追い剥ぎのジャン・アンゴ、ヴァリアー雲の守護者を目指す   作:G-ラッファ

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☆簡単な紹介

・ジャン・アンゴ…ONEPIECEに登場する、武器投げを得意とする賞金稼ぎ。話の展開上、当作品では「描写はないけどあり得なくはない」レベルに技能を盛ります。
 所持匣兵器は雲の炎で増殖する「雲プラナリア」。


・ヴァリアー…家庭教師ヒットマンREBORN!に登場する、主人公が跡を継がされるマフィア組織の暗殺部隊。
 入隊条件に多国籍言語の習得があるのを忘れていたけど気にしてはいけない

・XANXUS…大空を司るヴァリアーのボス。怒ると怖い

・スペルビ・スクアーロ…ひたすらに強く声が大きい剣士。声が疫災のクイーンと同じ。雨の守護者

・ベルフェゴール…ヴァリアー構成員の1人にしてナイフ使いのガチの王子様。メカクレ属性で手が早い。嵐の守護者

・フラン…カエル帽子のダウナー少年。ベルフェゴールとはよく殺し合いを演じるほどの仲良しで、色んな意味で今回のネックになる人物。霧の守護者

・ルッスーリア…足技が得意な肉体派オネエ。ネクロフィリア設定があるけど作中で生かされた記憶はあんまりない。晴の守護者

・レヴィ・ア・タン…ムッツリスケベの雷オヤジ。インテリ設定があるけど作中で(略)雷の守護者




最終標的 追い剥ぎのジャン・アンゴ来た!!

「ここで首を晒すことになるのはお前だ!ジャン・アンゴ!」

 

 スタッツが使った奥の手…溜め込んだ雨の炎を一気に放出するサブタンク匣によってジャンは押し流されたが厄介なのはそれだけではなかった。従えている雨ダツがさらに活性化し、巨大な魚群を形成しているではないか。

 反撃に移るべく立ち上がろうとしたところで、ジャンは己の体が鉛のように重くなっていることに気付く。雨の炎の特性は"鎮静"…大質量の波を受けておいて作用しないはずもない。

 

「くそっ体が思うように動かねェ…これが雨の炎か…!」

 

 スタッツが息を切らし、弱りきったジャンに抱いたのは驚愕であった。自ら巻き込んだ部下たちは地面に伏したまま動けないほどまでに影響を受けている中、正面から受けてもなお立ち上がり、声にも覇気が残っている彼のタフネスは異常と言わざるを得ない。

 

(確かに俺の炎は純度が高くない。それでも物理的なダメージだって相応に受けているはず…ヴァリアーめ、とんでもない奴を引き入れたな…ッ!?)

 

 驚愕していたスタッツの頬に鋭い痛みが走る。振り返ると主人を守るかのように、先ほどよりも巨大化した雲プラナリアたちが迫ってきていた。

 

「いつの間にあそこまで成長を…押し流せ雨ダツ!奴らをこれ以上増殖させるな!」

 

「─!!」

 

 指示を受けた雨ダツは高速回転すると魚群に内包していた炎を豪雨の如く撒き散らす。雲プラナリアたちも針を吹いて対抗するが、相性の差からあまり効果はない。

 鎮静作用を受け小さくなっていく相棒を見せつけるように、スタッツは魚群を指差した。

 

「雨属性は炎でありながら水に近い性質を持つ。サブタンク匣によって形成された小さな海はこいつらの力をさらに引き出すんだ。もはやお前に勝ち目はないぞ…いい加減降参したらどうだ?」

 

「クソッ…なあアンタ、雨の炎を食らった時の対処法を知ってるか?」

 

「…晴の活性で相殺することは可能だ。が、お前を助けに来るやつはいないぞ。無駄な時間稼ぎだ」

 

「デデデデ…そうだよな、普通はそういう理屈があるもんだよな…!」

 

 ジャンは不敵な笑みを浮かべながらまっすぐ立ち上がると落としてしまった武器を抱え直す。ふらついてこそいるものの眼光は鋭く輝き、こちらを狩る気概に満ちていた。

 

(もう回復を!?そんなバカな…まさか奴の体には晴の波動も流れているというのか?)

