追い剥ぎのジャン・アンゴ、ヴァリアー雲の守護者を目指す 作:G-ラッファ
・ジャン・アンゴ…ONEPIECEに登場する、武器投げを得意とする賞金稼ぎ。話の展開上、当作品では「描写はないけどあり得なくはない」レベルに技能を盛ります。
所持匣兵器は雲の炎で増殖する「雲プラナリア」。
・ヴァリアー…家庭教師ヒットマンREBORN!に登場する、主人公が跡を継がされるマフィア組織の暗殺部隊。
入隊条件に多国籍言語の習得があるのを忘れていたけど気にしてはいけない
・XANXUS…大空を司るヴァリアーのボス。怒ると怖い
・スペルビ・スクアーロ…ひたすらに強く声が大きい剣士。声が疫災のクイーンと同じ。雨の守護者
・ベルフェゴール…ヴァリアー構成員の1人にしてナイフ使いのガチの王子様。メカクレ属性で手が早い。嵐の守護者
・フラン…カエル帽子のダウナー少年。ベルフェゴールとはよく殺し合いを演じるほどの仲良しで、色んな意味で今回のネックになる人物。霧の守護者
・ルッスーリア…足技が得意な肉体派オネエ。ネクロフィリア設定があるけど作中で生かされた記憶はあんまりない。晴の守護者
・レヴィ・ア・タン…ムッツリスケベの雷オヤジ。インテリ設定があるけど作中で(略)雷の守護者
ジャンが匣兵器のさらなる力を引き出していた頃─あちこちから煙を吹いている古城の内部では侵入者を止めるべく、ミルフィオーレの兵士たちが物陰に隠れて反撃の隙を伺っていた。
「くそっヴァリアーどもめ…これ以上好きにさせるな!スモークを焚く、お前たちは炎熱感知センサーを─」
─ブシュウゥゥッ!!!
兵士の一人が手にしているスモークグレネードが突如暴発し、あたりに煙を撒き散らした。白い煙に映し出されている影は1つずつ消えていき、代わりに鮮やかな赤い液体が床を染める。
10秒という短い時間の末に晴れた煙の中で唯一立っていた男─ベルフェゴールは涼しい顔をして汚れを払うと、無線機に向かって呼びかけた。
「もしもしレヴィ?このフロアで目についたヤツは全員殺っといたから掃除ヨロシク」
『我が雷撃隊は貴様のパシリではない!…が、ミルフィオーレの死体なぞをボスの視界に入れるべきでないのは同感だ。すぐに向かわせる』
守護者たちはジャンが移動司令部と戦っている間に古城へと到達し、侵攻はすでに佳境へと突入していた。ベルフェゴールは低階層の警備兵の殲滅を、レヴィ直属の精鋭"雷撃隊"は古城の主となるXANXUSが快適に過ごせるよう死体の処理を担当しているのだ。
ちなみにレヴィの能力は屋内では分が悪いため、引き続き外で雷を落として回っている。
「てかこいつら弱くね?オレたちが舐められてるとしか思えねーんだけど。おいカエル!外から戻ってきた連中ひとりで殺ってないだろうな?」
ベルフェゴールは事切れた兵士を足で転がしながら回線を切り替える。相手は同じく守護者のフランであった。
「ミーがそんな面倒やるわけないじゃないですかー。ワンチャン ベルセンパイを消してくれるかもですしー」
『あ゛?』
「あー忙しくなってきたので切りますねー。それじゃっ」
それだけ言うと一方的に回線を閉じるフラン。彼は外に展開しているミルフィオーレの部隊が戻ってこないかを見張りつつ、万が一戻ってきた場合は幻術で迎撃する役目を担っている。
だが予想に反してこちらにやってくる部隊はほとんどおらず、それ以前に統率が取れているかも怪しい─双眼鏡で彼らを観察しているフランは違和感を覚えていた。
