気が付いたら、ウルベルトになっていた。(R15バージョン) 作:コインランドリー
オリジナルのマジックアイテムが登場しますので、ご理解をお願い致します。
蒼の薔薇は、コキュートスとパンドラからの呼び出しに応じていた。
冒険者組合の控え室は、コキュートスがドアを通れない可能性があったので、裏庭で会う事にして、周りに声が聞こえない対策をしてある。
「歓迎の宴で、ヤルダバオトが精神攻撃の魔法使用した可能性が高いので、対策が出来るマジックアイテムを全員に持ってもらいたい」
パンドラとコキュートスは、精神攻撃の魔法を一回だけ無効化出来るネックレス型のマジックアイテムを渡した。
「モモンの旦那と魔神王さんは、慎重派だな〜」
ガガーランは、頷きながら笑顔で言った。
「対策を怠ると、大惨事になる可能性があるからな!」
「油断ハ、禁物ダ!」
イビルアイは吸血鬼なので、精神攻撃的な魔法には耐性があったが、受け取らない事で疑問に思われたくなかったので受け取った。
イビルアイは、パンドラとコキュートスの事は信頼していたが、自分が吸血鬼だと伝えるのは決めかねていた。
夏樹は、アインズ達の居る部屋の前に立っていた。
側には、夏樹の護衛のマーレと部屋の警備をしているエントマが居る。
(アインズさん・・・すいません。アウラに対していやらしい事をしてしまいました)
夏樹は、エントマに部屋の警備を頼むと伝えてから、ナザリックの中にあるバーに向かった。
バーに入ると、副料理長のクラヴゥが出迎えてくれた。
夏樹は、カウンターに座って、マーレは隣に座った。
(マーレの見た目で、バーのカウンターに座るのは、倫理的に大丈夫かな?まぁ、いっか・・・)
「ウルベルト様。飲み物は、何になさいますか?」
夏樹が、バーを訪れたのは、アウラが皆に配ったジュースの味が気になったからである。
「アウラが、皆に配ったジュースを頼むね」
「畏まりました!マーレ様は、何にされますか?」
マーレは、おどおどしながら、夏樹と同じジュースを注文した。
夏樹は、ジュースが届いてから、マーレと乾杯をしてから飲んだ。
「美味しい!これが、アウラが美味しいと思う味か〜」
クラヴゥは、夏樹が美味しそうに飲んでいる姿が嬉しかった。
できれば、隣にアインズもいて欲しいと心の中で思った。
「労いのジュースを作るのを、私も手伝わせて頂きました。アウラ様は、真剣に試行錯誤をされていました」
「そうか・・・真剣に・・・」
(あっ・・・涙が・・・)
夏樹の目から涙がこぼれたのを見て、クラヴゥとマーレは、アウラの事を考えている可能性が高いと思った。
デミウルゴスは、王都の中にある貴族の別宅を借りて司令室を作った。
司令室には、デミウルゴス・アウラ・シズが居て、周りには遠隔視の鏡と色々なマジックアイテムが複数置いてある。
デミウルゴスは、コキュートスにメッセージを送った。
『コキュートス。作戦開始の5分前だよ』
『ウム!』
デミウルゴスは、全員にメッセージを送って確認をした。
正体不明の敵が現れた場合は、作戦を中止することになっている。
「アウラ。ヤルダバオトの出現場所付近に、問題はないかね?」
アウラは、遠隔視の鏡を見ながら、子供達の配慮ができている事を伝えた。
「作戦開始だ!」
シズは、ヤルダバオトにメッセージで、転移をするように伝えた。
イビルアイは王都の南側に、コキュートスと一緒に居た。
王都の空が、急に積乱雲に覆われた。
「何か、嫌な予感がするな・・・」
「イビルアイ殿!ヤルダバオト、カモシレナイ!注意ヲ!」
積乱雲の中から、ヤルダバオトが表れた。
「楽しいパーティーの始まりだぁー!!」
人間の大人よりも、少し小さめの羽のある悪魔達が、300体程表れてゆっくりと、地上に降りてきた。
王都の国民は、混乱をして逃げ惑う。
王都の役人は緊急事態なので、荷物検査なしで国民を王都の外に出した。
