秋も深まる頃。女子寮の一室で、絵本を音読するお姫さまがいた。
「王女はベッドの上の、その醜いカエルを掴み、叩きつけてしまいました。するとどうでしょう? カエルは美しい王子さまとなったのです。王子は魔法をかけられて、カエルの姿となっていたのでした。そして、王女さまと王子は幸せな結婚を……」
そこで本を閉じて、窓から空を見上げた。その横顔は憂いを帯びていた。
カノンが女子寮を歩いていると、見知らぬ女子生徒に声をかけられた。
「もし? そこのあなた」
「えっ? 私のこと?」
「えぇ、そうよ。わたしはローズ。ごきげんよう、一色カノン」
青いドレスで着飾った少女がスカートの裾を軽く持ち上げた、カーテシーで挨拶する。まさに、お姫さまのようだった。
「あなたには、デュエルモンスターズの精霊が見えると、御学友たちから聞いているわ。それは本当かしら?」
「ああ、そうだよ」
隠すようなことではないし、精霊に関する目撃情報や困り事があるなら、相談してもらいたい。
「実は…わたしにも精霊が見えるの」
「えっ!? キミも精霊が!?」
茂木に続き、2人目だ。カノンが仲間を見つけたようなキラキラとした目で食いつく。
「えぇ、わたしを守ってくださるプリンスたちがね」
「プリンス…?」
「そう、王子さまよ」
照れくさそうに、《デスガエル》のカードを見せてくる。
「あなただったら見えるでしょう? わたしの王子さまが!」
「王子さま…? カエルだけど?」
見せるカードを間違えたのかと思ったが、その一言でローズが憤慨する。
「まぁ!? わたしの王子さまを、醜いカエルと見間違えるなんて!」
「いや、そんなつもりじゃ…。だって、そのカードはどう見ても…」
前言を撤回しないカノンに対して、ローズが激怒して詰め寄った。
「いいわ。だったらデュエルよ! 王子さまがいるってこと、あなたに証明してあげる!」
「えぇ〜…」
彼女の話を妄言と取るか悩む。カエルと王子さまというと、童話にあった、王女さまがカエルになった王子さまと結婚する話が浮かぶ。
彼女に見えているのは精霊ではなく、思い込みが生み出した、イマジナリーフレンドのような存在かもしれない。
だが、精霊が誰にでも見えるわけではないように、彼女の王子さまもまた、カノンに見えていないだけの可能性はある。
「…分かった。やろう」
自分にしか見えない精霊、そんな存在がいてもおかしくはない。彼女とのデュエルを通じて、精霊に一歩でも近づくことができるなら、 喜んで受けて立とう。
デュエルを承諾したカノンは、以前にも使用したブルー専用のデュエル場に来ていた。観客の中には、明日香たちも紛れている。
カノンとローズが、デュエルリングの上に立つ。
「デュエルは美しく…が、私のモットー。美しいデュエルをしましょう?」
「私の場合は宝玉獣のためだ。お互い、精霊の期待に応えられるデュエルをしよう」
お互いに自分のデッキをセットすると、デュエルディスクが変形した。
「先行はこのわたし! ドロー!」
デッキから1枚引いたローズが、手札のカードを横向きにしてディスクに置いた。
「わたしは《
不思議な模様をしたオタマジャクシが、ギョ、と小さく鳴いた。
悪魂邪苦止 守備力0
「「美しくな〜い!!」」
「美しくない…?」
観客席からジュンコとももえの声を拾ったローズが、ピクリと眉を動かす。
「うっ、急に悪寒が…」
「守備力0のモンスター…攻撃してくれと言っているようなものね」
ケチをつけた二人に悪寒が走る。真ん中に座っている明日香が、真面目にモンスターの分析をする。
「私のターン、ドロー!」
カノンがデッキのカードを引く。
「私は、《宝玉獣 アンバーマンモス》を攻撃表示で召喚」
アンバーの宝玉が砕け、六本の牙を持つマンモスが現れる。額に埋め込まれた琥珀には、トンボのような昆虫の影が浮かんでいる。