 

 リングが灯すことのできる属性は1つと決まっているものの、世界には複数属性の波動が体内を巡っている人間が存在するという。

 それ事態が非常に珍しい上に実戦レベルで使えるとなるとまずお目にかかれない逸材であり、ミルフィオーレでもまず聞いたことがなかった。

 

(だがこいつが常識外れの存在なのは確かだ。まさか本当に雲と晴のハイブリッドなのか…!?)

 

「ハァ…おれはこの世界の戦い方に詳しくねェからよ…雨の炎を食らった時の対処法を聞いてみたのさ…そしたらなんて言ったと思う…?」

 

 思わぬ難敵の予感に息を呑むスタッツ。対するジャンは肺いっぱいに空気を送り込むと─

 

「『んなもん気合いでなんとかしろ゛ぉ゛!!!』

…だとよ」

 

「…は?」

 

 突然の大声と予想外の答えに呆気にとられるスタッツ。叫んだ反動でよろめいたジャンは木を支えにしながら続けた。

 

「おれがいた世界もそうだった。無謀にも海軍にケンカを売って死にかけた気概のあるバカが、たった2年で王下七武海を落としちまうんだからな。結局のところ…最後は気合いなんだよ」

 

「一体何を…ッ!?」

 

 スタッツが自身の背後に迫る威圧感に振り返ると、そこには衰弱したはずの雲プラナリアが巨大化していく光景が広がっていた。成長・巨大化した尻尾でなぎ倒した木を魚群へと投げつけると、異物をねじ込まれた雨ダツたちの陣形が乱れていくにつれ彼らのフィールドである雨の炎も霧散していく…

 

「どういうことだ!?あのナメクジは確かに鎮静の炎を受けたはず…」

 

「デデデデ…確かにあいつらは弱っちまった。だがこっちにも補給手段があったのさ」

 

 そう言って指差した先では中くらいの雲プラナリアたちがぞろぞろと集まってきていた。ジャンから炎を受け取ったまま待機していた彼らは、奇しくもサブタンク匣としての条件を満たしたのである。

 連携を乱され弱体化する雨ダツに対して1つになることで失った力を取り戻していく雲プラナリア…大きくついていた差はみるみる縮まり、逆転していく。

 

 加勢を指示しようにも部下たちは未だダウンしており、雨ダツたちを覆う炎の海は消失…スタッツは再び劣勢となってしまった。

 

「くっ、ここまで匣兵器を使いこなすとは…ヴァリアーが手を組むだけはある」

 

「おれが待機を命じたわけじゃねえけどな。さて…今度はおれが手柄を立てる番だな。いっちょ頼むぜ!」

 

 指示を聞いた雲プラナリアは身体の一部を切り離しジャンへと投げ渡す。分裂した個体は体内に蓄えた針を1本露出させると…なんと肩に向かって突き刺した!

 

「なっ…増殖の炎を自分に打ち込むだと!?なぜわざわざそんな事を─」

 

「言っただろ?こいつばかりにやらせてちゃカッコがつかねェのさ!こっちにいる間は守護者の座を狙うことにしてるんでな!」

 

 増殖作用のある雲の炎を打ち込んだジャンの肉体は一回り肥大化し、死ぬ気の炎というエネルギーを還元されたことで調子を取り戻す。傍らに落ちた武器の束を拾ってまとめると、大きく踏み込んで狙撃の構えを取った。

 

「守護者…欠番のままという雲か?デタラメな奴め。雨ダツ!最大出力だ!」

 

「おれはアンタを倒して名を上げる!通してもらうぜぇ…"妓配王"!!!」

 

 ありったけの炎を纏い、整列した雨ダツたちが機関銃のように降り注ぎ。ジャンの放った武器が、針がそれらを叩き落とす。

 匣と武器、死ぬ気の炎による無数の応酬は凄まじいエネルギーを生み、両者を包み込む光はみるみる拡大していく。

 

「「おおおおおおおおっ!!!!!!」」

 

 鎮静と増殖の炎を連続して浴び、歪な成長を遂げた木々が景色を地獄に塗り替え。頬が、腕が、足が血を噴き悲鳴を上げてもなお、捨て身の攻撃が止まることはない。立場も地位も関係ない、ただ強者を下したいという男の意地だけが2人の体を動かしていた。

 

「やべっ!武器が…!」

 

 だが飛び道具を使う2人の戦いに永遠はない。脇の武器が、そして雲プラナリアが増殖させていた針が尽きたことに気付いたジャンは思わず視線を外してしまう。当然この隙をスタッツが見逃すはずもなく、残り1匹となった雨ダツの狙いを頭へと定めた。

