中身人間で力が人外なのは仮面ライダーの定番ですが、それじゃあ星狩りの一族に生まれた意味が無い。むしろソレなら万丈みたいな主人公の方がやりやすい。
そもそも前世一般人の精神ごときでブラッド族の本能を抑えられるわけがない。
脳みそも地球人と違うから精神構造自体変わるに決まっている。
で、ブラッド族の脳みそをベースに地球人の価値観をインストールした結果、こうなりました。
「ゼウスの活動限界。これは大きな付け入る隙よ」
二課に戻った弦十郎は治療を受けながら会議を開ていた。
「無敵に思えたゼウスにもこんな弱点があったんですね」
「ええ、これなら所々で急に攻撃的になった理由が分かるわ。本当に余裕が無かったのね」
普段は気さくなキャラを演じていたゼウス。
取り押さえに来たシンフォギア奏者相手でもナンパしたりと余裕の行動を取っていたらしいが、時折攻撃的になる事がったあった。
特に多いのが大量のノイズを倒した後。中でもトップは二年前。ライブ事件だ。
力ずくで突破する事はあっても、怪我をするような攻撃をしない程の余裕があった。
しかしあの時は奏は冷淡な口調で罵り、シンフォギアまで破壊。それ以前までの彼はやらなかった事だ。
ここまで攻撃的になったのもあの一件のみ。
「しかし今まで何故気づかなかったんでしょうか。統計を調べたらすぐにわかりそうなんですが」
「活動限界が来る前にノイズを倒しきったことが多いからね。そして、活動限界の証拠が出ることも今までなかった」
確かにゼウスは短時間しか現れないが、ソレはノイズをせん滅したからもう戦う必要がないからと思われてきた。
大量のノイズを倒した後は余裕がなくなるが、ソレはノイズ退治に精神的に疲れていたせいだと思われてきた。
ノイズの戦闘以外に姿を現すことはないが、ソレはノイズとの戦い以外に力を使うつもりはないと思わてきた。
「ソレは違っていた。本当はこの弱点を知られたくなかったのよ。けど、彼は晒してしまった。私たちをナメてね」
「………ナメる?」
了子の言葉に引っかかりを覚える緒川。
「そう、彼はナメているのよ!だから弱点を晒すことになったの!」
バンバンと、了子はホワイトボードを叩く。
ゼウスは二課を舐めている。
二課だけではない、全国の対ノイズ組織を。
「活動限界が来る前に片づける予定だったんでしょうね。司令が生身だったから何も出来やしないと。そうやって見下した結果、弱点を晒したのよ!」
「見下していた……。確かにそうですね。あれだけ強いと我らのことなんて眼中に無くなるでしょう」
ゼウスの力は強大だ。
一人でもいればノイズ対策は万全ともいえる。
全国ありとあらゆる場に瞬間移動で現れ、電撃や暴風などの多彩な攻撃でノイズをせん滅。シンフォギア奏者を圧倒するだけでなく、格闘戦最強である弦十郎とも互角に渡り合える。
これ程の力を持っているなら、周囲を見下すのも分かる気がする。
「けど、どうするんです?いくら弱点が分かっても限界時間になると瞬間移動で逃げられるんでしょ?」
「そこは秘策があるのよ!」
ホワイトボードを裏返す了子。
裏面には何かの設計図が掛かれていた。
「これは?」
「電気捕獲ネットよ」
「「「?」」」
了子の返答に全員頭に疑問符を浮かべる。
「ゼウスは瞬間移動しているというより、身体を雷に変換することで光速で移動するの。だから電気を遮断する空間に閉じ込めれば…」
「逃げられないということですね!」
「そういう事!後はここにおびき寄せる方法なんだけど…」
「無理じゃないですか?女好きもキャラで演じてるんでしょ?」
「いやいや、ここは私が大人の魅力を…」
「いや無理でしょ!?」
結局、会議ではゼウスをおびき寄せる方法はこの場では出なかった。
「(しかし…これを報告していいものなのか?)」
ゼウスについて弦十郎は思う事がある。
確かに何度も作戦の邪魔をされ、奏のシンフォギアを破壊された。
しかし彼の目的はノイズの殲滅と人々に希望と安心を与える事であり、むしろ自分たちの方が邪魔をしている。
正体を隠してはいるが気さくなキャラで大衆に安心感を与えながらノイズ殲滅するゼウスに、存在自体を隠して救える者も救えない自分達。そんな自分たちにゼウスを否定する権利などあるのか。
そもそも、奏がああなったのも自分たちが不甲斐なかったのが原因。ゼウスを責めるのは筋違いだ。
だが、一組織の人間である以上、上には逆らえない。
「(俺は…なんて無力なんだ!)」
あのゼウスにも弱点があった。
活動限界時間があるという明確な弱点。
ここさえ突けば、あの邪魔者を始末できる。
数を揃えるのは簡単だ。
ノイズなどいくらでも用意できる。
おびき寄せる方法も幾つか候補はある。
後は活動限界で余裕のなくなった奴を止める駒。
既に奴を捕らえる為の電子柵も上層部に報告して用意できた。
これだけ条件が揃えば奴を、あのイレギュラーを始末出来る。
奴は油断している。
弱点がバレようとも捕まるわけがないと。
ゼウスの聖遺物を使っているとはいえ、神の名を名乗ような男だ。
そういった男はいつの時代でも驕り高ぶるものだ。
だから負けるのだ。
「じゃあ後は頼んだわよクリス」
「ああ、分かったフィーネ」
「櫻井了子…いや、フィーネから電子柵による捕獲計画が提出された」
真夜中、とある日本家屋。
手入れが行き届いた日本庭園のような中庭。
その景色を眺めながら、茶室で一人の老人―――風鳴訃堂が茶を入れていた。
「結構なお点前で」
「コーヒーだ。お主はこっちの方が好きだろ?」
訃堂と向き合う一人の男。
御門大和………いや、ドゥゼスは用意された陶器のコーヒーに口を付ける。
「兄の一人がコーヒー好きというだけであって俺は普通ですね」
「エボルトとかいったな。お主より格段に弱いそやつでさえ星を戯れで滅ぼし尽くすとはは。ブラッド族とは
エボルト。
ドゥゼスの兄にして王族の一人。
ビルド本編では終始ライダー達を圧倒していた絶対的な強者。
ライダー達が勝てたのは奇跡のようなものであり、勝因のほぼ全てがエボルト自身の慢心とお遊びによるものだと言って良い。
そして、エボルトは完全には死んでいない。並行世界を融合する為のエネルギーにされた程度で滅びる程、彼は弱く無い。マジでビルド陣営に勝ち目あるのか?
