追い剥ぎのジャン・アンゴ、ヴァリアー雲の守護者を目指す 作:G-ラッファ
・ジャン・アンゴ…ONEPIECEに登場する、武器投げを得意とする賞金稼ぎ。話の展開上、当作品では「描写はないけどあり得なくはない」レベルに技能を盛ります。
所持匣兵器は雲の炎で増殖する「雲プラナリア」。
・ヴァリアー…家庭教師ヒットマンREBORN!に登場する、主人公が跡を継がされるマフィア組織の暗殺部隊。
入隊条件に多国籍言語の習得があるのを忘れていたけど気にしてはいけない
・XANXUS…大空を司るヴァリアーのボス。怒ると怖い
・スペルビ・スクアーロ…ひたすらに強く声が大きい剣士。声が疫災のクイーンと同じ。雨の守護者
・ベルフェゴール…ヴァリアー構成員の1人にしてナイフ使いのガチの王子様。メカクレ属性で手が早い。嵐の守護者
・フラン…カエル帽子のダウナー少年。ベルフェゴールとはよく殺し合いを演じるほどの仲良しで、色んな意味で今回のネックになる人物。霧の守護者
・ルッスーリア…足技が得意な肉体派オネエ。ネクロフィリア設定があるけど作中で生かされた記憶はあんまりない。晴の守護者
・レヴィ・ア・タン…ムッツリスケベの雷オヤジ。インテリ設定があるけど作中で(略)雷の守護者
(ゔお゛ぉ゛ぉ゛いサボテン野郎!作戦は頭に入ってんだろうなぁ!?あと武器がガチャガチャうるせぇのなんとかならねぇのか!)
(ヒソヒソ話でも声がでけェんだな…)
ここはイタリア某所、海を一望できる好立地に佇む洋館の敷地内。ヴァリアー雨の守護者にして作戦隊長であるスペルビ・スクアーロとジャンは茂みに隠れて洋館の出入口を見張っていた。
スクアーロから出された試練のお題はずばり「実地試験」…つまりミルフィオーレのアジトの1つに突入し、戦果を上げること。まだこの世界での戦闘経験が少ないジャンには些か早く思える内容だが、それにはある理由があった。
「ゔお゛ぉ゛ぉ゛い!!!戻ったぞカス共ぉ゛!!!」
「あらスクアーロおかえりなさい♡今回もたくさん殺してきたのかしら?」
(物騒だな!?)
任務が始まる2日ほど前…嵐霧の試練をクリアし、それぞれに再び稽古をつけてもらっていたある日のこと。しばらく単独任務で不在にしていたスクアーロがようやく帰還した。
彼らはボンゴレファミリーの闇を司る部隊だけあってこのような単独任務も珍しくなく、お互いに内容を知らない事も多いらしい。
スクアーロはジャンを見つけると出迎えていたルッスーリアを無視しつつ早足で近付いてくる。そして一通り全身を見渡すと…鼻を鳴らして通り過ぎてしまった。
「守護者と各隊の隊長を集めてこい。持ち帰った情報を共有しなきゃならねぇからなぁ」
「まぁ!どうやらスクアーロの御眼鏡にかなったみたいね♡あれは幹部会に出ろって意味よ」
ルッスーリアはジャンの肩を軽く小突くと、上機嫌に体をクネらせながら作戦室へと消えていく…
組織の一員として認められるという不慣れな経験にどこかむず痒さを感じながらも、スクアーロからの指示通りメンバー集めに向かうのだった。
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スクアーロが持ち帰った情報…それはニホンという国にいる雲の守護者 雲雀恭弥が独自に調査し、まとめた資料だった。
ミルフィオーレとの抗争を始めてからというものの、どういう訳かこちらの動きを先回りしてくる事が各国で発生しており、対策として重要事項は複数のカットアウトを経由した幹部同士による手渡しというアナログな方法を採用しているのだという。
そして今回持ち帰ったのは入江正一という人物と謎の丸い装置がミルフィオーレにとって重要なものであること、その2つがニホンの基地に存在するということ、基地の場所を突き止めたという情報だった。
一方でボンゴレの基地も敵に嗅ぎつけられた可能性が高く、仮に総攻撃を受けた場合ただでは済まない…そのためニホンにいる若き後継者たちに先手を打たせ、その奇襲作戦に合わせて世界中の支部が攻勢に出、全面戦争を仕掛けることになったらしい。
