転生したらもっふもふの九尾狐だった件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 暴風竜と共に過ごす日々を送ること数十年。
 九尾の狐と暴風竜の元に、新たな来訪者が姿を現した


九尾とスライムと始まりの村
不思議なスライムがやって来ました


 9本の尻尾を持つもっふい仔狐に生まれ落ち、どれくらいの時が経ったのだろう。

 あれから私は、ヴェルドラさんの話し相手として洞窟の中で過ごしていた。

 時折ヴェルドラさんのアドバイスを受けることにより、効率よく魔素を吸収して自身の生命力と能力に変換する方法を学んだり、魔素の変換により発生する沢山の属性技を身につけたり、なんとなくの雑談をしたりと、様々なことを学びながら。

 

『出会った当初はちまっこいモフモフだったが、随分と成長したものだな、仔狐。』

 

「やっぱり?初めて会った時に比べたら、だいぶ視界が高くなってるなぁとは思ってたんだよねぇ。」

 

『そうであろうな。どれ。現在の大きさを測ってみるとしよう。』

 

 そう言ってヴェルドラさんは私のすぐ横に自身の大きな手を添えた。それにより私の身体が彼の手のひらにすっぽりと収まるほどのようだ。

 仔狐時代では指先で突くのがやっとくらいだった気がするけど、結構成長したんだね。

 

「ヴェルドラさんヴェルドラさん。今なら私をもっとモフれるかもよ?触ってみる?」

 

『ふむ・・・では、少しだけ触ってみるとしよう。』

 

 これならばと、ずっと触りたがっていたヴェルドラさんにモフってみるかと聞いてみる。

 するとヴェルドラさんは、恐る恐るではあるが、ゆっくりと私を触り始めた。

 人間で言うところの蟻から仔猫サイズに成長した程度だと思うから、大きな手で撫でることは難しいみたいだけど、前のように指をプルプルさせる程力加減をしなくてはならないレベルではないからか、大きな指の腹で頭から背中まで緩やかな手つきで撫でることはできるみたいだ。

 

『ほう・・・これはなかなか、病みつきになりそうだな。』

 

「あ、やっぱり触り心地最高のモフなんだ私。」

 

『うむ。絶妙なまでに温さと柔らかさ、滑らかさなどが合わさっておるな。少し尾を触るぞ。』

 

 そう言ってヴェルドラさんは私の9本の尻尾を触ってくる。引っ張ったりしてこないし、絶妙な力加減だから心地良い。

 

『なんたるモフモフ・・・。人に化けることができればそのまま堕落していたかもしれん。』

 

「そこまで?」

 

『うむ。そう言えば仔狐は度々地底湖にて沐浴をしては体を清めておったな。』

 

「そうそう。折角のモフだから最高品質を維持してみたくてね。地底湖は冷たいはずなんだけど、私の身体、冷たさにも熱さにも強いみたいだからいつも身体をしっかり洗って、魔素を使った温風を浴びて乾かしてたんだよね。

 そしたらこのモッフモフが維持できたんだ〜。触り心地いいでしょ?」

 

 ドヤ顔をしながら私のモフは最高品質だと自慢すれば、ヴェルドラさんは笑い声を漏らして肯定の言葉を口にした。

 おー・・・竜種も満足なモフとは、これからもこのモフは維持していこう。

 モフモフは癒しだもんね!しかもこれだけ大きなモフなら癒し力倍増するもんね!

 アニマルセラピー・・・だっけ?疲れた時は最高なんじゃないかな?

 

 むふー!とヴェルドラさんにモフモフを提供できて満足しながら、そんなことを思っていると、どこからともなくひゅるるると何かが飛んできて、私のモフモフを触っているヴェルドラさんに直撃する。

 

「びゃ!?」

 

『む?何やら飛んできたようだな・・・・・・』

 

 ビタンッと大きな音を立ててヴェルドラさんに跳ね返された何かは、そのままポインポインと大地を転がり、ぷるぷると身体を震わせる。

 

「わー・・・めちゃくちゃぷるぷるぷにぷにしてる〜・・・」

 

『仔狐よ。我が教えた念話を使ってみよ。この小さき者の声が聞こえるようになるはずだぞ。』

 

 水色の何かを見つめた私は、その何かに近寄って前足でタシタシと軽く触れる。

 におい・・・はあまりしないな?魔素のにおいはすごくする。あと、水っぽいにおい?

