人力TASみたいな動きをする術師   作:苦労見てくれてる虎

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領域展開。術式を付与した生得領域を展開する性質上、前提として術式を持っていなければ発動できない。

草薙愛鈴は、二級呪霊を『神風(バードストライク)』の要領で強化した呪霊と認識していた上、仮に領域を展開すれば周囲の呪霊も巻き込む。そうなれば被害が大きいのは呪霊側だ。

それらの理由によりまずあり得ないとして除外していた選択肢。

 

領域展開は必中効果を付与する場合、術者本人とそれが触れているもの以外に対し無差別に術式効果を適用する。

この際領域は、術者本人を呪力で認識している。領域の外郭を術式効果で破壊しないようにするための、領域にデフォルトで備わった機能だ。領域の外郭と同質の呪力かを判断材料とし、術者本人かを判断しているのだ。式神使いが領域を展開した場合に式神に術式が適用されないようにするための機能。

今回の場合領域は、草薙愛鈴がフレンドリーファイアの対策と認識していた『呪力の統一』により、呪霊全員を術者本人であると認識した。

 

これにより、領域を使いつつも必中効果を敵だけに向けることができ、更に呪力量だけならば特級クラスの呪霊が複数体。特級術師でもなければ詰みと言っていい状況だが…

 

「…簡易領域!」

 

草薙愛鈴は領域対策を持っており、冷静にそれを発動した。

しかし簡易領域の展開までに発動した必中効果により、その肉体、脇腹には大きな穴が空いていた。肝臓の損傷、呼吸機能の著しい低下、多量の出血…

 

領域の必中効果は分からない。現在呪霊に対処しつつその肉体を治癒できているのは、領域展開直後で領域展開に集中していたリーダー格が指示を出せず、呪霊が連携してこないからだ。

簡易領域が呪霊の領域により削られ、必中効果を受け、少しでも体制が崩れれば、集中砲火により命を落とすだろう。

 

つまりタイムリミットは簡易領域が削り切られるまで。それまでに領域から脱出する、もしくは領域を展開しているリーダー格の呪霊を祓う。

時間に余裕はなくなった。なんとかして特級呪霊を祓う必要があるが、現在草薙愛鈴には一瞬で特級相当の呪霊を祓えるような大技や必殺技は無かった。

 

ジリ貧。もし時間的余があり、相手が領域を展開しなければ、危なげなく呪霊を祓えていただろう。

しかし現実は領域が展開され、簡易領域が削り切られるまでに領域を突破しなければ、待ち受けるのは『死亡』の二文字のみ。

この絶望的な状況、誰もが諦めるようなそんな状況…

 

「この程度突破しないと、生徒達にカッコつかないよね」

 

草薙愛鈴はそれでも気丈に笑って見せた。

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