ブラッド族三男坊の道楽記   作:大枝豆もやし

16 / 29
クリスが主張していた戦いを世界から失くす方法ってフィーネに吹き込まれたんですよね。
なら、クリスを捨てる際にその方法では新たな争いを生むだけで止めることは出来ないってわざわざ言う必要なくね?
テメーが言っておいて後から否定するってよく主人公に最後は倒されるゲスキャラが『お前は俺に騙されてたんだよ!』って言うシーンと同じじゃない? 要は追い討ち掛けるってことですよね?
クリスのこと気に入ってたって言う割にはえげつないことするな…。



最終決戦前

 

「やっと現れたか。暇だからこっちから仕掛けようと考えていたとこだぞ」

 

 それなりに広いリビング。

 大和はソファに座ってTVを眺めていた。

 画面には突如現れた謎の塔についてのニュースが流れている。

 

 カ・ディンギル。

 フィーネが月を破壊する為に用意した超巨大ビーム砲。

 遂に原作一期の最終決戦に近付いた証である。

 

「じゃ、手筈通り頼むぜ」

 

 

 

 

「な、なんでこんなところにノイズが!?」

「く、来るな!来るなノイズ共!」

「お父さんお母さん!?」

 

 町が壊されている。

 悲鳴が響き渡っている。

 突如現れたノイズによって。

 塔の出現に遅れて各所にノイズが出現。

 複数同時、しかも人口が密集している地点に。

 突然のことに町の人々はパニックに陥り、碌に避難出来なくなった。

 そんな中、一つの影が町を見下ろす。

 

「フィーネめ、遂になりふり構わなくなったか」

 

 風鳴訃堂。

 彼は懐から何かを取り出し、腰に押し当てる。

 

『スクラッシュドライバー!』

 

 ドライバーからベルトが巻かれ、腰に装着。

 また懐からボトル取り出し、軽く振ってキャップを開ける。

 

『デンジャー!』

 

 ボトルをバックルの窪みに装填する。

 バックルから某サメ映画みたいなパニック映画のBGMの様におどろおどろしい音声が流れた。

 

「変身」

 

 バックルのレバーを押す。

 途端、巨大なビーカーと装置―――ケミカライドビルダーが形成され、訃堂はその中に囲まれた。

 ビーカーの中が紫色の液体が満たされ、液体は装甲やスーツとなって訃堂に装着され、鮫の顎のようなものがビーカーを噛み砕き、ノコギリザメの顎を模った装甲―――セルフェイスクラッシャーが頭部を挟むように装着された。

 

『裂ける!喰われる!引き裂かれる!ソーシャークインローグ!オーラァ! キャー!』

 

 変身完了。

 女性の悲鳴のようなSEがその合図。

 仮面ライダーローグ。

 ドゥゼスとの取引で彼が手にした力である。

 

 風鳴訃堂は日本でドゥゼスに様々な援助を行ってきた。

 金、物件、組織、法的手続、等等枚挙に暇は無い。

 ドゥゼスも彼に恩を返してきたが、中でも特に素晴らしいものがこのドライバーである。

 

 訃堂はこのドライバーで国に仇名す物を始末してきた。

 ノイズを、自国の売国奴を、他国のスパイを、等等…。

 文字通り護国の鬼となって様々な敵を屠って来た。

 

 彼はこれからも戦う。

 護国の鬼となって。

 

「下賤なノイズ風情がこの国に踏み入れるなど許すまじ!」

 

 鮫の牙を模して、鋸と日本刀を掛け合わした武器、ソーセイバー。

 彼はソレを右手に構えてノイズに突撃した。

 

 

 

「やれやれ、ドゥゼス………いや、大和さんの言う通りになってしまいましたね」

 

 また別のノイズ襲撃地点。

 眼鏡をかけ、白衣を着た男が銃のようなもの―――トランスチームガンを構えていた。

 彼の名はウェル。アメリカの聖遺物研究機関F.I.S.の研究者である。

 

「まったく、彼も人使いが荒い」

『バット』

 

 そういう言いながら懐からボトルを取り出し、軽く振った後にキャップを開けてトランスチームガンに装填。

 トランスチームガンから暗い感じの音声が鳴る。

 

「蒸血」

『ミストマッチ!』

 

 ウェルは銃口を上に向けて引き金を引いた。

 途端、黒い煙のようなものが銃口から溢れ出る。

 ソレはウェルの姿を完全に覆い隠した。

 

『バット…バット…ファイア!』

 

 煙から火花が飛び散る。

 中から黄色い蝙蝠のようなマークが光る。

 やがて煙が晴れてその姿を顕した。

 