(ミー以外に術師はいないはずなんだけどなー…外で雷落としながら飛び回ってるレヴィさんとこの混乱は関係なさそうだし)
「ま、面倒が少ない分にはいっか。ルッスーリアさーんそっちは大丈夫そうですかー?」
『あらフラン、いつの間にそんな気遣いを覚えたのね!嬉しいわ〜!こっちは死人ゼロだから心配しないでOKよ♡』
暇つぶしに使われているともいざ知らず、あるいは知ったうえで不躾な後輩からのラブコールに喜ぶルッスーリアは城内の一角を利用して野戦病院を開いていた。
野戦病院といってもルッスーリアに医学の知識はない。彼が持つ匣兵器"晴クジャク"で代謝を活性化させる光を照射し、強引に傷口を塞ぐだけである。
とはいえ髪や爪まで伸びるほどの活性作用と照射範囲は絶大で、これだけでたいていの事は済んでしまうのだが…
「はーいもう大丈夫♡戦闘はまだまだ続くと思うから、身だしなみを整えたら隊に戻るのよ〜!」
「「「ありがとうございました!ルッス姐さん!!!」」」
あらゆる部位が伸び果て原始人のような姿になった隊員たちは短く敬礼するとそれぞれの持ち場へと戻っていく。そして入れ替わるようになだれ込んできた負傷者たちの世話をしつつも、ルッスーリアは憂いを帯びたため息をついた。
『ファミリーを明るく照らす日輪』…晴の守護者として継戦能力の確保という重要な役割を一手に担うルッスーリアだが、その立場ゆえに前線で暴れられる機会は減りつつある。
特に今回のような負傷者が出やすい大規模な作戦ではそれが顕著であり、武闘派の彼としてはやや欲求不満を感じていた。
(これなら城に入る前にもう少し暴れておけば良かったかしら…あたしもたまにはスクアーロみたいに大物食いしたいわね〜…)
「…あ、そういえばスクアーロ大丈夫かしら?連絡が無いけれど…おーい!スク〜?」
──────────────
一方、当のスクアーロはというと…
「う゛お゛ぉ゛ぉ゛い゛! ! !」
ルッスーリアの心配をよそに…
「そ こ を ど け ぇ! ! !」
殺しを楽しんでいた。
「"鮫の牙"(ザンナ・ディ・スクアーロ)ォ!」
スクアーロは目にも止まらぬ突きの連打で道を塞ぐ兵士たちを、匣兵器を、そして建造物を食い破っていく。文字通りハチの巣になった死体が廊下に転がる中、彼は部隊長の部屋を目指していた。
といっても部屋の位置までは分かっていない。重要人物に近付けば抵抗する兵士の数も多くなる…その程度の判断基準で突き進むのは暗殺部隊としてはあまりにも雑であるが、どのみち殲滅する必要があるので問題ない。
現に数十もの死体を積み上げているにも関わらず、スクアーロの隊服には傷ひとつついていなかった。
「チィッ…イタリアに寄越す兵力がこの程度とはなぁ!本部の連中は腑抜けすぎなんじゃねえかぁ!?」
「来たぞ!雨の守護者だ…がああっ!!」
イタリアのトップマフィアが抱える精鋭暗殺部隊─自らの肩書きに誇りを持つスクアーロにとって、半端者の寄せ集めとしか思えない雑魚を充てがわれることは耐え難い屈辱である。
そしてあっさりと倒れていく情けない兵士たちへの怒りに呼応するように、剣の破壊力はさらに高まり続けるのだった。
「う゛お゛ぉ゛ぉ゛いこんなモンかぁ!?10年前に闘りあったガキの方がよっぽど根性見せてたぞぉ!」
─ドンッ!
