」
予め、レインボーの宝玉が入ったペンダントを中心にして、衣装のデザインをまとめてほしいと依頼していた。
それは完璧に実現されていて、真幅の仕事ぶりに文句のつけようがない。これからも、母の仕事を支えてほしい人材だ。
ただ、真幅には一つだけ欠点がある。
「それでねぇ、次はこういう衣装にしてみようと思うの」
「またですか…」
事ある毎に、奇抜すぎるデザインを勧めてくるのだ。その度に没になっているのだが、めげる様子がない。
「これって…」
デザイン画を見たカノンの頬がひくっと引き攣った。
「そっ♡ おジャマイエローの着ぐるみよ♪」
「……」
カノンは絶句した。
「この前までスランプ気味でね。いいデザインが思い浮かばなかったんだけど、あるときピンと来て、この衣装にたどり着いたの♡」
「これを…私が…?」
現実を受け止めきれず、ただ自分に関係があるのかを質問する。
「戸惑う気持ちもわかるわ。アタシも少しだけ迷ったもの。おジャマが世界一似合う男の子がいたら話は別なんだけど…こればっかりわね」
そんな色物男は、宇宙のどこを探しても見つかるはずがないとカノンは思った。
「まぁ、カノンちゃんなら何でも着こなしてくれるし、大丈夫よね?」
想像するまでなく、おぞましい光景に身震いする。
「お断りします! こんな衣装着たら、一生の恥ですよ!」
「まっ! なんてこと言うのかしら!?」
「とにかく、絶対に着ませんから」
取り付く島もないカノンに、真幅が顎に指を添えて、眉をぐにゃりと寄せる。
「う〜ん、だったらデュエルで決めましょう?」
「デュエルで…?」
「アタシが勝ったら、あの衣装を着てもらう。負けたら、カノンちゃんの好きにしていいわ」
このまま下手に押し切られても困る。ここはデュエルで決着をつけて、すっぱりと諦めてもらおう。
「…わかりました。受けて立ちます」
「そうこなくっちゃ♪」
人が捌けて広くなったスタジオで、2人がデッキをセットする。
「準備はいーい?」
「いつでもいいですよ」
お互いに向き合い、デュエルディスクを構えた。
「私のターン、ドロー!」
絶対に譲れない闘いが始まった。先行を取ったカノンが、デッキからカードを引く。
「《宝玉獣 トパーズタイガー》を召喚!」
トパーズの宝玉が砕け、中から強面のホワイトタイガーが現れる。その頭部と脚からは、尖った刃が生えている。
トパーズタイガー 攻撃力1600
「私はこれで、ターンエンド」
「アタシのターンよ! カードドロー!」
真幅がディスクの空きスロットに、魔法カードを差し込む。
「アタシは《アームズ・ホール》を発動! デッキの一番上のカードを墓地に送って、装備カードを手札に加えるわ♡」
支払ったコストが墓地スロットに吸い込まれる。その後、ホルダーからデッキを取り出し、目当てのカードをカノンにかざした。
「《フリント》を手札に加えて、さっそく発動よ!」
自分のモンスターがいないにも関わらず、装備魔法を発動した。その対象になるのは1つだけだ。
「あなたのトパーズタイガーにプレゼントして、あ・げ・る♡ うふっ♡」
『があっ!?』
「トパーズタイガー…!」
3本の鉄製触手がトパーズの全身に絡みつく。真幅の好きそうな、気味の悪い形をしていた。
「ヤダ!? すっごいチャーミングじゃな〜い!」
「このコたちまで、あなたの趣味に付き合わせないで下さい!」
「やぁねぇ。趣味じゃなくて仕事よ」
真幅のセンスは余人の及ぶところではない。
「ちなみに、そのカードを装備したモンスターは、攻撃力が300ポイントダウンして、表示形式の変更も攻撃宣言もできなくなるから、気をつけてね♡」
「くっ…!」
触手によって身動きが取れなくなったトパーズが、苦しそうな表情で呻き声を出す。