「では行きますよ。…ナイトローグ!目標をせん滅する!」

 

 ナイトローグ。

 彼はトランスチームガンと剣型の武器―――スチームブレードを構えた。

 

「なにカッコ付けてるデス?さっさといくデスよ!」

「事前に変身すればいいのに。面倒くさい」

「早くやらないと犠牲者が増えるわ!」

 

 決めポーズを取っているナイトローグをF.I.S.のシンフォギア奏者たちが通り過ぎて行く。

 マリア・カデンツァヴナ・イヴとセレナ・カデンツァヴナ・イヴの姉妹、暁切歌と月読調。

 彼女達はすぐさまノイズ殲滅と避難救助に取り掛かった。

 

「ちょっと、私の活躍する分も残しておきなさい!」

『ライフルモード!』

 

 ナイトローグはトランスチームガンとスチームブレードを合体させてライフルモードに切り替えながら後に続いた。

 

 

 

「またこうして翼と一緒に戦えるなんてね」

「ああ、昔に戻った気分だ!」

 

 またまた別のノイズ出現地点。

 翼と奏のツヴァイウィングがノイズをせん滅しつつ救助活動を行ってた。

 

「しっかし大和さん…いや、ドゥゼスって凄ぇな!このシンフォギアライダーっての、」

ガングニールよりも使いやすいじゃねえか!」

 

 シンフォギアアームズである槍を振り回しながら、嬉しそうに言う奏。

 厳密に言えば、彼女が纏っているシンフォギアはガングニールではない。

 動力源はガングニールから抽出したボトルであり、シンフォギアシステムをライダーシステムで補完している。

 これによって本来適合率が低い彼女でも副作用もデメリットも無く使えるようになった。

 

「私はこれかな?この空飛ぶバイクがいい!」

 

 マシンゼウサー。

 可変型の黒いバイク。(クラウド)ボトルを装填することで飛行モードに切り替えられる。

 バイク好きの翼の為にドゥゼスがオーダーメイドしたものだ。

 

「(………ああ、いい気分だ)」

 

 もう一度だけ戦いたい。

 思う存分に歌ってみたい。

 またシンフォギアを纏いたい。

 過去や憎しみにケジメを付けたい。

 それら全てが、奏の望みが今夜だけ叶った。

 

 二人は楽しんでいた。

 再び一緒に戦えるこの時を。

 本来なら二度と来ない筈の瞬間。

 万全の状態で、万全の装備で、思う存分に。

 ツヴァイウィングは文字通り空へと羽ばたいていた。

 

 

 

「向こうは楽しんでますね~」

「まあ、私たちは特に思い入れとか無いからね」

「むしろ面倒臭いぜ。ドゥゼスなら一瞬で終わるんじゃねえの?」

 

 ツヴァイウィングの様子を眺めながら、響と未来とクリスの三人はノイズと戦っていた。

 地球上ではなく外宇宙の聖遺物によって作られたシンフォギア。

 原作の彼女たちのシンフォギアと外見も性能もあまり変わらない。

 

「結局イチイバルと変わりねえじゃん。アタシも雷操ったりとかして見たかったのに」

「いや、あんなにポンポン複数の能力使えるのは大和さんだけだよ」

「そうそう、あの人の頭は私たち地球人と違うから」

 

 口を動かしながらも、ちゃんとノイズを倒しながら避難民を救助していく。

 こうして、ノイズの被害は最小限に抑えられた。

 シンフォギア奏者と仮面ライダー達によって。

 

 

 

 

 

 

「(思っていた以上に被害が少ないわね)」

 

 カ・ディンギルの根本。

 フィーネは調整を行いながらノイズの被害具合をモニター越しに眺めてた。

 

 ゼウスを足止めするためにばら撒いたノイズ達。

 カ・ディンギルが完成する前にゼウスが来ないよう妨害工作としてノイズをランダムに、しかも人口の多い地点に出没させた。

 ノイズ殲滅より人命救助を優先するあのお人よしの女好きの事だから効くだろうとフィーネは考えていたが、予想外の事態となった。

 ゼウス以外の者たちまでノイズ駆除と人命救助を行っている。

 二課の邪魔が入るのは予想していたが、まさか海外のシンフォギア奏者や謎の勢力まで出てくるとは想像すらしていなかった。

 だが、ゼウスの足止めには成功している。なら問題はない。

 

「遂に…遂に完成したわ!」

 

 カ・ディンギルの調整が終わった。

 既にデュランダルは起動しており、無尽蔵のエネルギーをいつでも打てる状態。

 射角も砲台も完璧。弾も十分。既に何度もシミュレーションしている。問題ない。

 後は邪魔者さえ、イレギュラーさえ起きなければ目的は達成される。

 

「遂に…遂にこの時が来た!」

 

 歓喜に声が、全身が震える。

 やっとだ、やっと願いが叶う。

 何度も何度も夢見続け、何千年もかけた願いが。

 

 この時のために全てを賭けてきた。

 何もかも捨てて、罪を重ねてきた。

 今日こそ終わる。やっと報われる。

 月を破壊してあの人に再び会える。

 今日、この日、この瞬間に!