 不思議に思いながらも、さりげなくヴェルドラさんから告げられた念話を使えと言う言葉に頷き、念話をするための回路を開く。

 

『もしもーし。聞こえますかー?』

 

『へ?女の子の声?しかもなんかめちゃくちゃ聞き覚えがあるような気がするんだけど!?』

 

『おお。どうやら成功しているようだぞ仔狐!いやはや、我も教えた甲斐があったものよ!仔狐は飲みこみも早かったからな!』

 

『わーい、褒められた〜!』

 

『え、無邪気な女の子の声、可愛いな?いや、て言うか本当に聞き覚えある声なんだけど!?』

 

 ・・・・・・どうやらこのプルプルさん。私の知り合いみたいです。でも、言われてみれば確かに懐かしい気配がするなぁ。

 なんだろう・・・多分、すごく大切な・・・あれ?もしかして・・・?

 

『・・・って仔狐とそこのお前!我を置いて話すでない!!』

 

 なんてことを思っていると、ヴェルドラさんがちょっとだけお餅を焼き始めてしまった。ヤキモチ・・・いわゆる嫉妬である。

 

『言われてみれば確かに別の声も聞こえてますね。思わず女の子にばっかり返事してましたけど、もう1人いるん・・・ですよね?

 なんで言葉が聞こえてるんですか?俺、見ての通り話せない状態で、自分が持ってるスキルと心の中で思っていたことで会話を成立させていたんですけど・・・・・・』

 

 ヴェルドラさんって本当、寂しがりやだよねー・・・なんて思っていると、プルプルさんが質問してきた。

 確かに、プルプルさんからしたら、心の声がダダ漏れになってるような感じだもんね。

 わかる。わかるよー。

 

『これは念話だ。仔狐にも我が教えたのだ。』

 

『仔狐?』

 

『うん。私が仔狐さんだよ〜。』

 

 間延びした声音で返事をして、私は自身の尻尾をプルプルさんの頭に乗せる。

 あ、ぷるぷるぷにぷにで触り心地良い。

 

『ふぉ〜〜〜〜・・・!?なんつーモフモフ!!めちゃくちゃ気持ち良い・・・!!』

 

『やった〜!初対面の人・・・人?・・・なんでもいっか。初めて会った子にも褒めてもらえた〜。』

 

『クハハハ!よかったではないか仔狐!やはりお前のもふもふは至高のようだぞ!』

 

 プルプルさんを撫でている尻尾とは違う尻尾をゆらゆらと軽く揺らしながら、喜んでもらえたことに気分を良くする。

 モフモフはやっぱり強いね!

 

『そう言えばキミ、周り見えてる?』

 

 そんなことを思いながら、私は視覚の有無を問いかける。なんと言うか、今のこの子、絶対に周り見えてないと思うんだよね。

 

『あ〜・・・それが、全然見えてなくて・・・仔狐さんと・・・あともう1人は・・・?』

 

 あ、やっぱり見えていなかった。何も見えないのは不便だよね〜・・・。

 

『む?なるほど、何も見えていなかったのか。であれば、見えるように手助けしてやるのがいいかもしれんな。』

 

『私達と話してる人、かなりでっかくてつよ〜い人だから、怯えたらダメだよ?でっかくてつよ〜い割には繊細だし。』

 

『最後のは余計だ仔狐!だが、仔狐の言う通り、我の姿を見ても怯えるなよ。』

 

 ヴェルドラさんは私にツッコミを入れながらも、プルプルさんに周囲を漂う魔素を感知するためのスキルである【魔力感知】を教える。

 最初、プルプルさんは魔素と言う言葉に疑問の声をあげていたが、少しの間黙り込んだかと思うとすぐに魔素を感じ取るために意識を集中させ始めた。

 その姿を見つめていた私は、ちょっとした悪戯心を思いつき、ずいっとプルプルさんに顔を近づける。

 さてさて、どんな反応をするかな〜?

 

『おお・・・!視え・・・ってめちゃくちゃ綺麗で可愛い白銀のモフ狐いるぅ!!?

 しかも尻尾が9本生えてるし!!え!?九尾の狐!?』

 

『あははははは!いい反応だね!そうだよー。仔狐さんは九尾の狐さんでした〜。まぁ、九尾の狐って存在、彼に教えてもらえるまで知らなかったけどね。』

 

『彼・・・?うお、でっか!!?

 

 そんなことを思って顔を近づけていたら、なかなかいい反応が返ってきた。

 う〜ん・・・・・・やっぱり覚えのある反応。もしかしなくてもこのプルプルさん、前世の私の幼馴染みでは〜・・・?