トパーズタイガー 攻撃力1600→1300
「そして、モンスターを召喚…と言いたいところだけど、《アームズ・ホール》を発動するターン、アタシはモンスターを召喚できないのよねぇ」
頬に手を当てて、残念そうにため息をつく。
「アタシはカードを1枚伏せて、ターンエンド♡」
真幅の足元にセットカードが現れる。ほとんどがら空きのフィールドが、カノンには狙い目に見えた。
「私のターン! …よし!」
ドローしたカードを確認して、カノンの顔に喜色が浮かぶ。
「出て来い! 《宝玉獣 サファイアペガサス》!」
サファイアの宝玉が砕け、中から凛々しい瞳をしたペガサスが翼を広げる。その頭部から は、蒼い角が突き出ている。
サファイアペガサス 攻撃力1800
「サファイアペガサスが召喚に成功した時、デッキの宝玉獣を1体、
「そうはさせないわ! 永続罠オープン! 《エンペラー・オーダー》!」
真幅が腕を突き出して、即座にセットカードを発動した。
「《エンペラー・オーダー》は、通常召喚成功時に発動するモンスター効果の発動を、無効にすることができるのよ!」
「なにっ!?」
サファイアの蒼角に集まろうした光が、効果を無効にされたことで途切れてしまう。
「その代わり、発動を無効にされたプレイヤーは、デッキから1枚ドローする」
「くっ…!」
カノンが相手を睨みながら、デッキのカードを引き抜く。
「だけど、サファイアペガサスの攻撃まで止められるわけじゃない! 行け、サファイア!」
翼を大きく広げて飛び立つ。勢いをつけて滑空し、蹄で真幅を踏みつけた。
「キャアアア!?」
ダメージの衝撃に金切り声を上げる。
真幅 LP4000(-1800)→2200
「よくもやってくれたわね! アタシのターン!」
ドローしたカードを手札に加え、モンスターをディスクに置いた。
「さあ、その姿を見せてちょうだい! 《マハー・ヴァイロ》ちゃんを召喚よ!」
紺色のローブに身を包んだ魔法使い。不思議な装飾品をいくつも着けている。
マハーヴァイロ 攻撃力1550
「この子は、アタシのコーディネートで、その魅力がより引き立つのよ。手札から装備カード《
真っ黒な石がはまったペンダントが、マハーヴァイロの首に掛けられる。その効果により、攻撃力を500アップする。
マハーヴァイロ 攻撃力1550→2050
「さらにこのとき、マハーヴァイロちゃんのモンスター効果で、自身に装備された装備カード1枚につき、攻撃力を500ポイントアップさせるわ!」
「合計1000ポイントのパワーアップか…!」
マハーヴァイロの魔力が漲り、紺色のローブが風に吹かれるように揺れた。
マハーヴァイロ 攻撃力2050→2550
「マハーヴァイロちゃんで、トパーズちゃんに攻撃! ホーリー・ライトニング!」
マハーヴァイロが腕を上げると雷が集まった。両手を突き出して雷を放つと、トパーズタイガーが爆散する。
「ぐうううっ…!」
爆発の衝撃にカノンが耐える。トパーズは宝玉と化して留まった。
カノン LP4000(-1250)→2750
「モンスターゾーンで破壊された宝玉獣は、魔法&罠ゾーンに置かれる宝玉となる!」
「あら奇遇ね。破壊された《フリント》にも特殊効果があるのよ!」
装備モンスターが破壊されたにも関わらず、触手生命体のフリントが残っていた。
「《フリント》を装備しているモンスターが破壊された場合、フィールドにいるモンスターに取りつくのよぉ〜!」
触手が自動的に、近くにいたサファイアに取り付いた。トパーズ同様、全身に触手が絡みつく。
サファイアペガサス 攻撃力1800→1500
『くっ…! 体が動かないっ…!』
「サファイアペガサスまで…!」
宝玉獣の苦しむ姿を立て続けに見せられ、カノンがギリッと奥歯を噛む。
