追い剥ぎのジャン・アンゴ、ヴァリアー雲の守護者を目指す   作:G-ラッファ

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☆簡単な紹介

・ジャン・アンゴ…ONEPIECEに登場する、武器投げを得意とする賞金稼ぎ。話の展開上、当作品では「描写はないけどあり得なくはない」レベルに技能を盛ります。
 所持匣兵器は雲の炎で増殖する「雲プラナリア」。


・ヴァリアー…家庭教師ヒットマンREBORN!に登場する、主人公が跡を継がされるマフィア組織の暗殺部隊。
 入隊条件に多国籍言語の習得があるのを忘れていたけど気にしてはいけない


・ベルフェゴール…ヴァリアー構成員の1人にしてナイフ使いのガチの王子様。メカクレ属性で手が早い。嵐の守護者


・フラン…カエル帽子のダウナー少年。ベルフェゴールとはよく殺し合いを演じるほどの仲良しで、色んな意味で今回のネックになる人物。霧の守護者


・ルッスーリア…足技が得意な肉体派オネエ。ネクロフィリア設定があるけど作中で生かされた記憶はあんまりない。晴の守護者


・レヴィ・ア・タン…ムッツリスケベの雷オヤジ。インテリ設定があるけど作中で(略)雷の守護者


標的5 新技来る!!

「ギハイ…オーケストラ?」

 

 試練よりも殺し合いを楽しみたくなりギアがかかったベルフェゴールは新しい必殺技を高らかに宣言し、雲プラナリアとともに沸き立つジャンに困惑していた。

 

「ああそうだ!雲プラナリアが開匣されちまった以上…もうアンタの独壇場にはさせねぇぜ!おらっ!」

 

 ジャンはさっそく脇に抱えたサーベルを投げつけるが今までと変わらぬ直線的な投擲であり、武器に細工を施しているようにも見えない。 

 ベルフェゴールはひらりとかわして何も起きないことを確認すると、呆れたように肩を竦めた。

 

「…あのさぁオッサン。名前だけ変えりゃいいってもんじゃないぜ?そんなのが通用するのは─ッ!!」

 

 超人的な聴力で捉えたのは背後からの粘性質な何かが蠢く音、そして─高速で飛翔する何かが空を切る音。

 音の正体を瞬時に察知したベルフェゴールが横っ飛びに回避すると、コンマ数秒前までいた場所目掛けてサーベルが通過した。

 

 そしてサーベルをキャッチしたジャンを見て新技が何なのかを理解すると、満足そうに歯を剥き出しにするのだった。

 

「なるほどな…あのナメクジに武器投げを手伝わせんのが新技か」

 

「デデデデ!正解だぜベルフェゴールさん!あの無防備な体勢からかわされるのは予想外だったけどな」

 

 そう、ジャンが匣兵器を用いて開発した必殺技『妓配王蹴擦捕』とは、雲プラナリアとの武器投げ連携である。

 

 これまでの『妓配王』は武器を投げるという技の特性上軌道を読まれやすく、使うほどに自らの戦力を捨ててしまうという弱点があった。

 そこでジャンは雲プラナリアにも参加してもらうことで様々な方向からの攻撃を可能としつつ、放った武器を回収できないか考えたのである。

 

 少しの攻撃でやられるプラナリアは相手の油断を誘い、増殖するほどに攻撃範囲が広がっていく…単純ゆえにタネが割れても問題ないことも含めて利点だらけの戦術は、今のジャンにとって最適解といえる発明だった。

 

(あのオッサン、バカみたいな服着てる割に頭脳派なんですねー。確かにあの数を注意し続けるのはミーでもしんどそうだし)

 

「デデデデ!さあどうするベルフェゴールさん!避け続けるのも限界があるしオレに攻撃しようとすれば雲プラナリアが盾となりさらに増えちまうぜ!」

 

「ししし…やっぱお前連れてきて正解だったわ。じゃあオレもやるか」

 

