追い剥ぎのジャン・アンゴ、ヴァリアー雲の守護者を目指す   作:G-ラッファ

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標的1 異世界転移し放題来る!!

 デデデデ!オレの名前はジャン・アンゴ!拾った武器での狙撃を得意とするしがない賞金稼ぎだ!

 

 2年前、道化のバギーと麦わらのルフィが引き起こした大監獄『インペルダウン』への侵入と大量脱獄は世界を恐怖に陥れた!だがそれは力なき者たちの話…オレのような連中からすれば大金を稼ぎ放題だったぜ!

 

 王下七武海ドンキホーテ・ドフラミンゴと麦わらのルフィが起こした抗争の後、コロシアムでの傷を癒やしたオレは『ドレスローザ』を出て再び賞金稼ぎの旅に出た!狙いは近隣のとある島に潜伏する脱獄囚!海軍に引き渡していい武器を買い放題するつもりだったんだが…

 

 

─新世界・ラーノベィ島─

 

「"妓配王"!!!」

 

 ジャンは足元に転がっている海賊から剣を奪って拾い上げると、レベル6からの脱獄囚にして6億6000万ベリーの懸賞金がかけられていた大海賊 テンセイへと投げつけた。

 

 武器を使った狙撃という風変わりな戦闘スタイルを実現するための腕は肥大化した筋肉が連なっており、その厳つい見た目に違わぬ速度と威力を生み出す。空を切る甲高い音とともに発射される「弾」はテンセイの腿を掠め、彼から立ち上がる力を奪った。

 

「クソッ、ふざけた頭で油断していた…俺様がいない間にこんな奴が暴れ回ってるとはな」

 

「デデデデ!大海賊時代の前から投獄されていたアンタが知らないのも無理はねぇ!かつての部下がいたらオレも危なかったが…アンタの時代はもう終わったんだよ!」

 

 勝利を確信し、啖呵を切るジャン。

 "神隠しのテンセイ"…ゴールド・ロジャーや名だたる大物たちが熾烈な競争を繰り広げていた頃にそう呼ばれていた男がかき集めた部下はすでに全滅しており、残すは老いぼれた彼ひとり…再び頂点を目指すにはあまりにも遅かったのである。

 

「アンタは世間には公表されていないレベル6の脱獄囚!海軍もさぞ喜んでくれるだろうよ…!」

 

「くっ…」

 

 先ほど被弾した腿は正確に急所を撃ち抜かれており、逃げようにも力が入らない。もはや助けてくれる者もおらず、大海賊として返り咲くという彼の野望はここで終焉を迎える…はずだった。

 

 一歩、また一歩と距離を詰めるジャンの足元にいた部下の一人が意識を取り戻して足を掬うと、覆いかぶさって行く手を阻んだのだ。

 寄せ集めの部下とはいえ新世界を生き抜いてきた海賊たち…連戦に次ぐ連戦は病み上がりのジャンを確実に削っていたのである。

 

「チィッ、雑魚だからと仕留めが甘かったか!どけ!」

 

「なァお前…俺様のことを調べたと言ってたよな?じゃあこれが何か分かるよなァ!」

 

 億超え海賊としての意地で立ち上がったテンセイが指で大きな円を描くと、その場に歪な空間が発生する。

 彼は『ワムワムの実』を食べたワームホール人間…発生させた異空間への扉を押し付けることで相手の存在を消してしまうという、反則に近い能力をもってして名を上げた恐ろしい男である。

 

「"異空間転移(ナロウスタート)"!じゃあな賞金稼ぎ!」

 

「しまっ─」

 

 テンセイは発生させたワームホールを掴み、フリスビーのように投げてジャンに被せると、そこにいたはずの2人は神隠しにあったかのように姿を消してしまうのだった…

 

───────────

 

「やはりオレがいたラーノベィ島じゃないな…どこに飛ばされたんだ?」

 

 2人がテンセイの能力により神隠しにあってから少し後─目を覚ましたジャンは周囲を見渡しながら、さっきまでいた島とはまるで違う風景に困惑していた。

 一緒に飛ばされたテンセイの部下はすでに事切れており、ここがどこなのかを聞き出すこともできない。ジャンは握られていた武器を奪い取ると、ひとまずあたりを探索することにした。

 

 近くにあった建物は妙に近代的で、不気味な程に真っ白である。適当に選び、扉についていた謎の装置を破壊して入った部屋には小さな匣が大量に並べられていた。

 部屋を照らす光源も、ラックにかけられている銃も知っているそれとは大きくかけ離れている…ジャンは改めて自分がどこか遠い場所に飛ばされてしまったのだと再認識し、現状把握に務める。

 

(見覚えのねぇハイテクな道具の数々…ベガパンクの研究所に飛ばされちまったのか?だとしたらマズい、政府の連中と鉢合わせになるかもしれねぇ!厄介事を招き放題だ!)