鼻が曲がるほどに血の臭いが充満した廊下で吠えるスクアーロの声に応えるように、崩された目の前の壁から大男が姿を現した。
「俺たちがガキ以下ぁ…?それは聞き捨てならないね!マカロニロンゲ!」
鼻息の荒い男は雲の炎を灯したメリケンサックを手に嵌め、傍らには同じく雲の炎を鎌に灯したカマキリを連れている。
その男はホワイトスペルというにはあまりにも好戦的だが、取っているカンフーのような構えに隙はなく、これまでの雑兵とは明らかに違う空気を放っていた。
「ようやくマシなのが出てきたようだなぁ…ここの連中は弱すぎて話にならなかったぞぉ!」
「ほォ…腐ってもボンゴレの切り札いうことね。だがその程度で勝った気になるなよマカロニ野郎!この古城基地が誇る最強の男…カウロン様がいれば無問題(モーマンタイ)だからなぁ!」
男はスクアーロによって食い散らされた兵士たちを見渡し、彼の言葉がハッタリではないことを確信すると、大きな口を開いて満足そうに笑う。
そしてカウロンは啖呵を切ると同時にまっすぐ突っ込み、雲カマキリはスクアーロの脇へ位置取るように移動する。動きひとつとっても手練であることが分かる2人はあっという間に狩場につくと、それぞれの得物を構えて飛び込んだ。
「シャアッ!」
握り込まれたメリケンサックは掛け声に合わせて炎を纏う。攻撃力の低い雲の炎であっても純度と大きさによっては人体を破壊するには十分な威力をもたらし、決して油断することはできない。
カウロンは身を屈めてアッパーカットの構えを取り、雲カマキリは首を狙って鎌を振りかぶる。二点からの攻撃は頭部に集中しており、戦いを無駄に長引かせないプロとしての矜持を感じさせる。
骨のある相手を見つけたことで、先ほどまで苛立っていたスクアーロも暗殺者の顔つきになっていた。
(ほう…コンビネーションで首を取りに来るとは悪くねぇ。ルッスーリアの奴がいたらやらせろと血が沸き立っていたかもなぁ。だが…)
「それで逃げ道を塞いだ気になるのは詰めが甘ぇ!!!」
─ドドォンッ!
スクアーロは剣に内臓された爆薬を放ちながらその場で回転する。彼を取り囲む小さな爆風の連続は両者を強引に引き剥がし、同時に隙を作り出した。
煙によって視覚を、爆発によって聴覚を奪われながらも即座に距離を取り直し追撃を避けるカウロン。だがあくまで兵器でしかない雲カマキリは突然の事態に対応しきれずその場に留まってしまう。
「まずはてめぇからだ!」
─ギイィィィッ!?
叫び声が聞こえるよりも先に両手の鎌が落ち、その少し後に首も地面に転がっていく。形を維持できなくなった雲カマキリは少しずつ霧散しながら匣へと戻っていく…戦闘開始からたった30秒の間に起きた出来事である。
「ほゥ…雲カマキリを一瞬で。大口を叩くだけはあるなマカロニ野郎…だが!」
カウロンは皆まで言わずに再び飛びかかる。優位を奪われたカウロンに先ほどまでの野性的な勢いはないものの、研ぎ澄まされた感覚により動きは洗練されている。
予想外に早い蹴りに対しスクアーロは回避でなく剣で受け止めることを選んだ。ゴッ、という鈍い音とともに伝わる衝撃は確かなもので、匣兵器にかまけた雑魚ではないことを確信させるには十分である。
「悪くねぇ蹴りだ。だが貴様の体術はオレには届かねぇぞぉ!」
「油断大敵よ、マカロニ野郎」
─ゴッ!!!
「…ッ!?」
カウロンの顔に不敵な笑みが浮かんだ直後、頭部に強い衝撃を受けるスクアーロ。爆薬を使って即座に離脱することで追撃を逃れつつ、揺らぐ視界を気合いで回復させながら状況を分析する。
蹴りへの防御は完璧で、横槍を入れる雲カマキリもすでに無力化済み。にも関わらず何かに打撃を受けた…改めて周囲を見渡すが、介入できる第三者はいない。
(蹴りが時間差で飛んできたみてぇだった。奴が有幻覚なんて器用なもんを使えるようには見えねぇが…まさか!)
スクアーロは倒れた兵士が持っていた手頃な武器を拾うと投げつける。それを弾いたことで隊服が破れ、カウロンの"脚"が…バネのような機構を備えた義足が露出した。
「おゥ、もう気付くとは案外冴えてるね。まっ、タネが割れたとこでお前に勝ち目はないけどな」
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「なかなかやるねマカロニ野郎。脚のカラクリに気付いたマフィア他に知らないね」
破れた隊服から覗く脚は明らかに生身のそれではなく、カウロンは実演するように雲の炎を灯してはレンジを伸ばして振り回して見せる。
(ルッスーリアと同じ仕込み脚だが増殖が作用するってことはただの金属じゃねえな…関節に植物でも使ってやがるのか?)