王都から出た国民は、馬車が大量に置かれていたので、助けを求めた。
「悪魔達が、表れたわ!ワーカー達は、荷馬車に住民を乗せて王都から離れなさい!」
ソリュシャンは、コイル商会の令嬢として、ワーカーに指示を出した。
ワーカー達も緊急事態なのを理解して、避難誘導に努めた。
ナーベラルはラキュースと一緒に、冒険者組合の職員達と避難誘導をしている。
「悪魔達を薙ぎ祓うわ!職員の皆さんは、避難誘導を!」
ラキュースは地上に降りて来た悪魔達を、魔剣キリネイラムで薙ぎ祓う。
「後ろ!」
ナーベラルは攻撃魔法で、ラキュースの後ろに回り込んだ悪魔達を攻撃した。
「ナーベさん!ありがとう!」
「ふっ・・・礼は、いらないわ!」
ナーベラルは、表情を変える事はなかったが、ラキュースとは良い連携がとれていた。
ブレインは、冒険者達と一緒に悪魔達と戦っていた。
ブレイン・アングラウスの名は有名なので、冒険者達に勇気を与えた。
「瞬閃!」
ブレインは、瞬速の斬撃で悪魔達を切り裂いていく。
「私も参戦させてもらうぞ!」
ブレインが振り返ると、ガゼフと50人程の兵士が居た。
「ふっ!国王の護衛は、良いのか?」
「国王陛下は、民あっての国なのだと言われた!そして、悪魔達から民を守るように命令を出された!」
兵士と冒険者は、熱気に満ちて戦い始めた。
セバスは、王都の中で親とはぐれた子供達を、王都の外にいる役人の所まで連れて行く作業をやっていた。
コイル商会や架空の商会での避難誘導では、全てを完璧に遂行することが難しいと判断して追加された作戦である。
一瞬で移動するので、助けられた子供は魔法を使ったのかなと困惑していたが、役人に保護されてから親と出会えて安心をしていた。
「怪我をした方もいますね」
セバスは、子供だけではなくて、怪我や病気等で逃げ遅れた国民も助けていった。
ナザリックの殆どの者達が、王都の国民の避難誘導等で忙しく動いている時に、完全不可視化を使用して、逃げ惑う国民を眺めている者が居た。
「混乱してる姿!逃げてる姿!それを眺めるのは、楽しっすね」
他の者達は忙しすぎて、ルプスレギナが興奮して何もしていなかった事に気が付いていない。
セバスが張り切って仕事をやり過ぎたのと、デス・ナイトがガガーラン達と協力して動いたのもあった。
パンドラは、モモンに変身をして避難誘導をしながら、戦いを離れた位置から見ていた。
コキュートスには、ヤルダバオトと互角の戦いを繰り広げて、王都の国民に強さをアピールする必要があったからである。
王城では貴族達が避難誘導を指揮していたが、かなりの早さで避難誘導が進んでいたので驚いていた。
「今の現状は、コキュートス殿とイビルアイ殿が、ヤルダバオトと王都の西側で戦っています!」
「衛兵達は、避難誘導に集中するように命令を徹底せよ!」
国王は、避難誘導がスムーズに進むのは、王族派閥と貴族派閥との覇権争いが無くなったからだと思った。
『デミウルゴス様。戦士長が、悪魔達との戦いに向かいました』
『分かった!国王の護衛を、続けてくれ』
ユリは、国王の護衛を行っていた。
国王に何かあった場合は、エ・ランテルの譲渡の話が白紙になってしまうからである。
王都の至る所で、悪魔達と衛兵と冒険者達の激戦が繰り広げられていた。
戦闘開始から5時間以上経過して、国民の避難誘導は完了していた。
「ヤルダバオト!覚悟!」
コキュートスは、ピラーシング・アイシクルで攻撃をして、数十本の鋭い氷柱が飛んでいくが、ヤルダバオトはきれいに回避した。
「はっはっ!コキュートスよ。弱くなったな!」
コキュートスとヤルダバオトは、目立つ必要があるので、王都の中を移動しながら戦っていた。
イビルアイは、コキュートスの戦いを間近で見ていて、コキュートスの強さに惹かれていった。
イビルアイは、吸血鬼になってから動いていない心臓が動いた気がした。