「殺戮オーケストラ!」

 

(ダサっ)

 

 ベルフェゴールは再び前傾姿勢で接近しながら、扇のように広げた大量のナイフを投げつけた。

 ジャンは雲プラナリアを展開してそれを防ぎ、飛び散った破片は増殖の炎によりみるみる成長していく。そんなことはお構い無しとばかりに降り注ぐナイフの雨は反撃を許さず、防戦一方を強いられていた。

 

(クソッひたすら攻めて何もさせねェつもりか…!だが相変わらず一定周期ごとに変な方向へ投げるクセがある!タイミングを見計らって…)

 

「『妓配王蹴擦捕』!!行け、雲プラナリアたち!」

 

 ナイフのほとんどが大きく横に投げられるタイミングを見計らい、自らも乱射するジャン。剣、斧、槍…様々な武器が宙を舞い、それをキャッチした雲プラナリアが投げ返していく。

 方向、タイミングすべてがバラバラな攻撃をしなやかな身のこなしでかわしていくベルフェゴールには体はおろか、隊服の端にすら掠り傷がついていなかった。

 

 それでも少しずつ消耗しているのか動きが鈍くなり、無防備を晒した一瞬を見逃すほど愚かではない。投げるよりも直接斬りかかった方が近い距離と判断したジャンは剣を握り混むと、一撃を加えるべく突っ込んでいく。

 

「さすがにあの猛攻を凌ぐのはキツいみたいだな!悪いがアンタの試験も突破させてもらうぜ…ウッ!?」

 

 刃が届くまであと数歩のところで不自然な痛みが走り急停止するジャン。見ると振り上げた腕には何か細い物で裂かれたような傷が無数についており、ボタボタと血が流れていた。

 

 目の前の彼が反撃した様子はない。にも関わらず攻撃を受けている…未知の危機に思わず飛び退くジャンが目にしたものは、ベルフェゴールの周囲を浮遊するナイフが取り囲む光景だった。

 

────────────

 

「オーケストラには指揮者が必要だろ?オレがやってやるよ」

 

(オレは何をされたんだ?いやそれ以上に…どうしてナイフが浮かんでやがる!?)

 

 ベルフェゴールの周囲を取り囲むナイフたちはひとりでに浮かび上がり、タクトに見立てた指の動きに合わせてゆらゆらと揺れている…

 死ぬ気の炎に”超能力”などという特性は無かったし、そもそも炎を纏っているわけでもない。腕に走る痛みと奇っ怪な光景に平静を乱されつつあるジャンに対し、ベルフェゴールは上機嫌だった。

 

「クソッ…妓配王!!」

 

 仕掛けがどうであれやるべきことは変わらない。最も速度が出せるレイピアを数本投げつけて注意をそらしつつ、相手が狙いにくい位置を確保すべく回り込んでいく。

 飛んできたレイピアを普通に避けたベルフェゴールを見てナイフたちの防御力は大したものではないと確信したジャンは雲プラナリアに合図を送ると、再び多方面からの時間差攻撃を開始した。

 

(どんなトリックかは知らねェが…不可視の斬撃をしてこないってことは簡単に使えるものじゃないハズだ!ベルフェゴールさんも呼吸が乱れてきてんだ、このまま攻め続ければ…)

 

「─ッ!?」

 

 ジャンの思考は鋭い痛みによって妨害された。脇腹を見ると先ほどと同じように複数の切り傷がついており、同じ攻撃を受けたことが分かる。

 だが今回もベルフェゴールが何かをした様子はない。度重なる不可視かつノーモーションの斬撃はさらなる混乱を呼び、気付けば攻めの手が止まってしまっていた。

 

「しししっ!まだ降参なんて言うなよ?」

 

「…当然だ!やられっぱなしは気に食わねェからな!」

 

(とはいえ本当にどうなってんだ?ベルフェゴールさんが回避に専念してたのも間違いねェ…斬られるのはむしろオレが動いてる時だ)

 

(…オレが動いてる時?)