「考えるヒマないよ!"鉄砲脚"!」
「…チィッ!」
増殖の炎を纏った義足から放たれるハイキックは鉄砲弾のように飛び出し、互いの距離を無視して襲いかかる!間一髪で避けたスクアーロがいた場所には深く、それでいて綺麗な穴が穿たれる。
恐るべきはレンジよりもその破壊力…遠心力が乗った蹴りは体術の域を超えており、迂闊な防御は危険だということを物語っていた。
「独特の距離感にもう対応するとはやるね。"馬鞭脚"!!」
続いてカウロンはしなる脚を振り回し始める。高速で振り回される脚は何人も寄せ付けぬ攻防一体の壁となり、人間はおろか爆薬すら通れぬほどの速度と密度を誇っていた。さらに厄介なことに増殖の炎により飛距離を伸ばし続ける蹴撃の壁はみるみるスクアーロに迫っている。
逃げてプライドを殺すか、立ち向かって肉体を殺すか…どちらにせよ屈辱的な選択肢だが、猛攻はそのどちらかを選ぶ猶予すら与える気はないようだった。
「これぞ武術・兵器・死ぬ気の炎が織り成す三位一体ね!さァどうするかマカロニ野郎!」
「ハッ…そんなもん決まってんだろうが!鮫の牙(ザンナ・ディ・スクアーロ)!!!」
スクアーロは迷うことなく前に出ると超高速の突きを繰り出した!蹴りと突きによる無数の応酬は、事切れた兵士たちを吹き飛ばしてしまうほどの余波を発生させる。
─ゴインッ!
「…!!!」
無限に続くかと思われた応酬は突然終わりを告げた。蹴撃の嵐の中にわずかな隙を見たスクアーロは突きの軌道を逸らし、カウロンの体勢を崩させたのである。
「なっ…マグレに決まってるね!!!」
カウロンが即座に立て直して蹴りの嵐を再び見舞う中、スクアーロは最低限の防御で掻い潜りながら接近し、この状況には似つかわしくない程に大きく剣を振りかぶると─義足へと思いきり打ち込んだ!
鮫衝撃(アタッコ・ディ・スクアーロ)…鍔迫り合い等の際に渾身の力で相手を叩き、衝撃を流し込むことで体の自由を奪う技である。だが打ち込んだ力の割に感触が軽いことに気付いたスクアーロは怪訝な表情を浮かべ、対するカウロンは再び優位を実感していた。
「俺の義足は外からの衝撃を吸収し、内なる衝撃を爆発させる特別製!今の一撃に自信あったみたいだけど残念ね!こんな…っ!?」
得意気に能書きを語るカウロンは突然苦悶の表情を浮かべ、嵐の如き猛攻も鈍化する。衝撃を打ち込まれた箇所へ目をやると、わずかながら雨の炎が燻っていた。
「カスが。義肢にカラクリ仕込むなんざ真っ先に警戒すべきことを見落とすはずねえだろうが」
そう、雲の増殖を加味しても自在すぎる義足を見たスクアーロは単純な衝撃波が通用しなかった場合を想定し、インパクトの瞬間に鎮静作用を持つ雨の炎を流し込んだのだ。
瞬間的に力を引き出す技術もさることながら、土壇場まで死ぬ気の炎を封印することで相手の油断を誘う─そのクレバーな立ち回りもまた、暗殺部隊の精鋭ならではの戦い方であった。
だが炎の特性を存分に活かしつつも未来の技術にかまけていない敵を、手札を制限しながら相手取るのは骨が折れる。にも関わらず大技を封殺できたのはボンゴレファミリーの友人にして鞭使いで名を馳せる"跳ね馬のディーノ"と旧知の仲で、その技を見てきたことが大きかった。
「チッ…予定よりずいぶんかかっちまった。先に部隊長をやっちまうか」
スクアーロは時計を確認して舌打ちをすると奥へと進んでいく。鎮静の炎を打ち込まれたカウロンはもはや脅威ではないと判断されたのだ。
だがこの行動が彼の闘志に火を点けることになる。カウロンは衰弱しつつある体を叩き起こすと、怒りと根性で一瞬だけ本来の力を呼び起こし、背を向けたスクアーロへと飛びかかった。
「この俺を差し置いて次に行くだと…!?最後にぬかったな!敵に背後を見せるは死にたがりかアホの二択ね!食らえ!"舞旋きゃ"─!」
「な…に…?」