コキュートスは、下手に手を抜くと、側で魔法攻撃で支援をしているイビルアイが怪しむ可能性もあったので、注意をしながら戦っている。
現状を確認したデミウルゴスは、イビルアイを戦闘から遠ざける作戦を考えた。
『パンドラ。聞こえているね?』
『はい!』
『今からイビルアイを、引き離す作戦を実施するよ。引き離すのに成功したら、コキュートスとの戦闘に参加してヤルダバオトを派手に吹き飛ばしてくれ!』
モモンが派手に吹き飛ばす事で、次の聖王国での作戦で傷を癒したヤルダバオトを使う事ができる。
モモンがとどめを刺す感じになるが、コキュートスとモモンの協力プレイを見せる必要があった。
『了解です!』
デミウルゴスは、作戦を実施した。
デミウルゴスからの合図があったので、ヤルダバオトは指示通りに動いた。
「コキュートスよ!分かったぞ!お前は、王都の中だから本気が出せないのだな?」
コキュートスは、何も言わない。
イビルアイは、それを感じとっていたので、コキュートスの事を尊敬すべき精神の持ち主だと思った。
「あの建物が見えるか?」
ヤルダバオトは、離れた位置にある古い倉庫に指を差した。
「あの倉庫の地下室に、強力なマジックアイテムを仕込んである!発動すれば、王都は木っ端微塵だ!」
「卑怯ナ!イビルアイ殿!アノ倉庫ノ地下室ニ行ッテ、マジックアイテムノ確保ヲ頼ム!」
「心得ました!コキュートス様!」
コキュートスは、殿から様に変わった事に少し疑問を感じたが作戦に集中をした。
イビルアイが離れたので、パンドラが助太刀に来た。
パンドラは、王都で戦っている衛兵や冒険者達が見えるように高く飛び上がると、ヤルダバオトに目立つ攻撃をした。
「ぐおーー!!!」
悲鳴を上げなら遠くへ飛んでいくヤルダバオトを、多くの者達が見ていた。
それを見ていた、ヤルダバオトの配下の悪魔達は去っていた。
倉庫の地下室には何も物がなかったので、イビルアイは怒っていた。
夏樹は、ヤルダバオトとの戦いの報告書を、デミウルゴスと一緒に確認をしていた。
「死者は無しか・・・国を乗っる計画なのに凄いな!けど、軽傷は200人前後で、重傷は15人か・・・」
コキュートス達とヤルダバオトの戦いで混乱した国民が転倒したり、衛兵と冒険者が悪魔達と戦った事による被害が出た。
治安が回復していたので、強盗事件等は起きなかった。
「デミウルゴス。あの・・・重傷の人間を魔法で軽症まで回復できないかな?」
「畏まりました!」
デミウルゴスは、笑顔で返事をした。
ヤルダバオトが起こした騒動から、5日後にコキュートスは、国王から勲章の授与を受けた。
2ヶ月後に、エ・ランテルを領土とする独立国の国王にするという声明が発表された。
王都で戦った衛兵や冒険者達には、報奨金が支払われた。
国民に対しては、所得税等の税金の全てを半年間停止して、王都の復興に繋げた。
崩壊した建物は、取り壊し予定だったり、老朽化で建物の補修を検討しているものが殆どだったので、国王が予算を組んで、半分を負担して建て直しを行った。
蒼の薔薇のメンバーは、コキュートスが独立国の国王になる話を聞いてから、ホテルのバーの個室で会議をした。
「コキュートス魔神国とは、驚いたぜ!」
ガガーランは、酒を飲みながら気分良く語った。
「鬼ボス。どうかした?」
楽しく飲んでいたが、少し暗い表情のラキュースを見て声をかけた。
ラキュースは、王都以外の知人と会った時に聞いた話をした。
「うん・・・2ヶ月前に、依頼を受けた商会の会長さんを覚えてる?」
「覚えてる。聖王国と王国の国境の都市に住んでいる商人だな」
「昨日、冒険者組合で会ったのだけど・・・王都以外に住んでいる一部の者達は、ヤルダバオトの凄さを見てないから、モモンさんがヤルダバオトを遠くに吹っ飛ばした事を、ヤルダバオトのピンチを助ける為にわざと逃がしたのではないかと言ってる人達が居るみたいなの・・・」