  

「運が悪かったなジャン・アンゴ!せめて一思いに終わらせてやる!」

 

(クソッ…今からじゃサボテンの増殖も間に合わねェ!何かないのか!?何かまだ使っていない武器…が…)

 

─グチャッ。

 

 肉の弾ける生々しい音が響く─音の主である雨ダツはその肉体を四散させ、スタッツの視界には拳銃を構えるジャンの姿があった。

 

「ただの拳銃…なぜそんなものをお前が…ガハッ…」

 

 スタッツはそこまで言いかけると、飛来した金属製の物体を額に受けて気を失う。再び訪れた静寂の中で、ジャンは弾倉のない拳銃─テネーレから預かっていた品のスライドを戻し、カチンという小気味よい音を響かせるのであった…

 

────────────────

 

『う゛お゛ぉ゛い出るのが遅ぇぞサボテン野郎!どこで油売ってやがる!!!』

 

「単独で現場の司令塔とやり合ってたら手間どっちまった!城がずいぶん荒れてるようだがそっちは大丈夫か?」

 

 決着から数分後…兵士たちを拘束したジャンは慣れない手つきで無線機を操作し、守護者たちと連絡を取り合っていた。

 現場の司令塔とやり合った…ジャンからの報告を受けたスクアーロはドスを効かせたまま、しかしどこか上機嫌に唸る。

 

『こっちはとっくに片付いた…と言いてぇところだが増援を確認した。ザコどもだけじゃ埒が開かねえからてめぇも合流しろ。それと─』

 

─ガチャンッ!

 

 スクアーロが何かを言いかけたところで通信が途絶えた…否、無線機が破壊されたのだ。何者かの手によって。

 

「おーいたいた!やっと見つけたよ」

 

(こいつ…いつから背後に!?)

 

 ジャンが声の方向へ振り返った先には白いミルフィオーレの隊服に身を包み、隊服と同じくらい白い髪の先端を遊ばせている細身の男が立っていた。

 

 壊れた無線機を弄ぶ男からは不思議と敵意を感じない。それでも賞金稼ぎとして大物と渡り合ってきたジャンの勘が強く警告していた。こいつはただ者ではない、と。

 

「アンタまさかミルフィオーレの守護者か?今の不意打ちでおれを殺すこともできたはずだぜ。なぜやらなかったんだ」

 

「別の世界から来たキミがどんな影響を及ぼすか分からないからね。7³(トゥリニセッテ)を手に入れるための最後の世界線は大事にしたいじゃない?」

 

 男は困ったように肩をすくめる。7³(トゥリニセッテ)が何なのかは不明だが─話しぶりからしてこの男がこちらの事情を把握していることは間違いない。

 男はただ者ではないことを確信し改めて警戒するジャンをよそに真正面から接近すると、笑顔で手を差し出した。

 

「こんな事は初めてだったから骨が折れたよ。でも無事に帰せそうだから安心して!これでもパラレルワールドには詳しいんだ♪」

 

「名前も名乗らないヤツは信用しないタチでな。おれはジャン・アンゴ。アンタは?」

 

「おっとそれもそうだね!僕はそうだな…みんなからは白蘭って呼ばれているよ」

 

 白蘭─ミルフィオーレファミリーのボスと同じ名を名乗った男は柔和で、それでいてどこか胡散臭い笑みを浮かべた。指に嵌められたリングは乳白色の石に翼の意匠が施されており属性が分からず、それがかえって不気味さを際立たせる。

 目の前にいる男は本物の白蘭である…そう直感したジャンは咄嗟に飛び退いて距離を取り直した。

 

「その様子だと僕を知ってるみたいだね。ヴァリアーも余計なこと言ってくれるなぁ…心から元の世界に帰したいと思ってるのに」

 

「アンタを信用するなって勘が騒ぐんでな!それにとんでもねェ大物が目の前にいるんだ…このチャンスを逃したら賞金稼ぎの名折れってモンよ!」

 

───────────

 

「出番だぜぇ雲プラナリア!」

 

 ジャンは再び雲プラナリアを展開し自らも武器を構える。対する白蘭は一切の武装を展開せず、肩をすくめて呆れたような視線を送った。

 

「見知らぬ土地で死ぬことはないと思うけどなぁ。どうしても言うことを聞かないなら付き合うけど…本気かい」

 

