転生したらもっふもふの九尾狐だった件 作:時長凜祢@二次創作主力垢
人ではなくなってしまった彼女が出会ったのは、1体の巨大な竜種だった。
その日、私は9つの尾を持つ狐に生まれた
バタバタ、バタバタと沢山の音が聞こえてくる。
時には焦っているような声が聞こえていて、無機質な電子音も聞こえてくる。
ぼんやりとした視界には、泣きそうな母さん達の顔があって、必死に私の名前を呼んでいるようだった。
だけど、私は母さん達に言葉を返すことができなかった。返せなかった。
何か言おうと口を開いても、言葉は音になることなく消えていく。
ああ、私は死ぬんだな・・・・・・なんて、どこか他人事のように考えていた。
─────・・・・・・そっか。私死んじゃうんだ。大人になることなく、終わっちゃうんだ。
ふんわりとした思考の中で、自身の死期を悟る。もっと生きていたかった。沢山のことを経験したかった。
でも、どうやら私は10歳と言う節目の年で、自身の人生を終えるらしい。
もっと生きたかったなぁ。遠足の自然公園行きたかったし、沢山の自然に触れたかったなぁ。
[確認しました。エクストラスキル【自然操作】獲得・・・成功しました。]
いろんなところを走り回りたかったな。結局、幼稚園の時から小学生の今まで、体育なんてできなかったし、健康で沢山体力があれば、みんなと一緒に遊べたのに。
[確認しました。ユニークスキル【
そう言えば、小学生の時、すごく早く走る男の子いたな。風になってるみたいで羨ましかった。
私も風を浴びながらいろんなところに行ってみたかったな。旅行とか。
[確認しました。エクストラスキル【疾風同化】獲得・・・成功しました。]
なんか、段々体が冷えてきた気がする。薬のせい?それとも死期が近いせい?どっちにせよ、元から冷え性だから余計に寒くなるのは嫌だな・・・・・・。暑くてもすぐに体調が崩れるから好きじゃないけど。
[確認しました。【対熱耐性】、および【対寒耐性】獲得・・・成功しました。対熱耐寒耐性を獲得したことにより【熱変動耐性ex】にスキルが進化しました。]
段々母さん達の声がくぐもって聞こえるようになってきた。視界もほとんど見えないや。
もっと母さん達を見たかったし、母さん達の声も聞きたかったな。
[確認しました。明瞭な視覚と鋭敏な聴覚を持ち合わせている身体を作成します。]
さっきからなんか賑やかな声が聞こえる気がするんだけど、何これ?死ぬ時ってこんな感じなの?
ああ、でも、何も聞こえないまま死ぬよりは何倍もマシな気がする。
わずかに動く思考の中、そんなことを思いながら私は緩やかに目を閉じていく。
母さん達が泣きながら何かを言っているけど、やっぱり聞こえなくて、言葉を返すこともできなかった。
─────・・・・・・ごめんね、母さん。父さん。私はどうやらここまで見たいです。
心の中で謝罪をしながら、私は静かに目を閉じる。
そんな中、私の名前を呼ぶ誰かの声が聞こえてきた。父さんの声でもなければ、母さんの声でもない。
誰だろうと思いながら、うっすらと瞼を開けてみると、そこには1人の男の子がいた。
「ミオ!約束と違うじゃんか!!元気になるんじゃなかったのか!?俺と一緒にいろんなところに出かけたいって言ったのはミオだろ!!」
他の声はくぐもっている様にしか聞こえなかったのに、彼の声だけはよく聞こえた。
そっか。母さんが知らせちゃったんだ。できれば知らせてほしくなかったな。
でも、最後に、伝えたい言葉があったから・・・・・・。
「さとる・・・くん・・・。」
泣きそうな顔をしないでとは言わないよ。だって君は優しい人。仲が良かった幼馴染みのために、沢山の時間をくれた人。
だから、ずっと言いたかった。最後に伝えられてよかった。
「いままで・・・ありが・・・とう・・・・・・。さよ・・・・・・なら・・・・・・。」
「さようならって・・・・・・待って・・・・・・目を閉じないで・・・・・・!!まだまだミオには聞いてほしいことが沢山あるのに!!!」
ボロボロとこぼれ落ちる涙を見つめながら、私はそのまま目を閉じる。
だってすごく眠たいんだ。きっと、もう目を覚ますことはないから、最後に挨拶ができてよかった。
ああ、でも、願わくばどうか・・・・・・
─────・・・・・・もしも、生まれ変わりがあって、また君と会うことができるのであれば、来世こそは健康で長生きすることができる身体で、君と沢山遊びたいな・・・・・・。
[確認しました。各種スキルを持ち合わせた長生きする生き物のデータを検索。照合。データの一致を確認。身体の作成を開始します。]
最後まで聞こえてきた不思議な声に、疑問を抱きながらも私は静かに意識を飛ばす。
神凪澪央と呼ばれていた1人の子供は大切な両親と、大好きな幼馴染みの男の子に看取られて、この世から息を引き取った。
܀ꕤ୭*
・・・・・・不意に意識が浮上する。おかしいな、私はさっき死んだと思ったんだけど、奇跡的に助かったりしたの?