「決行は1週間後、オレたちは古城を根城にしている部隊を叩く予定だが移動ルート上に怪しい拠点が見つかってなぁ。潰しておかねぇと後が面倒だ」
モニターには地図が映し出されており、スクアーロは潰しておくべき拠点がある地点にマーカーをつける。
現在地から古城まではかなり遠く、最短ルートはいくつもの山に阻まれており大所帯で進むのはかなり厳しいらしい。かといって空路は目立つため使うことができず、比較的移動がしやすい迂回路を使うのが最善であると判断。
だがそのルート付近でミルフィオーレらしき目撃情報が多発しており、本部に調べさせた結果洋館に偽装した拠点の存在が浮上したという。
よって先発隊がこれを排除、安全を確保した上で本隊が進軍するというのが今回の作戦だった。
「レヴィはトロいしうるさいルッスーリアじゃキツいだろ。オレが行こうか?スクアーロ」
挙げた手を遊ばせているのは嵐の守護者ベルフェゴール…ジャンと出会った時の作戦でも完璧に任務を遂行した精鋭であり、メンバーとして申し分ない。
だがスクアーロは少し考えた後…首を横に振った。
「奴らの嗅覚は異常だ、カンが鋭いてめぇを動かしたくねぇ。移動中のクソボスのお守りだってしなきゃならねぇしな」
そう言ってスクアーロは玉座から飛び出した足をテーブルに乗せて眠っている、顔に痛々しいアザが浮かぶ男に視線を映した。
彼の名はXANXUS…ヴァリアーのボスでありながら、かつてボンゴレに対するクーデターを企てた大罪人でもある。
スクアーロに呼ばれたXANXUSは反応を示さない。作戦会議で居眠りなど通常では考えられないが同席していた幹部たちが咎めることはなく、むしろ「寝ていてほしい」といった様子だった。
(とんでもなくおっかねェと聞いてたから天竜人みたいなのを想像していたが…スクアーロさんが軽口を飛ばせるくらいだし案外普通なのか?)
「作戦はオレとそこのサボテン頭で行く。ミルフィオーレに顔が割れてねぇこいつはうってつけだからなぁ。残りの連中は─」
「…おい。そこのカス」
「…!!!?」
スクアーロの話を遮ったのはXANXUSだった。指1本、瞼ひとつ動かしていないはずの彼が放つ凄まじい威圧感は部屋を震わせ、肌をビリビリと痺れさせる。
覇王色の覇気にも似たそれに誰もが息を呑む中、XANXUSの赤く、尽きることのない怒りの炎を宿した瞳がゆっくりとあらわになる。
(なんて覇気してやがる…!七武海いや、四皇大幹部にも届きうるんじゃねェか…!?)
「てめぇがどこのどいつかには興味がねぇ。だがボンゴレの名を汚しやがったらオレが消す…それだけだ」
それだけ言うとXANXUSは再び瞼を閉じて二度寝を始めた。先ほどまでの威圧感もほとんど感じられなくなっており、幹部たちもどこか安堵した様子である。
これだけの男がいながら苦戦を強いられる存在─XANXUSに向けられた殺気の残り香を噛み締めながら、ジャンはミルフィオーレファミリーの強大さを改めて認識するのだった。
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(”妓配王”!)
「…ッ!?」
ジャンが放ったベルフェゴールのナイフ(借りパクしていたフランからの横流し品)は巡回していた最後の兵士の喉を的確に引き裂くと、声を出すことすら許さぬまま無力化する。
小さな得物で周りに悟られることなく排除する─これまで極めてきた技術とは真逆の、ベルフェゴールに叩き込まれた暗殺特化の投擲術はさっそく役に立っており、その様子を背後から見ていたスクアーロも感心したように鼻を鳴らした。
(いよいよ突入…と言いたいところだが転がってる死体を見られると面倒だ。少し待ってろ)
そう言ってスクアーロは取り出した匣に雨の炎を注入すると、中から巨大なサメ…暴雨鮫(スクアーロ・グランデ・ピオッジャ)が姿を現した。
暴雨鮫は死体たちにゆっくり近付いていくと本物のサメのように一体ずつ口に放り込んで飲み込み、水に近い性質を持つ雨の炎で血痕を洗い流していく。
凶暴性と理性が同居する様子は彼らがヒトに作られた兵器であることを再認識させ、ある意味で野生のサメよりも恐ろしく感じられた。