 

 ヴェルドラさんを見て、お話しているプルプルさんを見つめながら、私はそんなことを考える。

 前世の私の幼馴染み・・・三上悟君は、小さい時からお隣に住んでいた男の子だった。

 親同士も仲が良く、小さい時から度々顔を合わせては、いつの間にか一緒にいるのが当たり前になっていた同い年の子だった。

 生まれつき体が弱かった私は、遠くへと遊びに行ったり、遠足に行ったりすることができなかった。

 それを知っていたサトルくんは、自分が見てきたものや楽しんできたことの話をお土産と一緒に持って帰ってくれて、私に沢山話してくれた。

 体が弱くても学校に通っていた私は、保健室登校と呼ばれるものを行っていたけど、周りがどうしたらいいかわからなかったり、どうしても触れたりすることができなかった私の元にも休憩中にやって来ては、沢山の話や習ったことを教えてくれて、彼より頭が良かった私に、わからないところを聞きに来たりもして、分け隔てなく関わってくれていた。

 そんな彼に対して、元気な時に私はイタズラを仕掛けることがあった。こっそりと眠ってるサトルくんに近づいて声をかけたり、何かに集中してるサトルくんの側に気配を消してちょこんと座ってみたり。

 その度にサトルくんはビックリしては私を見て、笑顔を見せてくれていた。

 また驚かしにきたな〜イタズラっ子め!と。

 そんな日々が楽しくて、元気な時はサトルくんと一緒に動いて、2人で話すのは当たり前。

 私の代わりに沢山の経験をしてくるから、その話を聞いてくれよ。そう言って彼は沢山のことにチャレンジしていた。

 元気になったら一緒に海に行こうとか、山に行こうとか、遊べなかった分遊びまくろうとか、そんな言葉も交わしていた。

 

 そんな生活を繰り返して、私の体も少しずつ元気になっていた。サトルくんと沢山遊びたい・・・そんな考えを目標にしながら。

 でも、その元気は続かなかった。10歳の年を迎えた時に、私の容態が悪化してしまったのである。

 病院の先生はあらゆる手を尽くしてくれた。薬を使ったり、心肺蘇生って奴をしてくれたり、少しでも長くと身体を温めてくれたり・・・本当に沢山のことをしてくれた。

 だけど私の身体は良くなってくれなくて、そのまま終わりを迎えてしまった・・・・・・。

 

 ぷるぷるした身体を持つ魔物・・・ヴェルドラさん曰く、スライムと呼ばれているこの子の反応は、何度もいきなりお側ドッキリを仕掛けた大切な幼馴染みのようで、不思議と懐かしい気持ちになった。

 

『え!?仔狐さんも転生者なんですか!?』

 

 昔の自分の記憶を思い返しながら、目の前にいるスライムさんを見ていると、スライムさんは驚いたように私に転生者なのかと聞いてきた。

 どうやら、ヴェルドラさんとの自己紹介タイムが終わって雑談の流れで私の話が出たらしい。

 もしかしたらサトルくんでは・・・?そんな疑問を抱いていた私は、この疑問が間違いでなければわかるかもしれないと思いながら、あることをスライムさんに伝える。

 

『そうだよ〜。生まれつき身体が弱くって、結局10歳で死んじゃったんだ〜。

 元気になって、いろんなところに遊びに行きたいって話していた幼馴染みくんがいてね。

 結局約束果たせなかったな〜・・・体が弱くなかったらな〜・・・って考えてたら、なんか生まれ変わってた。』

 

『え・・・?10歳の時に・・・?ちなみに、仔狐さんはどこの国出身でしたか?』

 

『私?日本だよ〜。病院で危篤状態に陥って、家族と幼馴染みくんに看取られて眠っちゃったんだ〜。』

 

『っ・・・・・・!!?』

 

 私の言葉を聞き、スライムさんは何やら驚いたような様子を見せる。

 同時に見れたものは、一度だけブレるようにスライムさんに重なった泣きそうな顔をしている幼馴染みによく似た男性の姿だった。

 

 ─────・・・・・・やっぱり、キミはサトルくんなんだね。

 

 それがかつての幼馴染みであるサトルくんだったことがわかり、私は小さく笑みを浮かべる。

 なんでサトルくんが死んじゃったのかはわからないけど、また会えてよかった。不謹慎だけどね。

 

『む?何やら知己のような雰囲気だが、もしやお前達、前世で何かしらの縁でもあったか?』

 

 そんな中、ヴェルドラさんが私達に何かしら関係があったのかと言う疑問を告げてくる。

 彼の疑問を聞いた私は、緩やかに尻尾を揺らした。

 