アンバーマンモス 攻撃力1700
「バトルだ! アンバーマンモスで、悪魂邪苦止を攻撃! アンバー・スタンプ!!」
アンバーが地響きを立てながら迫り、悪魂邪苦止を爆散させる。ローズがその爆風から身を守りながらも食い下がる。
「っ…! 《悪魂邪苦止》の効果発動! 戦闘によって墓地へ送られた時、デッキから《悪魂邪苦止》を手札に加えることができます」
デッキから加えたカードを指の間に挟んで、カノンに見せる。
「へぇ…面白そうなデッキだな」
『油断するなよ、カノン』
同名モンスターが重要になるデッキ。使いこなすのは難しそうだ。
「私はカードを1枚伏せて、ターンエンド」
カノンが警戒しながら、ローズにターンを渡した。
「わたしのターン、ドロー!」
カードを引いたローズが、さっそく動き出す。
「魔法カード《イキカエル》を発動。手札の水属性モンスター、《悪魂邪苦止》を墓地へ送り、墓地の水属性モンスターを特殊召喚します」
カードが墓地スロットに吸い込まれると、その奥が光り出す。
「わたしは、《悪魂邪苦止》を召喚」
同名モンスターを捨ててまで特殊召喚したのは、生贄召喚のためだろう。
「悪魂邪苦止を生贄に、《デスガエル》を攻撃表示で召喚!」
「そのカードは…!」
王子さまの精霊のカード。だが、フィールドに現れたのは、まさしくカエルと呼ぶに相応しい姿だった。
「これで終わりではありません。わたしの墓地には、2体の悪魂邪苦止がいます。悪魂邪苦止たちよ、たくましく成長した、その姿を見せて」
デュエルリングを泳ぐ悪魂邪苦止に、手足が生える。水しぶきを上げながら跳ねて、フィールドに2体のデスガエルが着地した。
デスガエル×3 攻撃力1900
「召喚した《デスガエル》の効果により、自分の墓地にいる“悪魂邪苦止”の数だけ、手札かデッキから、デスガエルを呼ぶことができるのです」
頬を薔薇色に染めたローズが、デスガエルを見つめる。
「へぇ。やるな、お姫さま」
「改めて見てどう? わたしの王子さまたちは!」
デスガエルたちが、ゲーロ、ゲーロと鳴き声を上げた。
「いや、それはどう見てもカエルにしか…」
「王子さまよッ!!」
やはりカエルとは認められないようで、ローズが癇癪を起こす。
「わたしには見える。今は醜いカエルに身をやつしているけれど、いつでもこの私を守ってくれる、麗しの王子さまが…!」
ローズにはそれぞれ別の姿をした王子さまに見えている。
「ほら、ここにいるじゃない?」
「王子さま…?」
「カエルにしか見えませんわ」
観客席のジュンコとももえが、淡々と思ったことを呟いた。
周囲の困惑にも負けず、ローズが必死に訴えかける。
「わたしには王子さまが見えるの!」
「う〜ん…」
何と答えればいいのか唸る。よく目を凝らして見ても、ソリッドビジョンのデスガエルにしか見えない。
そんなカノンに、ローズがしびれを切らす。
「デュエルを再開します! わたしは手札から魔法カード《
ローズが手札のカードをかざして、デュエルを決めにかかる。
「わたしのフィールドに、デスガエルが3体揃ったとき、相手フィールド上に存在する、すべてのカードを破壊します」
「なに!?」
デスガエル専用の、まさに必殺カード。キラキラとした粒子がデスガエルの周りを舞う。
「これが決まれば、カノンの場に攻撃を防ぐ手段はなくなる…!」
「3回攻撃で、ライフゼロォ!?」
観戦している明日香たちも、冷や汗をかいて心配する。
「デスガエルたち、わたしのために歌って!」
大口を開けたデスガエルたちから、ゲロゲロゲロゲロと大きな鳴き声が響き、カノンが片手で耳を塞ぐ。もう片方の腕をバッと払って、伏せカードを開いた。
