宇宙。
空気の代わりに、放射線まみれの死の空間。
生物には過酷すぎる闇の中、二人の戦士が殺し合ってた。
白黒のコブラのような装甲を纏う人型生命体。戯れに興じて星々を破壊した王族、エボルト。
黄金の獅子と虹色の鷲の意匠を持つ人型生命体。ここら一帯の銀河を支配する王、デュゼス。
二人の狙いはこの星々。誰がこの星のエネルギーを吸収するかである。
デュゼスは他のブラッド族と違い、喰らう星を選り好みする。
端的に言えば悪と呼ばれるような星の文明や種族。
もっとわかりやすく言えば、ウルトラマンに出てくるような悪い宇宙人や狂暴な怪獣のみが住む星である。
彼は契約した。
自身が名指しする星以外は手を出さないと。
自身に忠誠を誓う星は他のブラッド族や悪性文明から守ってやると。
彼は契約を遵守した。
傘下についた星は守り、逆らうものには痛い目を、敵と判断した星は喰らって己の糧にした。
今度のターゲットはこの星。デュゼスの管理する星を滅ぼした不届き者。デュゼスはコレを容易く潰し、いよいよ喰らおうとした瞬間にエボルトが現れた。
エボルトの目的は全ての星々。
デュゼスの支配する星全てを滅ぼし、喰らおうと企んでいる。
獲物を横取りするだけでなく、今まで揃えた玩具も壊されるなんて堪ったものではない。
故にデュゼスは持てる力全てを行使してエボルトを排除しようとしている。
「クロックアップ」
タキオン粒子を纏って自身に流れる時間を加速させる。
エボルトの死角へと回り、凄まじい勢いの蹴りを食らわせた。
隕石のような破壊力の蹴撃が、何発も喰らわせ、エボルトを数㎞先の隕石群にぶつけた
何個か隕石を破壊しながら吹っ飛ぶエボルト。ソレを見ながらデュゼスは手を掲げて力を溜める。
「吹っ飛べ」
創り出したのは炎。
太陽のような輝きを放つ巨大なプラズマ火球。
文字通りの意味である。比喩ではない。
ソレをエボルト目掛けて放り投げた。
凄まじい勢いで隕石群ごとエボルトを吹っ飛ばす。
これでエボルトも塵と化したかと思いきや……。
「ばあ!」
『ブラックホールフィニッシュ!』
突如、デュゼスの背後からワームホールが現れ、エボルトが現れた。
同時にブラックホールを撃ち出す。
星を破壊する程のエネルギーを拳サイズにまで圧縮した一撃。
だが、ソレがデュゼスを捉えることはなかった。
「ッチ!」
迎え撃つデュゼス。
特殊なオーラを纏う拳でブラックホールを破壊した。
エネルギー操作能力。
ブラックホールの重力のベクトルを変え、ブラックホールを自壊させたのだ。
贅沢を言えば、エボルトごとブラックホールで吹っ飛ばしてやりたがったが、そうはいかなかった。
「ッ!?この!」
下がるエボルトに追撃を仕掛けるデュゼス。
エボルトに接近戦を仕掛け、ソレに対抗するエボルト。
その間、両者の周囲に虚空からジッパーのようなものが現れ、開いて無数の怪物が現れた。
インベスとオーヴァーロード。かつてデュゼスが食らった星の生物たち。デュゼスは空間を繋げて彼らを呼び出し、エボルトにけしかけた。
何万何億もの大群。
島程の巨大な怪獣が要塞の如く砲撃を集中砲火しながら、虫程の小さな化物が毒をまき散らしながら、人間のような怪人が魔法のようなものを使いながら。
様々な怪物がエボルトに迫り来る。
「クソ、鬱陶しいな!」
向かって来る軍勢を消し飛ばすエボルト。
自身は重力フィールドを張って防御。直径たった数mの、球体の重力結界。
だというのに誰もその中に侵入できず、触れた者は消滅。ありとあらゆる攻撃を跳ね返す。
次にブラックホールを形成。
絨毯爆撃のように次々と無数のブラックホールが出現。