「さっき言った通りだぜ。このまま引き下がるのは賞金稼ぎのプライドが許さねェ、それに…あいつらにはメシの恩があるからな」

 

「頑固だなあ…いいよ、付き合ってあげる。ただしジル君と鉢合わせすると面倒だからそこがタイムリミットだ。異論は認めないよ」

 

 ジャンはジルという名前にわずかな引っ掛かりを覚えつつもこれを承諾する。白蘭は未だ武装を見せておらずポケットに手を突っ込んだまま…彼からの軽視は闘争心をさらにかき立てた。

 

「飛ばすぜぇ!"シン・妓配王"!!」

 

 ジャンはリングに灯した炎をサボテンにねじ込んで異常発達させると炎を纏った針を四方に飛ばしていく。雲プラナリアの強化が主な目的であるこの技も人体には十分な殺傷力があり、言葉通り開始から全力である。

 対する白蘭は片手のみをポケットから露出させてリングをかざすと…なんとすべての針を弾き返してしまった。

 

(リングの力だけで弾きやがったのか!?炎すら見えなかったぞ!)

 

「もう少し頑張ってよジャン・アンゴ君!それともこれで終わり?」

 

「まさか!"妓配王蹴擦捕"!!」

 

 ジャンは死ぬ気の炎を纏わせた武器を雲プラナリア目がけて投擲し、増殖の炎を受け巨大化した雲プラナリアたちがそれを投げ返す…自身を中心に飛び交う武器の嵐に、白蘭は感心するように鼻を鳴らした。

 

(匣兵器と連携して飛び道具の喪失リスクを踏み倒す!面白いこと考えるなあ…)

 

「ボーっとしてる暇はないぜ白蘭!こいつも片手で凌げるか!?」

 

 ジャンの合図を受けた雲プラナリアたちは投擲の目標を変更する。方向もタイミングも様々な武器の一斉攻撃は白蘭へと向かい、辺りは大量の土煙に包まれた。

 

(手応えはあったし奴が避けたようにも見えねェが…やったか?)

 

─惜しいなあ…

 

「!?」

 

 直後。土煙の中から超高速で飛来する何かがジャンの右胸を突き、その衝撃で後ろに吹き飛ばされた。

 

「本当に惜しいよ。キミがこの世界の人間だったらスカウトできたのに…それは少しヒヤッとさせてくれたお返しさ。気に入ってくれたかい?」

 

 胸には龍の意匠が施されたダーツのようなものが突き刺さっている。不自然なまでに白いそれを引き抜いて起き上がり視線を上げると、ダーツの意匠によく似た純白の龍が、白蘭を包み込むように顕現していた。

 

「それがアンタの匣兵器か…?白い死ぬ気の炎なんて聞いたことがねェ」

 

「この子たちは色々と特殊でね。"白龍"っていうんだ。ちなみにキミの胸を突いたのは"ミニ白龍"。カワイイでしょ?」

 

(奴の属性はおそらく大空、調和の力を持つはずだが…刺された部分に変化がないのはこいつがオモチャってことか?舐めやがって…!)

 

「言ってるでしょ?キミは色々と面倒なんだって。それにこの子たちを使わせただけ大したものさ。だから…」

 

「そろそろ眠っちゃいなよ」

 

 1秒前まで目の前にいた白蘭が消えた代わりに声と、わずかに漏れ出る害意がジャンの背中を刺す。本能的に頸を狙った攻撃が来ると判断し武装色の覇気を纏って硬化させると、白蘭は手刀を滑らせた。

 

「体を硬化させた!?雷の炎とは別の反応だよね、それ!キミの世界の技術かい?」

 

「チィッ!」

 

 白蘭は問答無用の裏拳をひらりとかわして距離を取り直す。人間というよりは鳥のような身のこなしを見せた彼の背中には、いつの間にか白く輝く翼が生えていた。

 

「これはパラレルワールドへ干渉する時に生えてくるものなんだ。分かるかい?僕もけっこう焦ってるんだよ。だから手荒に行かせてもらうね…白龍!」

 

「ついにあの龍が来やがったか…"武装硬化"!」

 

 ジャンは両腕に纏った覇気を最大限まで高めて二の字に構えると、迫りくる白龍の噛みつきを受け止めてみせる。生身の人間が自身の匣に抗う姿に驚く白蘭の背後には、武器を構える雲プラナリアたちが静かに迫る。

