気が付いたら、ウルベルトになっていた。(R15バージョン) 作:コインランドリー
会議室で、アインズとアルベドとデミウルゴスが会議をしていた。
「アインズ様。至高の御方が、各国に立ち寄られた形跡はございません」
各国とは、魔神国・王国・帝国・聖王国の事である。
聖王国とは交流は無いが、シャド・ウデーモンや透明化ができる者達を、至高の御方が表れたら対応できるように配備している。
「そうか・・・分かった」
アインズは、ギルドメンバーがナザリックに帰ってくる事を心待ちにしている。
「アインズ様。スレイン法国の対応は、いかがいたしましょうか?」
スレイン法国は、人間以外の異種族に対する差別感情が蔓延している国なので、至高の御方が表れたら討伐対象になる可能性もある。
「法国は、魔神国の王が異形種だという理由で交流を絶っている。現状維持を続けよ・・・下手に動いて戦争にでもなったら、ウルベルトさんが精神的に追い詰められる可能性がある」
アインズは、他のギルドメンバーの事も気がかりだが、夏樹の精神面の心配をしていた。
聖王国の計画は犠牲が出ないようにしているが、法国等の情報収集が難しい国と戦争になったら犠牲が出る可能性が高い。
アルベドとデミウルゴスは、お辞儀をしてから返事をした。
ペストーニャは、魔法でアウラの体の異常のチェックをしていた。
「アウラ様のお体に、異常はありません。わん」
アウラは、異常なしと報告を受けたが嬉しそうではなかった。
「妊娠は、していないかぁ」
アウラは、結婚してから定期的に魔法での妊娠の検査を受けている。
ペストーニャが、異常はありませんと伝えているのは、妊娠していませんと伝えるのは心苦しいからである。
ナザリックの者達は、アウラの妊娠を心待ちにしている。
アウラは、少し残念そうな表情をしたが、すぐに笑顔を取り戻した。
至高の御方の妻としての振る舞いを、しないといけないからである。
「ありがとう!ペストーニャ!」
アウラは、夏樹の所に向かった。
アルシェはガゼフの補佐として、ヤルダバオトの対策会議に出席していた。
会議室には、各国の軍人と冒険者組合の関係者が揃っている。
デミウルゴスが魔神国軍の将軍として参加していて、パンドラとラキュースも居る。
冒険者組合のアインザックが、議長としての挨拶をした。
「議長を務めるプルトン・アインザックだ。宜しくたのむ。さっそくだが、今回の議題について説明をする。ヤルダバオトが強者を倒した後に、国民を生贄にして儀式をするかもしれないという噂が広まって国民が怯えているので、その対策についての話し合いだ」
会議の参加者は、意見を出し合った。
「ゴウン殿に、ヤルダバオトを閉じ込めるマジックアイテムを作って頂くのはどうでしょうか?」
王国の冒険者組合の幹部が、国民を安心させる為には、ヤルダバオトを討伐するか封印する事が重要だと考えて提案をした。
「デミウルゴス将軍。ゴウン殿に、マジックアイテムの製作を依頼しても大丈夫でしょうか?」
アインズは、魔神国の重要人物となっているので、対応は慎重にしたいと思っている。
「問題はないと思います。アインズ様も不安に怯える国民の為に、ヤルダバオトの討伐は早めに行いたいと申しておりました」
会議は、日が暮れるまで続いた。
会議が終わってからアルシェは、ガゼフの宿泊先の民家で晩御飯を作った。
「宿泊先が、アルシェの家の隣だとは驚いたな」
「私も驚きました。魔神国に居る間は、毎日作りに来ますので、食事の心配はしなくて大丈夫ですよ♪」
パンドラが、ペストーニャからアルシェとガゼフが良い感じだと聞いたので上手く調整した結果だった。
「私の両親と妹達が、ガゼフさんに挨拶をしたいと言っていました」
「アルシェには、お世話になっているからな。ご挨拶をしたいな・・・3日後の非番の日は、どうだろうか?」
「予定を、聞いてみますね」
2人は、楽しそうに晩御飯を食べた。
エルヤー・ウズルスは、帝国の貴族のフルト家から依頼を受けた。
「フルト家の長女である、アルシェ・イーブ・リイル・フルト殿を連れて帰ればよろしいのですね」
「頼むぞ!突然、居なくなって困っていた。魔神国のエ・ランテルで見かけたと、私の友人が知らせてくれてな」
エルヤーは、笑顔でお辞儀をしてから話をした。
「お任せ下さい。必ず、お嬢様を連れて帰ってみせます」
アルシェの父親は、笑顔で頷いた。