(これで外からは何が起きてるか分かりにくくなったはずだ。突入するぞ)
かけられた鍵を一瞬で解錠したスクアーロはゆっくりと扉を開けて中を確認するとジャンを手招きし、ジャンも続いて内部へと侵入する。
そこに武器や怪しい装置などはなく、代わりに並ぶのは高名な作家のものであろう絵画や壺…基地という言葉からかけ離れた、古めかしいただの洋館であった。
「誰もいねぇ…ここは奴らのアジトじゃなかったのか?」
「カタギの屋敷に死ぬ気の炎灯した見張りなんざいるわけねぇだろうが。だが監視カメラすら見当たらねぇとなると…ここのボスは相当拘りが強い奴だろうな」
スクアーロはセンサーを検知する特殊な端末を確認しながらあちこち物色する。どうやら秘密の通路を探しているらしいことを察したジャンも馴染みのない芸術品たちを警戒しながら手がかりを探していると、他の作品たちと少し離れた位置に置いてある燭台を発見した。
「こいつだけ仲間外れ、しかも後ろの壁には微妙に段差がある…ここが怪しいぜスクアーロさん」
「わずかにだが端末も反応してやがる。燭台なんてモン置いてる意味は…こういう事だろ」
スクアーロがリングに灯した炎を燭台に移していくと…ガコン、という何か重いものが動いた音とともに背後の壁が振動した。
「炎を使ったカラクリ…そうまでして偽装する理由は分からねぇがただのカスではないようだな。気ィ引き締めろよサボテン野郎」
「お、おう」
2人は偽装された扉を開けて奥へと歩みを進めていく。地下へと続く階段は電気ではなくランタンが照らしており、ぼんやりと映し出される壁はレンガ作りである。
本当にマフィアの基地なのかという不安が募る中…階段を抜けた先に見えたは通路は突然に、そして徹底的に無機質だった。
「な、なんだ?急に雰囲気が変わったぜ」
「おそらく買い上げた地下つきの屋敷を改造したんだろ。本部の連中もロクに尻尾が掴めねぇわけだ…止まれ」
スクアーロがかざした端末を見ると、そこにはいたるところに張り巡らされたセンサー類の波長を可視化した画面が映されていた。
「足元は物理センサー、天井付近は監視カメラってとこだろうな。頻繁に通る場所にも仕掛けてあるから踏んで死ぬようなモンじゃねえだろうが…フランの奴を連れてくるべきだったか」
通路の奥にはいかにもボスが待ち構えていそうな扉があり、その途中にはいくつもの脇道がある。ジャンたちからすれば脇道の数だけ死角が存在し、相手からすれば捕捉の機会があるということだ。
霧の守護者にして一流の術師であるフランならばセンサー類すらも欺けるのだが…残念ながらここにいるのは純粋な戦闘員2人だけである。スクアーロは少し考えた後、ジャンが持っている匣”雲プラナリア”を指差した。
「分裂させたそいつで同時に監視カメラを潰せ。調べに来た奴らが物理センサーを切るかもしれねぇ」
「なるほどな…でもこんな狭い通路で敵の大群とやり合うのか?銃なんか持ち出されると厄介だぜ」
「奴らが出てきたらオレが突破口を開く。お前は脇道の取りこぼしを処理だ。外部に連絡されると面倒だ、一気に終わらせちまうぞ」
「お、おう任せとけ!頼んだぜ、雲プラナリア…!」
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2人が工作を進めている一方、アジトの一室ではミルフィオーレの兵士たちがいつもと変わらぬ時間を過ごしていた。
地下空間はあまり広くないこともあり監視室は独立しておらず、モニターチェック担当の男はすぐ隣でくつろぐ兵士たちを見て呆れたようにため息をつく。
「お前たちいつまでここにいる気だ?シフトが狂うとボスにどやされるぞ」
「もうそんな時間か?いつもなら上から早く変われって連絡が来るんだけどな…おいモニターが映ってないぞ。お前もサボってたんじゃないか?」
兵士が指を差したモニターたちは通路を映しておらず、ほとんどが砂嵐一色に染まっている。
つい数秒前まで正常だったものが一斉に壊れるものだろうか…そう訝しみながら無事な画面を睨んでいると、死ぬ気の炎を纏った謎の生物が現れた!