どうして意識が浮上したのかわからず、ゆるりと瞼を開けると、辺り一面にゴツゴツとした岩肌が映り込んだ。
「・・・・・・岩?」
なんで岩がこんなところに?不思議に思いながら体を起こす。しかし、その瞬間自身の視界に入り込んだものを見て、私は言葉を失った。
「・・・・・・は?」
私の視界に映り込んだのはもふもふの毛に覆われたクリームパンのような手。
下に向いている方の面を上に向けてみると、そこには雑誌などでしか見たことがないぷにぷにの肉球があった。
「な、なんじゃこりゃ─────!!?」
まさかの事態に、思わず一昔前のドラマにあったような台詞を口にしてしまう。
え?待って?本当に待って?なんで私の手、もふもふの毛に覆われてるの?なんで人の手じゃないの!?
「ど、どうなって・・・・・・!!」
慌ててその場で辺りを見渡すと、自身の姿が映り込む鉱石が視界に入り込む。
鏡のようになっているそれを見つけた私は、何度か瞬きを繰り返したあと、恐る恐る鉱石に近寄ってみた。
そこにはなんと、超絶美人な狐の姿があり、思わずポカンとしてしまう。
しかし、すぐに鉱石を見つめながら、自身の頭の上に前足を持っていくと、目の前に映る狐も同じ動きをして、そのまま頭上にある耳をちょいちょいと触り始める。
・・・・・・うん。
「わ、私、狐になってるぅ─────!!?」
なんで!?どうして!?なんで私狐になっているんですか!?て言うかなんか尻尾!!尻尾が複数あるように見えるんですが気のせいですよねぇ!?
「と、とにかく、第三者の視点がほしい!!」
自分だけでは把握できる範囲に限度がある。とりあえず、第三者から見てどうなっているのか確かめてもらわないと・・・・・・!!
でも、こんな岩肌だらけの場所で誰に・・・・・・!!