頭部を狙った飛び蹴りを放ったはずのカウロンは己の身に起こったことを理解できずにいた。腹に深々と刺さっている剣の鋭い痛みと、背を向けたままのスクアーロが頭の中で繋がらないのである。
だが剣は確かに彼から伸びている。拳に括り付けられているはずのそれに逆手持ちの概念などないはずなのに、だ。
「…あァ、まさかお前も…義手か…?」
そう、スクアーロもまた義肢だったのだ。腕を片方失っているにも関わらず、かつて最強の座を欲しいままにしていた剣士を理解するために自ら手首を切り落としたのである。
義足の存在とカラクリに気付けたのも義肢を使う武人という共通点があったから…あえてトドメを刺さずにこのような形で終わらせたのは、一撃食わせてきた敵への彼なりの皮肉と意趣返しだったのかもしれない。
「死ぬ気の炎に適した義肢か…ミルフィオーレの連中もずいぶんと面倒なモンをこさえたもんだぜ」
カウロンの目から光が消えたのを確認したスクアーロは剣を引き抜いて血を拭うと、今度こそ静かになった廊下を再び歩き出す。戦況を確認すべく無線機のチャンネルを合わせると、聞き慣れた騒々しい声が飛び込んできた。
『…あ!ようやく繋がったわ〜!スクったら心配したじゃない!』
「少し面倒なやつに邪魔されてたんでな。てめぇ好みだったんだが殺っちまった」
『あら残念!アナタがそう言うくらいだからなかなかの上玉だったのね…ところで部隊長の方はどう?見つかりそう?』
─まずいぞカウロンがやられた!外の司令部とも連絡がつかないし…ここは貴様らに任せる!
─隊長殿どこへ!?
「ううううるさい!私は応援を要請してくるから奴らを抑えておけ!分かったな…ひいっ!」
「…ああ、たった今見つけたぜぇ。退屈しのぎにいいモン聞かせてやるよルッスーリア。一瞬で終わるからよく聞いておけぇ!」
部隊長が人生の最後に見た光景…それは返り血を吸って赤黒くなった隊服を纏いし白銀の剣士であったという。
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「狩らせてもらうぜェ…アンタの首を!」
窮地に立たされ覚醒したジャンが導き出した答え…それは増殖させたサボテンの針に炎を纏わせて雲プラナリアへ射手、匣兵器としての性能をさらに引き出しつつ体内で針をも増殖させることだった。
分裂したにも関わらず人の背ほどまでに巨大化した雲プラナリアたちが地を這いながら茂みから姿を現す中、取り囲まれつつあるスタッツは状況把握に務める。
(体内で増え続けている針を今すぐにでも止めねばならないが、奴の匣兵器はおそらく攻撃を受けて増殖するカウンター型…半端な攻撃は逆効果だな)
スタッツは無事な兵士たちの匣兵器を思い出し羅列するも、有効打になりえるものは存在しないことに渋い表情を浮かべた。一度勢いに乗ると手がつけられない…雲属性の強みであり厄介な部分を思い出し舌を打つ。
だが万策が尽きたわけではない。隊服のジッパーを下ろして内ポケットを探ると、取り出したそれをやや名残惜しそうに眺めたた後…死ぬ気の炎を注入した。
─ザザァン!!!
波の意匠が施された匣が口を開くと、明らかに匣の大きさと釣り合っていない質量の水がジャンに押し寄せる!!屈強なジャンもこの荒波を耐えることはできず、数メートル流されてしまう。
「ゲホッ…なんだ!?武器でも生物でもねェ匣兵器だと!?」
近くの木に激突しようやく止まることができたジャンが向けた視線の先に映っていたもの…それは群れた雨ダツたちが作り出す巨大な水の玉であった。
「"サブタンク匣"だ。ありったけの炎を閉じ込めてあるから一度開けばしばらくは使い物にならない。守護者でもない男に使うのは避けたかったが仕方ない…ここで首を晒すことになるのはお前だジャン・アンゴ!」
たぶん次あたりが最終回です