「アタシはカードを2枚セット♡ これでターンエンドよ」
まだ何かするつもりなのか、裏側のカードが2枚出される。
「私のターン!」
カードをドローして、思考を巡らせる。
モンスターを並べなければ勝つことができない。しかし、モンスターを出せばフリントの餌食となってしまう。
それに、時間をかければかけるほど、マハーヴァイロに装備カードが集まり、手がつけられなくなってしまう。
ならば早いうちに、片方だけでも脅威を排除しておく。
「私は《宝玉獣 アメジストキャット》を攻撃表示で召喚!」
アメジストの宝玉が砕け、中からしなやかな猫が鳴き声をあげた。その胸元には、アメジストの宝石がブローチのように飾られている。
アメジストキャット 攻撃力1200
「そして、魔法カード《宝玉研磨》を発動! このターンの間、宝玉獣1体の攻撃力を1000ポイントアップさせる! 私はアメジストキャットを選択!」
『ハァーーッ!!』
吼えるアメジストに、攻撃力アップのエフェクトがかかる。
アメジストキャット 攻撃力1200→2200
「大したパワーアップだけど、アタシのマハーヴァイロちゃんには敵わないわね」
真幅の言う通り、攻撃力2550の《マハーヴァイロ》を倒すには、アメジストの攻撃力が足りていない。
しかし、カノンには突破口が見えていた。
「いいや! この効果で攻撃力がアップした宝玉獣がバトルする間、攻撃されたモンスターの効果は無効化される!」
「なんですって!?」
アメジストキャットの全身が硬質化し、より研ぎ澄まされた牙と爪を見せつける。
「バトルだ!」
カノンがアメジストキャットで攻撃しようとすると、真幅が笑いをこぼす。
「フフ、甘いわねっ!」
「なに…!」
「リバースカードオープン! 速攻魔法《移り気な仕立屋》!!」
先ほど伏せていたカードを発動する。
「このカードは、場にある装備カード1枚を、正しい対象となる別のモンスターに移し替えるのよ〜!」
『きゃあ!?』
「アメジストキャット…!」
サファイアに取りついていた触手が、横にいるアメジストに飛びつく。
アメジストキャット 攻撃力2200→1900
サファイアペガサス 攻撃力1500→1800
「う〜ん、アメちゃんにもピッタリね♪」
「そんなカードを伏せていたのか…!」
アメジストの代わりにサファイアが自由になったとはいえ、相手モンスターを倒すことができない。バトルフェイズが終了する。
「私はサファイアペガサスを守備表示に変更」
カードを横向きに変えると、サファイアが首を下げて翼をたたむ。
サファイアペガサス 守備力1200
「カードを1枚伏せて、ターンエンド…。そして、アメジストキャットの攻撃力は元に戻る」
苦い顔で次のターンに備えるカノン。
《宝玉研磨》の効果も失われて、アメジストの硬化した体も元に戻る。
アメジストキャット 攻撃力1900→900
フリントもマハーヴァイロも除去することができず、まさに雁字搦めな状況で、相手にターンを渡してしまった。
「アタシのターン、ドロー! 《メテオ・ストライク》を、マハーヴァイロちゃんに装備!」
「またパワーアップか…!」
新たな装備カードの発動で、攻撃力上昇のエフェクトがかかる。ついに、攻撃力が3000ポイントを超えてしまった。
マハーヴァイロ 攻撃力2550→3050
「さぁ、アメちゃんを攻撃なさい! ホーリー・ライトニング!!」
「ぐわあああーッ!!」
マハーヴァイロから繰り出された雷攻撃が、アメジストに直撃して爆散する。そのダメージの衝撃がカノンを襲う。
カノン LP2750(-2150)→600
「《フリント》の効果発動よぉ〜!」
宝玉と化すアメジストから外れた触手生命体が、再びサファイアに取りつく。