キョロキョロと辺りを見渡しながら、これからの行動を考えていると、不意に、何やらとても強い気配がする場所があることに気がつく。
意識を集中させてみると、私が今いる位置から少しだけ離れたところに、巨大な力の塊のようなものがあることがわかった。
もう少し集中してみると、その力は波のようにこの世界・・・・・・おそらく、洞窟と呼ばれるであろうこの場所に漂っているようで、私は何度か瞬きを繰り返す。
「・・・・・・なんだろう・・・?すごく大きくて怖さすら感じる何かがいる・・・のかな・・・?ちょっと足を運ぶの躊躇いたいところだけど、気配からして何かがいるのは間違いないし・・・。」
状況判断を取るか、逃走を取るか・・・少しだけ考えたのち、私は状況判断を取ることにした。
何というか、自分の毛が逆立ってしまう程の恐ろしさがあるけど、不思議と行っても大丈夫だと思っている自分もいて、かなり変な状態だ。
でも、行く宛など今の私に存在しているはずもなく、てくてくと気配を感じ取る方角へと足を運んだ。
・・・・・・程なくしてたどり着いたのは、洞窟の中でも最奥の方だと思わしき場所だった。
辺りにある鉱石は不思議な光を放っており、洞窟の中を照らしている。
よく見ると、ここら辺には沢山の草も生えているようで、ここだけ岩肌が少ないようだった。
「・・・・・・何ここ?」
『ほぉ・・・・・・?このような場所に仔狐が迷い込んでいるとは、なかなかに珍しいこともあるものだ。』
「びゃ!?」
変な場所だと思いながら辺りを見渡していると、やけに荘厳とも言える声が鼓膜を揺らす。
驚いて声の方へと目を向けてみると、そこにはとんでもない巨体を持ち合わせている存在がいた。
しかも、その存在は絵本などでも度々見かけることがある姿をしており、思わず目を丸くする。
「ほあ〜・・・・・・でっかぁ・・・・・・」
『む?お前・・・・・・我の姿を見ても怯えぬのだな?』
「怯え・・・・・・?」
私の反応を見て、今度は目の前にいる巨大な存在・・・・・・物語などに姿を描かれていることがあるドラゴンと思わしき存在が、珍しいものを見たと言わんばかりの反応を見せてきた。
ドラゴンの言葉に何度か瞬きをした私は、その場で数回首を傾げる。
確かに、力としてはとんでもないし、ハッキリ言ってめちゃくちゃデカすぎて逃げ出したくなる気持ちがなくもないわけだけど、怯えるかどうかと言われたら・・・うん。
「どうして?確かにドラゴンさんはすごく大きいし、私の毛がブワッと逆立つくらいに強力な力を持ち合わせてるけど、怯える程のものかな?」
不思議と私は怯えて逃げると言う感情が浮かんでこなかった。あまりにもデカすぎるからちょっと引き腰になるけど、逃げる程のものじゃない。
それに・・・・・・
「ドラゴンさん、すっごくかっこいいもん。私、ドラゴンなんて初めて見たよ。まぁ、そもそもが私、多分生まれて間もないからね。
怖いよりは大きい。強そう。かっこいい。ドラゴンっているんだ、すごい!って気持ちの方が強いかな?」
素直に自分の思いを告げてみると、目の前のドラゴンはポカンとした表情を少しだけ見せた。
しかし、次第にその表情は間抜けな表情から笑っているような表情になり、三段階で大きくなっていく笑い声を果てには出していた。
『クァ──────ハハハハハハ!!そうかそうか!!かっこいいやすごいと申すか!!愉快愉快、実に愉快!!お前のような小さき者は基本的に我に怯え逃げ惑うばかりで、お前のような肝の据わった小さき者は初めて見たわ!!』
「びゃ!?ちょ、ドラゴンさん!!耳痛い!!私、すごく耳がいいんだからちょっと声抑えてよ!!!」
『む!?おお、すまんすまん!長らく生きてきたが初めての体験だった上、久しぶりに話せる者が現れたため、思わず気がよくなっておったわ!』
あまりにも耳に響く声だったため、シャーッ!!と毛を逆立てながら怒鳴り返すと、ドラゴンさんは驚いたような表情を見せたのち、謝罪の言葉を口にした。
ぺしょっと伏せていた耳を静かに立たせ、ぴるぴると軽く動かす。
・・・・・・元人間のはずなんだけど、すっかりこの体に順応してしまった。
『しかし、我に対して怯えるどころか、怒鳴りつけてくるとはなぁ・・・。これ程までの存在は本当に久々だ。うむ、気に入ったぞ仔狐!』
どこか嬉しげな様子のドラゴンを見上げていると、ドラゴンの鋭い眼差しと自身の目が重なる。
逸らすことなくじっと見つめれば、ドラゴンはますます嬉しそうな表情を見せていた。
『自己紹介がまだであったな。我が名は暴風竜ヴェルドラ。この世に存在している4体のみ存在する“竜種”が1体である。
こうして巡り合ったのも何かの縁だ。しばし、我の話し相手になってもらえるか?』
私の耳を気遣ってか、先程よりボリュームを抑えた声音で、ドラゴンさん改めて、ヴェルドラさんが話し相手になってくれと頼んでくる。
何度か瞬きを繰り返した私は、やることと言ったら食事と睡眠くらいかと思いながら、その場で静かに頷いた。
܀ꕤ୭*
『ほう・・・・・・異世界からの転生者とな?幼いながらに病弱で、外を走り回ることすらできぬまま、そのまま命を落としてしまうとは・・・なんとも不運な一生を過ごしてしまったものだな。』
「うん。正直、私もすごく残念だったよ。沢山走り回って、いろんな経験をして、穏やかな最後を過ごしたかったんだけどね。」
『であろうな。我も同じような立場であれば、似たようなことを考えていたかもしれん。』
「誰だって死にたくはないと思うよ?まぁ、不運な事故とか、私みたいに避けられない終わりを迎える人とか、探してみたらいくらでもいそうな気もするけど。」
自身の後ろにある尻尾をゆらゆらと揺らしながら、ヴェルドラさんと話してどれくらいの時間が経ったのだろう?