『え!?あ〜・・・えっと・・・』

 

『そうだね〜・・・ナ〜イショ。』

 

『何だそれは!!我を仲間外れにするでない!!』

 

『きゃ〜!モフられる〜!』

 

 戸惑うスライムさんに小さく笑い声を漏らしながらも、あえて内緒だとヴェルドラさんに伝える。

 そしたら拗ねたヴェルドラさんに、指先でころころと転がされながらモフられた。

 私が丈夫になった分、なかなかに遠慮がないドラゴンさんである。

 

『・・・なんと言うか、異世界人って自分以外にもいるんですね。仔狐さんも・・・そうみたいだし。』

 

『うむ。仔狐もそうだが、ヤツらはこちらの世界に渡る時、望んだ能力を得るらしいぞ。』

 

 何か言いたげに、だけどどこか嬉しげに、それでいてすごく悲しげに、私のことを呼ぶスライムさんを見つめながら、私はゆらゆらと尻尾を揺らす。

 ごめんね。あの時置いていっちゃって。約束を守らないで死んじゃって。

 

『・・・そう言えば、仔狐・・・さんは、ずっと、ここでヴェルドラさんと暮らしていた・・・のか?』

 

『ん〜?うん。そうだよ〜。でも、そろそろ出ようかな〜とは思っていたんだよね。ここで暮らすのも悪くはないけど、前世では身体が弱かったから、思いっきり外の世界を走り回ってみたいな〜って。』

 

 誰かに訊かせるでもなく、サトルくんに対する謝罪を紡いでいると、スライムさんが、これまでのことを聞いてきた。

 私はすぐに、ずっと暮らしていたことや、そろそろここから離れようと思っていたことをスライムさんに伝える。

 

『そ、そうか・・・仔狐よ・・・お前は我の元から自立するのか・・・。

 も、もうちょっとここにいてもいいのだぞ?確かに仔狐は成長しているが、まだまだ身体もちまっこいであろう?

 お前のようなちまっこいモフモフが外に出るには、まだ早いのではないか?』

 

 それに真っ先に反応したのはやはりと言うかヴェルドラさんで、彼は私を引き止めようと声をかけてきた。

 どうやら、20年くらいかな?この年月の間、一緒に過ごしていた分、かなり情を抱かれてしまったようだ。

 オロオロと心配そうな様子で、もう少し洞窟にいたらどうかと聞いてくるヴェルドラさんを、私は静かに見上げる。

 

『ヴェルドラさん・・・いつのまに私の保護者になったの?』

 

『お前のような柔っこいモフモフを1匹外に放つなど無理に決まってるであろう!?それに、我はもはやお前の父のようなものではないか!!』

 

『ええ・・・?随分とでっかい種族違いのお父さんだなぁ・・・』

 

『せめてもう少し身体を大きくしてからだな・・・!!』

 

 引き止めるために使えそうな理由を口にしながら、もうちょっと洞窟に残ったらと提案してくるヴェルドラさんに、私は少しだけジト目を向ける。

 

『・・・あの〜・・・仔狐さん1匹を外に出すのが心配だって言うなら、自分が仔狐さんの側にいますよ?』

 

『なぬ!?』

 

『スライムさん?』

 

 どうしたもんかなと思っていると、スライムさんが自分が側にいるとヴェルドラさんに告げる。

 スライムさんの言葉を聞き、ヴェルドラさんがショックを受けたような表情を見せた。

 

『その・・・実は自分も、仔狐さんと似た境遇の女の子をよく知ってて。折角元気な身体を持って生まれ落ちたみたいですし、外の世界を見せてあげてもいいと思うと言うか・・・。』

 

『ぐぬぬ・・・!し、しかしだな・・・!』

 

 ヴェルドラさんの様子を見て、スライムさんは何かを思いついたような様子を見せる。

 ヴェルドラさんが悪いドラゴンさんじゃないことに気づいたようだ。

 

『もし、見ず知らずの人・・・じゃなくてスライムに仔狐さんを任せるのは心配だって言うなら、俺と友達にならないか?』

 

『なぬ!?ス、スライムの分際で、この暴風竜ヴェルドラとトモダチになるだと!?』

 

 あ、これ、嬉しくなってる声だと思いながら、お座りをしてヴェルドラさんとスライムさんを見守る。

 

『い、いや、嫌ならいいんだけど・・・・・・』

 

『馬鹿お前!誰も嫌だなどといっておらぬだろうが!!』

 

『ヴェルドラさ〜ん。プライド?って言うのがあるのかもしれないけど、たまには素直になるのもいいと思うよ?