 

「そこにいるのは誰だ…なんだこいつは!?」

 

 施設からの脱出を決意した矢先、背後からの声に振り返るジャン。そこには白い服に全身を包み、ゴーグルとマスクで顔を隠した細身の男が立っていた。

 

「あんたここの人間か?オレはある海賊の能力で飛ばされて─」

 

 ジャンは両手を挙げながら事情を説明し、戦闘の意思がないことをアピールする。こんなところで政府に目をつけられ、お尋ね者に成り下がるのはごめんだったからだ。

 

 しかしそんな望みはあっさりと砕かれることになる。なぜなら男は政府の人間ではないし、ここは彼の知る世界ではないのだから…

 

「何を言っている…!?侵入者は排除する!」

 

 男は指輪に荒々しく燃える赤い火を灯すと、棚に並べられている匣と同じものの穴に挿入した。次の瞬間、匣の中から明らかに収納できないであろう長さの槍が飛び出す。刃の先には指輪と同じ色の炎が灯っており、食らえばただでは済まないことを長年のカンが知らせていた。

 

(箱から武器だと!?それにあの炎…メラメラの実は革命軍に渡ったはずだぞ!)

 

「やべぇっ!」

 

 ジャンは体格に見合わぬ足さばきで刺突のラッシュをかわしていく。未知の能力を持つこの男だが本体の戦闘能力は並程度…億超えの賞金首を何人も狩ってきたジャンの敵ではなかった。

 

「"妓配王"!!!」

 

 ジャンは一度距離を取り、海賊から奪っていた剣を使い手慣れた様子で"狙撃"する。

 自然系の能力者であることを警戒し、覇気を纏ったジャンの放った一投は男の心臓を的確に貫いた。男が苦しみを感じる間もなく絶命したのを確認すると、次に備えて剣と、男が使っていた槍を拾い上げる。

 

「いきなりなんだったんだ…それにしてもいい槍だな、その辺の海賊が持てる代物じゃねえ。だがこの炎はなんだ…?」

 

─それは死ぬ気の炎ですねー

 

 ジャンはなんとも気怠げな、聞いている方も脱力してしまいそうな声に振り返る。そこにはカエルを模した巨大な帽子を被った緑髪の青年と、刺々しい金髪を目元まで伸ばした男の2人が立っていた。

 

「おっさんミルフィオーレの人間…じゃねぇよな?1人殺ってるし。どこのマフィアだ?メキシコか?」

 

「メキ…?オレは賞金稼ぎのジャン・アンゴだ。とある海賊の能力で見知らぬ土地に飛ばされちまったみたいなんだが…ここはどこなんだ?」

 

「海賊…賞金稼ぎだぁ?ししし!なかなかおもしれーじゃん。おいフラン、お前弟子入りしろよ」

 

「むさくるしいのはレヴィさんだけで足りてるのでー。ていうかセンパイ、これは俗に言うアレじゃないですかー?」

 

「あん?なんだよ」

 

 カエル帽子の青年はふと何もない空間…具体的には上空ななめ45度あたりの位置に振り向くと、そこにオーディエンスがいるかのように"お決まり"を要求した。

 

「では読者の皆様もご一緒に。せーのっ"クロス短編小説だー!"はい、よくできました。グッドでーす」

 

 どうやら虚空にサムズアップする青年のノリは金髪の男もついていけていないようで、困惑する2人の間には妙な連帯感が生まれていた。

 

「…5分で片付けてくるからお前はそいつ見張ってろ。分かったな」

 

「お、ベルセンパイだけでやってくれるんですかー?ラッキー。なるべく巻きでお願いしますn…ゲロッ!」

 

 軽口を叩く青年に苛ついたのか、なんと金髪の男がナイフを数本、青年の頭部へと投げつけたのである。ドスッ、という重い音とともに帽子へ深く刺さったものの青年はケロッとしており、男もまた故意の殺人未遂を省みることなく部屋を後にしてしまう。

 

「お、おい…アンタ大丈夫なのか?頭にナイフが刺さって…」

 

「いつもの事なので気にしないでくださーい。ったくよーだからアホの王子とは組みたくないって言ってるのになー…」

 

「そ、そうか…ところであんたらは何者だ?いきなり襲ってきたこいつとは敵同士なのか?」

 

「あ。んー…これ喋っていいのかなー…怒られたらセンパイのせいにすればいいか…そこに転がってるのはミルフィオーレファミリーの下っぱですねー。で、ミーたちが独立暗殺部隊"ヴァリアー"の超精鋭ってとこですー」

 

 ぶつぶつと文句を言いながら引き抜いたナイフをへし折っていく青年と、目の前で行われたあまりにも軽く、その割に殺意に満ちた同士討ちに絶句するジャン。

 こうして追い剥ぎのジャン・アンゴと独立暗殺部隊ヴァリアーの、奇妙な縁が始まるのだった。

 

 

 

 

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