謎の生物がカメラを覆って破壊する様子を見た兵士たちは即座に装備を整え、監視員は内線のマイクを取る。彼らに先ほどまでの油断はなく、異常事態への切り替えの早さはまさしくプロであった。
「緊急事態発生!通路の監視カメラが破壊された!匣兵器による工作と思われる!センサーは解除する、戦闘員は直ちに現場へ向かえ!」
内線を聞いた兵士たちが迎撃のために通路へと集まってくる。幾重にも分岐した通路は仮に敵の侵入を許しても、駆け付けた兵士たちが即座に取り囲み逃げ場を潰す構造になっているのだ。
先ほどまで休んでいた兵士の1人が扉が妙に重いことに気付く。それでもなんとか開けると…通路がわずかに浸水していた。
「床が塗れている…?雨の匣兵器かもしれん!ここを曲がれば敵がいる、気を抜くなよ!」
「「「「了解!!!」」」」
男の号令に合わせて各通路の兵士たちが一斉に展開し、伏せ・しゃがみ・立ちに分かれてライフルを構える。そして兵士たちが見たものは…手甲に取り付けた剣を構えた白髪の男と、帽子からサボテンを生やした上裸の男だった。
「その風貌はまさか…ヴァリアーの!」
「ゔお゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛い!!!遅ぇぞぉ!!!」
先手必勝、スクアーロは剣に仕込んだ爆薬を前方に飛ばすと、爆風は”暴雨鮫”が生み出した水を巻き上げて視界を奪い、同時に銃弾を相殺する盾となる。
それはかつて彼が相対したボンゴレ雨の守護者が使う流派の1つに酷似しているのだが…ジャンは知る由もない。
「飛ばすぜぇ!鮫特攻(スコントロ・ディ・スクアーロ)!!!」
続いてスクアーロはエックス状に何度も剣を振りながら前方へと突っ込んでいく。一見ヤケクソに思える動きは洗練されており、彼の圧倒的なパワーも相まって回避・防御不能の奥義へと昇華されていた。
あまりの剣圧に足元の水はおろか床まで抉り取られていく様はまるで暴れ狂うサメが通ったかのようであり、すれ違った兵士たちは成すすべもなく”食い破られ”るしかない。純粋な暴力の極みを見たジャンは改めてヴァリアーという組織の恐ろしさを痛感していた。
「う゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛い!!!ボーっとしてんじゃねぇ!」
「お、おう!”妓配王蹴擦捕”!行け!雲プラナリア!」
ジャンが脇道にいる残党たちに武器を投げ、カメラを破壊すべく待機していた雲プラナリアがそれをキャッチ。取りこぼした兵士を処理していく。
走りながらの狙撃精度はこちらの世界へ来る前と比較して格段に上昇しており、ルッスーリアとのスパーリングで鍛えられた動体視力が存分に発揮されていた。
先を進んでいたスクアーロは通路に展開した兵士をあっさりと殲滅し、正面扉のすぐそこまで迫る。再び展開した暴雨鮫のタックルで強引にこじ開けると、挨拶とばかりに爆薬を飛ばして押し入った。
「邪魔するぜぇミルフィオーレの。つってもてめぇの部下はほとんど殺っちまったけどなぁ」
「キミは確かスペルビ・スクアーロ…ヴァリアーの作戦隊長か。おかげで紅茶にゴミが入ってしまったよ」
爆風を払って姿を現した初老の男…この基地の隊長であるテネーレは残念そうにカップを置いた。
「ずいぶん余裕じゃねえか。上の洋館といいブラックスペルにしちゃあずいぶんお高くとまってやがる」
スクアーロが口にした”ブラックスペル”とは派閥の1つである。
ミルフィオーレは2つのファミリーが合併してできた組織であり、歴史あるジッリョネロファミリーの構成員をブラックスペル、白蘭率いる構成員たちをホワイトスペルと呼ばれている。
ブラックスペルはどちらかといえば武闘派が多く、テネーレのような男は少ないのだが…テネーレはスクアーロの煽りに対しても動じることはなく、平静を保っていた。
「人生というのは目まぐるしく見える景色が変わるものだ。だがこだわりを持つことで自分を見失わずに済むものだよ。上の洋館やキミが台無しにしたこの…紅茶もね」
「スクアーロさん!…そいつがここのボスか?」
脇道の兵士を倒し、一足遅れて乗り込んで来たジャン。テネーレはジャンの半裸にサボテン帽子という格好を目にすると…先程までの余裕が一転、強い不快感を滲ませ始めた。
「なんだその格好は?マフィアとしての身だしなみも整えられないふざけた男を引き連れているとは…ボンゴレも墜ちたものだ」
「デデデデ!あいにくマフィアじゃないんでな!オレは機械を見ても何がなんだか分からねェ、スクアーロさんは設備の破壊に行ってくれ!」
「ペーペーが指図してんじゃねぇ!…まあいい、そいつを倒すのが最終試験だ。さっさと終わらせてずからるぞ」
スクアーロはそれだけ言って部屋を後にする。そして残された2人は改めて向き合うと…それぞれの得物を構えた。
「銃剣使いか!気概のあるヤツは嫌いじゃねェが…元の世界へ戻るために必要なんでな!」
「雑多な武器を抱えて何をするつもりだね殺し屋。私は今とても機嫌が悪い…楽な死に方はできないと思うことだ」
根無し草のジャンと在り方にこだわるテネーレ、それぞれの意地をかけた戦いが、そして守護者となるための最終試験が今、始まる。
今回の敵となるテネーレはREBORN本編には存在しないのであしからず。