「うふふっ♡ 観念して、アタシの新衣装を着ることね♡」
「まだ私のターンが残っている…!」
すでに勝った気でいる真幅に、カノンがわずかな可能性を口にする。
「勝ったも同然よ。《メテオ・ストライク》には、守備モンスターの守備力を攻撃力が上回っている分だけ、相手にダメージを与える効果がある。これで、次のターンに壁モンスターで固めようとしても無駄だもの♡」
攻撃力3000超えのモンスターが貫通ダメージを与えてくれば、カノンのライフではもたない。
「何をしようと、《フリント》が場にある限り、カノンちゃんに勝ち目はないわ!」
この状況を覆せるような宝玉獣が、カノンのデッキには眠っている。それさえ引ければ、逆転のチャンスも生まれる。
「──私のターン、ドロー!」
カノンが引いたカードは、頭の中で思い描いていたモンスターだった。
「来た! 私は《宝玉獣 コバルトイーグル》を召喚!!」
コバルトの宝玉が砕け、中からオレンジ色のたてがみを生やした鷲が現れる。胸を覆う革の防具には、コバルトの宝石が飾られている。
コバルトイーグル 攻撃力1400
「コバルトイーグルの効果発動! 宝玉獣と名のつくカードを選択し、デッキの一番上に戻す! 戻れ、サファイアペガサス!」
『シャーー!』
コバルトが威嚇するように羽を広げると、青い光となったサファイアがデッキに戻ってくる。同時に、装備対象を失ったフリントが機能を停止する。
「装備モンスターが破壊ではなく、デッキに戻されたことで、《フリント》の寄生効果は発動されない!」
「ま、まさかそんな方法で攻略するなんて…!」
「私の宝玉獣にそんな物は必要ない! 消え失せろ!」
フリントが自爆し、完全に破壊される。
無理やり押し付けられたデザインは着るつもりがないという、カノンの意思の表れだった。
ついに厄介なカードを破り、反撃に出る。
「魔法発動《宝玉の導き》! 魔法&罠ゾーンに、宝玉獣が2体以上あるとき、デッキから新たな宝玉獣を特殊召喚!」
カノンの場にはトパーズとアメジストの宝玉がある。ホルダーからデッキを取り出し、目的のカードを相手にかざした。
「再び飛翔しろ! 《サファイアペガサス》!」
『おぉッ!』
「サファイア・コーリング!」
舞い戻ったサファイアの蒼角に眩い光が集まり、新たにルビーの宝玉を呼び出す。特殊召喚による発動のため、《エンペラー・オーダー》の効果には引っかからない。
「さらに魔法発動、《レア・ヴァリュー》! 魔法&罠ゾーンに宝玉が2個以上あるとき、1個を墓地に送り、デッキから2枚ドローする!」
アメジストの宝玉が光の粒子となり、カードを補充する。カノンの手札が4枚に増えた。
「これで勝利のピースは揃った!」
「なんですって!?」
勝利宣言をするカノンに、真幅が目を見開く。
「ルビーの魔法効果! このカードを特殊召喚し、魔法&罠ゾーンにいるトパーズタイガーを呼び出す! ルビー・ハピネス!!」
『ルビィ!』
ルビーの尻尾にある宝石が赤く眩い光を放つ。そのエネルギーを注がれたトパーズの宝玉が砕けて現れた。
ルビーカーバンクル 攻撃力300
トパーズタイガー 攻撃力1600
「魔法ゾーンから特殊召喚!?」
サファイア、コバルトを含む4体の宝玉獣が場に並んだ。さらに、魔法カードをかざす。
「《魔法石の採掘》を発動! 手札を2枚捨て、墓地に置かれている魔法カードを手札に加える!」
コストにしたカードが墓地スロットに吸い込まれ、代わりに1枚のカードが排出される。
「私が加える魔法カードは、《宝玉研磨》!!」
「そ、そのカードは…!」
「トパーズタイガーを対象に発動! 攻撃力は1000アップし、バトルの間、相手モンスターの効果を無効化する!」
トパーズタイガーの全身が硬質化し、より研ぎ澄まされた牙と爪を見せつける。あちこちに生えた刃が鋭利に光る。