「くっ…罠発動!《宝玉の牙城》! このターン、アンバーマンモスは攻撃表示なら攻撃力を、守備表示なら守備力を400下げることで、あらゆる破壊から守られる!」
デスガエルたちのデスコーラスによって、カノンが発動した罠カードと、アンバーマンモスの大きな牙が1本破壊される。
アンバーマンモス 攻撃力1700→1300
『ぐおぅ…!』
「耐えてくれ、アンバーマンモス!」
合唱を終えたデスガエルたちに、ニコニコとした笑顔のローズが、「ブラボー!」と拍手をする。
「3体のデスガエルで、アンバーマンモスを攻撃!」
『ぐおおおーッ!?』
戦闘破壊を無効にする毎に、攻撃力が400ずつ下がるので、合計1200のダウン。アンバーの大きな牙が3本折れて、小さな牙が2本だけ残った。
アンバーマンモス 攻撃力1300→100
「うわあああッ!!!」
アンバーマンモスは破壊されないが、戦闘ダメージは受ける。600、1000、1400の合計3000ダメージの衝撃が、カノンを襲った。
カノン LP4000(-3000)→1000
「カノンのライフが一気に1000ポイントに!」
明日香が悲鳴のような声を上げる。ジュンコとももえの表情が沈んでいった。
「わたしのターンはまだ終わってません。3体のデスガエルを《融合》! いでよ、《ガエル・サンデス》!」
融合素材となったデスガエル3体の空間が歪み、渦巻いて混ざり合う。フィールドに現れたのは、細長い口ヒゲを生やした巨大な醜いカエルだ。
ガエルサンデス 攻撃力2500
「へぇ…強そうなモンスターだ」
「でしょでしょ!? さらにイケメンの王子さま!」
ローズがガエルサンデスを見上げて頬を染める。その珍妙な光景に、褒めていたはずのカノンが引き気味になる。
「素敵でしょ? ターンを終了します」
カエルたちとデュエルできるのが、心底楽しく仕方ないといった様子だ。
「カエルの王子さまの精霊か…」
カノンがぼそりと呟く。実在しているかは不明だが、ローズとカエルたちの絆は確かにそこにある。でなければ、これほどまでにカードが応えてくれるはずがない。
「私のターン、ドロー!」
カノンの場には攻撃力が大幅ダウンしたアンバーマンモスのみ。ならばと、反撃のカードをかざす。
「手札から、速攻魔法《宝玉の充填》を発動! アンバーマンモスの攻撃力か守備力を元に戻し、その数値分だけアップさせる!」
『うおおおーーッ!!』
レインボーライフのようなカード。欠けていた大きな牙が充填され、力を取り戻したアンバーが鼻を高らかに上げる。
アンバーマンモス 攻撃力100→3300
「宝玉の牙城とのコンボで、一気にパワーアップよ!」
「相手のモンスターの攻撃力を上回ったわ!」
ローズが強ばった顔になる。カノンがすかさず攻撃を仕掛けた。
「やれ、アンバーマンモス! アンバー・スタンプ!!」
「きゃあっ!?」
アンバーが地響きを立てながら駆け出し、自分より巨大な敵に突進して、ガエルサンデスを爆散させる。
ローズ LP4000(-800)→3200
「なんてひどい方なの! わたしの王子さまを倒しちゃうなんて!」
「そんなこと言われてもなぁ…」
無茶苦茶な言いがかりをつけられて、カノンが困った顔になる。
「私はカードを2枚伏せる」
ディスクの空きスロットにカードを差し込む。
「このエンドフェイズに、アンバーマンモスは元々の攻撃力になる」
《宝玉の充填》の上昇分は消えたが、欠けていた牙も攻撃力も元通りになる。
アンバーマンモス 攻撃力3300→1700
「わたしのターン」
がら空きの盤面でドローしたのは、ローズを救うカードだった。
「わたしのピンチに、王子さまは死の淵からも蘇る。魔法カード《死者蘇生》を発動して、墓地の《ガエル・サンデス》を特殊召喚します!」
「──!?」
