ブラッド族三男坊の道楽記   作:大枝豆もやし

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なんていうか、シンフォギア女子の最初の闘う動機って大半が代償行為のような気がするんですよね。
響は生存者いじめの過去で救われたかったから人助けが趣味になり、クリスは戦争孤児だったから戦いを無くそうとして、キャロルは父を失った悲しみの代償として復讐を望んだ。
特に原作の響なんて悪く言えば病気です。あれだけ人助けの為に犠牲できるとか病的です。シンフォギア土下座したらヤらせてくれそうなキャラランキングあったら一位取れるんじゃないですか?
けど、代償行為で幸せになれるんでしょうかね?


クリスの場合

 

 フィーネを撃破して数日、その間に彼女の動きはなかった。

 ドゥゼスの強さを警戒して潜んでいるのか、それとも性懲りもなく何かを企んでいるのか。ソレは当人しか分からない。

 兎に角、ここ数日は特に大きなノイズ災害も無く平和であった。

 

「なあ、いくらでお前は買える?」

「あ?」

 

 大和(ドゥゼス)家無少女(クリス)を拾ったのも、そんな日であった。

 

 

 

「美味え!これ全部食っていいのか!?」

「ああ、そのために買ったんだからな」

 

 とある貸しマンション。

 翼たちや響たちを迎える部屋とは違う物件。

 大和はクリスを拾ってそこに彼女を上げた。

 今のクリスの前には様々なコンビニ弁当やお惣菜が並んでいる。

 近くのコンビニで適当に購入したものだ。

 

「さっすがゼウス様だぜ!金持ちで太っ腹!しかもアタシの傷を完ぺきに治してくれたしな!やっぱあのクソババアとは大違いだぜ!」

 

 背中を向けながら言うクリス。

 彼女背はひどいむち打ちの痕があった。

 どうやら保護者という名の飼い主であるフィーネに八つ当たりされたらしい。

 

「………フィーネに追い出されたのか」

「………ああ、碌に役目を果たせない道具はいらないってな」

 

 フィーネの八つ当たりは常軌を逸していた。

 普段は淡々と冷たい表情だが、今回は鬼の形相で行っていたという。

 最後には涙まで流し、ヒステリックを起こしながらクリスを乱暴に追い出したらしい。

 

「お前なにしたんだ? 仕置きはいつも通りだけどあんときは余裕がないというか、なんかメッチャ喚いてたぞ。どうやったらあの鉄仮面があんな風になるんだ?」

「別に。彼女の大事なものを奪ってやったんだ。当然の報いだろ?」

「? まあいいや。どうせあいつとはもう会わねえしな」

 

 クリスは再び口の中に弁当の具材を詰め込む。

 これ以上聞くと碌なことにならない。

 彼女は勘で理解した。

 

「………なあ、お前ならこの世界の争いをなくせるのか?」

「人が人である限り不可能だ。まあ、手段を選ばないなら可能だが」

「!? 本当か!?どうするんだ!?」

 

 身を乗り出して聞くクリス。

 

「方法は大まかに三つ。一つは人類を全滅させる。これが一番確実で簡単な方法だ」

「ソレのどこがだ!?」

「争いは無くなるだろ?争う人間がいなければ平和になる。滅びは平等だからな」

「………」

 

 大和の極端な回答に黙り込むクリス。

 そんな彼女に構うことなく次の答えを話す。

 

「二つ目は総人類洗脳だな。余計なことを考えず、必要以上の欲望を抱かず、生存に必要なことのみに徹すれば争いは消える」

「………念のために聞くけど最後はなんだ?」

「総人類家畜化。全人類が全能に近い何かを主として従うことで家畜となって管理される世界にする。戦争は無くなるが家畜内でもいじめなどの小さな争いは起こるから確実とは言わんな」

「結局どれも似たような内容じゃねえか!?」

 

 机をバンとたたきながら立ち上がるクリス。

 

