ブラッド族三男坊の道楽記   作:大枝豆もやし

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今思えばフィーネって大悪党ですよね。
確かに動機は愛する人に会いたいっていう乙女チックなものですが、犠牲者や巻き込まれた人からすればしたこっちゃありません。むしろ誰かの愛する人を奪ってお前だけ報わるなんて許さないって思うのが普通でしょ。
犠何より血と罪で汚れたsの腕で愛する人を抱きしめる資格があるのかって問いたくなります。
要は愛があっても許されると思うなってことです。


一期終了

 

「ゼウスゥぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

 

 フィーネが動き出した。

 鬼の形相を浮かべながら、鎌のようなナイフを取り出す。

 アダマスの鎌。時間の神クロノスの武器であった聖遺物。

 完全聖遺物であるソレの能力は時間の一時的な操作。

 フィーネはこれでドゥゼスの時間停止を無力化させようとした。

 

 時間停止対策。

 その要であるタキオン粒子の観測は困難を極めたが、フィーネだからこそ仮説にたどり着いた。

 タキオン粒子そのものを機械の類では制御出来ていない。‬

 だというのにコレを観測し、一定の法則まで見つけられるのだからやはり彼女は化け物染みた科学者ということだろう。

 ただ一つ不幸なのは…。

 

「ほう、ソレは時間を操るのか」

「!!? なんで…なんで効いてないんだ!?」

 

 彼女の化け物染みた頭脳でも届かなかったという事だろう。

 世界の時間が止まった中、ドゥゼスとフィーネの二人だけが動いていた。

 しかしそれも一瞬の事。

 すぐさま世界は時間を取り戻して再び動き出す。

 

「ど…どうし、て………」

 

 息絶え絶えのフィーネ。

 彼女は鎌を落としながら膝を付く。

 時間を操るこの聖遺物は所有者の時間、つまり寿命と記憶を削る。

 強力だが相応の代償を必要とすることから最後まで使用を避けていた。

 だが、これを以てしてもドゥゼスには届かなかい。

 

 何故だ、何故効かない。

 まさか、完全聖遺物でさえ無効化する能力でもあるのか。

 

「馬鹿な女だな。ダムの放水で大海の流れを止められるか?」

 

 そういう事だ。

 厳密に言えば、ちゃんと聖遺物は効いている。

 しかしドゥゼスの時間を止める程ではない。

 要は出力不足。ダムの溜め水と地球上の海水では比べものにならない。

 

「じゃ、次はこっちの番だな」

 

 パチンと、指を鳴らす。

 途端に虚空から現れる無数のジッパー。

 開いた中から現れた物を見た瞬間、フィーネは目を見開いた。

 

「………う、噓でしょ」

 

 彼女が見たのは完全聖遺物。

 一つや二つなんてものじゃない。

 大量の、全世界から取り寄せたと錯覚するほど大量の聖遺物。

 一つだけでも強大なソレが、全方向からフィーネを狙っていた。

 

「あまり放っておくと埃被ったり錆付いたりするからな。こうやって使ってやらないとな」

 

 これらの聖遺物は地球の物ではない。

 別の星や文明が作り出した聖遺物。

 ドゥゼスが支配している星々の献上品、或いは戦利品である。

 響や未来に渡したシンフォギアもこれから作られたもの。

 全てドゥゼスの所有物であり、彼の力。

 まあ、全てラーニングしているし、物質操作能力で何時でも作れるから別に必須というわけではないが。

 

「どうだ、俺の玩具(コレクション)は。選ばせてやる、どれが一番いい?」

「あ、あぁ………」

 

 フィーネの腰の力が抜ける。

 ストンと、筋力そのものが奪われたのように。

 

「(………無理)」

 

 彼女は認識してしまった。

 眼前の男は敵では決してないと。

 敵対関係など成立しようがないと。

 今までソレが分からなかったのは、あまりにも大きすぎるから。

 井の中の蛙では大海の巨大さを理解出来ないようなものだと。

 だが、大河の偉大さは理解できる。

 本来なら強大な力である筈の聖遺物を玩具扱い。

 これでやっと大海原の偉大さを思い知った。

 

「なんで…なんでよぉ………?」

 

 心が折れた。

 力では絶対に勝てない。

 かといって逃げることすら出来ない。

 そもそも逃げても無駄。

 今の彼女には、今まで通りの“死に逃げ”が出来ないのだ。

 

「なんで…何で私から………あの人の記憶を奪うのよぉぉぉぉぉぉ!!?」

 

 フィーネがこのような強硬手段に出た理由。

 普段の冷静かつ狡猾な彼女では絶対にありえない行動。

 そうなったのはこの男が彼女から記憶を奪おうとしたせいだ。

 

 前回、仮面ライダーに変身した際に繰り出した必殺技。

 あの時破壊したのはフィーネが纏っていたネシュフタンの鎧ではなく、彼女の記憶だった。

 

 一気に記憶を消去するのではない。

 徐々に、まるで虫に食われるかのようにゆっくりと確実に消えていく

 記憶が消えるのを実感し、全て忘れるんじゃないかという恐怖かから彼女はこのような結果に陥ったのだ。

 

「なかなかいいだろ?お前みたいな遺伝子寄生型生命体にとってはな」

 

 ブラッド族は自他の遺伝子を自在に操れる。

 ドゥゼスはコレを応用。フィーネの遺伝子に干渉して全世界に散らばっている彼女の遺伝子にまで影響を与えた。これで死に逃げしても記憶消去は続行する。

 本来は対同族用の手段。対象の遺伝子を通じて予備の肉体や寄生先に潜む同族を一気に倒すための技である。

 

「なんでよ、なんでこんなことするのよ!?アンタなら一思いに私を殺せるでしょ!?なのに何で…なんでこんな残酷なことするのよぉ!?」

「はぁ?今まで残酷な事してきたくせに、自分の番になると泣き叫ぶのか?」

「~~~~!」

 

 何も言い返せない。

 事実、彼女はこの数千年間、罪を重ね続けてきた。

 ライブ事件もそのうちの一つ。彼女のせいでノイズの犠牲者になったものは多くいる。

 生存者にあたる者が多かったせいで忘れがちだが、彼ら彼女らは間違いなく被害者だ。

 

「何よりも、お前のせいで俺の大事な人が悲惨な目に遭った。許せるわけねえだろ」

 

 響だってこの女の被害者だ。

 この女が初恋を拗らせて暴走した結果、ノイズ事件が起こり、この女が受けるべき非難を響が受ける事になった。

 諸悪の根源はこの女と言ってもいい。

 

「お前の暴走のせいでどれだけ犠牲になった?誰かの大切な人を奪った?直接的だけでな巻き込んだ人もいればどれだけの数になる? そんなお前だけ報われるとかおかしいだろ? 誰かの大事な人を奪った時点でお前は愛する資格を失ったんだよ、お前は]

「黙れ!じゃあどうすればよかったのよ!?どうすればあの人に会えたって言うの!?」

 

 

 

「はあ? ソイツが離れた時点で捨てたって事だろ?お前は要らないってことだよ」

 

 

 

「………………………は?」

 

 ドゥゼスの発言に癇癪気味だったフィーネが停止した。

 その間にドゥゼスは“ちょと力を使って”ぺらを回す。

 

 

「普通離れたら諦めるだろ。叶わない恋だと諦める奴は世の中たくさんいる。なのにお前は無理やりその道理を曲げようとした。関係ない人たちを巻き込み、罪を重ねてまでな。そんな狂ってる女、普通捨てるだろ」

「ふざけるな!そんな簡単に愛が捨てられて溜まるか!そいつらは愛を嘯いているクズ共だ!一緒にするな!」

「嘯いているのはお前だ。愛があれば道理を曲げてもいいと?そんな悍ましいものは愛って言わない。狂気って言うんだよ」

 

 愛に道理など当てはまらない。

 恋愛は人間を馬鹿にしてしまうものだ。

 不倫や三角関係や禁断の恋など、禁止されていても人は愛だの恋だので破るってしまう。有史以来ずっとそうだ。

 そもそも道理や法などは人が社会や集団を維持する為に作った後天的なモノであって、決して正しい愛を定めているわけではない。

 だからちゃんとした恋愛を説いても無駄。そもそもそんなものは存在しない。そう言った意味では愛や恋は狂気と言ってもいいだろう。

 ドゥゼスはソレを知っている。知っている上で言っている。これからの為に。

 

「じゃあお前は会ってどうするつもりだ?問い詰めてどうする?どんな理由があれば納得できる?そのままやり直せると思ってるのか?」

「そ…そんなの会ってみないと分からないじゃない!」

「いいや、分かるね。一回捨てた女がこんな非人道的な手段使って会って来たら普通は引く。そんな女が理由聞いて満足するわけねえだろ」

 

 人は何かあった時理由を求めるが、大半は理由を聞いても納得しない。

 そもそも納得するなら不平不満を最初から言わない。

 ソレでも求めてしまうものだ。

 

「理由を聞いても捨てた事実は変わらないんだぜ? 何度でも言ってやる、お前の想い人はお前を捨てた。お前から去って行った。お前が邪魔だったんだ。どんな理由があってもソレは変わらない」

「黙れ! 黙れ黙れ黙れ!黙れえええええええええええええええええ!!!」

 

 ヒステリックを起こして叫ぶフィーネ。

 髪を振り乱し、顔をかきむしって、涙を流しながら吠えるかのように叫ぶ。

 

「第一、その血と罪で汚れた手でその男を抱きしめられるのか?」

「………………………は?」

 

 ドゥゼスの発言にヒステリックを起こしているフィーネが停止した。

 その間にドゥゼスは“更に力を使って”無理やり話を聞かせる。

 

 

 

「お前の好きな男はどう思うかな?自分が捨てた女がこんな凶行を重ねて来たって知ったら、ソレでもお前を愛してくれるか?」

 

「お前の好きな男はお前がやって来たような事を許すような男だったか?自分の為に誰かを犠牲にして、罪を重ねるような奴に怒りを抱かない薄情な男だったか?」

 

「もう一度聞く。散々血に汚れ、罪を重ねて汚れたその身で、お前は恥じることなくその男に会えるのか?」

 

 

 

「あ…ああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 絶望の表情でフィーネは叫んだ。

 

「やめて…もうやめて………!」

「いいや、やめない。お前は同じことを言ってる人をたくさん犠牲にしてきた。今更許されると思ってるのか?」

 

 フィーネに近付きながらドライバーに手を掛ける。

 トドメを刺す気だ。

 

「だったら…どうしたらよかったのよぉ!?」

「本当にソイツを愛してるなら、もう分かってた筈だろ」

 

 ドュゼスがドライバーのレバーを回す。

 怒りの日(dies irae)ロックアレンジが流れ出す。

 文字通りの鎮魂歌。この曲は彼女の為におくられる。

 

『ドュゼスティックフィニッシュ!アリーベデルチ!』

「じゃあな、亡霊」

 

 撃ち出される破壊のエネルギー。

 黄金の光となって放出されたソレは、フィーネの因子のみを消去。

 櫻井了子の身体と彼女本来の意識は残しまままだった。

 





フィーネが暴走したのってすれ違い的な面が大きいですね。
なんていうかフィーネの為にそうしたとは思うんですが、本当に彼女を想うなら彼女と一緒に逃げるなり何なりするのも良かったと思います。
人類のために戦ったのはいいですけど、その結果フィーネが暴走したので、見方を変えたら
フィーネよりも人類を優先したと言えるかもしれません。
まあ、一期はまだエンキのキャラが定まってなかったと思いますし。

そもそもエンキさん、その世界の人類に愛する女と一緒に生きる道を捨ててまで守る価値無いよ?
フィーネと一緒に外宇宙に逃げるのが良かったんじゃない?
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