 そっちの方が気持ちが伝わりやすいし、いろんな感情を共有できると思うんだよね〜。』

 

『む!?そ、そうかもしれぬが・・・・・・』

 

 チラチラとスライムさんを見ながら、モゴモゴしているヴェルドラさんを見て、私はちょいちょいとスライムさんの身体を前足で触れる。

 

『ん?どうしたんだ、仔狐さん?』

 

「あのね〜・・・」

 

『・・・え?それでいけるの?って言うか普通に話してる!?』

 

「九尾の狐って頭がいい上、話すためのキカン?って奴があるんだよね〜。まぁ、それは置いといて、試しに言ってみてよ。」

 

『う、う〜ん・・・・・・わかった。』

 

 私が普通に話したことに驚きながらも、スライムさんはヴェルドラさんの近くにぽよんぽよんと飛び跳ねて近寄る。

 

『ヴェルドラさん・・・いや、ヴェルドラ。俺はどうしてもヴェルドラと友達になりたいんだ。ダメかな?』

 

 そして、私が教えたヴェルドラさんをどうすれば効果的に頷かせることができる方法のセリフを口にして、身体を軽く傾ける。

 いわゆる首傾げのようなものだ。まぁ、スライムさんだから首ないと思うけど。

 

『し、仕方ないな。我が友達になってやるわ。』

 

『おう!よろしくな。』

 

 ヴェルドラさんの指先と、スライムさんのちょびっとした出っ張りがちょんと触れ合う。

 その瞬間、ヴェルドラさんとスライムさんは2人して照れ始めた。どうして照れたんだろ?

 

『仔狐さんも、俺と友達になってくれるか?』

 

 そんなことを思っていると、スライムさんが私にも友達になろうと言ってきた。

 差し出されるのはちょびっと出っ張ってるスライムさんの一部で、私はそこに自身の肉球を触れさせる。

 

『ハイタ〜ッチ。これでキミと私も友達だね〜。』

 

『おおう・・・!肉球がすごくぷにもち!!』

 

『スライムなキミには言われたくないかなぁ・・・・・・』

 

 ぷにもちはキミでしょ?と伝えれば、言われてみれば・・・と返される。

 そのことに少しだけ笑い声を漏らした私は、その場で座り直した。

 

『さて・・・友達も増えたことだし、みんなで外に・・・って言いたいところだけど、ヴェルドラはここから出られないのか?』

 

 私が座り直したのを見たスライムさんが、静かに言葉を紡いでいく。

 どうやら、スライムさんは私達全員で洞窟の中から出ようと思っていたらしい。

 だけど、ヴェルドラさんの様子を見て、もしかして彼は外に出られないのかと疑問を浮かべたようで、彼に質問をしていた。

 

『うむ。300年程前に勇者に封印されて以来外には出られておらんな。仔狐が来るまでなかなかに暇だったものだ。』

 

『え?この世界って勇者いたの?』

 

『うむ、おったぞ。』

 

 スライムさんの言葉を聞き、ヴェルドラさんはすぐに勇者さんの話をスライムさんにした。

 見た目の割には【絶対切断】と【無限牢獄】と呼ばれる強力なスキルを持っていたことや、自分はそのスキルの前に負けてしまったこと。どんな勇者さんだったのかなど、様々な話を。

 事細かに勇者さんの容姿を口にしたヴェルドラさんに対しては、スライムさんも呆れていた。

 

『なるほどなぁ・・・。この封印って解けるのかな・・・?』

 

『ん?』

 

 しかし、すぐに頭を切り替えたスライムさんは、すぐに思考に耽りはじめた。

 どうやらスライムさんは、ヴェルドラさんの封印を解こうと思っているようだ。

 そう言えば、この封印が解けるかどうか考えたことはなかったな。

 

『・・・友達になった相手を放っておくわけにもいかないから、封印を解こうと思っていたんだけど、どうやら解除するのは難しいみたいだ。

 ただ、仔狐さんの能力と、俺が持ってる【大賢者】を使えば、なんとかなるみたいだな。』

 

『私の能力?』

 

『うん。エクストラスキルの【魔力吸収】って奴だな。仔狐さんは元から魔素を吸収してエネルギーに変換しているみたいだけど、どうやら魔素を帯びたものならば任意で自身に吸収することができるみたいだぞ。

 ただ、吸収できる量には限度があって、魔素を溜め込むタンクがいっぱいになると吸収はできなくなる。

 でも、すぐにそれを【魔力変換・放出】や【魔力変換・収束】を使うことによって、攻撃や防御に回せば、無限に魔素を使いまくれるみたいだな。・・・ある意味最強じゃないかこの力・・・・・・?』