「どれもこれも無茶苦茶なのばっかじゃねえか!そんなので争い無くなっても意味ねえだろ!?」

「そうだ。だから言ったろ、人が人である限り争いは無くならないと」

「………人間は争いを辞められねえってことかよ?」

「なんだ、分かってるじゃないか」

 

 しれっとそう言う大和にクリスは不満げな表情を向けた。

 

「アタシは、全世界から戦う意思と力を持つ奴がいなくなれば世界が平和になると思っていた。そうすれば誰も誰かに暴力を振るおうとは思わない」

「ありえない。人間…いや、地球上の生物は根本的に力を求める。何故なら暴力こそこの世のありとあらゆる問題を“解消”してきた最も便利なツールだからだ」

 

 有史以来、暴力を必要としない時代は存在しない。

 いや、人類が誕生するどころか、生物が生まれた時点で暴力を必要としない時代は存在しなかった。

 縄張り争い、天敵との戦い、交尾の権限をめぐる争い、群れの序列の争い。枚挙に暇はない。

 人間も高度な文明を築いて野生生物のソレとは変化したが、生物である以上根本的な部分は変化していない。

 

 生きるということは戦うこと。

 戦えない生物は生きる権利すらない。

 

「現に人類は暴力で優位に立った種族だ。武器を作って他の動物を狩り、排除することで安全を手にした。文明を発展させることで他国からの侵略に対処し、武力を背景にする事で繁栄してきた。現に、科学の進歩が一番早くなるのは戦争に関するものだろ?」

「………」

 

 クリスは歴史に詳しくない。

 戦争孤児である彼女に教育の機会など碌にあるわけがないのだから当然だ。

 だが地頭は悪くない彼女は直感で嘘ではないと判断してしまった。

 

「(まあ、別に暴力面において特化しているというわけではないが)」

 

 心の中で大和(ドゥゼス)は呟いた。

 確かに人類は武器を手にし、軍事を用いて他国の侵略に抗い、武力を背景に文明を発達させてきた。

 だがドゥゼスは何も暴力や武力こそ全てだと言うつもりはない。

 地球人以上に暴力的な宇宙生物はいるし、侵略や戦争が地球人以上に積極的な宇宙人も存在していた。

 むしろ地球人はそれらと比べたらまだ穏やかで優しい種族だ。

 まあ、だからといって光の種族(お人よし共)のようになるとも思ってないが。

 

 地球人にも性根からの善人はいる。

 響や眼前のクリス、二課の連中などがその例であろう。

 しかし、彼ら彼女らを人類の代表者として扱うにはあまりにも少数過ぎる。

 光の巨人たちが種族単位で性根が善なのに対し、人類は幅が広すぎるのだ。

 

 閑話休題。

 大和はクリスを追い込むために話を続ける。

 

「だったらこの日本はどうなんだよ!? 戦う為の道具もやろうとする奴もいないから平和なんだろ!?」

「そんなことはない。戦おうと思えばその辺に転がっている石ころでも十分凶器になるし、きっかけさえあれば誰もが人を殺せる」

 

 世界的に平和で治安のよい日本。

 治安と民度が低いシンフォギアの世界でもソレは変わらない。

 しかし、決して争いや理不尽と無縁というわけではない。

 

「それに争いとは暴力を伴うケースだけとは限らない。この日本を見ろ。法治国家によって統一され暴力とそれを振るう意志を取り上げられている。なのに争いの種は毎日のようにある」

 

 大和はクリスと目を合わせ、イメージを送った。

 テレパシー能力。他の星の侵略性宇宙人から奪った能力でクリスの脳内に直接送信したのだ。

 内容は響が実際にあったいじめの現場だ。

 

「!!? な、なんだよこれ!?平和な日本で、こんなことするのか!?」

「そうだ。たとえ平和な日本でも、暴力や飢えの恐れがなくても…いや、無いからこそこういった凶行に走る奴もいる」

 

 

 

「法治国家では自然状態…お前の言う戦う意思と力がある状態に制限が掛けられる。けど、ソレでも争いは無くならない」

 

