主人公は自分の目的の為にペラ回してます。こいつにとって言葉は道具に過ぎませんし、実際はあまり彼女たちの事情に興味ありません。そのためちょくちょく嘘もつきます。
「そうか、またゼウスが出たか」
特異災害対策機動部二課本部。
風鳴弦十郎は受けた報告に対して眉間にしわを寄せた。
数日から急激に増えているノイズ災害とその討伐、そしてゼウスの出現について。
「相変わらず突然現れますねゼウスは」
ゼウスディセンター。
数年程前から突如現れたシンフォギアに類似する技術を扱う戦士。
目的は不明。テレビなどにひょっこり現れてアイドルや女優をナンパすることから、気さくなキャラクターとして民衆に受け入られている。
だが政府はコレを人気取りとして警戒。実際にゼウスが与える影響は大きく、現に二課は痛い目を見ている。
「やはり彼は………私たちに恨みがあってしたのでしょうか?」
「解らん。だが、もしそうであるなら、きっと俺達に原因があるのだろう」
・・・・・・・・・・二年前
「しっかりしろ! 生きるのを諦めるな!」
地獄の中、シンフォギア奏者が叫ぶ。
天羽奏。歓声が悲鳴と化したライブ会場。
突如現れたノイズによる大量虐殺。後にライブ事件と呼ばれる惨劇。
そんな中で彼女は一人の少女を庇っていた。
絶望的な状況。
自身の命すら危うい。否、生きて帰るのは不可能だろう。
だったら、最後くらい派手に行ってもいいか。
絶唱。命を代償に発動する絶大な力。
コレでこの子だけでも…。
「………一度、思いっきり歌ってみたかったんだよな」
「はぁ?ふざけんな。生きるのを諦めるなって言っておきながら、その苦痛をソイツに押し付ける気か?」
バチバチバチィ!
雷鳴と共に何者かが舞い降りる。
稲妻を纏い、雷光を従えて。
着地と同時に周囲のノイズたちを焼き払った。
「お…お前は!?」
雷が晴れてその姿を現す。
暗雲のような黒い装甲に雲のように白いインナー。
ゼウスディセンター。シンフォギア以外で異端技術を扱い、ノイズを圧倒できる存在である。
「すぅ~………」
息を吸う動作をするゼウス。
風が彼の周囲に纏わりつき、音の拡散性を高める。
同時に風と雷を操ってノイズを切り裂き焼き払う。
手は一切止めないつもりのようだ。
「もう大丈夫だ!この俺、ゼウスが来た!ノイズ共は一匹残らず駆除してやる!」
雷鳴よりも更に響くような大声。
ソレはコンサート会場だけでなく、更にその向こうまで響き渡る。
彼の宣言は、輝く雷光は、吹き荒れる暴風は。会場で逃げ惑う観客たちに希望を見出した。
「そ、そうだ!ゼウスがいるんだ!」
「私たちは助かるのよね!?ノイズを全部やっつけてくれるんだよね!?」
「助かったんだ、俺らは助かったんだ!」
途端に希望を見出す観客たち。
彼らにゼウスの姿は見えない。遠すぎて見えないのだ。
しかし天から降り注ぐ雷光が、吹き荒れる暴風が、そして力強いゼウスの声が、彼の存在を証明していた。
「観客共!テメエらはお行儀よく避難しながら俺の活躍を楽しみにしてな!」
宣言すると同時に雷が落ちる。
ソレは観客たちを巻き込むことなく、観客を狙おうとしていたノイズに命中。
ステージ上であることも相まって、その派手なパフォーマンスのような迎撃に観客は歓声を上げた。
「こ、こんなことが…」
奏は呆然と眺める事しか出来なかった。
体力が限界でシンフォギアを保っていられるのもやっとな状態だから…というだけではなかった。
次々と容易く撃墜されるノイズ。
自分たちがあんなに必死になっていたのを、まるで虫ケラでも踏み潰すかのように駆除していった。
湧き上がる観客の声。
先程までは自分たちに向けられ、次にノイズへの恐怖の悲鳴となったものが、ゼウスへの歓声となった。
落ち着いていく混乱。
我先にと他者を蹴落としてでも生きようと阿鼻叫喚と化していた観客たちが、冷静さを取り戻していった。
何だ、何なんだこの差は。
自分たちが、シンフォギア奏者が出来なかった事が。
かつての自分が、必死に努力した今の自分が、ずっと出来なかったことが。
何故ポっと出のコイツがこんな易々と出来る!?