デュエルリングから、水しぶきを上げながら跳ねて、フィールドにガエルサンデスが着地する。
ガエルサンデス 攻撃力2500
「ガエルサンデス、アンバーマンモスを飲み込んでしまいなさい!」
『くっ!?』
大口を開けたガエルサンデスが、紫色の舌を伸ばして、アンバーマンモスを丸呑みにする。
カノン LP1000(-800)→200
「アンバーマンモス!」
捕まったことに焦るカノンだが、顔色の悪いガエルサンデスが何度も嘔吐いた。中からアンバーの宝玉が吐き出されて、カノンの場に戻ってくる。
「くっ…! だけど、もう攻撃モンスターは残っていない!」
「残念ね。こんな手もあるのよ? 速攻魔法《融合解除》! 融合モンスターをデッキに戻し、墓地から融合素材となったモンスターを特殊召喚する!」
「まずいわ!」
カノンの場にモンスターはいない。1度でも攻撃を食らえば、それだけでライフは0。
「お帰りなさい、デスガエルたち」
融合解除したデスガエルたちが着地して、ゲロゲロと鳴き出した。
デスガエル×3 攻撃力1900
「王子様、悪い魔法使いをやっつけて!」
「悪い魔法使い…?」
ただ童話の登場人物に重ねているだけなのか。それとも、カノンの姿そのものが魔法使いに見えているのか。
「デスガエルでダイレクトアタック! デス・リサイタル!!」
デスガエルの鳴き声攻撃が、カノンを襲う。
「リバースカードオープン!《宝玉の双璧》!!」
カードからサファイアとトパーズの幻影が飛び出し、デスガエルの鳴き声を無力化する。
「宝玉獣が戦闘で破壊されている場合、デッキから新たな宝玉を呼び出し、このターンに自分が受ける戦闘ダメージを0にする!」
アンバーの宝玉に並んで、ルビーの宝玉が増える。間一髪のところで、相手の攻撃を防ぐことができた。
「まあ! なんていやらしい魔法使い!」
「だから、魔法使いじゃないってば!」
ローズワールドに巻き込むのは勘弁してほしい。
「(こうなったら、すべてのカエルを…!)」
ローズが手札のカードに目をやり、奥の手を繰り出す。
「わたしはデスガエル3体を生贄に、《両生類天使 -ミ・ガエル》を特殊召喚!」
ずんぐりむっくりとしたオレンジ色のカエル。その背中には、天使のような翼が生えている。
ミガエル 攻撃力1400
「攻撃力1400…?」
3体を生贄にして召喚した割には、あまりにも低い攻撃力なため、何を考えているのかと警戒が強まる。
「ミガエルの特殊効果は、生贄にしたモンスターの数で決まる。3体を生贄にした場合、フィールド上の魔法・罠カードをすべて破壊する」
「それじゃあ、カノンの宝玉獣たちが!」
溜めた宝玉を破壊されるのは、カノンにとって致命的だ。
「させない! 罠発動《ダイヤモンド・マテリアル》! すべての宝玉はダイヤモンドとなり、相手の効果で破壊されない!」
「っ!?」
ルビーとアンバーの宝玉が、ダイヤモンドの宝玉に変化する。ミガエルの破壊効果をものともしない。
「まだよ! わたしがプレイしたガエルと名のつくモンスターを、可能な限り召喚できる効果を使います」
デュエルリングから、デスガエル3体とガエルサンデスが水しぶきを上げて飛び跳ねる。
デスガエル×3 攻撃力1900
ガエルサンデス 攻撃力2500
「もうひとつ。相手のプレイヤーは、ミガエルを攻撃できない。これで、ターンを終了するわ」
これまで活躍したカエルたちが、フィールドに勢揃いした。ローズと闘っている姿が、妙にしっくりきてしまう。
対峙するカノンは、カエルにこだわるローズを不思議に思う。その根源に興味が湧いた。
「ローズ。どうしてキミは、このカエルたちを選んだんだ?」
デッキにはデュエリストのポリシーが宿る。選ぶカード1つ1つに、その性格が色濃く反映されるのだ。
カノンの問いに、ローズが真剣に答える。