トパーズタイガー 攻撃力1600→2600
「マハーヴァイロに攻撃! トパーズ・バイト!!」
「ま、まずいわっ…!」
トパーズが飛びかかると、慌てて真幅がリバースカードを開く。
「罠発動《ホーリージャベリン》! 相手モンスターが攻撃してきた時、その攻撃力分だけアタシのライフを回復する!」
ホーリージャベリンを手にしたマハーヴァイロが、前に向かって投げる。穂先からバリアが展開され、トパーズのエネルギーを吸収した。
真幅 LP2200(+2600)→4800
「トパーズタイガーが攻撃するダメージステップの間、このカードの攻撃力は400ポイントアップする! 貫け、トパーズ!」
『ウオォーッ!』
ライフを回復できても、攻撃まで防ぐことはできない。バリアを壊して、マハーヴァイロに向かっていく。
トパーズタイガー 攻撃力2600→3000
トパーズの研磨された爪で、弱点を的確に捉える。相手の攻撃力は2050ポイントまでダウンした。
「イヤアアアーー!? マハーヴァイロちゃーーん!!」
自分のモンスターが爆散したことで悲鳴を上げる。
真幅 LP4800(-950)→3850
「もう許さないわ…!」
真幅が目を吊り上げて怒る。
「持ち主から離された《
「ぐぅっ…!」
ペンダントから千切れた黒い宝石が光り、カノンに黒い電撃を食らわせる。
カノン LP600(-500)→100
「カノンちゃんの残りライフは100。そのモンスターたちでは倒すことは不可能よ!」
カノンの攻撃可能なモンスターで与えられるダメージは3500ポイント。真幅のライフを削り切るには、わずかに届かない。
「オーホッホッホ! これでアタシの勝ちは決まったも同然ねぇ〜!!」
高笑いをする真幅に、カノンが不敵な笑みを浮かべる。
「それはどうかな?」
「──!?」
カノンが足元に伏せられていたカードを発動した。
「リバースカードオープン! 《ダメージキャプチャー》!! 受けたダメージの数値分を、私のモンスター1体の攻撃力に加える!」
コバルトイーグル 攻撃力1400→1900
「こ、攻撃力1900ぅ!? ていうことは…!」
「モンスターの合計ダメージは4000!!」
「ひいっ!?」
真幅が頬を両手で挟んで息を呑む。カノンが左腕を突き出した。
「行け! サファイア、ルビー!」
「キャーー!?」
サファイアが上から滑空して踏みつけ、その背に乗っていたルビーがジャンプして、口からビームを吐いた。
真幅 LP3850(-2100)→1750
「これで最後だ! コバルトイーグルの攻撃! コバルト・ウィング!!」
『ヒャッハー! オイラの見せ場だぜ!』
コバルトが羽を広げて、低空飛行で相手に突進する。ソリッドビジョンだが、真幅が思わず頭を庇う。
「キャアアアーー!?」
体をすり抜けたが、ライフは削られていく。
真幅 LP1750(-1900)→0
デュエル終了の電子音が鳴り、ソリッドビジョンのモンスターも消える。
「ふぅ…」
懸かっているものが大きかっただけに、疲労の色も濃い。真幅の方を見ると、こちらに背を向けて座り込んでいた。
「うぅ…。また…またボツなのね…」
よよよ…と目を押さえながら泣く後ろ姿に、思わず同情してしまう。
少し可哀想だったかもしれないと、カノンが声をかける。
「あの──」
「ま、ボツになったもんは仕方ないわ。次はこの衣装なんてどうかしら、カノンちゃん!?」
まったく気落ちしてない様子で、別のデザインが描かれた紙を突きつけられた。例に漏れず奇抜な衣装で、カノンの頬が引き攣る。
「もう勘弁して下さい!」
「もう1回デュエルよ〜! オーホッホッホ〜!」
真幅の高笑いする声が、撮影スタジオに響いた。