ブラックは群団を呑み込んでは消え、再び出現と繰り返す。
僅か数秒程でインベスとオーヴァーロードの大群は全滅した。
『デュゼス・エンド!』
「!?」
突如、音声が響く。
大気が存在しない筈の宇宙に流れる音楽。
エボルトのベルトが運命を流すのに対し、こちらはモーツァルトの『dies irae』をロックアレンジしたものだった。
『ノヴァ・インパクト!』
瞬間、宇宙が燃えた。
気が付いたら、俺は星狩りの一族に生まれ変わっていた。
星狩りの一族、ブラッド星人。
文字通り星を狩り、喰らって力にする種族。
特に文明のある星を好み、生命ある星々を幾多も滅ぼしてきた。
俺はブラッド族の王子に生まれた。
とはいっても三男坊で権限なんてほとんどない。
いや、そもそもブラッド族は王権の意味すらなかった。
ブラッド族は感情がない一族だ。
王への忠誠心なんて欠片もない。
俺が偉ぶったところで誰も聞きやしない。
淡々と己の仕事と役目を全うするだけのつまらない奴ら。
奴ら曰く、これがブラッド族の生き方であり本能らしい。
だから、俺も一族らしく本能に従って俺の生き方でやってきた。
俺は戦ってきた。
好き勝手に暴れ、ムカつく奴らをぶっ殺してきた。
その中には同族のブラッド族も存在し、殺した後に溜めてきたモンを全部奪ってやった。
おかげで同族からも怖がられるようになったが知ったこっちゃない。元から避けられてたし、むしろ余計にやりやすくなった。
俺には王族らしく特殊能力があった。
コピー能力とその再現能力。簡単に言うならとあるの一方通行とナルトの写輪眼みたいな能力だ。
この組み合わせはかなり強く、他のブラッド族よりも多彩な能力を獲得出来た。
俺は特別だった。
他のブラッド族とは違い、人間としての感情が残っていた。
自身の成長と星狩りによる闘争、そして勝利を楽しめる感情。
感情は他の同族を圧倒す程、俺のハザードレベルを急激に引き上げてくれた。
代わりに恐怖や怯え等は無くなり、ひたすら戦いと勝利と進化を求め続けた。
楽しかった。
鍛えて強くなるのが。
技を盗んで強くなるのが。
戦いから学んで強くなるのが。
更に勝利を重ねて強くなるのが。
俺は強くなるのを心の底から楽しんだ。
ワーム。
蟲人が支配する星。
殺した相手に成り代わり、徐々に侵略してきた害虫共。
タキオン粒子によって時間を操る術を奪い、滅ぼして自身のものにした。
ヘルヘイム。
植物が支配する星。
空間をも超えて無作為に他惑星へと成長し続ける宇宙的外来植物。
植物共に隷属された生物諸共、俺の能力とエネルギー、そして兵隊に変えてやった。
フォッグ。
機械生命体の支配する星。
大孵化のために星々の生命体を食らいつくし、また別の星に渡り歩くイナゴ共。
特に目立った能力も特性もなかったから力ずくで潰し、エネルギーに変えてやった。
他にも様々な悪性宇宙人や凶悪な怪獣の星を破壊してやった。
悪とされる種族の方が強い能力や武器を持っている。
そういう奴と戦うのが一番楽しい。
滅ぼしても罪悪感なんて何も感じないし、むしろいい事してやったという爽快感すらある。
ハザードレベルを上げ続けた。
星々の生命体から能力や技術をコピーし続けた。
それらを駆使して勝利し、星を喰らって自身の力にし続けた。
俺は特別だ。誰よりも強い。
だから、この俺にこそブラッド族の王座は相応しい。
「よお、ドゥゼス!俺は全宇宙と心中したいんだ!そのためにお前からエネルギーを奪う!」
「ああ、いいよ兄さん。奪い合おう。俺も兄さんの王座が欲しいんだ。だから死んでくれ」
さあ、全力で殺し合おうじゃないか。