エルヤーは、ワーカーの天武として奴隷のエルフ達と一緒に活動をしていたが魔神国が建国してからは、エルフ達を別のワーカーに売った。
魔神王のコキュートスが、帝国の皇帝に奴隷のエルフ達の扱いが酷いのではないかと手紙を送った。
皇帝は、エルフ達はスレイン法国から流れてきたので、扱いを変更するとスレイン法国との関係が崩れる可能性もあったので対応を考えた。
その結果、理不尽な理由でエルフが亡くなったら雇い主に罰金を払うように命令する法律を作った。
スレイン法国には、罰金として税金を取る為の手段で調査は簡易的だと説明をして、魔神国には、罰金を取るので酷い扱いは受ける事はないだろうと説明をした。
皇帝は、スレイン法国にも魔神国にも気を使った。
ヤルダバオトが表れたら、帝国だけでは対応する事ができないと思ったからである。
コキュートスが手紙を送った理由は、夏樹がエルフ達の扱いを知って、デミウルゴスとコキュートスに相談をしたからである。
帝国の役人は真面目な者が多いので、エルフが亡くなった場合は、遺体を調べたり周りの者達の話を聞いたりと細かく行った。
エルヤーは、面倒な調査を受けるのが嫌なので、エルフ達を別のワーカーに売った。
売られたエルフ達は、普通の扱いを受けて喜びの涙を流した。
ブレインは、国境での警戒任務が終わったので、魔神国のガゼフの宿泊先にやってきた。
ブレインは、冒険者ではないが王国からの依頼を受けて警戒任務を行っている。
王国としては、強者として有名なブレインが居るだけで国民が安心するので助かっていた。
ブレインが家に入ると、ガゼフとアルシェが出迎えてくれた。
「ん?ガゼフは、結婚をしていたっけか?」
「独身だが・・・どうかしたのか?」
「いや・・・何となくなぁ」
ガゼフとアルシェは、アインズに会いに行く為に出発をする所だった。
ブレインは、ガゼフを救った強者であるアインズの事が気になったので会いに行く事にした。
王城で、ガゼフとアルシェとブレインは、アインズとシャルティアに面会をした。
「初めまして、シャルティア・ウール・ゴウンでありんす♪」
シャルティアは、髪を黒くして可愛い仮面を付けて偽装している。
仮面は貴重なマジックアイテムで、人前では絶対に外せない制約があると説明をしている。
ブレインは、シャルティアという名前に聞き覚えがあったので警戒をした。
部屋の外で、馬が喧嘩をしている鳴き声が響いた。
「きゃーでありんすっ!」
シャルティアは、アインズに抱きついた。
「お父様・・・馬が、喧嘩をしているでありんすっ!」
「シャルティア。私の近くに居れば安全だ」
ブレインは、シャルティアが黒髪なのと大人しい少女の演技をしたので別人だと思った。
シャルティアが、ブレインの事を覚えていないような反応だった事も決め手の一つだった。
シャルティアの演技指導は、アウラが頑張った結果である。
「ゴウン殿!あの時の事!改めて、お礼を申し上げる!」
ガゼフは、アインズと握手をしながらお礼を言った。
「当然の事を、しただけですよ」
アルシェは、アインズがガゼフの命を救った話は聞いていたが、詳細については知らなかった。
カルネ村の事件は、法国が絡んでいるので公にはなっていない。
「君は、セバスの娘のアルシェ・ワンコだな」
「はい!ゴウン様の事は、素晴らしい人柄で深い魔法の知識を持っている完璧なお方だと伺っています!」
アインズは、セバスの教育方針がやり過ぎではないかと少し思った。
セバスは、家族全員がナザリックに保護されたので、アインズの素晴らしさを上手に伝えた。
アルシェからすれば、叔父の相棒であるナーベの父親という関係になるが、セバスの教育で神様に等しい存在になっている。
ラキュースもパンドラに教育されて、素晴らしい人柄で深い魔法の知識を持っている完璧な人物だと思っている。
ヤルダバオトは、モモンガ聖王国の建国準備の為に、アベリオン丘陵の半分の亜人を掌握していた。
アベリオン丘陵は、様々な亜人種が戦いを繰り広げていたが、ヤルダバオトが力や食料の提供等で掌握をしていった。
ヤルダバオトは、夏樹から亜人達を苦しめないようにと言われているので、可能な限り暴力的な行動は控えている。
「ヤルダバオト様!破壊の豪王が表れました!」
「破壊の豪王・・・バザーか」
ヤルダバオトは、豪王を相手にするのは交渉では無理だと思った。
(アインズ様!ウルベルト様!私の実力不足で、手荒な事を致します!申し訳ありません!)