まあ、仮面ライダーを知らず、エボルトの現状も知らないドゥゼスには関係ない話だが。
「惑星破壊を個人で出来るのは王族や貴族だけですよ。一般兵や騎士爵はチームや軍でやっと出来るぐらいですかね」
「ッフ、その貴族も王族も皆殺し、そやつらが忌避するような強大な悪を打ち倒したお主はどれほどの存在か。神の領域は人の身では想像すら及ばんな」
「そんなに大したものではありません。どれだけ発達し規模が大きくなろうが、生物のやることは変わらない。自身の生存と多少の娯楽。これに限ります」
「娯楽、か。貴方にとって我が国の存亡………いや、この惑星の存亡も娯楽の内か」
分かっていた事だ。
眼前の地球外生命体は生物としての規模が違う。
全盛期の1%もないとはいえ、かつては複数の銀河系を支配していた帝王。
自身の力でのみで事足りる彼にとって他人の力など不要。そんな彼にとって地球の命運など些細なものでしかないのは当然である。
「(しかしこの力、護国のために使えば我が国は安寧。その為なら惜しむものは無い)」
そう、彼こそがドゥゼスの協力者。
ドゥゼスがこの国で活動する為の拠点や法手続き等を支援している。
『土産だ。アンタと取引がしたい』
今晩のように月がよく見える真夜中、ドゥゼスは突然現れた。
厳重に警備された要塞の中を。何事もないかのようにすり抜け、セキュリティを麻痺…否、無効化させて現れた。
即座に彼は理解した、目の前の侵入者には勝てないと。
蛇に睨まれた蛙。御伽噺の龍や映画の怪獣と対峙したかのような気分であった。
だが、ドゥゼスが持ってきた土産によってその恐怖は吹っ飛んだ。
複数の晒し首。
首の持ち主はどれも風鳴訃堂が殺したかったものだった。
政治的な理由で手を出せなかった者、暗殺などが上手くいかない者、行方を晦ましていた者。等等訃堂が殺せなかった首をポンと差し出した。
『貴方が殺したかった者たちの首だ。気に入ってもらえたかな?』
訃堂は確信した。
目の前の怪物は戦力だけでなく情報でも勝てないと。
『では商談といこうか』
こうして、訃堂はドゥゼスという最大戦力を手にした。
『アメリカが邪魔してきた?いいだろう、俺が全員殺してやる』
『フン、数百年先の未来のSFって設定だが、俺らには及ばんな』
『物資が必要?ゴミを用意しろ。俺が原子弄って用意してやる』
ドゥゼスの力は絶大だった。
戦力としては勿論、人類を軽く超える科学技術、あらゆる物質を変換出来る能力。
これでも全盛期と比べるのがバカらしくなるぐらい弱体化しているというのだから末恐ろしい。
「(しかし政治的な手腕は皆無。いや、興味が無いといったところか)」
付け入る隙が無いとは言わない。
強者ゆえの驕り。そういったものは弱者の術や策が覚えにくい。
ソコを突くのだ。他者には突かれないよう覆い隠して独占する。
人とは助け合い。宇宙人相手でもソレは変わらない。
「では、手筈通り頼むぞ」
「任せてください。フィーネの好きにはさせません」
訃堂は万が一の保険―――デュランダルの暴走を防ぐための“箱”を受け取った。
・風鳴訃堂から見たドゥゼス
強い反面政治や金儲け等には無関心。最悪自分の能力で揃えばいいと思っている節がある。
身内や味方には寛大。規模が大きすぎるため人間や地球を軽視する傾向があるが、一度懐に入ってしまえば大事にする。
しかし甘いというわけではなく、コレはソレはソレと分けることができる。周囲か見ればそこが冷酷だと思われるだろう。
一度交わした約定は相手が格下や気に入らない相手でも裏切った等の余程なことがない限り遵守する。強者特有の傲慢さはこの点では働かない。
以上のことから契約相手としては宇宙人とはいえ申し分ない。むしろ属国のように接する某国の方が厄介。