 

「さあ、月を破壊しなさい!」

 

 カ・ディンギルからエネルギーが溢れる。

 ソレが撃ち出されようとした途端、ブラックホールが発生した。

 

「………………………は?」

 

 突然のことでフリーズするフィーネ。

 如何に頭脳明晰な彼女でも、いや彼女だからこそ、理解が及ばない。

 そうしている間にブラックホールはどんどん成長していく。

 デュランダルのエネルギーを吸収し、カ・ディンギルを呑み込みながら。

 

「………めて」

 

 やっと声が出た。

 蚊が鳴くような小さな声。

 しかしその小さな声を聴く者はいない。

 ブラックホールはエネルギーを吸収していく。

 

「…やめて」

 

 ハッキリと言葉に出せた。

 弱弱しい手弱女のような声。

 しかしその小さな声を聴く者はいない。

 ブラックホールはエネルギーを吸収していく。

 

「やめてええええええええええええ!!!」

 

 大声で叫ぶ。

 ヒステリックを発症したような大音量の金切声。

 しかしその小さな声を聴く者はいない。

 ブラックホールはエネルギーを吸収していく。

 

 

 パン!

 

 

 手を叩く音と同時、世界の時間が止まる。

 フィーネも、ノイズも、空気の流れも。

 どんどん巨大化していくブラックホールと、この現象を起こした者の正体を除いて、全ての時が止まった。

 

「やっとこの時が来た。そんなに長く待ってないけどな。大体十年ぐらいだっけ?」

 

 こつり、こつり。

 靴音を立て姿を顕す大和(ドゥゼス)

 同時、ブラックホールは急速に収縮。

 一つの箱―――パンドラボックスとなってドゥゼスの元へと瞬間移動した。

 

 パンドラボックスに手を翳す。

 途端、箱に変化が生じた。

 幾何学的な紋章や文字を周囲に映し出し、書き換えられるかのように形を変えていく。

 箱自身も様々な形に何度も変形を繰り返していく。

 周囲にエネルギー波が漏れ出し、収束と増幅と拡散を繰り返していく。

 

「遂に完成だ…!」

 

 一体どれ程経ったか。

 いや、時が流れないこの空間で時間の概念など無意味。

 今言える事は一つ、もう時間を止める必要は無くなったという事だ。

 

 時間の流れが戻る。

 自分の形を思い出したかのように散る雲と、動き方を思い出したかのように流れだす大気。

 その中でドゥゼスはパンドラボックスに手を突っ込み、中からドライバーを取り出した。

 

 オリジナルのドゥゼスドライバー。

 かつて、キルバスによって破壊された筈のソレが、新品同様になって復活していた。

 

「!? ぜ…ゼウスゥ!!!」

 

 フィーネから見て、突如目の前に現れたドゥゼス。

 彼女はクリスにすら見せなかったような鬼の形相で怨敵を睨みつけ、地獄の底から響くような声で怒鳴った。

 

「おお怖い怖い。けど、無意味だ」

『ドゥゼスドライバー!』

 

 ドライバーから音声が鳴る。

 瞬間、凄まじいエネルギーの奔流が起こった。

 大気が震え、地面が揺れる。

 ソレによって激怒しているフィーネでさえ顔を腕で覆い、その場を踏ん張るしかなかった。

 

『グリフィス!グリフィス!ドゥゼスグリフィス!フハハハハハハ!』

 

 ドゥゼスの高笑いのような音声がドライバーから流れ、その姿を再び現した。

 今度は前回のような一時的なものではない。

 正真正銘の、本当の復活だ。

 

「今日がお前の命日だ」

「………!」

 

 生物しての圧倒的な格。

 本能でソレを感じたフィーネは、怒りを一瞬忘れて下がってしまった。

 

 




・パンドラボックス(偽)
ドゥゼスが復活の為に造りだした劣化版パンドラボックス。
ドライバーを修復するために作ったものなので本来のパンドラボックスのような便利機能は無い。
エネルギー制御装置と偽って保管庫に厳重に封印されていたが、フィーネがこの存在をつき止めカ・ディンギルの制御装置に利用。しかし逆に利用されることになった。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。