この竜種さん、自身の実力に伴った話し方や性格をしているようだけど、意外にもおしゃべりさんで退屈はしなかった。
あと、少しだけわかったことなんだけど、私はどうやらお腹を空かすことがないらしい。
不思議に思い、全然お腹が減らないと首を傾げていると、ヴェルドラさんが話しかけてきた。
『ふむ・・・・・・どうやら仔狐は狐でありながらかなり特殊な存在のようだな。食事を摂る必要性がないようだ。』
「と言うと?」
気になることを言ってきたため、どう言う意味かと聞いてみれば、ヴェルドラさんは丁寧に教えてくれた。
なんでも、私はここに広がっている魔素と呼ばれるものを吸収して生命を繋いでいるようだ。
魔素?と疑問の声をあげてみると、ヴェルドラさんは簡単に言うと辺りを漂うエネルギーで、魔物などの生命活動に使われているものらしい。
それを私は常に吸収しているようで、それがエネルギーとして体を巡り、生命維持に繋がっているのだとか。
『吸収の仕方からして、お前はどうやら自然を操ることができるようだな。そうだな・・・・・・試しにこの場にある魔素を使い、大地の力を使ってみよ。
なぁに、やり方は簡単だ。どのような事象を引き起こしたいかを脳裏に描きながら魔素を吸収し、放出すればいいだけのことよ。』
やってみろと促してくるヴェルドラさんに、一度だけ視線を向けた私は、言われた通り魔素を吸収し、前足を一度だけあげたあと、ある映像を脳裏に描きながら勢いよく大地へと足をおろす。
自身の前足が地面につくと同時に、大きな音が辺りに響き渡り、地面から沢山の尖った岩が突き出ている。
・・・・・・私が脳裏に描いたのは、目の前に広がる大地が鋭利な岩の柱となって隆起し、襲いかかるといったものだ。
その通りの現状が発生してしまい、思わずポカンとしてしまう。
『おお・・・・・・これ程までとはな。』
「え?これ、私の力なの・・・・・・?」
『うむ、その通りだ。いやはや、自然を操る仔狐とは。このようなことになっていなければ、共に世界を漫遊するのも悪くはなかったかもしれんな。』
そう言って笑い声を漏らすヴェルドラさんに、そう言えばと思いながら、問いかける。
あなたはこんなところで何をしていたの?と。ヴェルドラさんは教えてくれた。長らくここに封印されていたのだと。
なんで封印?と首を傾げれば、どうやら300年近く前に好き勝手暴れていたら勇者に封印されてしまったようだ。
「勇者っているんだ、この世界。」
『ああ。勇者は強かったぞ。見た目は可憐な少女といった感じだったが、ユニークスキル【絶対切断】と【無限牢獄】を駆使し、我を封印せしめたのだ。』
ヴェルドラさんの言葉に相槌を打ちながら、この竜種さんってラスボスとかに近い立場にあったんだろうかと考える。
でも、負けたことに関しては悔しいとは思っているけど、愉快だったと言う感情も混じっているのか、どことなく楽しそうに話している気がした。
「女の子の勇者かぁ・・・・・・。女の子でも勇者になれるんだね。」
『そのようだな。小柄でほっそりしていて、白い肌に黒銀の髪を一つにまとめていて、真紅の小さな唇・・・・・・だと言うのに持ち合わせていた力は強力で、あの一時は忘れもせんよ。』
「うん、割とガッツリ見ていたんだねヴェルドラさん?」
人間が好きだったのかな、なんて思いながらも、時折発言にツッコミを入れて、穏やかな会話をその場で楽しむ。
しかし、不意にヴェルドラさんが無言で私を見つめてきたので、私は小さく首を傾げた。
「どうしたの?」
『・・・・・・いや、何。さっきからずっと思っていたことがあってな。』
「思っていたこと?」
『うむ。』
ヴェルドラさんの思っていることとは・・・・・・ちょこんとその場でお座りしたまま次の言葉を待っていると、ヴェルドラさんの声が頭に響いた。