 

「お、なんかピンときたって顔してんな。でもいつまでも考える時間があると思うな…よっ!」

 

 ベルフェゴールは漂わせているナイフを引き寄せると再びあちこちに投げていく。対するジャンも何かを掴んだようで、ナイフだけではなくその軌道も避けるように動き回る。

 投げた位置を記憶して軌道ごと避ける立ち回りは功を奏し、不可視の斬撃は未だに食らっていない。一通りの猛攻が終わり訪れた小休止の中で、ジャンはあたりを指でそっと探り、抵抗を覚えた箇所を刃物で切断した。

 

「…なるほどな。アンタが何もしていないのに斬られたのはこいつが原因だったんだ」

 

 ジャンがつまんでいるのは凝視しなければ見えないほどに細く、かつ鋭利なワイヤーだった。ナイフの柄に結びつけられたそれは投げるほどに相手の行動範囲を制限し、まるでクモの巣のように絡め取る狡猾な罠として機能していたのだ。

 

 試練として多少手を抜いていたとはいえ、この仕掛けを看破できたものは多くない。数少ない前例といえばかつてベルフェゴールに事実上の勝利を収め、後に嵐の守護者として恐れられるほどの逸材などである。

 

「しししっ!お前いいじゃん面白ぇ!でもタネが分かったところで合格はやらないぜ?周りをよく見てみろよ。おいカエル!やれ!」

 

「ちぇーめんどくせー…これでいいですかーベルセンパイ?」

 

 雑な指示を飛ばされたフランがリングに灯した炎をかざすと、今にも霧散してしまいそうな炎がワイヤーたちを照らしだしていく…

 可視化された罠はすでにジャンの周囲を覆い尽くしており、気付くのがもう少し遅ければ身動きが取れくなっていたほどに営巣を許してしまっていた。

 

「アイツの炎を使わせたのは試練だからだ。これが実戦ならオレの炎を伝わせりゃおしまい…嵐の特性は覚えてるよな?」

 

 ベルフェゴールの問いにジャンは頷く。嵐の炎が持つ特性は”分解”…逃げ場のない状態で嵐の炎に包まれれば生存は極めて困難であり、彼の言うように実戦ならばすでに詰みである。

 

「かなり惜しかったけど失格だな。ま、スクアーロに死ぬ気で頼み込めばペットくらいには─」

 

「…まだだ、まだだぜベルフェゴールさんよ。オレにはもう一つ”策”があるんだぜ」

 

「あん?もう匣は持ってないはずだぜ。それともあのナメクジに奥の手でも隠してんのかよ」

 

「残念ながらアイツを使った策はもう無いぜ!だがな…コイツが残ってるのさ!」

 

 そう言ってジャンがリングに灯した火を注入したのはなんと帽子…に生えているサボテン。

 増殖の炎を受けたサボテンはのたうち回りながら急激に脇葉を生やしていき、その脇葉からさらに新たな葉を生やす…無限増殖とも呼べるそれはワイヤーの巣に切り裂かれながらも強引に進撃を続けながらベルフェゴールの元へと迫っていく。

 

 なんとも常識破りな戦い方の有用性は、ベルフェゴールの顔から余裕が消えた事が証明していた。

 

「チッ…ミンク!」

 

 ベルフェゴールは再び嵐ミンクを呼び出すと、炎を纏った尻尾をフル回転させて盾を作る。増殖と分解の相反する2つの衝突は熾烈を極め、余波により部屋のあちこちに飛び火していた。

 

(これだけ策を練っても最後はゴリ押しとはな!今まで戦ってきた海賊どもとはワケが違ェ!それに何よりこの死ぬ気の炎と匣兵器…面白ェ!)