「しっかしこんな人が集まるタイミングで、都合悪く大量のノイズが出たな!いつもはそういうの無関心なのに!もしかしてノイズ共もアイドルのお歌に引き寄せられたのか!?じゃあお行儀良くしな!」
家族を奪われた。
コイツが容易く倒しているノイズから。
血の滲む努力をしてきた。
コイツが容易く倒しているノイズを倒す為に。
全てをシンフォギアにかけた。
コイツが容易く出来てたことがソレでも出来ない!
軽口をたたきながら、軽薄な態度で力を振るうコイツが何で!?
「なんでだ…なんでなんだ!」
「おっと」
気が付けば、奏はゼウスに攻撃を仕掛けていた。
アームズギアを発動し、武器である槍で突く。
ゼウスはソレを蚊でも払うかのように腕を振って穂先を弾き飛ばした。
「何でだ、何でお前はそんな簡単に全部掻っ攫う!?そんなに力をアピールしたいか!?私たちを馬鹿にしているのか!?無駄なことだって言いたいのか!?」
武器を振るいながら感情を吐露する奏。
八つ当たりもは甚だしい。見当違いにも程がある。
そんなことは本人がよく分かっているが、それでも言わずにはいられなかった。
「いつもいつも上から見下しやがって!そんなに強いんならお前が全部やりゃいいじゃねえか!」
当たらない。
当然だ、彼女の攻撃は子供の癇癪のようなもの。
格上であるゼウスに通じる筈が無い。
だからこうしてあっさりと迎撃される。
奏の槍撃を受け流す。
突き出された槍の穂先に手を添え、一気に加重することで相手のバランスを崩す。同時に、自身の方へ引き寄せる。ソレに合わせてカウンター気味に拳を奏の腹に突き出した。
「ッグ!?」
浮き上がる奏の身体。
ゼウスは彼女に追撃を掛ける。
雷を纏う右拳と風を纏う左拳。
交互にラッシュを繰り出して、彼女を追い詰めた。
「ぐはあッ!?」
最後の一撃で吹っ飛ばされる奏。
ただでさえノイズとの戦闘で限界が近かったのだ。そこに雷による痺れとダメージによって、もう動けなくなった。
「さっきから聞いてりゃ好き勝手言いやがって。大体この事態はテメエらが引き起こした事だろ。なのにさっきは説教臭くあの子になんてほざいた?」
「な、何を………?」
倒れている奏を見下しながら、バックルのレバーを回すゼウス。
軽快な音楽が鳴り、ゼウスの右足にエネルギーが集中する。
「生きるのを諦めるな?ふざけんな。何も知らない観客を集め、こんなテロ起こしといて、挙句にそんな台詞よく吐けるな?」
「………!」
何も言えない。
実際そうなのだ。
こうなった原因は彼女達二課にある。
だから何も言い返すことが出来なかった。
「テメエは力があるから、対抗できる手段があるから、向かう術も覚悟も無い奴の気持ちが分からねえんだよ。だったらその力、奪ってやるよ」
『レディゴー!エレクトリックフィニッシュ!』
「きゃああああああああ!!?」
ゼウスの蹴りが奏を完全に捉える。
頭を踏みつけてエネルギーを流し込んで爆発を起こす。
彼女のシンフォギアは解除され、鈍い音を立てて砕け散った。
「そ、そんな……私の、私の槍が………!」
奏の視線が
文字通り人生を賭けて手にした力。血反吐を吐いてまで手を伸ばして手に取った力。
ソレが今、粉々に砕かれ否定された。
奏の生きるのを諦めるなという台詞に私は引っ掛かりを覚えました。
言った後にヒロアカのオールマイトみたいに希望見出すのならまだわかりますが、自己犠牲したせいで『アンタが生きるのを諦めてるじゃん』って思ってしまいました。
で、諦めなかった結果、生き残った人たちはあんな目に遭ったわけで。
私は以上の事から奏の言葉が呪いのように思えました。
皆さんはどうです?