ヤルダバオトは心の中で、アインズと夏樹に謝罪してからバザーとの戦闘に突入した。
ヤルダバオトは、バザーに勝利して9割の亜人達を掌握した。
ヤルダバオトは、報告の為にナザリックに帰還した。
アインズの執務室に入ると、アインズと夏樹とアルベドが居たので、ヤルダバオトは膝をついた。
「ヤルダバオト。アインズ様とウルベルト様に、現状の報告をしなさい」
「はっ!」
ヤルダバオトは、可能な限り暴力的な行動をせずに、9割の亜人をまとめた事を報告した。
暴力的な表現は、夏樹を苦しめる可能性があるので隠している。
掌握した亜人達は、比較的に友好的に交流させているので、争いは起きていない。
食料の提供は、魔法で作った食べ物なので、生産地等が特定できないようにしている。
「後は種族間の過去の因縁等で、配下になるのを拒んでいる者達がおります」
ヤルダバオトは、掌握に時間がかかっている事に対して、アインズと夏樹に失望されていないか心配だった。
「頑張ってるね!ヤルダバオト!」
夏樹の言葉に、ヤルダバオトは感激した。
ヤルダバオトは、モモンガ聖王国の建国計画の段取りを話し合った。
デミウルゴスは、ナザリックでカルカの情報の確認をしていた。
「ローブルの至宝と讃えられていて・・・弱き民に幸せを、誰も泣かない国という国是を掲げている」
デミウルゴスは、コキュートスの歓迎会の失敗の罰を言われた時の事を思い出していた。
『よし!デミウルゴスは、聖王国の北部を乗っ取る計画で、聖王女カルカと仲良くなるのを頼みたい!パンドラは、ラキュースの事を気に入ってるみたいだから・・・カルカと仲良くなったら、ラキュースが嫉妬するかもしれないしね』
(罰か・・・ウルベルト様が、本来の状態でこの世界に来ていたら・・・)
ナザリックの者達は、夏樹が正体不明の敵に記憶を混乱する魔法の攻撃を受けたと誤解している。
デミウルゴスは、雑念を捨ててモモンガ聖王国の建国計画に集中をする事にした。
ヤルダバオトが、亜人達の9割を掌握しているので、作戦開始の時期が近づいていた。
パンドラとラキュースは、冒険者組合の応接室でレエブン侯と面会をしていた。
「これが、八本指から押収した資料になります」
パンドラとラキュースは、資料を読んだ。
「六腕を討伐された恨みで、捏造書類を作ったという感じだろうな」
「けど!モモンさんのお父様に、ヤルダバオトが憑依しているなんて・・・こんな噂が広まったら王国の王都以外の国民は、モモンさんとヤルダバオトが手を組んでいると誤解してしまうわ!」
普段は冷静なラキュースだが、ワンコ家の人達の事を考えて怒りが溢れた。
「アインドラ殿・・・落ち着いて下さい。国王陛下も私もこれが捏造であると思っています。しかし、この文章を捏造した可能性が高い人物が討伐作戦で亡くなったので確証が得られないので、念の為に確認に来ているだけです」
ラキュースも貴族なので、国民が不安に思うかもしれない事を調べるのは理解している。
ラキュースは、レエブン侯が王族派閥と貴族派閥が争っていた時に、全面戦争をしないように動いていた事を魔神国の建国の時に知ったので、レエブン侯の事を信頼している。
「モモン殿・・・質問をさせて頂きます。この資料は、捏造だと思って大丈夫ですか?」
パンドラは、ゆっくり落ち着いた声で話し始めた。
「この資料は、捏造だと言いたいが・・・父上は、行方不明だ。ヤルダバオトが憑依していないと、証明するのは困難だ」
レエブン侯は、疑われる可能性がある事も隠さずに話す対応に好感が持てた。
「もしも、問題がなければ・・・モモン殿の父上のお話を、お聞きしても宜しいでしょうか?」
ラキュースもパンドラの父親が、行方不明としか聞いていなかったので気になっていた。
「かなり昔の話になるが、吸血鬼のホニョペニョコと戦った際に行方不明になっている・・・ホニョペニョコは討伐をしたが、父上の情報は得られなかった。吸血鬼の片割れなら何か知っているかもしれない」
「モモンさん・・・私も探す手伝いをさせて下さい!」
パンドラは、優しい声で話し始めた。
「ヤルダバオトの討伐が終わったら、父上を探しに行こうと思っていた。ヤルダバオト程ではないが、ホニョペニョコの片割れも危険な存在だ油断をしないように・・・」
ヤルダバオトの討伐後に、強敵が必要になった時に備えてホニョペニョコの片割れの存在を広める事にした。
「モモン殿の父上の安否も心配ですが・・・」
レエブン侯は、これ以上の問題が起きる事は避けたかった。