 

「オオオオオオッ!!!」

 

 感情の昂りに呼応して雲の炎の出力も上昇し、サボテンたちは嵐ミンクの盾を少しずつ侵食していく。

 このまま押せばいける、そう確信したジャンの背中に伝わる冷たい感触─気付けば背後に回っていたベルフェゴールにナイフを突き立てられてしまっていた。

 

「そんなにサボテン増やしたら敵見えねーだろバカ」

 

「…決着ですかねー。勝者、ベルセンパイ」

 

────────────

 

 負けた。

 

 よく考えれば分かることだった。匣兵器と人間は個別に動けるのだから、釘付けにしている間に回り込む事だって可能だということくらい…ガラにもなく戦いを楽しむあまり、初歩的な見落としすら気付けなくなっていた。

 

「クソ…もう少し冷静に立ち回ってりゃ勝てたかもしれねェのに」

 

「そうでもないと思いますよー。なぜなら…はい、解除」

 

 フランが手をパン、と叩くと部屋中に生い茂っていた植物たちが霧となって消えていき、いくつもの障害物が設置された無機質な部屋が姿を現した。

 夢でも見ているかのような景色に困惑するジャンをフランが指を差すと、今度はぶつけたようなアザが全身に浮かび上がり始める。

 

「!?一体なにがどうなって…痛ェ!いつの間にこんなケガしてたんだ!?」

 

「戦いの中であちこち激突してましたからねー、気付けないようにしてただけで。部屋の中が森になってること、変だと思いませんでしたー?」

 

 指摘されてみればドアを開けた時に飛び込んできた不自然な森に対し、あまり疑問に感じていなかった事を思い出す。

 確かにおかしいと思った瞬間はあったのだが…頭に靄がかかったような感覚に襲われ、いつの間にか優先事項から落とされていた。

 

「部屋に入った瞬間からミーの幻術で認識を支配しつつ霧の炎の”構築”で森を作ってたわけです。といってもここまで出来る術師は滅多にいませんけどね」

 

「自慢か?」

 

「自慢です」

 

 幻術…認識機能を乗っ取ることでそこに無いものを幻視したり、あるものを感知できなくしてしまう技術。フランはそこに霧の炎を組み合わせることで実際に触れることができる幻覚…有幻覚を生み出していたのだ。

 

 それは最高峰の幻術使いである彼の師匠が得意とする技術なのだが…残念ながらミルフィオーレのボスに敗北し、現在は行方知れずとなっている。

 

(…ま、しぶとい師匠のことだから心配はしてませんけどねー)

 

「…そうだ!これだけすげェ幻術ならベルフェゴールさんもどこかぶつけてたり─」

 

「するかよバーカ。この部屋の構造と配置は記憶してんだからどんな幻術かけられたって避けられるわ」

 

 ベルフェゴールの隊服は傷一つない綺麗なままだった。構造物を避けつつ幻術によって作られた景色に合わせて動くという二度手間をこなしながら戦っていた事を知ったジャンは、改めて彼が天才であることを確信する。

 

「…ま、ミルフィオーレとの戦いには使えるだろうし合格でいいんじゃね?あのナメクジ開けられるヤツ他にいねーし」

 

「ミーも異論なしでーす」

 

「ほ…本当か?二人ともありがとよ!じゃあ次は…あの声のデカい隊長さんか」

 

「スクアーロのやつしばらく単独で出るつってたな…それまでオレが鍛えといてやるよ。しししっ」

 

 ベルフェゴールのお気に入りとして目をつけられてしまったジャン。この先数日に渡って何度も殺されかけることになるのだが…それはまた別のお話。

 

──────────────

 

「あれ…ベルセンパイの隊服裂けてません?」

 

 その日の夜、改めてのトレーニング中の事…フランが上着の裾部分が裂けている事に気付く。それは鋭利な刃物で切りつけられた時にできるものであり、昨日までは無かったはずの傷だった。

 

「あん?うわっマジかよいつの間に…てかこれアイツしかいないよな」

 

「…ですねー」

 

 

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