追い剥ぎのジャン・アンゴ、ヴァリアー雲の守護者を目指す 作:G-ラッファ
・ジャン・アンゴ…ONEPIECEに登場する、武器投げを得意とする賞金稼ぎ。話の展開上、当作品では「描写はないけどあり得なくはない」レベルに技能を盛ります
・ヴァリアー…家庭教師ヒットマンREBORN!に登場する、主人公が跡を継がされるマフィア組織の暗殺部隊。
入隊条件に多国籍言語の習得があるのを忘れていたけど気にしてはいけない
・ベルフェゴール…ヴァリアー構成員の1人にしてガチの王子様。メカクレ属性で手が早い
・フラン…カエル帽子のダウナー少年。ベルフェゴールとはよく殺し合いを演じるほどの仲良しで、色んな意味で今回のネックになる人物
・ルッスーリア…足技が得意な肉体派オネエ。ネクロフィリア設定があるけど作中で生かされた記憶はあんまりない
・レヴィ・ア・タン…ムッツリスケベの雷オヤジ。インテリ設定があるけど作中で(略)
「…以上が属性と守護者の関係性だ。次は…おい、大丈夫か?」
元の世界に帰るべく、ウラのウラまで情報を得られるという独立暗殺部隊ヴァリアーを仮巣として頼ることに決めたジャン。
身体能力が試されるルッスーリアの試練を無事にクリアし。幸先が良かった彼を待っていたのはある意味で最大のピンチ…座学だった。
頭から煙を吹き、焼きサボテンになっている帽子を困惑気味に眺めている男の名はレヴィ・ア・タン…今回の試験官にしてヴァリアー大幹部の1人である。
彼はかつて教授の道を用意されていたほどのインテリであり、隊員の座学を一手に引き受けている優秀な講師なのだが、まったく違う世界の概念であること、何よりお勉強が得意とは言えないジャンにはかなり厳しいようである。
「むう…ここへ入隊してくる者はみな事前の審査があるからな。貴様のようなタイプにはやはり”こっち”に限る。ついてこい」
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教室を離れ、ジャンが連れて来られたのは屋外にある練習場…カカシや炎で不規則に移動するバルーン、防護壁のような分厚い金属の板など、様々なシチュエーションを想定したものがあちこちに建てられている。
お勉強が壊滅的ならば理屈より感覚で叩き込むべし…そう判断したレヴィは実践の割合を増やすことにしたのだ。
「悪ィなレヴィさん。オレは武器と同じくらい紙とペンを投げるのが得意なガキだったんだ…デデデデ」
「実践のカリキュラムは組んでいたので問題ない。早速だがジャンよ、この中のどれでも構わないから”2秒以内に”ターゲットを破壊してみろ」
「それなら分かりやすくて助かるぜ!じゃあ…あれだな」
ジャンは空中に浮かぶ複数のバルーンを指差すと、予め用意してもらっていた”弾”…戦術の変化でお役御免となり、倉庫の肥やしとなっていた武器たちを脇に抱えた。
大量の武器を一度に抱える様子にレヴィが怪訝な表情を見せる中、ジャンは静かにスタートの合図を待ち続ける。
「カウントするぞ。3、2、1…はじめ!」
「"妓配王"!!!」
─パパパパパン!!!
脇に抱えた武器を漁り、狙いを定め、投げる。幾度となく積み重ねてきた動きは極限まで洗練されておりムダがなく、拳銃程度のレートで射出されていく武器たちはあっという間に空中のバルーンを撃ち落としてみせた。
その奇っ怪な戦法と結果にレヴィも呆気にとられたものの即座に気を取り直し、確認に入る。5つあったバルーンはすべて撃墜されており、タイムも2秒以内と文句なしの結果であった。
(この男…それぞれ形状の違う得物の投げ方を即座に使い分けているのか!?)