「原始的な暴力が駄目なら権力で、ソレがだめなら数の暴力で、いくらでも争う方法はあるし、虐げられた者は爆発して暴力を使用する」

 

「何故そこまで暴力をやめられないか、戦いをやめられないか。簡単だ、人間は戦いと暴力で今まで生き残って来たんだ。ソレを今更否定することは出来ない。何故ならそれは今までの歴史を、生き方を否定する事だからだ」

 

 

「断言する。人間が人間である限り、争いと暴力は無くならない」

 

 

 

「………」

 

 クリスは黙って俯いた。

 

「じゃあ次はこっちが質問する番だ。何故そこまで争いの無い世界に拘る」

「………戦争経験した奴なら誰だってそう思うだろ?」

「いや、ソレは違う。二度と奪われないように、他の人間を蹴落とし奪ってでも力や金や地位を求める。大半はそうだ」

「ソレじゃあアイツらと一緒じゃねえか!そういう奴がいるから争いが無くならないんだろ!?」

「そうだ、もう二度と虐げられることが無いよう、虐げる側になりたがる。ソレが大半だ」

「!!?」

 

 絶句するクリスに大和は追い打ちを仕掛ける。

 

 

「クリス、お前は救われたいんだろ?」

「!!? な、何を言って…」

 

 クリスを黙らせるように、大和は更にぺらを回す。

 

 

「いわば代償行為だ。過去の自分が救われなかったから、似た境遇の者を救う事で過去の自分を救おうとしている。救った者に自己投影してな」

 

「だが断言する。ソレではお前は救われない。どれだけ自己投影しようとも過去は変えられず現実を突き付けられる。その度にお前は絶望することになる」

 

「過去を克服する方法は今幸せになることだ。二度と絶望しないような幸せを手にすることでやっと人間は過去の不幸やトラウマを払拭できる」

 

 

 適当なことをほざく。

 確かに代償行為だけでは過去を克服できない。

 しかし過去の自分では出来なかった事が今では出来ると、勝てなかったものに今では勝てると実感するだけで過去を克服することもある。

 そして何よりも、行動することで代償行為以外の意味が出るかもしれない。

 

 やらない善よりやる偽善。

 たとえ代償行為でもやり続ける事で意味を見いだせる。

 しかし、この男はその機会を奪おうとしていた。

 

「じゃあ…じゃあアタシはどうすりゃいいんだ!?どうやったらアタシは救われるっていうんだよ!?」

 

 半分涙声で叫ぶクリス。

 そんな彼女をそっと大和は抱きしめる

 

「………ごめん、言い過ぎた」

「何だよソレェ!じゃあ、最初から言うなよ!どうすればいいんだよぉ!?」

「ごめん、俺にも分からない」

「………んだよ、ソレ」

 

 

 

「………もういいや、何もかも」

 

 ぽつりと、クリスは蚊の鳴くような声で零した。

 

 フィーネに捨てられた彼女には何もない。

 金も帰る場所も、生きる為の術も今の彼女にはない。

 なら、やれることは一つ。

 

「アンタ、アタシを買ったんだろ?じゃあ、最後まで責任持ってくれよ」

 

 クリスは、繋がりの証拠を求めた。

 人との繋がりを意識出来るものが、今の彼女は無性に欲しかった。‬

 失ったものも、奪われたものも、全部忘れる程の強烈な繋がりを。

 




なんかフィーネとクリスって共依存みたいになってると思うんですよね。
フィーネは悪人を演じて、クリスはソレに支配れる自分を演じて。この歪んだ関係を維持するために痛みを与えるっていう手段を使ってるように自分は見えました。
そういう意味では痛みこそ人を繋げる絆とフィーネがいったのは強ち嘘じゃないと思う。
まあ、クリスの場合はどんな形でもいいから確かなつながりを求めた結果、そうなったと思いますが。
形になる繋がり。人との繋がりを意識出来るものがただ欲しかった。‬
だからこの時期は別の意味の繋がりにもシンフォギア女子で一番依存しそうだとは思いますが。
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