 雲プラナリアたちが配置についたのを確認すると強引に白龍を退けるジャン。覇気を貫通し穿たれた腕も気にせずリングに炎を灯すと、サボテンへとねじ込んだ。

 

「後ろからは広範囲の武器の雨!前は不規則に増殖するおれのサボテン!こいつは避けられないんじゃねェか?白蘭!」

 

 白蘭は何も答えなかった。自らが挟撃に遭うと察してからの変化といえば両手を胸のあたりまで持ってきただけである。まるで死を悟り、神に祈るかのような潔すぎる所作に違和感を覚えるジャン。そしてその疑念は…残念ながら的中することになる。

 

「─"白拍手"」

 

 白蘭が小さく呟いた次の瞬間。周囲に凄まじい衝撃波が発生し武器も、匣兵器も、そしてジャンも大きく吹き飛ばされてしまった!

 たった一度、それも手を合わせるだけの動作からは想像もつかぬ規模の攻撃は近づくすべてを拒絶するかのようであり、そのプレッシャーは範囲外にいた雲プラナリアたちも怯えて匣に戻ってしまうほどであった。

 

(殺す気がねェとは言ってたが…ここまで手を抜いてやがったのかよ…!)

 

 白拍手を食らったジャンの足先は大空の"調和"により木のような質感に変化していく。徐々にではあるものの侵食は広がっており、自らの意思で体を動かすこともままならない。

 万事休す…白蘭は再び貼り付けたような笑顔を浮かべて近付いてくるとそっと頭に手を当て、何かを念じる。すると彼の背に生えた翼が光の羽毛をまき散らしながら大きく開き、あたりは光に包まれた。

 

「残念だけど時間切れだよ。帰る頃にはその足は治ってるから安心してね」

 

「クソッここまでかよ…なァ最後に教えてくれよ。それだけの力を持ってるアンタが欲しいものってなんだ?そうまでして何がしたいんだ」

 

「…キミは世界がどうしようもなくつまらなく感じる時ってあるかい?」

 

「ねェな。どっちの世界も広すぎて知らないことばかりだ。こうしてる間にもルーキーどもが追い上げてきてんだ、退屈する暇があるなら欲しいくらいだぜ」

 

「…そっか。キミと元の世界の繋がりを見つけたから、僕がこちらとの繋がりを切れば無事に戻れるはずだよ。いつかキミのいる世界にも遊びに行きたいなあ」

 

 そう零す白蘭は先ほどまでの空気が嘘のように憂いを帯びており、眉間にシワの寄った笑顔は歪ながらも彼の本心を垣間見せているかのようだった。

 ジャンはその憂いの理由を聞くことはせず、不敵な笑みとともに握った拳を突き出した。

 

「おれと組むってんなら歓迎してやるぜ?アンタとなら四皇の首も狙えそうだしな!」

 

「それはいいね!お邪魔する時は真っ先にキミを探すことにするよ。…っとそろそろ本当に時間だ。さようなら、異世界からやってきた賞金稼ぎ」

 

「ヴァリアーの奴らに会ったらよろしく言っといてくれ。それとこの銃を─」

 

 光に包まれたジャンは言い終えることなく空へと還っていく。白蘭は足元に転がったテネーレの銃を拾い上げると、元の世界へ向かって彗星の如く駆けていく光を見届けるのであった。

 

「…さーて、ジル君が負ける前に色々やっておかなきゃね!やぁ桔梗かい?そろそろキミたちに動いてもらおうと思ってるんだ。それと面白い事があってさあ─」

 

───────────

 

「…これが懸賞金の9000万ベリー。オレの取り分は引いてあるからな」

 

「ご苦労さん。また頼むぜ」

 

 白蘭との戦いから1ヶ月後…新世界のとある島で捕まえた海賊の懸賞金をやり取りするジャンの姿があった。

 無事に戻ることのできたジャンは異世界へ飛ばした元凶であるテンセイへのリベンジを無事に果たし。賞金稼ぎとしての日々を過ごしていた。

 

 それは異世界へ飛ぶ前と変わらぬ光景…一連の転移騒動は両者の世界にほとんど影響を及ぼさなかったようだ。

 

 …たった1つの変化を除いて。

 

「そういやあんた噂になってるぜ?最近紫の炎とナメクジを連れるようになったって。悪魔の実でも食ったのか?」

 