『仔狐よ・・・・・・お前、なかなかにもっふいな?』
「狐だからもっふいのは当たり前だよね?」
何を言い出すのかと思えばあまりにも当然すぎる内容をヴェルドラさんから告げられる。
当たり前じゃないかとジト目で見据えて即行で返せば、彼はクァ─────ハハハ!と独特な笑い声を口にした。
『当然なのは知っているのだがなぁ。お前のもっふもふさは正直言って初めて見たぞ?
いやはや、まさか、尾を9つも持つ仔狐が現れるとは思わなんだ!!』
「・・・・・・はい!?」
サラッと告げられた尻尾の量に、今度は私が間抜けな声を上げる。
ちょっと待って尾が9つって言いましたこのドラゴンさん!?本気で!?
少しだけ慌てながら、自身の尻尾を確認しようと後ろを見るが、首の可動域などたかが知れており、複数の尻尾は確かに見えるが、全体までは見えない。
なんとか確かめるために尻尾を動かしてみたりもするが、なかなか確認することができず、私はぐるぐるとその場で回る。
しかし、だんだん視界がぐるぐるぐるぐると沢山回り始めてしまい、私はぺしょりと地面に転がった。
「ぐるぐるまわりゅ〜〜〜・・・・・・」
『クハハハハハハハハ!!何をしておるのだ仔狐!!ぐるぐる回れば目を回すのは当然であろうよ!!』
“愛い奴め!”と爆笑しながら、指先だけでちょいちょいと触ってくるヴェルドラさん。
このドラゴンさん・・・・・・私が傷つかないようにしてるのか、触り方めちゃくちゃ優しいな・・・・・・?
『おお。触り心地も良きものよ。こればかりはこの巨大さが少々恨めしいものだ。』
力がかなりあるのでな、と呟く様子から、やっぱりドラゴンって力の加減が難しいんだなと考える。
力加減をしながら私を触っているヴェルドラさんの指が、ぷるぷると震えているからね。
結構私の体、小さいみたいだし。大きいドラゴンからしたら、人間で言うところの蟻を突いている気分なのだろう。
『仔狐よ。我に背を向け、尾を地面に伏せてみよ。』
「?こう?」
『うむ。動くでないぞ。』
ヴェルドラさんの指示に従い、尻尾を地面にぺしょっとくっつけてみると、ゆるゆると尻尾を手の指にある爪で軽く梳かれる。
『我が触っていることはわかるな?』
「うん。わかるよ〜。」
『では、そのままでいよ。尻尾の数を教えてやろう。』
そう言って、ヴェルドラさんは私の尻尾を一本ずつ触りながら数えていく。
ヴェルドラさんの言葉に合わせて私も一緒に尻尾を数えれば、確かに9本の尻尾が生えていた。
「・・・・・・本当に尻尾が9本ある。」
『であろう?しかし、妖狐の話は度々聞くが、生まれて早々で9つの尾がある狐と言うものはやはり聞いたことがない。
どうやらお前は、なかなかに稀有な生まれ方をしたようだな。だが、その分強力な力を持ち合わせている。なかなか成長が楽しみで仕方ない仔狐だな。』
興味深そうに言葉を紡ぎ、軽く指で私を突いてくるヴェルドラさん。
少しだけ大きなその指にじゃれついてみれば、ヴェルドラさんがピシッと固まってしまった。
『お、おい、仔狐よ・・・・・・!あ、あまり我の手にじゃれつくでない!危ないであろう!?我の手にかかれば、お前程度プチッなのだぞ!?』
あらま優しい・・・・・・と少しだけ思いながらも、じゃれつくのをやめれば、ヴェルドラさんがホッと安堵の息を吐く。
それが面白くてタシッと前足でヴェルドラさんの指を掴み後ろ足で立ち上がってみれば、再びびくぅッと大きな反応を見せた。
『やめろやめろやめろ!我にお前のような仔狐を潰させるでない!!』
「そこまで・・・・・・?」
ビャッと勢いよく手を引っ込めてしまったヴェルドラさんに、首を傾げながら話しかけると、当たり前であろう!!と怒鳴られる。
『もう何百年と我はここに封じられておるのだぞ!?それはもうヒマでヒマで仕方ないのだ!!
