追い剥ぎのジャン・アンゴ、ヴァリアー雲の守護者を目指す 作:G-ラッファ
・ジャン・アンゴ…ONEPIECEに登場する、武器投げを得意とする賞金稼ぎ。話の展開上、当作品では「描写はないけどあり得なくはない」レベルに技能を盛ります
・ヴァリアー…家庭教師ヒットマンREBORN!に登場する、主人公が跡を継がされるマフィア組織の暗殺部隊。
入隊条件に多国籍言語の習得があるのを忘れていたけど気にしてはいけない
・ベルフェゴール…ヴァリアー構成員の1人にしてナイフ使いのガチの王子様。メカクレ属性で手が早い。嵐の守護者
・フラン…カエル帽子のダウナー少年。ベルフェゴールとはよく殺し合いを演じるほどの仲良しで、色んな意味で今回のネックになる人物。霧の守護者
・ルッスーリア…足技が得意な肉体派オネエ。ネクロフィリア設定があるけど作中で生かされた記憶はあんまりない。晴の守護者
・レヴィ・ア・タン…ムッツリスケベの雷オヤジ。インテリ設定があるけど作中で(略)雷の守護者
「うおああああっ!?」
ここはヴァリアーが訓練に使うとある施設。ジャンは現在、1匹の小さな動物に追い回され…
死にかけていた。
「しししっ!オレはまだここから動いてすらないぜオッサン!これじゃ試練にならねーぞ」
「んなこと言ってもよ!ハァ…あれはヤベェだろ!」
試練の担当であるベルフェゴールは両手を頭の後ろに組んだまま、フランも地面に生えたキノコをつついて遊ぶなどまったくやる気がない。
そんな2人の代わりにジャンを追い詰めているのは彼らの匣兵器…嵐ミンクと呼ばれているアニマル匣である。
嵐ミンクは名前の通り「分解」の特徴を持った嵐属性の炎を体に灯しており、これを敵に擦り付けることで攻撃する。
体が小さい分身軽で小回りが利き、触れたら終わりの炎を携えてどこまでも追いかけてくる…ジャンはそんな小動物に対し、ひたすら逃げの一手を取り続けていた。
「『オレに傷をつけられたら合格だ!』なんてベルセンパイも性格悪いですねー。あのスカンク、突破できる隊員すらほとんどいないのに…ゲロッ」
「ミ・ン・ク・だ!せっかく面白いオモチャを見つけたんだから遊ぶに決まってんだろ?それに徹底的にやれつったのはスクアーロだぜ」
ベルフェゴールは無礼な後輩の背中に無数のナイフを突き立てながら勝負の行く末を見守っている。
試練開始から5分間、ひたすら逃げ回るジャンは一見情けなく映るかもしれないが、俊敏な嵐ミンクから逃げる事すらできない者は多い。それはミルフィオーレの雑兵はもちろんのこと、ヴァリアーの隊員ですらも。
ルッスーリアがタフネスを、レヴィが動体視力を褒めていたのでもしやとは思っていたのだが…想像以上に使えるオモチャを目の当たりにして、ベルフェゴールは上機嫌だった。
(オレのミンクから逃げ回れるヤツは珍しいからな。いい練習台になりそうだぜ)
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「ハァ…クソッ、本当にしつこいなあのアナグマは!」
ベルフェゴールに目をかけられているとも知らずに逃げ続けるジャン。しかしこれは決して勝負を放棄したからではなく匣兵器の弱点である”炎切れによる活動停止”を狙っての時間稼ぎである。
自分のアニマル匣の稼働時間を基準にだいたいのアタリをつけていたものの嵐ミンクはまだまだ絶好調であり、彼の出せる死ぬ気の炎がいかに多いかを物語っていた。
(オレの匣は正面切って戦えるタイプじゃねェからな…ここはなんとかするしかねぇ!)