「おれが手の内を晒して誰かにやられたら仲介人のアンタも困るんじゃねェか?」

 

「ただ聞いただけだ。用があったらまた連絡してくれ」

 

 そう言って仲介人の男は小屋を後にする。無人となった室内で、ジャンはひとり指にはめられたリングをかざしてみせた。

 

「うっかり持ってきちまったこれ、いつか返しに行かねェとな…」

 

「─!」

 

 ポケットに入れた匣が返事をするようにカタカタと揺れる。ジャンは雲プラナリアが収まるそれを取り出すと、リングに炎を灯した。

 

「…ま、それまでは存分に頼らせてもらうとするか。今や世界は大混乱、海賊や革命軍の首を取って稼ぎ放題だ!出てこい雲プラナリア!」

 

「開匣!!!」

 

 ひょんなことから異世界へ飛んでしまった賞金稼ぎのジャン・アンゴ。一匹狼だった彼は新たな相棒を得て、さらなる大物へと挑んでいくことだろう。

 

 追い剥ぎのジャン・アンゴ、ヴァリアー雲の守護者を目指す

 

 

                        ─完

 

 

 

 少し遡ってジャンが去った直後の異世界…援軍からの攻撃を受け煙をあげる古城にはとある旗がたなびき、その元にはある男たちが集っていた。

 

「"オレはボンゴレ十代目を認めない"…ですって!レヴィったらこんなの作ってボスのご機嫌取りをするなんて健気ね〜!」

 

「ミルフィオーレの本隊が迫っている今こそ掲げるべきだと思ってな。あいつ…ジャンも引き入れようと思っていたのだが」

 

「ジャンさん連絡つかなくなっちゃったんでしたっけー?あの人には死んでほしくなかったんだけどなー」

 

「オメーは格下が欲しいだけだろ。ま、どっちにしろペーペーな事には変わりねーけどな。で?スクアーロ的にはどう思うよ。あのオッサン死んだかな」

 

「んなこと知るかぁ!!!生きてりゃノコノコ出てくんだろ」

 

(てめぇが簡単にくたばるとは思えねぇ…もっと成り上がりたきゃさっさと戻ってきやがれサボテン野郎。こいつの緊急使用くらいはオレが許可してやるからよ)

 

 城の淵に足をかけ、反応が途絶えた地点を眺めるスクアーロ。誰も知らないことではあるが、彼の隊服の裏には雲のヴァリアーリングが忍ばれていた。

 

「ほ、報告!南の防衛戦が突破されました!我々では対処しきれません!」

 

「チッ…使えねえカスどもだ。おいてめぇら!まだへばってねぇだろうな!」

 

「「「「当然だ」じゃん」よ♪」ですー」

 

「フン…それじゃもういっちょ…暴れ─」

 

─ドオォォォンン!!!!

 

 スクアーロが放つつもりだった決め台詞は、上空から超高速で飛来した何かによって遮られた。濃い紫の服に身を包んだ褐色の─おそらく人間によって。

 

「なんだ!?ミルフィオーレ、ではないようだが…」

 

「生きてますかー?…とりあえず引き抜いてみましょうか」

 

「どう考えても顔面ミンチだろこれ。オメーひとりでやれよ」

 

「えー?じゃあ死体大好きなルッスーリアさんどうぞ」

 

「死体ならなんでもいいわけじゃないわよぅ!」

 

「お前らガタガタ騒ぐんじゃねえ!!!おい!生きてるならさっさと起きやがれ!」

 

 大騒ぎする守護者をよそにスクアーロが辛辣な蹴りをお見舞いすると、謎の人物はジタバタと暴れて瓦礫から顔を引っこ抜いた。

 蜘蛛のようなシルエットの髪型を持つ目力の強い男はヴァリアーをひと通り見渡すと腕を組み、仁王立ちで立ち上がる。

 

「おれはゲダツ!番頭をしていたはずだがここンンーンンンン!!!」

 

「「「「「…?」」」」」

 

『…ゲダツ様!下唇を噛んだままでは何を言っているか分かりません!』

 

─うっかり!

 

 …どうやら一度繋がってしまった2つの世界を隔てる壁にゆらぎができてしまったようである。

 

 次回からはゲダツのうっかり放浪記〜青海で一山当てたオレ、異世界でもうっかり無双してしまンンンーンン!〜

 

 をお送りします。(しない)







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