「デデデデ!海賊もすばしっこいからな、こういう手合いは慣れてるのさ」
「…貴様の実力は分かった。ベルが興味を持つだけはある。だがその戦法には弱点があるようだな」
レヴィの言う通り、武器による狙撃という戦法は読まれにくく対処も難しい代わりに致命的な弱点がある…それは弾切れである。
銃弾と違い嵩張る武器は数を持ち運ぶことができず、敵に再利用される危険性を孕んでいるのだ。当然ジャンもその点は理解しており、頭の痛い話であった。
「そこでこの時代の戦い方が重要になってくる。ジャンよ、それくらいは覚えているだろうな」
「あ、ああ…リングに灯した死ぬ気の炎で匣を起動させる、だったよな?」
レヴィは頷くと指に嵌めたリングから緑色の稲妻を発生させる。死ぬ気の”炎”と呼ばれているにも関わらず電気的なエネルギーを放つ、ミルフィオーレ兵士やルッスーリアのそれとも違う反応にジャンは興味津々だった。
「これは”雷の炎”と呼ばれているものだ。見た目に違わず電気のように相手を痺れさせることもできる。特徴については渡したメモを確認してみろ」
ジャンは座学の時間に渡されたメモを開く。そこには死ぬ気の炎の種類と特性が書かれていた。
・大空 …調和
・嵐 …分解
・雨 …鎮静
・晴 …活性
・雷 …硬化
・雲 …増殖
・霧 …構築
「アンタは雷だから”硬化”だな!…炎に硬さがあるのか?」
「厳密には炎の形をした生命エネルギーだ。単純な破壊力は全属性で最も優れており、正面からのぶつかり合いに強いとされている…もちろん例外もあるがな」
バチバチと弾ける炎は確かに鋭く、突破力がありそうである。それぞれの特性を読み返しながら、ルッスーリアが突然馬鹿力を発揮したのは”活性”の力…つまり晴の炎によるものだと理解した。
「炎をリングから垂れ流すだけではあまり意味がない。この匣兵器に炎を注入し、属性の力を最大限に引き出させるのだ。少し離れていろ」
レヴィが灯した炎を匣兵器の中へ注入すると、中から電気を纏った巨大なエイが現れた。
「こいつは雷エイ…雷の炎や電気を蓄え、仲介し、放つ匣兵器だ。たとえばこのように…」
レヴィは背にマウントしていた傘のような武器たちを射出すると、雷エイを中心とした円を空に描いた。雷の炎で繋がったそれらが放つバチバチと弾ける音はどんどん大きくなっていき、放出の時を待ちわびている。
「SUPER・LEVI・VOLTA(スーペル・レヴィ・ボルタ)!!!」
─バリバリバリバリバリ!!!!!
両手を挙げ、叫ぶレヴィに呼応して蓄えられたエネルギーが一気に放たれる!その威力は本物の雷と見紛うほどであり、分厚い金属の板に深い傷跡を残していた。
「すげぇ!でもそんなデカブツをどうやって収納してるんだ?」
「匣兵器については謎が多い。得体の知れない兵器に頼るというのは気に食わんが…この世界ではこいつの有無が戦局を決定づけると言っても過言ではない」
ジャンは改めてメモを見る。雷エイのようなしもべが増えるのはもちろんのこと、”分解”や”活性”などの戦闘向きな炎が使えれば優位に立てるであろうことは間違いない。
地上に降りてきたレヴィは匣兵器を収納すると、代わりに6つのリングを差し出してきた。それぞれ違う色の石が埋め込まれており、これが各属性に対応したものなのだろうと察する。
「まずは貴様の適性を見せてもらおう。…といっても炎を出すところから始めねばならんがな」
「ん?指輪をつければ炎が出せるんじゃねェのか?」
「こいつを発現させるには使用者の強い意思…一般的には覚悟が必要だ。”死ぬ気の炎”とはよく言ったものだ」
覚悟…レヴィから言い渡された言葉を意味深に反復するジャン。ずいぶん長い間賞金稼ぎを続けてきた彼だが、特に強い意思があるわけではない。力を使うのに海賊では追われるリスクが、政府側では窮屈だから今の立場にいるだけである。
「難しいか?さっきも言ったが必要なのは強い意思だ。性に合わん言葉に酔うよりも、欲望に忠実な方がいい場合もあるぞ」
欲望に忠実…それならば簡単である。ジャンは6つのリングを嵌めた指をぎゅっと握り締め、自らを鼓舞するように叫んだ。
