ブラッド族三男坊の道楽記   作:大枝豆もやし

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シンフォギア奏者って防人になり得るのですかね?
正体や存在を伏せるのは仕方ないと思います。
可愛い女の子しかもアイドルが戦うって英雄的側面は屈強な男がやるより支持を得て民衆への安心感もかなり大きいと思います。
そもそも民衆に隠してる時点で民衆を守れないと思うんですよね。だって最前線で逃げ遅れた人を避難誘導したり、ノイズに襲われる直前の人助けたりするなら、姿見せなくちゃいけないもん。なのに今までどうやって防人として活動出来たんだ?情報統制したり口止めするのにも限界があるぞ。
以上のことからシンフォギア奏者は民衆を守る盾よりも、ノイズを壊す剣としての役目を選んだと思ってますけど、ソレも仕方ないと思います。だってあの民度低い世界だとシンフォギア奏者を叩きそうだもん。ノイズ被害を減らせない役立たずだと。
だから正体や存在隠すのは無難な判断だとは思います。
皆さんはどう思います?




奏の絶望

 

「ガング、ニール…!私の…私のシンフォギアが………!」

 

 砕け散った残骸(シンフォギアだったもの)をかき集めよとする奏。

 上手く動けないのか、這いずるようにしながら残骸へと手を伸ばす。

 そんな時だった、彼女の頭部スレスレに閃光が横切ったのは。

 

「ッヒ!?」

 

 反射的に身を竦める奏。

 今の彼女はシンフォギア奏者でも何でもない。

 無力なただの女だ。

 

「!? 奏!?………よくも!」

 

 駆け付けたツヴァイウィングの片割れ、風鳴翼がゼウスに斬りかかる。

 背後からの奇襲だというのに、ゼウスは背中に目でもあるかのようにあっさりと避けた。

 

「なんで、なんで攻撃したのよ!?奏は皆の為に戦ってたのに!」

「知らねえよ。攻撃されたんだから反撃するのは当然だろ?」

「今まで反撃してこなかったじゃない!なんで今更!?」

「お前ら俺が反撃しない前提でやってたのかよ!?」

 

 ゼウスの反論と共に蹴りが飛ぶ。

 後ろ回し蹴り。

 頭部を狙った翼の攻撃を回転して避けながら勢いをつけ、腹部に叩き込んだ。

 

「きゃあ!?」

 

 たたら踏む翼。

 ソレほどダメージはない。

 未だ戦える。…戦意さえ保っていれば。

 

「まあ、強いて言うなら腹が立ってきたのもあるか」

「腹が?何を怒ることがあるのよ?」

「あ?そりゃ怒るだろ」

 

 

「テメエら防人とか護るとかほざく癖に、何も守ってねえじゃん」

 

 

「………え?」

 

 ゼウスの発言に手が止まる翼。

 そんな彼女に構うことなくゼウスはまくし立て上げる。

 

 

「俺が何の為にこんなキャラ演じて大衆の前に出てると思ってる?大衆を安心させるためだ。女好きを演じて隙を見せ、いざとなれば女を用意すればいいと思わせる。これだけで民衆は大きな安心感を得られるってわけだ」

 

「何故お前らは顔を出さない?可憐な少女、しかもトップアイドルが戦うとなれば庇護欲も刺激出来て安心感と支持の得はただ強いだけの俺と比較にならない筈だ」

 

「当ててやるよ、お前らはノイズを壊す兵器であって、人を守る為の組織じゃねえんだよ」

 

 

 

「………は?何を言ってるの?そんなわけないじゃない!私と、奏は…!」

「その奏が一番ノイズを壊す為に動いてるだろ。だってソイツのやってること、ただの代償行為じゃねえか」

「………代償、行為?」

 

 ビクッと、シンフォギアを解除された奏の身体が震える。

 

「そうだ、代償行為。ノイズを殺すことで家族を殺された憎しみを癒す行為。結局お前らは自分の為に戦ってるんだよ」

「違う!奏はノイズから皆を守って来た!これ以上悲劇を起こさない為に!自分が感じた悲しい思い苦しい思いを誰かに感じさせたくないから!」

 

 千ノ落涙

 

 降り注がれる無数の剣の雨。

 ゼウスは腕を一振りして吹雪を起こし、全て吹き飛ばす。

 極寒の冷気による暴風と、槍のように鋭い氷塊。

 それらは上空の剣を迎撃するだけではなく、飛び掛かろうとしていた翼も吹き飛ばした。

 

 更に追撃を掛けるゼウス。

 雷が、暴風が、吹雪が。同時に翼へと吹き荒れる。

 

「ッグ!?…うぅ………!」

 

