ブラッド族三男坊の道楽記   作:大枝豆もやし

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ゼウス様

 

 

「んで、兄と弟の戦いに巻き込まれてブラッド族のいた銀河ごと吹っ飛んじまった上に、巻き込まれた俺も大分弱体化しちまった」

 

 喫茶nascita、エボルトは戦兎たちに話す。

 

「‭‭ほぼ同質同量のエネルギーだから辛うじて太陽系が吹っ飛ぶ程度に収まったが、下手すりゃ地球も巻き込まれていたぞ。まあ、ソレはデュゼスの方が死んでも止めるか」

 

「しっかし兄も弟も怖いのなんの。キルバスの野郎は何考えてるかさっぱりだし‬、ドゥゼスの奴はわざわざ強い星や文明に挑んで力を付けてきやがる。‭どっちも力は俺を含めたブラッド族全員よりもあるんだから誰も逆らえない」

 

「まっ、時空間も無茶苦茶になってるからアイツらがまだ生きてたとしても会うこともねぇだろうがな。‬大半のブラッド族は…いや、ほぼ全滅だな。生きてても違う宇宙に吹っ飛ばされてる」

 

 あ、そうだ、と。

 エボルトは一言区切って振り返る。

 

「ドゥゼスはかなり変わり者だが、お前らにとってはいいかもしれないな。アイツは戦闘狂で進化が異様に早いが、けっこう星や文明を見逃してくれてる。俺も兄弟のよしみってことで他の同族なら練り潰されるところを見逃してもらってるからな」

 

 そのまま練り潰されたらよかったのに。

 エボルト以外はほぼ全員そう思った。

 

 

 

 

 

 

 とある町。

 それなりに活気づいて人が行き交う中中、一人の青年が暇そうに歩いていた。

 その青年は美しかった。

 すらりとした長身に小さな顔。そして服の上からでも僅かに理解できる程よく付いた筋肉。

 ジーパンにジャケットとtシャツといったごく一般的な格好だが、彼が着ることでファッションショーのように見えてしまう。

 あまりの美しさに女性だけでなく男も一瞬足が止まって彼を目線で追いかける。

 

 黒く艶やかな髪。良質なストレートヘアーは光を反射して天使の輪が浮かび上がっている。

 きめ細やかな肌。健康的かつシミ一つない白い肌はまるで新雪のようである。

 宝石のような瞳。紫色のソレは引き込まれるような魅力を醸し出している。

 色気のある雰囲気。年不相応の妖艶なオーラに人々は惹かれた。

 

 彼の名は御門大和。

 この街に最近引っ越してきた無職のプータローである。

 朝遅くに起きて軽く運動した後、着替えて目的地に向かっていた。

 

「いらっしゃいませー」

 

 とあるお好み焼き屋。

 ドアの上部に吊り下げられているベルが来客を知らせる。

 反射的に決まり文句を言う女性の店員。

 振り向いてその顔を見た瞬間、彼女は惚けた顔をした。

 

「あ、大和さんこっちー!」

 

 団体席から2人の少女が声をかける。

 茶髪のショートカットの美少女が立花響、小柄で黒髪の美少女が小日向未来である。

 

「やあ響に未来。待たせたかな?」

「ううん、全然!」

「私たちも今来たところです」

 

 二人は嬉しそうに大和を席に案内する。

 テーブルの上には既にお好み焼きの具があり、大和は早速調理にかかる。

 てきぱきと手を動かす大和。その様子を見て二人はお~、と驚きの声をあげた。

 

「大和さんって料理上手ですね」

「ああ、家事は一通り出来る。………服選び以外はな」

「確かに大和さんは服のセンスは普通ですけど何着ても似合うじゃないですか」

 

 両手に花。美少女二人を左右に侍らせながら食事を楽しむ。

 

「こうやって大和さんとお食事するのも久しぶりですね。中学の頃は大和さんの家でごはん食べていたのに」

「もしかして私たち以外の娘とごはん食べたりして~。ほら、大和さんかっこいいから」

 

 どうやらこの男、この女子高生美少女たち以外にも似たようなことをしているらしい。破廉恥な。

 そんな日常会話をしてると、店のTVからニュースが流れた。

 

『今日もゼウス様がノイズを退治してくださいました!町ではゼウス様への感謝の言葉が溢れています!!』

 

 ニュースキャスターが心酔しきった顔で報道する。

 ゼウス。黒い装甲とインナー、赤いバイザーの鎧を身に纏う謎の戦士。

 彼は突如現れ、迫りくるノイズを瞬く間に撃破。人々を救出していった。

 巷ではそんな彼を讃える声に溢れており、宗教じみた人気になっている。

 

 ノイズ。

 人類を脅かす認定特異災害。

 何もない空間から突然にじみ出るように発生し、人間のみを無作為に大群で襲撃、触れた人間を自分もろとも炭素の塊に変えて破壊してしまう。

 何時、何処で、誰を狙うか。その全てがランダム。何故人を襲うのかすら分かってない。

 しかも、位相差障壁によって物理法則を無視する事が出来る。要するに人間の攻撃が効かないのだ。

 そんな化物を倒せるのだからゼウスが信望されるのは当然である。

 

「へ~、またやったんだゼウス様。けど何で日本しか活動しないの?確かゼウスってギリシャの神様だよね?」

「そうよ響。ゼウスってとても強い神様だけど色んな女の人と子供を作っちゃうとても女好きの神様なの」

「ふ~ん、じゃあゼウス様が日本でしか活動しないのは日本の女の子が可愛いからなのかな?」

「そうかも。だって海外ではゼウス様に助けてもらおうとすっごく可愛い女の子や綺麗な女の人を使って呼びかけてるそうだよ?ゼウス様来てくださいって」

「え、じゃあより取り見取りじゃん。ハーレム出来るなんてう大和さんぐらいだと思ったのに」

「………」

 

 大和は二人の腰を軽く抱き寄せる。

 瞬間、彼女たちは顔を軽く赤らめた。

 

「「ひゃッ!?」

「じゃあ、俺も今晩はそうしようかな?」

「「………うん」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 真夜中、とある高級マンションの一室

 響と未来はキングサイズのベッドで眠っていた。

 疲れ切っているが、幸せそうな顔。

 二人とも何も身に纏っていないが、後からかけられたであろう豪華な掛け布団が彼女たちの魅力的な身体を覆い隠していた。

 

「二人ともぐっすりだな」

 

 大和は彼女達の寝顔を遠くから見て一息ついた後、ベランダの窓を開けて外に出た。 

 

「じゃあ、今日もお仕事しますか」

 

 大和は懐から手の平に収まる程度のボトルを二本取り出し、軽く振った後にボトルの蓋を捻る。

 いつの間にか腰に巻いたベルト。その中心部にある窪みにボトルをセットした。

 

『ケラウノス!』

 

『シンフォギアシステム!』

 

『ベストマッチ!』

 

 軽快な音楽が鳴る。

 音楽に合わせて大和はバックルの横部にあるレバーを回す。

 途端、ベルトから大和の左右にプラモデルのような独特の形をしたフレーム、スナップライドビルダーが現れた。

 

『Are you ready?』

「変身」

 

 スナップライドビルダーが左右同時に大和へ向かって来る。

 ソレは装甲とスーツとなって装着された。

 

『天空と歌姫の支配者!ゼウス!イェーイ!』

 

 変身完了。

 雷雲を連想させる黒い装甲。

 同じく雲のように白いインナースーツ。

 目は燃え盛る炎、或いは脈打つ鮮血のように赤い。

 ゼウスディセンター。

 ソレが今の彼の正式名称であり、世間でゼウス様と呼ばれる戦士の正体である。

 

「じゃ、行くとしますか」

 

 一瞬、ゼウスの身体が光る。

 次の瞬間には、彼の姿は何処にもなかった。

 

 

 

 

 

 

 とある真夜中の町。

 住宅街の広場で異形共〈ノイズ〉がうろついていた。

 化物は獲物を探すも、既に住民は避難済み。

 しかしそれに気づくことなく機械的に人間を探していた。

 

 ノイズから離れた箇所に突如、何もない空間から黒い影が現れた。

 黒い獅子を模した鎧を着装した、一人の戦士。

 彼は屋根の上から化物共を見下ろしている。

 ワープ能力。

 自身を雷や電気に変換することで光速移動を可能にしているのだ。

 

「ノイズ共! 暇してるなら俺と遊んでくれよ!」

『『『?』』』

 

 ノイズは一斉に戦士の方へと視線を向ける。

 もっとも、ノイズに視覚があるのかは疑問だが。

 

「じゃ、ゲームスタートだ!」

 

 

 

 

 

 

「(……多いな)」

 

 民家の屋根の上からノイズを見渡す。

 数は百を優に超えているがこれはほんの一部。視界外を含めたらもっといる。

 

「さて、どれだけいけるか……」

 

 左手と右手を掲げ、その間に電流が流れる。

 エネルギーをチャージしてある程度溜まると、ソレをノイズ目がけて一気に放った。

 命中した地点を中心に電流が破裂。周囲のノイズを一掃した。

 しかしそれでもノイズは大量に残っている。

 

「これはどうだ?」

 

 手をノイズに掲げて電流を放つ。

 今度はチャージなし。

 放たれた雷は一体のノイズに命中して爆発した。

 

「フン、まだこの程度か」

 

 ゼウスは両手を見つめ、グーとパーを繰り返す。

 万全には程遠い。もし彼が完全復活すれば先程の一撃で全てが終わっている。 

 

「それじゃあいくか」

 

 ゼウスは屋根の上から飛び降りる。

 厄介そうなノイズを、手から電気を放って牽制。

 敵が動けない間に予め見つけていた有利そうな場所に潜り込み、手ごろなノイズに蹴りを入れた。

 

『…!?』

 

 バキンと音を立てて消し炭になるノイズ。

 その光景はノイズが脆い存在のように錯覚させる。

 もっとも、脆いのは彼にとっての話だが。

 

 空手の型をベースに他の武術と喧嘩殺法を取り入れた動き。

 技を盗んで昇華させた技術は、周囲の敵を次々と撲殺する。

 

「らぁ!!」

 

 ノイズに手刀を振り下ろす。

 ナメクジのように這って潜り込もうとしたそのノイズを半分に切断した。

 途端、消し炭のように散って逝くノイズの残骸。

 

 振り下ろした手刀の反動を利用し、アッパーを鳥みたいなノイズに食らわせる。

 対象は回転しながら地面に落下。地面に着いた瞬間、風船のように弾けながら灰となって散った。

 

 ナメクジのようなノイズが複数で触手を伸ばして襲い掛かる。

 ゼウスは進みながら触手共を拳の甲で叩き落そうとする。

 真正面からではなく、触手の側面を叩いて逸らす。

 その場を跳躍して跳び蹴りを叩き込み、ナメクジ共を一掃した。

 

 ノイズを殴り飛ばす。

 向かってくる複数のオタマジャクシのようなノイズを続けて五体破壊した。

 

 突っ込んできた人型のようなノイズに回し蹴りを食らわせる。

 タイミングを読んで入ったカウンター気味の蹴り。

 ゼウスの蹴りに突進の威力と蹴りの威力が合わさってノイズを粉砕した。

 

 回し蹴りの威力を利用して後ろ回し蹴りに繋げる。

 横蹴り気味に放たれたソレは、無防備な人型ノイズに命中し。対象を消し炭に変えた。

 

 中国武術の震脚を行いながら拳を突き出す。

 拳は人型ノイズに命中。対象を砕くと同時に、その後ろにいたノイズも吹っ飛ばした。

 拳から放電された電流がノイズ共を焼く。

 

 それからもノイズ共を殴る。

 電撃を放ち、衝撃波で牽制し、拳と蹴りで叩き潰す。

 そしてある程度数を減らしてから、ゼウスは次の行動に出た。

 

「こっちだノイズ共」

 

 広場から道路に出る。

 一本道がずっと続く、細い道路。

 そこにノイズ共をおびき寄せた。

 

「今日の最終実験だ」

『レディ・ゴー!』

 

 バックルのレバーを回すと軽快な音楽と共にエネルギーがチャージされる。

 ゼウスは両腕を交差させてソレを溜め…。

 

「ハァァァァァァァ……」

 

 呼吸に合わせてエネルギーが集まる。

 黒い両腕が金色に光り、バチバチと音を立て始めた。

 ソレを全て右腕に移しながら、右の腰を後ろに引く。

 やがてエネルギーが臨界点に高まったところで……。

 

「ハァ!」

『エレクトリックフィニッシュ!』

 

 右腕を突き出した。

 瞬間、右拳から吐き出される雷の奔流。

 踏ん張って腰を安定させ、ブレないように右腕を左手で支える。

 凄まじい雷鳴が辺り一帯に響き、ノイズ共を呑み込む。

 やがて雷鳴が鳴りやむと、そこには何もいなかった。

 

「さ、帰るか」

 

 来た時同様に瞬間移動する。

 主役と敵役がいなくなった舞台。

 そこには破壊され尽くした跡しかなかった。

 

「これで終了。じゃ」




次からはまた時間が少し飛んで地球にたどり着いたお話になります。
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