人力TASみたいな動きをする術師 作:苦労見てくれてる虎
12月24日、新宿。
それが僕ら高専側戦力と宿儺との決戦の地だ。
日付と場所だけ見ればどう考えてもデートである。五条はどういうつもりでこの日を指定したのだろうか。
まぁ、大事なのは僕が復活してから一週間後、それが宿儺との決戦の日だということで…
それが今これからだということだ。
五条の背中は叩かなかった。僕のそれは皆に先んじて済ませておいたから。
冥さんの烏の通信越しに、五条の姿を…背中を見る。
今あの背中には、色々なものが乗っている。
最強という称号と、それによる重圧。
世界の命運という大きな期待と不安。
…生徒を守る教師という枷。
きっとあの頃よりも大きくなっている背中は、あの頃二人で背負っていたものを、たった一人で背負っている。
そう思うとあの背中が、心なしか小さく見えた。
寂しいような、悲しいような、そんな感情を孕んだ背中は、それでもその重荷を決しておろさず、戦おうとしている。
僕がそんなことを考えている内に始まっていた戦闘は、凄まじい速さで進んでいた。領域の展開、外郭の破壊、簡易領域の展開、脳の再構築による強制的な術式の回復。
五条も全力で戦っていることが分かる。簡易領域に関しては僕の使ってるし。
未熟だったとはいえ、僕が縛りで成立させたものを技術で成立させるところを見ると、六眼の凄さを実感する。
〚嵌合獣-顎吐〛とかいうやつと、〚摩虎羅〛とかいうやつが出てきて、領域合戦が終わる。脳の再構築による負荷で、双方領域を使えなくなっているのだ。
五条の完全詠唱の〚蒼〛と〚赫〛をぶつけて、指向性を持たせない縛りを結んだ〚紫〛が放たれ…
五条は死んだ。
鹿紫雲が飛び出すのを横目にそう思う。
五条が聞けば怒るかもしれないが、五条は負ける気がしていた。
現代最強の称号は、飽くまで現代最強だった。そんな気はしていた。
……そんなこと分かっていた。
五条が最強であっても、無敵ではないことくらい。
分かっていたのに、それでも…
「悔しいなぁ…」
小さく呟いた。
五条はきっと、悔いなく死んだ。
それでも僕は悔しいと思った。
あの頃最強だった五条は、たった今死んだ。
「五条が死んだら僕が頑張らないとなのに、面倒なんだよね」
独り言ちりつつ、戦闘の準備をする。鹿紫雲が勝てないことはまず間違いない。次に死にに行く役は僕なのだ。
「愛鈴先生!」
「どうしたの?」
虎杖君から声をかけられる。
相変わらず僕は年下より背が低い。
「愛鈴先生、ホントに一人で行くんですか」
「うん。皆より先に行ってくるよ」
釘崎さんまで会話に入ってくる。
僕は案外ちゃんと教師ができていたのだろうか、生徒達が心配そうな目を向けてくる。
「僕のことあんまり舐めないでほしいんだけど?」
「愛鈴先生そんなに力無いし、
それに、愛鈴先生の呪力じゃ……」
「虎杖君に比べれば誰でも非力だよ。それに呪力は大丈夫。説明するタイミング無かったけど、そこが駄目なら五条が止めてるさ」
適当に突っ込みながら質問に答える。確かに僕は対人戦向いてない様に見えるだろう。
だがまぁ結局、そんなもの工夫次第でどうとでもなるのだ。
予備の武器を太腿に差しながら、皆に声を掛ける。
「できる限り削ってくる。無理だと思うけど、もし殺しちゃったらその時はごめんね」
それだけ言って僕も決戦の地へ降り立つ。出る直前の映像では、宿儺の拡張術式と思われる世界斬で鹿紫雲が殺されていた。
結局こうなるか。五条も鹿紫雲も死んで、宿儺の方は領域は展開できないものの、他のダメージは全回復、まだまだ呪力切れの気配は無い。
「ほう、次はオマエか。
…確か、草薙だったか?たいそうな名前を持って生まれたものだ」
目の前にはただ一人勝者として宿儺だけが立っていた。
「五条はさ、僕の兄貴分だったんだ。だから宿儺、僕は君に復讐することにするよ」
「五条悟が死ぬことは分かっていて送り出したのだろう?何故そこまで怒っている?」
怒っている、か。
まぁ、そうだろう。僕の中の大切な人は少ない。今生きているのは硝子と健人の二人だけ、まともに動けるのは硝子だけだ。
つい先程まではもう一人いたのに、そのバカは死んだ。いや、目の前の相手に殺された。
だが、宿儺の言う通り、それを分かっていて送り出したのも事実だ。
なら、僕の怒りは……
「八つ当たり、かな。僕がもっともっと強ければ救えたのにって怒ってるんだよ」
「ふむ。弱い者の考えは分からんな」
「それでいいよ。それでこそ宿儺って感じだ」
そう言って僕は宿儺に刃を向ける。長話が過ぎたな、見てる皆が退屈しているだろう。
「ふむ、まぁ良い。俺は今機嫌が良いからな、多少弱くても許してやる。せいぜい頑張れ」
「五条程ではないかもしれないけど、精々頑張るよ」
話はそこで切り上げられ、僕と宿儺の戦いが始まった。
何か宿儺の口調が違和感しかないです。特に
「ふぬ、まぁ良い。俺は今機嫌が良いからな、多少弱くても許してやる。せいぜい頑張れ」
の部分なんですけど。この宿儺気持ち悪すぎる。誰だコイツ