「ヤルダバオト程ではないにしても、それに近い実力を持った吸血鬼がいる現状を・・・ヤルダバオトを討伐するまでの間は、国民には伏せておいて欲しいのです。これ以上、国民の不安が膨らむと大変ですので・・・」
レエブン侯は、上層部の極秘情報として扱うと伝えてから面会に応じてくれた事のお礼を言って応接室を出た。
パンドラの行動の監視に、尾行の得意な部下を2人残した。
夏樹とアウラは、アインズとアルベドとシャルティアと第六階層で楽しくお茶会を開いていた。
アインズは飲食はできないが、香りと場の雰囲気を楽しんでいる。
「皆と一緒に、寛ぐのは良いね。アウラ」
「はい!ウルベルト様♪」
アウラは、元気な声で返事をした。
「ウルベルト様とアウラは仲が良さそうで、幸せそうでありんす♪」
楽しいお茶会が続いたが、アインズが魔神国に本格的な学校がつくられる事が決まった話をしたら雰囲気が変わった。
「学校かぁ・・・うーん、何だっけ!?」
「ウルベルト様!大丈夫ですか!」
アウラは、夏樹が驚いた声を上げたので驚いた。
「学校・・・何か忘れてるような気がする」
夏樹は、この世界に来る前の記憶が突然消えて混乱をして、額に手を当ててから考え込んだ。
「あれ・・・思い出せない?」
「ウルベルトさん。落ち着いて下さい。疲れが出たのでしょうから、ゆっくりと休んで下さい」
夏樹は、アウラと一緒に部屋に帰って休んだ。
夏樹は、1時間後に悪魔の身体の影響で気持ちが落ち着いた。
「あっ・・・そうだ!アウラ。誰か、記憶を戻す事ができる魔法を使える者はいるかな?」
アウラが、涙を流したので夏樹は言葉を失った。
寝室には、夏樹とアウラとソリュシャンが居た。
アウラは、夏樹の記憶が無くなった事でショックを受けていた。
アインズは、下手に動いて取り返しがつかない事態にならないように様子観察を続ける事に決めた。
夏樹は、自分の記憶が無くなった事でアウラが落ち込んだと思った。
「アウラ!何か、楽しい事を考えないか!?」
アウラは、夏樹が明るく振る舞っている様子を見て、落ち込んでいては駄目だと思った。
「楽しい事ですか!?どんな事を考えますか!?」
夏樹はアウラを、抱きしめてから話し始めた。
「未来の話だ!」
「未来ですか!ワクワクしますね!」
夏樹とアウラが笑顔なので、ソリュシャンも笑顔になった。
「こういうのはどうだぁ〜」
「なんですか?」
アウラは、ワクワクしながら夏樹の言葉を待った。
「俺とアウラの間に男の子が産まれたら、支えてくれる婚約者がいた方が良いと思うんだ!俺は、アウラの支えがないと駄目な男だから!?子供も一緒だと思う!多分だけど・・・」
夏樹は、自分で言っていて自信がなくなってきたが、止まるわけにはいかなかった。
アウラとソリュシャンは、若君が産まれたらアインズの娘が婚約者になるだろうと考えていた。
至高の御方の子供達の結婚は、産まれた時から決まっているようなものだった。
「俺達の息子の婚約者に、なってくれないか?ソリュシャン!」
夏樹の発言は、ナザリック中が驚きに包まれた大事件になったが、記憶喪失になったショックを和らげる効果も発揮した。
ソリュシャンは、コイル商会の令嬢としてエ・ランテルから少し離れた町で活動をしていた。
コイル商会は、魔神王であるコキュートスから特注で依頼を受ける特別な商会として、情報収集や悪質な詐欺事件等の犯罪が起きないように商会等の監視をしている。
魔神国では、税金が低いのとデス・ナイトや軍隊の巡回等の効果で、暴力事件や強盗事件は起きてはいないが、詐欺事件等の犯罪は発生している。
「私が、ウルベルト様とアウラ様の若君の婚約者!?」
ソリュシャンは、ホテルの部屋で休憩をしながら、夏樹から言われた事を思い出していた。
部屋には、声が漏れないように対策をしてある。
ソリュシャンは、夏樹がナザリックに戻ってきた時にしてしまった事を後悔していた。
「あのような不敬な行動をしたのに、若君の婚約者に選んで下さるなんて・・・」
ソリュシャンは、涙を流した。
まだ、妊娠もしていないし若君が産まれるかどうかも分からないが、ソリュシャンは嬉しかった。
アウラは、ペストーニャの所で魔法での体の異常のチェックを受けていた。
「アウラ様。ご懐妊おめでとうございます。わん」
「えっ・・・本当に!?」
アウラの妊娠は、ナザリック中を祝福で満たした。
その中でも、ソリュシャンの喜びが凄く目立っていた。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます!