シェム・ハはフィーネによって圧倒された。
攻撃は彼女がほぼ担っている
憎悪と狂愛による急激なハザードレベルの上昇。
初期スペックから逸脱した性能を発揮してシェム・ハを蹂躙した。
その際の様は正しく鬼。
狂愛の鬼に相応しい相貌であった。
五千年もの暗躍やその努力が無駄と知り、ゴールであった筈の愛する者が既に奪われたと知った。
最初から無意味だった。むしろ愛する者が命と引き換えに残した物を壊そうとしていた。
台無しにするところだった。愛する人の想いを、この五千年間の愛を。
全てこの女のせい。だから、今までの分を、全てをぶつける。
狂愛、憎悪、激情、後悔、悲哀、孤独、自責、罪悪感…。
様々な感情が坩堝となり、その全てを存分に吐露する。
最早その様は愛と諸々の感情による暴走。
しかしソレも仕方ない。なにせ5000年分の感情が一気に暴れ出しているのだ。
もう手が付けられない。愛の狂人は全てを出し切るまで暴走した。
「ば、馬鹿な…。何故、繋がら…ない!?」
猛攻の中、シェム・ハは困惑する。
フィーネが喚きながら攻撃するが、ソレすら構う余裕は彼女にはなかった。
力ある言葉が使えない。
同族たちをも超える彼女の埒外物理学によって編み出されたプログラム。
言葉によって存在の構築式を書き換える万能に近い力。
要は存在そのものへのハッキング。
正しく神の所業ともいえる技術。
なのに今は使えなかった。
訳が分からない。
本来ならあり得ないのだ。
復活した時点で並行世界の自分と繋がり、あらゆるダメージを軽減できる筈。
たとえ眼前の敵が何かしようとも、その全てを無効化出来る筈だ。
なのに何故ソレが出来ない。
おかしい。
理解不能。
こんな不条理、あっていい筈が無い!
『存在の書き換えか。まあ、似たようなことは出来るがエネルギー結構食うからな。ソレに、永続的な存在書き換えはメンテナンスが面倒くさい。お前はどうなんだ?』
「!?」
突如、シェム・ハの頭の中に声が響いた。
聞いたことのない声だというのに、ソレが少し離れた場で眺めている成金の金時計みたいな色合いの鎧姿のものだと彼女は認識した。
『お前の力は非情に魅力的だ。誇っていいぞ、この俺がここ最近欲しいと思えた能力はなかったからな。おかげで星喰いばっかりだ』
星喰い。
その単語にシェム・ハは反応した。
該当するワードは一つしかない。
中でも圧倒的な力を持つ存在。
「貴様…キルバス!?」
如何に星喰いの一族でも、並の者なら対処できる。
他のアヌンナキ共を軽く凌ぐ力を持つ彼女ならば。
しかし、この力を以てしても、どうしても勝てないと思える存在がいる。
ブラッド星人の王、宇宙の破壊者キルバス。この存在だけはどうしようもなかった。
『残念、その弟のドゥゼスだ。まぁ、俺みたいなガキのことなんてババアのお前が知るわけないか』
デュゼスがバックルのレバーを回し、必殺技の準備に入る。
ロックアレンジされたモーツァルトの『怒りの日』が流れ出す。
『レディゴー! アルティメットフィニッシュ!』
放たれる一撃。
砲撃やミサイル…否、超巨大隕石のような飛び蹴り。
シェム・ハに命中したソレは、彼女の繋がりを通してその全てを撃破。
彼女の全てを破壊しながら吸収し、その全てを凌辱して己の物へと変えていった。
「馬…鹿な。こんな、ことが…」
人間の遙か上位種のアヌンナキ。
中でも強大な力を誇り、相打ちとはいえたった一人で同胞の部隊を全滅させたシェム・ハ。
埒外物理学を極め、力あつ言葉を開発し、存在そのものをハッキングするという偉業を為した彼女。
だというのに、シェム・ハは敗北した。
原作ならあり得ない展開。
どれだけ戦力を投入しようとも、彼女には届かない。
そもそも地球人とは次元が違うのだ。戦いそのものが成立しない。
しかし、ここに例外がいた。
宇宙の支配者ドゥゼス。
宇宙の破壊者キルバスと対を為す存在。
如何に彼女が強大でも、特異な能力があっても、彼には届かなかった。
「ラスボス討伐完了。帰るか」
あっけらかんと、ゲームの強めのボスでも倒したかのような様子で彼は言った。
「結局、彼女がほぼ全部やってくれたね」
「そうだな。俺も必殺技以外手を出さなかったし」
地球に戻り、変身を解く二人。
「結局、フィーネは自死を選んだか。彼女らしい」
あの後、フィーネは死んだ。
最初から彼女は長く生きられなかった。
大部分の因子を破壊して、残ったもので再構築された存在。
真実を知らせ、復活の協力をさせる為だけに生かした。
ドゥゼスは元から彼女を生かすつもりはなかった。
しかしソレで良かった。
フィーネ自身生きるつもりはなかった。
愛する人と再開する為だけに五千年間を捧げた。
ソレが無意味だと分かってしまった以上、生きる意味が無くなってしまった。
シェム・ハを潰したのはケジメのようなもの。
意味が無くなったとはいえ、ソレで納得出来るわけではない。
今まで五千年間、溜めに溜めたもの全てを吐き出す事で人生の区切りを付けようとした。
そして、贖罪の意味もあった。
そもそも、本来の彼女はそんな性悪ではない。
非情かつ冷徹かつ卑劣な手段を取って来たのはソレしか方法がなかったから。
出来るというだけで必要でなけれな、他に手段があれば困難でもそっちを選択する。
「今憶えば、悪役っぽい言動も自分を騙す為だったのかもな」
フィーネの因子を消しながらドゥゼスは独り言を零す。
二課にいた時こそ素の彼女だったかもしれない。
「ま、俺には関係ないか」
最初から最後までほぼ敵対関係。最後にほんの少しだけ手を貸したが、ソレも利害が一致しただけ。
シンフォギア女子の中で、最後まで彼のモノにはならなかった。なら用はない。
「ソレよりも外国への対処だな。連中核を撃って来たやがった。このケジメはしっかりととってもらわないとな」
本当はドゥゼスが撃つよう小細工を仕掛けたのだが、そこはどうでもいい。
反応兵器を使ったという事実が大事なのであり、その過程は問題じゃない。
これで思いっきり力を行使できる。
「(シンフォギア女子の攻略、原作の完遂もクリア。ここからはエクストラステージだ)」
以前、私はフィーネをボロクソに貶しましたが、別に彼女が嫌いなわけではありません。
彼女の狂愛ともいえる愛の大きさは十分魅力的ですし、ビジュアルも相まって可愛いと思ってます。
ただ、だからといって全て受け入れられるわけじゃないんですよね。
他の男キャラ、ウェルやアダムや妖怪ジジイは作中でも何かしら言われてるのに、彼女はそういったことがないのがもやっと来ました。
なんていうか、やっぱ美女美少女キャラは全て許されて、野郎は何かしら言われるんだなって穿って考え、思った事を吐きだした結果こうなりました。
フィーネファンの皆様方、申し訳ございません。