 

『え?そんな力あったの私?』

 

『ええ・・・・・・?し、知らなかったんだ・・・・・・』

 

『だって教えてくれる人いないんだもん。』

 

 何やら私が持ち合わせている力をスラスラとスライムさんが教えてきたため、思わず困惑してしまう。

 私、そんなにスキルあったんだ〜。知らなかったなぁ〜。

 

『と、とにかく、仔狐さんにまずはヴェルドラを封印している【無限牢獄】の力を【魔力吸収】で弱めてほしいんだ。

 それにより発生する綻びがあるみたいだから、あとは内側と外側から解析すれば、確実に解除できるみたいなんだ。

 ただ、ヴェルドラレベルの存在を封じる力だから、時間はかかるみたいだな。』

 

 自分の能力にびっくりしていると、スライムさんがヴェルドラさんの封印を解くための方法を教えてくれた。

 それを聞き、なるほど、と私は尻尾を揺らす。つまり、スライムさんと私と、ヴェルドラさんの3人で封印を解くってことね。

 

『なるほどな・・・仔狐が特異なスキルを持ち合わせていることには気づいていたが、まさか魔に対する特攻だったとは。

 それならば確かに封印も解けるかもしれん。しかし、どれだけの時間を有するかはわからぬときたか・・・。

 仔狐が外に出たがっている以上、我としてもあまり長く引き止めたくはないのだが・・・。』

 

 スライムさんの話を聞き、ヴェルドラさんはうんうんと頭を捻る。

 スライムさんが一緒にいてくれるからか、それともスライムさんが持ち合わせている【大賢者】と言う力を把握することができたからか、どちらかはわからないけど、外に行くことに関してとやかく言うつもりはないようだ。

 

『まぁ、かなり時間がかかるのは間違いないだろうな。そこで、俺から一つ提案があるんだけど・・・』

 

 スライムさんの提案と言う言葉に、私とヴェルドラさんは『提案?』と揃って首を傾げる。

 スライムさんはすぐに頷くような動きをして、言葉を心の中で紡いだ。

 

『ヴェルドラ。お前、俺の胃袋に入る気ない?』

 

『胃袋・・・?』

 

『うん。実は・・・』

 

 どうやらスライムさんには【捕食者(クラウモノ)】と呼ばれるユニークスキルがあるようで、それとリンクした胃袋があるようだ。

 その胃袋は【捕食者】を使い、捕食した対象を収納することができるようで、時間が関係なくなるのだとか。

 どれだけの量を収納することができるのかまではわからないみたいだけど、間違いなくかなりの容量であることは理解しているとのこと。

 

『なるほど〜。つまり、【捕食者】で封印ごと捕食収納したヴェルドラさんと一緒に解析して解除しちゃおう作戦ってこと?』

 

『大正解!どうだ、ヴェルドラ?』

 

 スライムさんの提案を聞き、仕組みを理解していると、ヴェルドラさんの肩が軽く震え始める。

 あ、これうるさいやつ・・・と即行で私は念話回路を閉ざし、自身の狐耳をぺしょっと伏せる。

 彼が大きな声で笑うのは、それとほぼ同時だった。

 

『クハハハハハハハハハッ!!面白い!!是非やってくれ!お前に我の全てを委ねる!!』

 

「にゃああああああ!!ヴェルドラさんうるさーい!!」

 

『おお!すまんすまん仔狐!つい気が昂ってしまったわ!』

 

『おおう・・・大丈夫か?仔狐ちゃん・・・。』

 

 あまりにもうるさかったので、ヴェルドラさんに思いきり怒鳴れば、スライムさんが身体からちんまい手のような突起を出して、私の身体を優しく撫でる。

 むすっと拗ねながらヴェルドラさんを見上げれば、彼は再び笑い声を漏らした。

 

『・・・・・・あのさ。提案したのは俺だけど、そんなに簡単に信じていいのか?』

 

 そんな中、スライムさんがヴェルドラさんに、あっさりと信じて任せても大丈夫なのかと問いかける。

 場合によっては騙されかねないぞとでも言いたげだ。

 

『無論だ。ここでお前達を長く引き止めたり、お前達の帰りを寂しく待つよりも共に【無限牢獄】を破る方が面白そうだ!