そんな中、我に怯えることなく話しかけてくる仔狐が現れたのだ!!もし、お前がいなくなってしまっては我はまた退屈な日々に逆戻りなのだぞ!?』
「つまり、ひとりぼっちは寂しいからここに残ってってこと?」
『だ、誰が寂しいものか!!この暴風竜ヴェルドラが寂しいなどと思うわけが・・・・・・』
「なら私がいなくても大丈夫だね。じゃあね。」
『待て待て待て待て!!踵を返すな仔狐!!残れ!!残ってくれ頼むから!!』
「やっぱり寂しいんじゃん。」
『ぐぬぬ・・・・・・!!この暴風竜ヴェルドラを前にしてそのような対応を・・・・・・!!本当に肝が据わっておるな仔狐・・・・・・!!』
私みたいな仔狐に振り回されているからか、ヴェルドラさんは悔しげな様子を見せる。
しかし、すぐに一つ息を吐き、指の背でもふりと触ってくる。
『まぁよい。仔狐よ。外の世界に行く前に、我にお前の話を聞かせてくれ。我は我でお前の力の活かし方を教えてやろう。
とは言え、お前は魔素さえあれば攻撃をすることができるようだからな。あまり教えられることはないかもしれぬが。』
ヴェルドラさんの言葉を聞き、私は少しだけ考える。正直言って、私もこの世界のことをそれなりに知ってから洞窟の外に出たいし、ヴェルドラさんは寂しがり屋っぽいし、もしかしたら私と同じでここに迷い込む転生者とかいるかもしれないから、別にここで過ごすことは構わないんだよね。
私自身、話し相手がほしいし、この世界の基礎くらいは学んでもいいかも?
「いいよ〜。私もヒマだし、話し相手になるよ。まぁ、そもそもの話、私の身体、ちっちゃいから、力があっても使いこなせるようになるまでは外に出ない方が得策だと思うから。
私の世界でも、ちっちゃい生き物は自分で生きる術とか、大きな生き物の影を利用するとかやっていたし、見ての通り仔狐なので大きくなるまでは隠れ蓑に使わせてもらうよ。」
『我に対して利用するなどと堂々と言ってくるのはお前くらいだぞ仔狐。』
少しだけ呆れたような、だけど、嬉しげなヴェルドラさんの言葉を聞き、私は小さく笑う。
成獣ってどれくらいしたらするかわからないけど、まぁ、のんびりといきましょうか。
神凪澪央→九尾の仔狐
生まれつき病弱だった元人間。
家族と幼馴染みに看取られて命を落としたかと思えば、9つの尾を持つもっふい仔狐に転生していた。
触り心地抜群のモフモフは、竜種も大変満足する程の堕落させるクッション。
暴風竜ヴェルドラ
勇者との激闘の末、封印されていた暴風竜。
ある日突然現れた小さな仔狐にびっくりしたが、怯えることなく堂々と言葉を交わしてくる上、時折間抜けな姿を見せたり、振り回してきたりする仔狐を即行で気に入った。
なんたるモフモフ・・・このような巨体でなければ堪能していた・・・。
九尾主ちゃんの恋愛√は・・・(オチ有の場合、後日お相手のアンケートを取ります)
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一対複数の愛されEND√
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