 猛攻の前に膝を付く翼。

 そんな彼女を無視して奏の方を向く。

 

「ソレが代償行為だって言ってんだよ。ノイズを潰す事でノイズを克服した気になっている。結果的に救った奴らに自己投影して、家族を無くした虚無感を慰めている」

 

「滑稽だぜ、いくらノイズを潰したところでノイズに家族を殺された事実は消えない。いくら人を救っても家族を救えなかった事実は変わらない。何をしても過去は変えられない」

 

「何も克服できてない。復讐してもソレは天羽奏(お前)の独りよがり。死んだ家族の為にはならない。結局自分を救ってほしいだけだ」

 

「だが断言する。天羽奏(お前)天羽奏(お前)を救えない。事実は変わらない」

 

「なあ聞かせてくれ。復讐と家族を失った喪失感は同じ価値だったか?」

 

 

 

「だ…黙れぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

天ノ逆鱗

 

 空中で投擲したアームドギアを巨大化させ、ゼウスに投擲する。

 ゼウスはソレを易々と受け止める。ここまでは目論見通り。翼は柄の部分を蹴って…。

 

 クルンッ!

 

「!!?」

 

 柄を蹴った瞬間、妙な感覚と衝撃が彼女の身体を襲った。

 まるで彼女自身のアームドギアと蹴りの威力を乱され、一部が跳ね返ったかのような衝撃。

 混乱している間にゼウスは接近し、彼女を蹴り飛ばした。

 

「もし仮に皆を守りたいなら、先ずは色仕掛けでも何でもして俺を引き込むべきだった。無理でも一時休戦などの処置をするべきだった。少なくとも他の奏者はそうしてたぞ」

 

「けどお前たちは違う。俺を敵視して攻撃してきた。その時点で防人として失格。自己救済が目的にすぎなかったんだよ」

 

「もう一度聞く、復讐と家族を失った喪失感は同じ価値だったか?」

 

 返事は返ってこない。

 二人ともぐったりとその場に倒れていた。

 

「…少し強く殴り過ぎたか?まあいい。そろそろお暇する。邪魔者が来る頃だからな」

 

 遠くから人の気配がする。

 おそらく二課の連中が以上を察知してきたのだろう。なら長居は不要だ。

 

「じゃ、アリーヴェデルチ」

 

 ゼウスが雷を纏い、次の瞬間に雷光が消える。

 その時にはもう彼の姿はなかった。

 

 

 

 

 

「(あれ以来、奏くんは変わった)」

 

 修復不可能にまでシンフォギアを破壊された。

 他の聖遺物を試そうとしたが全て適合できず、linkerの作用も受け付けなかった。

 もう天羽奏は戦えない。シンフォギア奏者としての彼女は死んだも同然だった。

 そして何よりも、心が折れてしまった。

 

『もう、戦いたくありません………』

 

 そう答えた彼女の背中は、とても小さく見えた。

 

 

 変わったのは奏だけではない。

 相棒を失った翼は、まるで何かに取り憑かれたかのようにノイズをせん滅しようとしている。

 

『もっと、もっと多くの力が必要だ!奴を…ゼウスを否定する為の力が!』

 

 その様は、まるで護国の鬼である彼女の祖父を連想させた。

 

「ここまで我らを滅茶苦茶にするとは…。いくら何か理由があってもコレは恨むぞ」

 

 ツヴァイウィングはもう羽ばたけない。

 片翼を捥がれ、残った翼も壊れかけている。

 そして何よりも、空を飛ぶこと自体許されていないのだ。

 

“ツヴァイウィング売春行為!?その実態は如何に!?”

 

 弦十郎は忌々しそうにそう書かれてた雑誌記事を破いた。

 どれだけ手を回しても、蛆のように次々と湧いてくる彼女たちのデマ。

 他にも問題は多々ある。彼らも必死だった。

 

「(ゼウス…。もうなんでもいい!どんな代償を払っても!だから彼さえ…彼さえ味方でいてくれたら!)」

 

 藁にも縋る思い。

 神の名を騙るゼウスに救いを求めたくなっているのは、彼も同じだった。

 

 




・エレクトリックフィニッシュ
仮面ライダービルドの必殺技であるボルテニックフィニッシュのゼウスver。
電撃のようなエネルギーを纏った蹴り、或いは拳を叩き込む。
これだけなら普通のライダーキックやライダーパンチだが、この技の真骨頂は受けた対象を原子レベルで相手を崩壊させることにある。要はカブトのライダーキック。
また、限定的に一部のみを原子崩壊させることも出来る。
体内の毒素のみを崩壊させたり、変身機能を司るデータを破壊する等、使い方によっては万能に近い。


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