 それに、やはり仔狐が気がかりでなぁ。そこの仔狐に20年以上指南し、物事を教え、語らっていた分情がある。

 あと、その仔狐はやけに甘えたがりな節があってな。我と過ごしている間も、気がついたらモフれとでも言いたげな眼差しで腹を見せてくるため、早めに封印を解析したのち、合流して側についておかなくては変な輩にいいようにされてしまいそうだ。』

 

『何やってんだよ仔狐ちゃん・・・・・・』

 

 呆れたような眼差しをスライムさんから向けられて、私はすぐに知らん顔をする。

 だって私のもふもふ触り心地いいから、少しでも癒しを提供したかったんだもん。

 

『まぁ、仔狐ちゃんのその性格はのちのち改善させていくとして・・・だ。今からヴェルドラを捕食する。

 まだ、何かやっておきたいことや、話しておきたいことはあるか?』

 

 ふーん・・・・・・と視線を逸らしていると、スライムさんがヴェルドラさんに声をかける。

 やり残したことがあるのであれば、今のうちに済ませてほしいと。

 

『ならば、お前に捕食される前に、お前達に名を与えてやろう。知識がかなりありそうだからな・・・スライムよ。お前も我ら3体で共通する名を考えよ。我々は同格であると言うことを魂に刻むのだ。』

 

『え?俺達で共通する名前・・・?えーっと、苗字みたいなものか。』

 

 それならばとヴェルドラさんは私とスライムさんに名前をつけたいと口にした。

 同時に、スライムさんには私達3体が共通して使える名前を考えるように告げる。

 ヴェルドラさんからそう言われたスライムさんは、うろうろとその場で彷徨き始めた。

 どうやら考えているようだ。

 

『うーん・・・暴風竜・・・暴風・・・嵐・・・・・・?あ、それなら“テンペスト”とかどうだ?スライムになる前の俺の世界にあった言葉なんだけど・・・・・・』

 

『ほぉ・・・・・・!!素晴らしい響きだ!!ならば、今日から我はヴェルドラ=テンペストだ!!』

 

 ドバッと喜びに比例したかのように、ヴェルドラさんの魔素が辺りに溢れる。

 あまりの勢いに私の身体は軽く吹き飛び、ころころと地面を転がった。

 

「ふびゃ!?うゔ・・・吹っ飛んだぁ〜・・・・・・」

 

『ぎゃあああ!?仔狐ちゃん大丈夫かぁっ!?』

 

『おお、すまんすまん!うっかり溢れ出てしまった!』

 

 心配してくるスライムさんと、軽い口調で謝罪をしてくるヴェルドラさん。

 私は、ヴェルドラさんを軽く睨みつけたあと、擦り傷などないか確かめたのち、彼らの近くに戻る。

 

『気を取り直すとしよう。これから我はヴェルドラ=テンペストと名乗る。スライムよ。お前には“リムル”の名を授ける。

 そして仔狐よ。お前には“コリン”の名を授けよう!これからは、スライムは“リムル=テンペスト”を名乗り、仔狐は“コリン=テンペスト”を名乗るがよい!!』

 

 ヴェルドラさんが私達に名前を授けると同時に、自身の中にある魔素量や力が一気に引き上がる気配を感じる。

 まるで地に足がついたかのような・・・自身の存在が完全に定着したかのような、そんな不思議な感覚を覚える。

 

『コリンよ。』

 

『なぁに、ヴェルドラさん?』

 

『もはや我らは同格であり、我からしてみればお前は我が子のようなものだ。ゆえに、もう敬称をつける必要はない。』

 

『なぁにそれ〜。でも、うん。わかったよ。これからはヴェルって呼ぶね〜。』

 

『略称ではないか!!だが、特別に許してやろう!!今は気分がいいのでな!!』

 

 これが、名前を与えられるってことなんだ、と頭の中で思いながらも、私はヴェルドラさんから告げられた言葉を承諾する。

 すると、ヴェルドラさん改めて、ヴェルに言葉を返せば、相変わらずの肝の据わり様だと笑われる。

 

『あとは任せたぞ、我が友よ。コリンが変な輩に捕まらぬように見張っておいてくれ。』

 

『任せてくれ。話を聞いていくうちに、俺もめちゃくちゃ心配になってきたからしっかりと目を離さないようにしておくよ。』

 

『怪我などもさせるなよ。コリンは本当に柔いのでな。すぐに壊れてしまいそうなくらいに柔いからな。』

 

『うん。わかった。』

 

『あれ〜・・・?なんか保護者増えた?』

 

 目の前で繰り広げられている会話に首を傾げるが、ヴェルとリムルは気にしていないのか、こちらに指摘する言葉は返してこない。

 

『コリン。【無限牢獄】の魔素は見えるか?』

 

『うん、見えるよ〜。薄っぺら〜いガラスみたいになってるんだよね。』

 

『じゃあ、そのガラスみたいなところに触れて、【魔力吸収】を発動させてくれ。』

 

『は〜い。』

 

 返事はしたけど、【魔力吸収】ってどうやれば・・・魔素を使って攻撃する時みたいに、吸収するイメージでいいのかな?