その話を聞いていた、イビルアイが怒った。
「あれは!作戦だ!事前には知らなかったが、ヤルダバオトに致命傷を負わせる為には、確実にヤルダバオトの動きを止めないといけない!そのためにコキュートス様と私が、ヤルダバオトと5時間にも及ぶ戦いを繰り広げて、ヤルダバオトの隙を作ったのだぞ!」
イビルアイは怒っているが、ヤルダバオトを逃がしたのは事実だった。
「話だけ聞くと、そう思う奴が多いってことよ!冒険者の業界だって多いだろ。けど、旦那の一撃は凄かったな〜」
「手加減は、無かった」
ラキュースは、パンドラの実力を知っているし、尚且つ結婚を考えている相手が悪く言われるのは少し辛かった。
ラキュースは、バーでの会議の後にパンドラの部屋を訪ねた。
パンドラは、ラキュースが宿泊しているホテルの隣の部屋を借りていた。
楽しい会話の後に、ラキュースはパンドラの噂を話した。
「王都以外の人達が、モモンさんの事をヤルダバオトの仲間だと思っているのは許せないわ!」
ラキュースは、パンドラに抱きついた。
お酒を飲んでいるので、テンションが高くなっている。
「大丈夫だよ・・・ラキュースが、信じてくれるだけで満足だよ」
ラキュースは、笑顔になった。
第2王子のザナックと六大貴族のレエブン侯は、王城の会議室で話し合いをしていた。
「崩壊した建物は、老朽化が進んでいて、補修等の検討がされている建物ばっかりでした。ですが、コキュートス殿が大技を出す際に、意識して新しい建物を避けた可能性もあります」
「そうか・・・王都以外の国民は、モモン殿がヤルダバオトを逃がしたのではないかと話している者達が多くいるそうだな。エ・ランテルは、別だがな」
「コキュートス殿は5時間も戦闘をして、蒼の薔薇のイビルアイ殿も側で戦っていましたので、国民の信頼は得ましたが・・・モモン殿は、イビルアイ殿が戦闘から離れてから表れて、ヤルダバオトを吹っ飛ばしたので・・・助けたように見えますね」
ザナックは、飲み物を一口飲んでから話し始めた。
「何か依頼して、接近をしてみるか・・・怪しまれるかな?」
ザナックとレエブン侯の話し合いを、盗み聞きしていたラナーに変身したドッペルゲンガーは、デミウルゴスに文章で報告をした。
ラナーとクライムに変身した、ドッペルゲンガー達は、歓迎の宴の失敗を許してくれて、暖かい言葉をかけてくれた夏樹に対して深い忠誠心を抱いていた。
エ・ランテルの国民は、コキュートスの事を受け入れる者が多くいたが、コキュートスの配下のデス・ナイトが怖くて王国や帝国に移住する者達がいた。
2ヶ月後に、戴冠式を行ってからコキュートス魔神国が建国した。
ユリは宰相に就任して、貴族と役人をまとめて、全ての国民が軍隊の入隊試験を受けられる法案を作り、それに伴う軍の司令部や訓練場や宿舎を建設していってから、国民にそれを支える為の糧食や軍服の生産等の管理の雇用を生み出しすように働いた。
デミウルゴスは、魔神国軍・最高司令官として、将軍の地位について、軍隊の試験や軍事訓練を行っていった。
国民が怖がっていた、デス・ナイトは少しずつ増やして馴染んでいくようにした。
シズは、シズ副将軍として、軍隊の癒し的なマスコットになっていた。シズに会いたくて、入隊を志願する者達もいた。
夏樹はアウラと一緒に、第六階層のジャングルを散歩していた。
「ウルベルト様!コキュートス魔神国が建国しましたね!」
「うん!皆のおかげだよ」
夏樹は、笑顔で言った。
「次は、モモンガ聖王国の建国だな」
「はい!」
2人は、散歩の途中で立ち止まってから夜空を眺めた。
夏樹とアウラは、この時間が永遠に続けば良いのにと思った。
少し離れた位置に居た、マーレとソリュシャンは静かに見守っていた。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます!