気が付いたら、ウルベルトになっていた。(R15バージョン) 作:コインランドリー
コキュートス魔神国が、建国してから8ヶ月が過ぎていた。
夏樹は、一般メイド達が普段使っている食堂にアウラと一緒に来ていた。
シャドウ・デーモンが、隠れて護衛をしている。
一般メイド達は、食堂に夏樹がくると事前に聞いていたので、豪華な椅子とテーブルを置いていた。
「気を遣わせてしまったな・・・」
アウラは、夏樹が一般メイドにまで気を遣っているのを見て、少し不敬な考えであるが微笑ましいと思った。
モモンガ聖王国の建国計画書が完成したので、発表前にアウラと会おうと思ったが、ナザリック内の殆どの場所は行っていたので、行った事がなかった食堂を選んだ。
夏樹とアウラは、楽しい会話をした。
一般メイド達は、気を遣って食堂から少し離れた位置で数人待機している。
一般メイド達は、夏樹とアウラが結婚をして、後継が産まれる事を心の中で祈っている。
「アインズさんとアルベドとシャルティアが部屋から出てきたら、皆でパーティーを開いて喜びを分かち合いたいな」
アウラは、少しだけ俯いた。
アウラは、アルベドに対して思うところがあった。
それは、夏樹がナザリックに戻った時に、アルベドがマーレを使って、夏樹の記憶の混乱を治そうとしたことである。
アルベドは夏樹の記憶の混乱を治療すると、更に苦しむ可能性があると分かっていて、実行しようとした。
アウラは、夏樹が許しているのを見ていると、心の中で葛藤が生まれていた。
「そうですね!」
アウラは、笑顔で返事をする事しかできなかった。
アウラは、コキュートスの所に向かった。
コキュートスは、王城の執務室で書類の確認をしていた。
執務室は、声が外に漏れないように工夫をしてある。
「アウラ・・・浮カナイ顔ダナ」
「うん・・・実は、アルベドの件なんだけどね」
アウラは、アルベドがした事をコキュートスがどう思っているかの確認に来た。
「ウルベルト様ガ、許シテオラレル」
コキュートスは、心の底では迷っているが、多くは語らなかった。
武人の精神と、至高の御方に対する忠誠心が、ぶつかり合っていた。
アウラは、コキュートスの言葉にできない想いを汲み取た。
アウラは、コキュートスに挨拶をしてから執務室を出た。
アウラは、デミウルゴスとナザリックの廊下ですれ違ったので、アルベドの件の話を控え室で話した。
「私は、許しているよ!ウルベルト様が、許しておられるからね」
アウラは、デミウルゴスの言葉に嘘はないと思った。
デミウルゴスの言葉は、まっすぐだった。
自分の創造主が許すと言えば、許すのは当然の考えではあるが、アウラは少し疑問に思った。
「但し、また同じ事をすれば・・・アルベドには、長期休暇を取得してもらうがね」
アウラは、言葉の意味を理解した。
「その時は、私もっ」
デミウルゴスは、手を前に出してアウラの言葉を止めた。
「ウルベルト様の王妃になる、可能性が高い者がする仕事ではないよ」
「えっ」
デミウルゴスは、笑顔で控え室を出て行った。
アウラが、アインズの部屋の前に居ると、夏樹の声が聞こえてきた。
「アウラ・・・何か、悩んでいるのか?」
アウラは、笑顔を見せてから誤魔化した。
側には、エントマとマーレが居る。
その時に、アインズの居る部屋のドアが開く音がした。
アインズとアルベドとシャルティアは、ソファーで肩を寄せ合っていた。
アルベドとシャルティアの心は、幸せに満ちていた。
アルベドが目を開けると、シャルティアが居たので驚いた。
「あら・・・シャルティアも居たの?気が付かなかったわ」
シャルティアは、笑顔で話し始めた。
「気づくのが遅いで、ありんす♪」
アインズは、2人の会話からギクシャクした印象は受けなかった。
アインズは、アルベドと一緒に、この部屋で一生を過ごすつもりだったが、アルベドの今の状態を見て、外に出ても良いのではないかと思った。
「アルベドよ。部屋から出て、皆の所に行かないか?」
アルベドは、首を横に振ってから答えた。
「アインズ様。私は、長期休暇を申請致します」
「はっ!?長期休暇!?何を、血迷った事を言ってるでありんす!」
シャルティアは、ナザリックの者が休暇を求めるのは不敬だと思ったが、アインズには、意味が伝わった。
「アルベドよ。ウルベルトさんは、謝罪すれば許してくれると思う!私も一緒に謝ろう!」
シャルティアは、アインズの話を聞いてから長期休暇の意味を理解した。
「長期休暇って!?そういう意味で、ありんすか!?ダメで、ありんす!ウルベルト様は、アインズ様とアルベドを、暖かく迎える準備をしているでありんす!」
シャルティアは、夏樹がアルベドを許している話と、モモンガ聖王国を作る為に活動している話をした。
アルベドは、アインズとシャルティアの説得に応じて、部屋を出ることを決断した。
アインズ達が部屋から出ると、夏樹・アウラ・マーレ・エントマが出迎えてくれた。
「アインズさん!アルベド!シャルティア!おかえりなさい!」
夏樹は、テンションが上がって、アインズと握手をしてから、アルベドにも握手を求めた。
アルベドが差し出された手を見て、握手をしていいのか真剣に考えていたら、アウラがアルベドの手を取って、夏樹の手を握らせた。
「アルベド。ウルベルト様の握手を拒むのは、不敬な考えだよ♪」
アウラの表情は、笑顔で元気が溢れていた。
王座の間では、アインズ・アルベド・シャルティアが戻って来たことを祝っていた。
ナザリックの殆どの者達が、参加をしていた。
アルベドが、皆の前で謝罪をしたら、暖かく答えてくれたので涙がこぼれた。
夏樹が許しているのが、大きな要因だった。
(あ〜良かった〜全員揃った!あっ・・・)
夏樹は、1年以上の間、自分が偽物だという事を隠しているのに罪悪感を感じていた。
アインズが帰って来たので、皆に真実を話す時ではないかと心の底で思った。
もちろん、命の危険も多いにあると理解していたが、騙すのに疲れてもいた。
一番辛かったのは、アウラに嘘をついている事だった。
「あの・・・皆に、聞いて欲しい話があります!」
王座の間に居る殆どの者達が、夏樹の方を見た。
アインズとアルベドとシャルティア以外の者達は、アウラとの結婚の発表かと思い興奮していた。
「俺は、ウルベルトさんではなくて、偽物なんだぁー!皆様!騙していて、すいませんでしたぁー!」
周りの者達は、理解が出来ていなかったが、一部の者達は言葉の意味を理解する事ができた。
デミウルゴスは、夏樹が偽物だと発言をしたのを聞いていた。
記憶が混乱する魔法を受けて、全力が出せない今の状態は、ナザリックの者達が求める至高の御方の姿ではないと言っているのだと思った。
「ウルベルト様!どのような状態であっても、私達が、忠誠を尽くさせて頂く事には変わりはありません!」
デミウルゴスは、頭を下げた。
周りの者達は、記憶が混乱している姿を、ナザリックの者達に見せているのを、気にしていたのだと感じとった。
「どんな状態でも、ウルベルトさんは、ウルベルトさんですよ」
アインズは、デミウルゴスの言葉で、夏樹が何を気にしていたのがを感じ取った。
アインズは、夏樹に苦労をかけてしまったと思った。
夏樹は、記憶が混乱する魔法攻撃を受けたと、皆が誤解している事を知らないので、壮大な勘違いが発生してしまった。
「今のままで、良いんだぁ〜」
夏樹は、気が抜けてしまった。
「無理をしないで下さいね♪ウルベルト様!」
アウラは、夏樹の手を握りながら笑顔で言った。
アウラは第六階層で、アルベドと話し合いをしていた。
「アルベドが、戻ってきてくれて、心の底から嬉しいよ!」
アウラは、目を輝かせながら言った。
「えぇ・・・ありがとう。アウラ・・・」
アルベドは、目を輝かせて言っているアウラから、ほんの少しだけ、殺気を感じ取った。
「また、同じ事をしたら・・・分かってるよね?」
アウラは、笑顔を崩さずに伝えた。
アルベドは、笑顔の裏側にある何かを感じ取った。
「もちろんよ」
アルベドが答えると、後ろから声が聞こえてきた。
「その言葉を伝えるのは、私の役目だと思ったのだが・・・」
デミウルゴスは、アルベドがアウラに何かをしないか心配だったので、隠れて見張っていた。
アインズは、部屋に入っている間の報告書を確認していた。
「デミウルゴスが中心になって、リ・エスティーゼ王国の悪い貴族達をナザリックで教育してから、真っ当な貴族にしたのか・・・」
デミウルゴスは、夏樹が精神的に弱っていると感じて、過激な事を避けたと思った。
「蒼の薔薇のラキュースが、八本指に狙われていたので、パンドラが助けて・・・体の関係を持った!?」
アインズにとって、パンドラは息子の様な存在だったので、体の関係を持った事は、先を越された感覚がした。
「そして、パンドラは、ペストーニャを母親として紹介をしたのか・・・」
ラキュースとペストーニャの関係は、大丈夫そうなので安心をした。
「ラナー王女は、デミウルゴスに匹敵する頭脳の持ち主だと!?」
アインズは、そんな人間に正体がバレたらヤバいと思ったが、ヤルダバオトに連れ去られた事にして、クライムと一緒に山奥で暮らしていると知って安心をした。
「コキュートスとパンドラとラキュースが、ラナーとクライムに変身をしたドッペルゲンガーを救出して、国王の信頼を得た」
アインズは、凄く良い流れだと思った。
「歓迎の宴の余興での失敗か・・・ルプスレギナの教育のやり過ぎが原因か・・・」
アインズは、ルプスレギナの行動に不安を覚えた。
「コキュートスとパンドラとイビルアイが、ヤルダバオトと王都で激戦を繰り広げて、ヤルダバオトを撃退したのか・・・そして、エ・ランテルを領土とするコキュートス魔神国を建国したのか・・・」
アインズは、皆の頑張りに感謝をした。
「パンドラが、ヤルダバオトを遠くに吹き飛ばした件で、王都以外の国民にヤルダバオトを逃がしたと疑いの目を向けられてしまったので、ペストーニャと親子である設定は公表はしていないのか・・・」
アインズは、夏樹達が作ったモモンガ聖王国の建国計画を確認しながら、これからの行動について考えを巡らした。
アウラは、夏樹から2人だけで話したい事があると言われて、第六階層のジャングルに呼ばれた。
アウラは、もしかしたら、プロポーズ的な事を言われるかもしれないと思い緊張をしていた。
「アウラ。お待たせ」
「今来たところです!ウルベルト様」
2人は、いつもと同じように、普通に会話をしていった。
だが、いつもと違う所があった。
「ウルベルト様?先ほどから、向こう側を気にされていますが・・・誰か来る予定なのですか?」
「えっ!?あっ・・・」
夏樹は、焦った。
離れた位置から、透明化の魔法を使って監視しているルプスレギナは、遠くに居るソリュシャンにメッセージを送る。
『ソーちゃん!アウラ様が、気付いたポイっす!』
『もう少し、前の方に進んだ方が、見えやすいと思うけど・・・実行するわよ!』
『了解っす!』
夏樹は、少し前からマーレとルプスレギナとソリュシャンに、ある相談をしていた。
それは、アウラに告白する際のシチュエーションについてだった。
夏樹は、アインズが復帰して、今のままの自分で良いんだと思ったので、告白を実行する事にした。
シチュエーションは、第六階層で綺麗な花火を打ち上げる事であった。
第六階層を、傷つけないように配慮されている。
夏樹達は、打ち上げ花火が綺麗に見える位置まで誘導をしようとしていたが、夏樹が緊張してしまい、アウラが気付いてしまった。
夏樹が、戸惑っていると、第六階層の夜空に花火が打ち上げられた。
その花火は、魔法の効果でとても綺麗な形を、夜空に描いた。
「綺麗・・・」
アウラは、美しさに見惚れた。
打ち上げ花火が終わって静かになった第六階層は、静寂に包まれていた。
夏樹とアウラは、見つめ合った。
「アウラ!強制ではないんだ!断ってもいい・・・」
夏樹は、立場を利用した強制はしたくなかった。
「良かったら、俺と結婚をして欲しい!」
アウラは、抱きついてから笑顔で返事をした。
「はい♪喜んで!」
マーレとルプスレギナとソリュシャンは、少し離れた位置から2人を祝福していた。
「お姉ちゃんっ・・・おめでとう」
マーレは、おどおどしながら姉の結婚を喜んだ。
「結婚式の準備を、セバス様と相談しないと・・・」
ソリュシャンは、結婚式の事について考えていた。
(ウルベルト様は!奥手の可能性が高いので!子作りのアドバイスをするっすよ!)
ルプスレギナは、自分なにり2人を祝福する方法を考えていた。
夏樹とアウラは、アインズ達に報告に行ってから祝福を受けた。
アインズは、自分の事ように喜んでいた。
特に、シャルティアは嬉涙を流しなから喜んでいた。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます!