滅びた財団世界から来た先生   作:山瀬 鳴

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SCP財団
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『元』財団職員、赴任する。

「…生。…先生」

…ここは何処だろうか。確か私は…あれ…?

「起きてください、先生!」

「天戸先生!」

"っ!?"

ここは…?いや、それよりも、()()()()()()()()

「…」

"…なんでしょうか…?" 

「少々待っていてくださいと言いましたのに、お疲れだったみたいですね。中々起きないほど熟睡されるとは」

"…悪いですね"

「…もう一度、今の状況を説明します。私は、七神リン。学園都市「キヴォトス」の連邦生徒会所属の幹部です」

キヴォトス…()()()()()。この単語を、私は()()()()()()()()()()()

「そして貴方は、私達がここに呼び出した先生…の筈ですが…」

"!"

 

『…貴方に先生を頼みたいんです』

 

…誰かから、頼まれた記憶。今思い出した…いや、()()()()()記憶…

そうだ。私は此処で先生をするように頼まれた。誰かに貴方にしか頼めない仕事だと言われて。

(…引き受けた仕事は、しっかりとこなさないとな)

 

"はい。私が…いや、違うな。うん、私がその空落 天戸だよ。よろしく"

 

今は財団職員じゃない。こんな真面目な口調じゃなくていいのだ。

「あぁ……推測系でお話したのは、私も先生と貴方がここに来た経緯を詳しく知らないからです」

”だろうね。私もあんまり記憶にないや”

…まぁ、()()()()()()()のだが。

「そうですか……まぁこんな状況になってしまったこと、遺憾に思います。でも今はとりあえず、私に着いてきてください」

「どうしても、先生にやっていただかないといけないことがあります」

”……なにか事案かい?わかった。案内頼むよ”

「えぇ、では。「キヴォトス」へようこそ。先生」

「キヴォトスは数千の学園が集まってできている巨大な学園都市です。先ほど言った通りこれから先生が働くところでもあります。」

”あぁ、軽くだが知っている”

本当に、なぜだか知らないが知っている。…未知のオブジェクトの影響だろうか…?

「きっと先生がいらっしゃったところとは色々なことが違っていて、最初は慣れるのに苦労するかも知れませんが……」

「でも先生なら、それほど心配しなくてもいいでしょう」

”まぁ、環境の変化には多少慣れているからね”

「あの連邦生徒会長が、お選びになった方ですから」

”…?”

…もしやその連邦生徒会長が私を…?

こういうときこそ思考を回せ…ありとあらゆる可能性を考えるんだ…今私に起こっている出来事について…

(…いや、違うな)

今の仕事は財団職員じゃない。今の私は教師だ。

(この感じ、財団に入る前にいた教員学校時代を思い出すな…)

あの時、財団にスカウトされていなければ、私もあの世界でこんな未来を歩いていたのだろうか。

 

「ちょっと待って!代行!見つけた、待ってたわよ!連邦生徒会長を呼んで来て」

 

…いつの間にか随分な距離を移動していたらしい。眼の前には複数の女子生徒が…いや、キヴォトスには男子生徒がいないのだったか?…どうもここは可怪しい。財団に比べればマシか。

「……うん?隣の大人の方は?」

「首席行政官。お待ちしておりました」

「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求されています」

「あぁ……面倒な人達に捕まってしまいましたね」

…あぁリン。わかるよその感情。面倒事祭りの上になにか押し付けられた時のストレスMAX化…財団事務員の洗礼だ。私もどちらかといえば事務側だった…先輩に押し付けられた書類、万はいってたんじゃないか?

「こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余している皆さん」

「こんな暇そ……大事な方々がここに訪ねてきた理由は、よくわかってます」

…78点。リン。君財団職員向いているよ。ここまでさらりと毒吐ける人間、財団でしか見たことがない。

「今、学園都市に起きている責任を問うために……でしょう?」

「そこまでわかっているならなんとかしなさいよ!!連邦生徒会なんでしょ!!数千もの学園自治区が混乱に陥ってるのよ!この前なんか、うちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!!」

「連邦矯正局で停学中の生徒達について、一部が脱出したという情報もありました」

「スケバンの様な不良達が、登校中のうちの生徒達を襲う頻度も最近急激に高くなりました、治安維持が難しくなっています」

「戦車やヘリ等、出所の不明な武器の不法流通も2000%以上増加しました。これでは学園生活に支障が出ます」

インフラの崩壊に無秩序状態か…

「こんな状況で連邦生徒会長は何しているの?どうして何週間も姿を見せないの?今すぐ会わせて!!」

…いや、それは無理だろう。感覚でわかる。今起こっている異常事態。財団で鍛えられた勘でわかる。

 

「はぁ……連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、行方不明になりました」

 

まぁ、だろうな、としか言えない。

「やはり……あの噂は……」

「結論から言うと『サンクトゥムタワー』の最終管理者がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です」

「認証を迂回できる方法を探していましたが。先程まで、そのような方法は見つかっていませんでした」

…『サンクトゥムタワー』…確かこのキヴォトスの中核だったか?知識の付け焼き刃さが目立つな…

「今は方法があるということですか、首席行政官?」

「はい。この先生こそがフィクサーになってくれる筈です」

あぁ、ここで振られるのか。

「ちょっと待って、この先生は一体どなた?何故此処にいるの?」

「キヴォトスではない所から来た方の様ですが……先生だったのですね」

「はい、こちらの空落天戸先生が、キヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です」

「行方不明になった連邦生徒会長が指名……?ますます分からないじゃない……」

…ここは穏便に自己紹介だな。

 

”これから先生となる空落天戸です。よろしく”

 

…ざわついてるな。まぁ困惑するか。

「そのうるさい方は気にしなくてもいいです。続けますと……」

「うるさいって何よ!私は早瀬ユウカ!覚えておいて下さい、先生!!」

”あぁ、よろしくね”

「……先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の担当顧問として来ることになっていました」

「連邦捜査部『シャーレ』。単なる部活ではなく、一種の超法規的機関」

「連邦組織の為、キヴォトスに存在する全ての学園の生徒達を制限無しで加入させることも可能で、各学園の自治区で、制約無しに戦闘活動を行うことも可能です」

…まるで財団のような組織だな。

「何故この様な機関を、連邦生徒会長が作ったのは不明ですが……シャーレの部室は此処から約30km離れた外郭地区にあります。今はほぼ何も無い建物ですが、連邦生徒会長の命令でそこの地下に『とあるモノ』を持ち込んでいます。そこに先生をお連れしなければなりません」

”とある物?”

なんだろうか…重要なものには違いないだろうが…

「モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど……」

!通信機器の中にホログラム装置だと!?財団の科学力がないとできなかった代物だぞ!?そこまでキヴォトスの科学が発展しているのか…?

「別にいいけど……そこ今大騒ぎだよ?」

彼女がモモカか…何処か本部の博士達と同じ雰囲気を感じるな…

"…ん?大騒ぎ?"

「矯正局を脱出した生徒が騒ぎを起こして、今そこ戦場になってるんだよね」

「……うん?」

「連邦生徒会に恨みを抱いて不良を先導させて周りを焼け野腹にしてる、出所不明の巡行戦車も持ち出してる。それでシャーレの建物を占領しようとしてるみたいだね。あっ!お昼のデリバリー来たからまた連絡するね!」

あ、本部の博士と同類だ彼女。

というかこれ完全に脱獄囚による政府への反乱じゃないか!軽いノリで重大案件投げてきやがった!

「………」

"…あー…大丈夫か?"

「……大丈夫です、大した問題ではありません」

"いや、結構な重大事案だよな…?"

「丁度此処に各学園を代表する、立派で『暇そう』な方々がいるので、私は心強いです」

…あぁ、なるほど。これは覚悟したほうがいいな。

「キヴォトスを正常化する為に、暇を持て余した皆さんの力が今、切実に必要です。行きましょう」

「何処に行くのよ!?」

ま、こうなりますよね。ってやつか…私、戦闘苦手なんだけどなぁ…

…そういやまだ一人しか名前聞いてないじゃないか。

"…なぁ、他の3人の名前をまだ聞いていないんだが…"

「そういえばそうですね。私はトリニティ総合学園の羽川ハスミです。よろしくお願いします」

「同じくトリニティ総合学園の守月スズミです。今後ともよろしくお願いします」

「ゲヘナ学園の火宮チナツです。よろしくお願いします」

"あぁ、よろしく。それじゃ、行こうか"

 


 

「何で私達が不良と戦わないといけないの!?」

「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すには、あの部室の奪還が必要ですから……」

「それは聞いたけど!何で私が……!」

…硝煙の匂い…あの財団内以外で嗅ぐことになるとはな…

「痛いってば!あいつ等違法JHP弾を使ってない!?」

…は?ホローポイント弾喰らって無傷?可怪しいだろ普通に…一応ヘイローってのが関係しているのは知っているが…そんなに効果あるものなのか…

「ユウカ、伏せて下さい。そしてホローポイント弾は違法指定されていません」

「ミレニアムじゃこれから違法になるの!傷跡が残るでしょ!」

そんな理由?戦争ですら使用禁止のあのホローポイント弾が傷が残るからという理由で?耐久性どうなってるんだよ…

「今は先生が一緒なので、それに気を付けましょう。先生の守りを最優先にして、その次に建物の奪還です」

「ハスミさんの言う通りです。先生はキヴォトスではない所から来たので、私達と違い、銃弾一発が致命傷になります」

…あぁ、そうなるのか…そりゃそうか。財団で感覚麻痺してたが、人って弾丸で死ぬのだったな。まぁ、()()()()()()()()()()()()()()()()のだが。

「先生、先生は戦場に出ないで下さい!戦闘中は安全な場所にいて下さい!!」

…そこまで言われると、少し腹立たしいな。別に彼女らが間違っている訳では無いが…事務要員ではあったが、私も財団職員。銃撃戦は慣れている。心理学や戦術指揮の講習を財団で学んでいる。それに、実戦経験もある。だから…

"いや、私が指揮を取ろう。皆、私の指示に従ってくれ"

「「「「!?」」」」

「………分かりました、ですが安全は確保して下さい。これより先生の指揮に従います」

「先生に従うのは生徒として当然ですよね、よろしくお願いします」

"あぁ、ありがとう。それに…"

「「「「?」」」」

 

"多少の援護射撃なら、私にも出来るからな"

 

そう言って腰のホルスターから愛用のグロック22を取り出す。多少整備不良が目立つが、理解していれば問題はない。

「…珍しいですね。外から来た人なのに…」

"まぁ、色々とね"

「なら、安全な場所からでお願いします」

"…あぁ、勿論"

「なら、行きましょうか!」

 


 

「なんだか戦闘がいつもよりやりやすかったような……」

「やっぱりそうよね!?」

「先生達の指揮のおかげでいつもより戦いやすかったです」

「これが先生の力……すごいわね」

"それほどでも"

まぁ、財団の戦術指揮の実習で好成績を叩き出しているから、それほどではないのだが…まぁ、結構昔の話だからな…上手くいって良かった。

心理学による戦場心理の推測。やっぱり結構楽しいものだ。

「それに、先生もそこそこ射撃が出来るんですね」

"いや、そんなだよチナツ。実際結構外していたしね"

「それでも、手慣れた射撃技術でした」

財団職員にはもっと上手い人なんて山程いる。

「跳弾で攻撃した時は本当びっくりしたわよ」

"…アレは偶然だよ"

そんな事計算で出来るわけないだろう。いくら財団職員でも…いやあの本部の3イカれならいけるか?

「今、この騒ぎを巻き起こした生徒の正体が判明しました。ワカモ。百鬼夜行連合学院で停学になったあと、矯正局を、脱獄した生徒です。似たような前科がいくつもある人物なので、気を付けて下さい」

…案外ショボいと思ってしまうのは、財団にいたせいだろうか…

”っと、次が来たね。総員!戦闘準備!”

今から鎮圧並びに再収容を行う!…先輩、こんな恥ずかしいセリフノリノリで言ってたのか…

 


 

…あれなんだよ。いや、わかる。戦車だ。なんでここに戦車があるんだよ。財団でも滅多に見ないぞ。

「気を付けて下さい、巡航戦車です……!」

…ここでは比較的普通なようだ。やはり常識は無視したほうがいいな。

それにしても、彼女達は強い。財団の機動部隊並だ。

「着いた!!」

…結構早かったな。

「『シャーレ』部室の奪還完了。私も、もうすぐ到着予定です。先生、建物の地下で会いましょう」

”じゃあ、行ってくるよ”

私は地下に降りていった。

 


 

「うーん……これが一体何なのか、全くわかりませんね。これでは壊そうにも……」

「……あら?」

”………”

「あら、あららら……あ、ああ…し、し…」

”?”

「失礼致しましたー!!」

…今のがワカモ…?なんか変な子だったが…

「お待たせしました。…?何かありましたか?」

”…いや?”

「……そうですか。ここに連邦生徒会長の残したものが保管されています。…幸い傷一つなく無事ですね。……受け取ってください」

”…タブレット端末か?”

「はい。これが、連邦生徒会長が先生に残したもの。『シッテムの箱』です」

”…シッテムの…?”

「普通のタブレットに見えますが、実は正体の分からないものです。製造会社も、OSもシステム製造も、動く仕組みのすべてが不明。連邦生徒会長は、この『シッテムの箱』は先生の物で、先生がこれでタワーの制御権を回復させられるはずだと言っていました」

…何者なんだ連邦生徒会長。

「私たちでは起動すらできなかった物ですが、先生ならこれを起動させられるのでしょうか、それとも…」

「…では私はここまでです。ここから先は、すべて先生にかかっています。邪魔にならないよう、離れています」

…起動するしかないな。

 

Connecting To Create of Shittim…

システム接続パスワードを入力してください。

 

『…我々は望む、七つの嘆きを。

…我々は覚えている、ジェリコの古則を。』

 

接続パスワード承認。

現在の接続者情報は空落天戸、確認できました。

 

(え、なんでわかったんだ?)

パスワードなんていつ…というか今のセリフは…?

 

生体認証及び認証書生成のため、メインオペレートシステムA.R.O.N.A.に変換します。

 

「!?っ…!」

 


 

ここは…教室?ん?誰かいるな。

「くううぅぅ……Zzzz」

”…………”

「むにゃ、カステラにはぁ…いちごミルクより…バナナミルクのほうが…」

「くううう……Zzzz。えへっ……まだたくさんありますよぉ。」

…起こすか。

「むにゃ…んもう…ありゃ?ありゃ、ありゃりゃ……?」

”…おはよう”

「え?あれ?せ、先生!?この空間に入ってきたってことは、ま、ま、まさか天戸先生…!?」

”そうだが…”

「う、うわああ!そ、そうですね!?もうこんな時間!?うわ、わああ?落ち着いて、落ち着いて…」

…なんだこの少女。

「えっと…その…あっ、そうだ!まず自己紹介から!」

「私はアロナ。この『シッテムの箱』に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、そしてこれから先生をアシストする秘書です!やっと会うことができました!私はここで先生をずっと、ずっーと待っていました!」

”えっと、つまりAIってこと?”

「はい!!」

…え、高性能過ぎないか?財団内でもここまで感情豊かな感じのAIなかったぞ…?

「まだ身体のバージョンが低い状態でして、特に声帯周りの調整が必要なのですが…」

”確かに声は不安定だね”

「これから先、頑張って色々な面で先生のことをサポートしていきますね。あ、そうだ。ではまず、形式的ではありますが、生体認証を行います♪」

”生体認証?”

「うう…少し恥ずかしいですが、手続きなんだから仕方ないんです。こちらの方に来てください」

”?わかった”

「さぁ、この指に、先生の指を当ててください」

”?あぁ…”

「うふふ、まるで指切りして約束するみたいでしょう?」

”…………そうだな”

…約束、か…先輩の約束、今度は守らないと…

「う〜ん…よく見えないですけど、これでいいですかね」

”おい”

生体認証じゃなくて指紋認証じゃねぇか。

 


 

「なるほど…、先生の事情は大体分かりました」

”一応聞くが連邦生徒会長についてなにか知ってるか?”

「私はキヴォトスの情報の多くを知ってはいますが…連邦生徒会長についてはほとんど知りません。お役に立てず、すみません先生」

”まぁ、だろうね。じゃあ、サンクトゥムタワーの問題はどう?”

「はい!私が何とか解決できそうです!」

”おぉ。じゃあお願い”

「はい!分かりました。それではサンクトゥムタワーのアクセス権を修復します!少々お待ちください!」

「………サンクトゥムタワーのadmin権限を修復完了………先生、サンクトゥムタワーの制御権をを無事に回収できました。今サンクトゥムタワーは、私アロナの統制下にあります」

”そうか。ありがとう”

「今のキヴォトスは、先生の支配下にあるも同然です!」

…えそれ不味くないか?

「先生が承認さえしてくだされば、サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管できます」

”そう?なら頼むよ”

「即答!?本当にいいんですか!?」

”逆に即答しない理由ある?”

「は、はい、分かりました。これよりサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管します」

「そうですか…分かりました。サンクトゥムタワーの制御権の確保ができました。これからは連邦生徒会がいた頃と同じように、行政管理を進められますね」

”そうか。それはよかった”

こうして、初任務は恙無く成功した。

 


 

「ここがシャーレのメインロビーです。長い間空っぽでしたけど、ようやく主人を迎えることになりましたね」

そう言ってリンが新しい職場に案内してくれた。財団のオフィスと比べて凄い綺麗だ。

”で?私の職務内容は?”

「…シャーレは、情報だけはありますが目標のない組織なので、特に何かをやらなきゃいけない…という強制力はございません」

「キヴォトスのどんな学園の自治区にも出入りでき、所属に関係なく、先生が希望する生徒たちを部員として加入させることも可能です」

「面白いですよね。捜査部とは呼んでいますが、その部分に関しては、連邦生徒会長も特に触れてはいませんでした。つまり、何でも先生がやりたいことをやって良い…ということですね」

”へぇ…”

不思議な組織に入れられたものだな…

「…本人にそのことを聞いてみたくても、連邦生徒会長は相変わらず行方不明のまま」

「私たちは彼女を探すのに全力を尽くしているため、キヴォトスのあちこちで起こる問題に対応できるほどの余力がありません。今も連邦生徒会に寄せられてくるあらゆる苦情…」

あ。流れ読めたぞ。

「もしかしたら、時間が有り余っている『シャーレ』なら、この面倒な苦情の数々を解決できるかもしれません」

”…ハァ。任せて。元からそのつもりだよ”

「その辺りに関する情報は、先生の机の上にたくさん書いて置きました。気が向いたらお読みください。すべては先生の自由ですので」

”ありがとう。リン”

「ふふっ、ありがとうございます先生。それではごゆっくり。必要な時にはまたご連絡いたします」

…やっと、一人になれたな。

”…流石にここは禁煙だよなぁ…”

…屋上にでもいくか。

 


 

重めの煙草に火をつけて、静かに味わう。

”…ホント、なんで記憶飛んでんだ?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってのに…”

先程から抱いていた疑問。しかし、それはこの状況で回答は出せそうになかった。

”…先輩。やっぱりちゃんと生きます。そっちへ行くの遅くなるんで、気長に待っててください”

そう天に向かって吐いた。

…そういえば、キヴォトスでは愛銃に名前をつけるのが一般的らしい。私はグロックを見つめた。

”…お前の名は【ペツァディレーシュ】。俺達のチームの名にして、魔術の三角形を表す銘だ”

たった二人の特別収容補助チーム『ペツァディレーシュ』。…最悪にして最高の財団人生の場。

”…そうだな。コレは続けるか”

私はレコーダーを取り出した。

 


 

〝No.001。シャーレ赴任1日目。いざという時のため、音声ログを残しておく〟

〝このキヴォトスやシャーレなど謎が多いが…考えても無駄だろう〟

〝とりあえず、今日はこのへんにしておく〟

〝ログ担当は教員天戸……あぁそうだ〟

 

〝………今日も綺麗な青空だ。以上〟




ペツァディレーシュの元ネタはセフィロトの樹の三つ組の一つ、星幽的三角形を構成するパスの「ペー 」「ツァディー 」「レーシュ」からです。
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