玉折キャンセル
理子ちゃんを喪ったあの日から、悟は真の意味で『最強』に成った。
フルオートの無下限。自己補完型の反転術式。順転と反転の併用。
私の積み重ねが些事に思える程の急成長、それを目の当たりにする日々。
悟は任務も一人でこなせるようになり、必然的に私も一人になることが増えた。
「傑、ちょっと痩せた?」
「ただの夏バテさ。···大丈夫」
「ここんとこ呪霊玉取り込みすぎなんじゃねーの?あのゲロマズいやつ」
「······」
以前に悟が「呪霊取り込むとき、なんでそんなに苦しそうなんだ?」と質問してくることがあった。「とんでもなく不味いから」と答えると、「少し舐めるくらいなら問題ないだろ」と言って、本当に舐めた。
やめておけと言ったのに。
綺麗な顔を台無しにして、涙目になりながら口をゆすぐ悟は傑作だったな。
例えるなら、吐瀉物を処理した後の雑巾が近いだろうか。
それでも2人の“距離”がすぐそばだった頃は、秘密を共有しているみたいで少し楽しかった。
でも今は······。
祓う。取り込む。
その夏は忙しかった。
昨年頻発した災害の影響もあったのだろう。
蛆のように呪霊が湧いた。
祓う。取り込む。
あの日からずっと、人間の悪意が私を蝕んでいる。それは何ら珍しくもない、周知の醜悪。
あの非術師どもの“歪んだ笑顔”がチラつく。
祓う。取り込む。
私は術師として人々を、非術師を救う選択をしたはずだ。
『ブレるな。
コレは私の本音なのか?
弱者の醜さも尊さも、全てを受容する道。
どちらの“本音”を選ぶのか。
私は分岐点に立っている。
灰原の死。
罪無き子供2人を苛虐する
非術師の醜さは嫌と言うほど見てきた。
なのに何故、私は二の足を踏んでいる?
「いやあり得ないだろ常識的に考えて。九十九とかいうオバサンだって、冗談で言ったに決まってんじゃん。真に受けるとか馬鹿なの?」
「······」
悟に九十九さんとのやりとりを話したら、呆れ顔で一蹴された。いや、本当にその通りだ。
九十九さんだって「私はそこまでイカれてない」と言っていたのに、頭からすっぽり抜けていた。
「非術師が嫌いっつーのは分かる。ボクだってそうだ。でも全員じゃないだろ?
「······それで、いいのかな」
「良くはねーだろ。呪詛師でも無い限り出来るだけ人間を殺すのは避けるべきだ。···でも、もし傑が道を踏み外すなら、ボクも一緒に堕ちるよ」
「それは駄目だ!堕ちるのは私だけで──」
「私たちは2人で最強なんだろ?」
「···もう、違うだろ」
「は?」
「悟は私なんかよりも強くなった。私はもう必要ないだろう」
「オマエそれ本気で言ってんの?···分かった。そっちがそのスタンスなら、ボクだって容赦しないよ」
術式順転『蒼』
「はあ!?なんで──」
「天上天下唯我独尊。私がやりたいようにやるから、傑はもう動くな」
悟の目は血走っており、どう見ても正気じゃない。すぐさまこの教室から脱出しなければいけないのだが、『蒼』によって仰向けのまま床に拘束されてしまった。
このままでは不味い、なにかとても大事なモノを喪ってしまう!
こういうのはせめて卒業してからだろう!?
「誰かー!助けてくれー!!」
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家入「···見なかったことにしよう」
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ミミナナ
・高専に入学せず、平凡な学生生活を送ることになった。
・大学卒業後は一般企業に勤務し、至って平凡な暮らしを送っている。
・パワハラをした係長が左遷されたと聞いて夏油様に礼を言ったが、微笑むばかりで何も答えてくれなかった。
【今作の夏油】
大義とか信念とかこいつに背負わせたくないな
→せや、今日の夜ご飯と明日のご飯の献立のことで頭が埋まる生活をさせたろ
→専業主夫 夏油
→呪霊玉もスープとかにして美味しく調理しそう
※なお有事の際には勝手に戦線復帰する模様