「子供のときに、カエルの王子さまのお話を読んで、カエルはずっとわたしの王子さまで友達だったのよ。いつも一人ぼっちだったわたしを、ずぅーと守っていてくれた。そして、このカエルデッキと出会ったとき、わたしには見えたのよ、王子さまが!」
その必死さに、カノンは己の過去と重ねていた。両親も誰も精霊を信じてくれず、悲しい思いをした記憶だ。そんなとき、孤独を紛らわしてくれたのは、精霊だけだった。
ローズと目を合わせて語りかける。
「精霊はそれを信じる心に宿るんだ。その形が何であろうと、独りじゃないと励ましてくれる者こそ、精霊なんだ。あなたが信じてるなら、私も信じる」
そう言った後、カノンが不敵な笑みを浮かべた。
「悪い魔法使いが、キミの大事な王子さまを、全部倒してやる!」
カノンが『カエルの王子さま』の精霊を信じると、ローズが嬉しそうにはにかんだ。
「一色カノン…!」
ルビーが姿を見せて、『ルビィ』と嬉しそうに鳴いた。
カノンにターンが回り、デッキに指を添える。
「ドロー! ルビーカーバンクル効果発動!」
カノンが腕をバッと払って、ルビーの宝玉を指し示す。
「ルビー・ハピネス!!」
『ルビィー!』
ルビーの尻尾の宝石が赤く眩い光を放つ。そのエネルギーを注がれたアンバーの宝玉が砕け、中からアンバーマンモスが現れる。
ルビーカーバンクル 攻撃力300
アンバーマンモス 攻撃力1700
「さらに、《宝玉獣 アメジストキャット》を召喚!」
アメジストの宝玉が砕け、中からしなやかな猫が鳴き声を上げる。これで、3体の宝玉獣が並んだ。
アメジストキャット 攻撃力1200
「そして、速攻魔法《宝玉の結束》! 自分フィールドに宝玉獣と名のつくモンスターが2体以上存在する場合、その内のモンスター1体の攻撃力を、私の場にいる宝玉獣1種類につき500ポイントアップさせる! 頼んだぞ、アンバーマンモス!!」
『私に任せろ!!』
アンバー、ルビー、アメジスト。3体の宝玉獣の力が結束し、合計1500ポイントのパワーアップを遂げた。
アンバーマンモス 攻撃力1700→3200
「ですが、わたしのライフを削り切ることはできません」
「もうひとつ! 魔法カード《クリスタル・エナジー》を発動!アンバーマンモスは、私の場にいる宝玉獣の数だけ、攻撃することができる!」
「そんなっ!?」
突破口をこじ開けられて、ローズが目を見開く。
「行け、アンバーマンモス! デスガエルを攻撃! アンバー・スタンプ!!」
「きゃあ!」
アンバーが駆け寄り、1体目のデスガエルが長い鼻で吹き飛ばされる。
ローズ LP3200(-1300)→1900
「そんな!」
2体目のデスガエルが、長い鼻を叩きつけられて爆散する。ローズのライフがみるみる減っていく。
ローズ LP1900(-1300)→600
「これで終わりだ!」
「きゃあああっ!?」
3体目のデスガエルを踏み潰す。宣言通り、王子さまを倒して、ローズのライフが底をついた。
ローズ LP600(-1300)→0
デュエル終了の電子音が鳴り、ソリッドビジョンのモンスターが消える。
「って…やりすぎちゃったかな」
カノンが心配していると、ローズが憎まれ口を叩く。
「そんな宝玉獣より、王子さまの方がカッコイイんだから! べー!」
デュエルリングから立ち去っていくローズに、カノンとルビーが苦笑する。その背中を見送っていると、妙な現象が起きた。
『ルビ?』
「え…?」
なんと、ローズのデッキから、緑の泡がぷかぷかと浮かんできたのだ。
『ケロ! ケロ!』
その中にいるカエルの王子さまの精霊が、礼を告げるように何度もお辞儀をする。
「ローズ、キミは…!」
『ルビィ!』
ローズの話は虚言ではなく、本当のことだったのだ。ルビーが嬉しそうに鳴いて姿を消した。