ジャンはある程度離れたのを確認すると振り返り、迎撃の体勢に入る。移動速度を重視したために現在抱えている武器は極わずか…そうでなくとも無駄打ちできる余裕はない。
「"妓配王・転"!!!」
抱えていた中で最も長い剣を取り、嵐ミンクへと投げつける。ただし今回は真っ直ぐに投げるのではなくスナップを効かせ回転を加えることで、速度を犠牲に横方向への攻撃範囲を広げたものだ。
「…キュイっ!」
嵐ミンクは巧みに枝を飛び移って回避し、剣は虚しくも背後の幹に突き刺さる。匣兵器と言っても知性を持った動物とほぼ変わりはなく、匣の持ち主が指示を出さずとも自立して動くことが可能だ。
(やっぱり当たらねェか…それにこんだけ走ってるのに部屋の端に着かねぇ!なんなんだここは!?)
ジャンたちが現在いる場所は屋内のはずなのだが、ここだけ植物が鬱蒼と生い茂っている。
…というよりも明らかに高すぎる天井や広さなど不自然な点が多々あり、深い森の一部を切り出して貼り付けたような空間への違和感と、頭の中を弄られているような若干の頭痛を覚えていた。
「…仕方ねぇ。早速だが奥の手だ!二人とも!後のお楽しみにしたいからあっち向いててくれねェか!」
「どうしますーセンパイ?なんか思いついたみたいですけど」
「しししっおもしれーじゃん。ほらオッサン!オレたち見てないぜ!」
2人は意外にもあっさりと後ろを向いてお楽しみを残しておいてくれる。ジャンはリングに雲の炎を灯すと、もう一度嵐ミンクに向き直った。
「いくぜ…雲の炎の特徴は”増殖”!さすがに武器は増やせねェが…オレにはこいつがあるのさ!」
─ボボボボボ!!!
「なんかすーごい音してますけど大丈夫ですかねー。…あ」
「!!」
背を向けて待っている2人の視線がベルフェゴールの胸元に集中する。それは彼が持っていた空の匣に嵐ミンクが超高速で飛び込んできたからである。
注入した炎からしてまだ稼働時間は残っているはず。にも関わらず戻ってきたということは時間以外の要因…嵐ミンクが倒されたことを意味していた。
「フゥ…アンタの匣兵器、倒したぜベルフェゴールさん」
「へぇ…やるじゃん」
(あ、これスイッチ入ったやつだ)
白く並びの良い歯をむき出しにして笑うベルフェゴール。髪に隠れた瞳がギラリと光ったのを見たフランは思わず息を呑む。
イタリアマフィアの頂点に座するボンゴレファミリー、その暗殺部隊であるヴァリアーでも天性の殺し屋と呼ばれるほどの才能はフランも認めており、普段はナメた態度を崩さない彼も大人しくならざるを得ない時があった。
それはちょうど今のような状況…本来の嗜虐心を剥き出しに、心から殺しを楽しんでいる時である。
大変に上機嫌なベルフェゴールはコートの内ポケットから自らの得物を…独特な形状をした小さなナイフを取り出した。
「いつもミンクがやっちまうから退屈だったんだよな。ここまで勿体ぶっておいてガッカリさせんなよ?」
刹那、ジャンが感じたのは虫の頭を捩じ切って遊ぶ子供のような、混じり気のない純粋な殺気。
そして改めて確信した。ヴァリアーという組織の恐ろしさ。そして今までがいかにぬるま湯であったかを。
(こりゃヤベェな…本気でやらねェとオレ…)
(死んじまうぜ!)
「しししっ…行くぜ」
ベルフェゴールは手始めに両手に5本ずつ、計10本のナイフを投げつつ、ナイフたちに追従するように前傾姿勢で走り出した。
適当に投げたように見える10本のナイフはそれぞれが微妙に方向とタイミングをずらされており、ジャンの左右3歩分ほどの範囲から逃げ場を無くしてしまう。
同じ武器投げスタイルだからこそ即座に理解した。彼がいかに優れた投擲手であるかを。
回避は悪手と判断したジャンは小脇に抱えた武器から槍を取り出すと、クルクルと回転させてナイフを撃ち落としていく。いかに鋭い投擲をしても所詮はナイフ、より大きな武器であれば容易に弾くことができる…
「…とか考えてんだろ?」
「っ!?いつの間に…ぐあっ!」
突如として目の前に現れたベルフェゴールは持っていた槍を蹴り飛ばし、振り向きざまの一撃でジャンの胸に一文字の切り傷をつけた。
咄嗟に退いたことで傷は浅いものの、よく砥がれたナイフはバターのように皮膚を裂くほどの切れ味を誇っており、武装色による防御が待ち合わないほどに速い。
(おいおいマジかよ…確かにナイフに意識が向いてたとはいえ気付かないなんて事あるか!?どんだけ足が速ぇんだ!?)