「なるほどな…オレの意思はこうだ!”この力をモノにして、いずれは麦わらを…四皇すらも超えてやる!!!”」
インペルダウンからの脱獄囚を多数捕まえ勢いに乗っていたジャン…そんな自分に敗北を味あわせた脱獄事件の主犯格である麦わらのルフィへの対抗心。
賞金稼ぎと獲物という関係性を超えた感情が覚悟となり、リングに炎を灯してみせたのである。
「こ…これは!」
ジャンが目にしたのは複数装着したリングのうち1つから立ち上がる死ぬ気の炎…雲の炎だった。
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「まさか一発で炎を出してみせるとは…それは雲の炎と呼ばれている」
「これが雲の炎…」
雲の炎は小さいながらも確かに発現していた。中心部は紫色で離れるほどに白く、柔らかな質感に変わっていく…その様はまさしく”雲”であり、これまで目にした嵐や晴、雷の炎とはまったくの別物である。
少し前まで存在すら知らなかったものをいきなり発現させるジャンの才能に、普段は仏頂面のレヴィも思わず口角を上げていた。
「ところでジャンよ、雲の炎を司る守護者はどんな役割を期待されるか覚えているか?」
ジャンは記憶の中から必死に答えを探す。遠退く意識の中、己に関係がありそうだからと焼き付けたはずの説明…それは”何者にも縛られず我が道を行く浮雲”。
長い唸りの末に絞り出したそれは概ね正解だったようで、レヴィは授業の成果を満足そうに聞き届けた。
「そうだ。貴様は独立した立場からヴァリアーに貢献することを望まれている…守護者になれればの話だがな」
「なるほどな…デデデ!賞金稼ぎをやっていたオレにピッタリだ!」
「フッ…そうかもしれんな。炎が尽きる前に匣兵器を開けてみろ。この穴に注入するだけだ」
そう言って投げ渡されたのは外装にヴァリアーの部隊章が刻まれた匣…実際に持ってみるとなおさら槍やエイが入っているとは思えないほど小さく、軽い。
「それはアニマル匣…先ほど見せた雷エイのようなものが入っているはずだ。オレも中身を見たことはないが」
ジャンは恐る恐る炎を穴に突っ込み、レヴィと同じくらいの時間を置いて外側に向ける。しかし扉が開くことはなく、匣は沈黙を貫いていた。
「あれ?壊れてんのか?」
「炎が弱いのかもしれん。そいつを開匣し、戦い方を身につけるまでは次の試練には進ませんぞ」
「ま、マジか…」
こうしてジャンは思わぬところで足止めを食らうことになる。彼に渡された匣には何が入っているのか…その答えを知るのは2日後のことだった。
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「…って感じで使ってみようと思うんだがどうだ?」
2日後…炎の出力を上げ、ついに匣兵器を開けることができたジャンはその中身と特性を踏まえた戦術を披露していた。
なかなか使い所の難しい匣の中身を活かしつつジャンの弱点である弾切れ問題をカバーする立ち回りと、雲の炎を活かした”奥の手”…その2つを見たレヴィは彼の戦闘センスの高さに感心する。
「いいだろう、次の試練でどこまで通用するか試してこい」
「おぉ!あんたに認められると心強いぜ。…ところで次の試練は誰が見てくれるんだ?」
「貴様をここへ連れてきたベルとフランだ。奴らに一泡吹かせてこい!!!!」
レヴィは下手くそなウインクで迫ってくる。その様子は励ましというよりも嫌いな奴の醜態を期待しているようにも見え、どうやら幹部の間にも確執があるらしいことを察した。
「あ、あぁ頑張って来るぜ…改めてありがとよレヴィさん!」
「…待て!その前に聞かねばならない事があったのを忘れていた。その…貴様の世界に妖艶な女はいるのか?」
「???…”海賊女帝”ボア・ハンコックなんかは美女として有名だな!ワガママでおっかねェ女らしいが。あとはビックマム海賊団の娘たちも母親とは似つかぬ美人揃いだが…それがどうかしたか?」
「ほ、ほんの世間話だ気にするな。応援しているぞ」
「おう!行ってくるぜ!」
「ボア・ハンコック…一体どんな女なんだ」
次の試験場へ向かうジャンの背中を見送りながら、レヴィは遠い世界の美女に思いを馳せるのだった