 とりあえず封印に近づいて、前足でそれに触れて・・・よし。

 

 エクストラスキル 【魔力吸収】

 

 ・・・お?前足から魔素が大量に身体に流れ込んできた。溜まってる感じがあるから、これが魔力タンクってヤツかな?

 どれだけ回収して溜まっているのかよくわかる。・・・とりあえず、腹八分目ならぬタンク八部目くらいで・・・。

 

『これでいいかな?』

 

『うん、バッチリだ!じゃあ、またな、ヴェルドラ!さっさと【無限牢獄】から脱出してこいよ!』

 

『私もリムルも待ってるよ〜。出られたらモフモフしていいからね〜。』

 

『クハハハハハハ!コリンのモフモフか!それは楽しみだな!復活の際は人型になれるようにしておくとしよう!

 待っていてくれ、リムル。コリン!あまり長く待たすことなく、再び相まみえようぞ!!』

 

 ヴェルとの挨拶を交わすと同時に、隣にいたリムルの身体がごばっと流体となり、ヴェルの全てを包み込む。

 水色の波が押し寄せる中、ヴェルは楽しげな笑みを浮かべたまま目を閉じて、そのまま姿を消していく。

 次第に大きな流体は、小さく小さく変化していき、最後は先程までのリムルのサイズに戻っていった。

 

『よし。これで解析できるな。』

 

「スライムってあんなに大きな存在も飲み込めちゃうんだねぇ・・・。」

 

『あはは。それに関しては俺も思ったかも。』

 

 互いに短く言葉を交わし、私達はその場で黙り込む。

 だけど、すぐに頭を切り替えては、その場で辺りを見渡した。

 

『出口はどっちかな?』

 

「わからないけど、とりあえず移動しよっか〜。背中乗る?ぽよぽよ跳ねて移動するのって大変そうだもん。」

 

『ありがとう、コリン。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうな。』

 

 私の言葉を聞いて、リムルがぴょいっと背中に飛び乗った。

 私はリムルがおっこちないように、自分の尻尾で軽く支えて、そのまま大地を歩いていく。

 ヴェルがいなくなって静かになった洞窟の中。だけど、漂っている魔素のおかげで、外への道はなんとなくわかる。

 

「洞窟の外はどんなところかな〜。」

 

『きっと沢山の植物があって、沢山の生き物もいると思うよ。』

 

「そっかぁ。楽しみだね〜。」

 

 てくてくと暗がりの中、どんな世界が広がっているのか楽しみにしながら、私は新たな旅に出た。

 

 

 

 

 

 




 コリン=テンペスト
 ヴェルドラとのんびり過ごしていたら、まさかのまさかでスライムに転生しちゃった幼馴染みと再会してしまった元人間。
 10歳と言う年齢での逝去だったせいか、かなり幼さが残った性格をしている。
 甘えたがり屋なため、すぐにモフれとお腹を見せちゃうお年頃。
 【魔力吸収】・・・魔素でできたものや、漂う魔素を吸収し、自身に溜め込むエクストラスキル。
 【魔力放出】・・・吸収した魔素を使い、攻撃へと転じさせるエクストラスキル。
 【魔力収束】・・・吸収した魔素を使い、防御へと転じさせるエクストラスキル。

 リムル=テンペスト
 通り魔に遭い、命を落としたかと思えばスライムとして転生していた元人間。
 散策の先で出会した、自身の目の前で逝去してしまった幼馴染みと思わしき転生者に動揺する。
 ヴェルドラの話を聞いた結果、この子から目を離したらいけないと決意して過保護化が始まる。

 ヴェルドラ=テンペスト
 現れた仔狐があまりにもあっさり腹を見せてモフれと無防備にアピールしてくるわ、体格差があろうとも甘えようとじゃれついてくるわで過保護化した暴風竜。
 仔狐が無防備すぎる!!変な輩に目をつけらぬように目を光らせておくのだ友よ!!


九尾主ちゃんの恋愛√は・・・(オチ有の場合、後日お相手のアンケートを取ります)

  • 一対一の相手有END√
  • 一対複数の愛されEND√
  • 恋愛なしの愛されEND√
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