「ボサッとしてると死ぬぜっ!」
続いて取り出したナイフを扇のように広げると、再びバラバラの方向に放つ。幸いにもやや上を狙っていたおかげで低地の安全地帯は多く、ジャンは咄嗟に匍匐の姿勢を取ることでそれらを回避してみせる。
だがベルフェゴールは攻撃の手を緩めない。大量のナイフを使って逃げ道を潰しつつ、隙を見てインファイトを仕掛ける姿は嵐の守護者に課せられた使命である『常に攻撃の核となり、休むことのない怒濤の嵐』を見事に体現していた。
一方のフランは相変わらず2人の戦いを眺めているだけである。彼の実力はヴァリアーの中でも特に謎に包まれており、匣兵器を拝むことすら貴重と言われていた。
「これ一応テストなんだけどなー…それでまだ生きてるおっさんも大概ですけど。…お」
「このままじゃ反撃もできねぇ!ちょっと早いが出番だ…頼むぜ相棒!!!」
ジャンはナイフの雨を避けながら匣兵器を取り出し、リングに炎を灯して穴に押し付ける。
そうして中から姿を現したのは…とても戦闘力があるようには見えない、ナメクジのような軟体動物だった。
(あのタイプは見たことがねぇな…ナメクジっぽいし粘液でも飛ばしてくんのか?)
「…ま、勝つのはオレだから関係ないけどなっ!」
その珍妙な外見にベルフェゴールも一瞬戸惑うものの、再びナイフを構えて投げつける。ジャンを庇うように前に立った匣兵器は抵抗するわけでもなく、あっさりと体を切り裂かれ細切れになってしまった…
…かと思われたその時、散らばった破片がうねうねと動き出したではないか。
通常アニマル匣を殺傷した場合、即座に匣へ戻っていくはずである。だが目の前のナメクジ(?)はバラバラになっても居座り続け、それぞれが意思を持っているかのように動き出している。
前例のない挙動に警戒していると、その様子を見たジャンが初めて余裕の笑みを見せた。
「デデデデ…やっぱり驚くよな。動いてる破片をよく見るといいぜ」
「あん?…げっ!なんだこいつ?」
ベルフェゴールは促されるままに覗き込んだ破片の1つと目が合った。そう、目が合ったのである。
見渡せば他の破片にも同じように顔が浮かび上がってきており、まるで命が吹き込まれたかのようである。匣兵器の常識を覆す光景に思わず飛び退く一方で、ジャンは不敵な笑みを浮かべていた。
「こいつは雲プラナリア…雲の炎と敵の攻撃で増殖する匣兵器だ!」
プラナリアとは切断された部位が増殖、クローン化する特異な生物である。
条件によっては細切れにしたすべてから顔や臓器の生成が確認されるなど凄まじい生命力を持つ生態を『増殖』の特徴を持つ雲の炎で再現したこの兵器は、殺されるほどに数を増やす特殊なアニマル匣だった。
ナイフによって切り刻まれた雲プラナリアは早速増殖を始めており、クローンたちは炎を受けてオリジナルの大きさまで成長する。
そんな奇っ怪な光景にベルフェゴールもドン引きしたものの、積極的に襲ってこない事に気付くとすぐさまいつもの調子を取り戻した。
「不死身の匣兵器は確かに面倒だけどさ、こいつあんまり強くないんじゃねーの?雲の炎だって戦闘向きじゃないしな」
ベルフェゴールの指摘にジャンは頷く。彼の言う通り軟体動物のプラナリアに戦闘は期待できず、雲の炎は攻撃能力が低い。
欠損することが前提のため盾としては心許なく、斬撃武器であるナイフとの相性もどちらかといえば悪い方である。
それでもこの状況で出したのにはきちんと理由がある。ジャンは脇に抱えた武器に手を伸ばし、一騎打ちの意思を見せた。
「だから戦うのはあくまでオレなのさ!見せてやるぜ…この世界で生き残るために編み出した新技」
「妓配王蹴擦捕をな!!!」