滅びた財団世界から来た先生   作:山瀬 鳴

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SCP財団
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”借金9億6千万?…そんくらいの損失叩き出したヤツいたなぁ…”

「いやあ〜まさか勝っちゃうなんてね。ヘルメット団もかなりの覚悟で仕掛けてきたみたいだったけど」

「まさか勝っちゃうなんて、じゃありませんよ、ホシノ先輩…勝たないと学校が不良のアジトになっちゃうじゃないですか…」

「先生の指揮が良かったね。私たちだけの時とは全然違った。しかも射撃まで」

「これが大人の力…。すごい量の資源と装備、それに戦闘の指揮に援護まで。大人ってすごい」

”ハハハ、褒めても何も出ないよ”

……………………

 


 

”2時の方角!来るよ!”

「ん、私が対処する」

”10時の方角…殺れるな”

「!?今のHG(ハンドガン)の有効射程ピッタリでしたよね…?」

「…うへ、並の人間でもあの距離は撃てないな〜」

”…慣れてるからね”

 


 

………暴れすぎた。流石に射程キッカリを目測して撃ち抜いたのは不味かったか?

「今まで寂しかったんだね、シロコちゃん。パパが帰ってきてくれたおかげで、ママはぐっすり眠れまちゅ」

…ヤバい超複雑家系持ちがいっぱいの場所(SCP財団)に居たからなんも言えねぇ。

「いやいや、変な冗談はやめて!先生困っちゃうじゃん!それに委員長はその辺でしょっちゅう寝てるでしょ!」

…まさかこの子も博士共と同類?(異常体質)。いや、それは失礼か…

「そうそう、可哀そうですよ」

「あはは…少し遅れちゃいましたけど、あらためてご挨拶します、先生。私たちは、アビドス対策委員会です。私は、委員会で書記とオペレーターを担当している1年のアヤネ…。こちらは同じく1年のセリカ」

「どうも」

「2年のノノミ先輩とシロコ先輩」

「よろしくお願いします、先生~」

「さっき、道端で最初に会ったのが、私。…あ、別にマウントを取ってるわけじゃない」

「そして、こちらは委員長の、3年のホシノ先輩です」

「いやあ~よろしく、先生ー」

「ご覧になった通り、我が校は現在危機にさらされています…そのため「シャーレ」に支援を要請し、先生がいらしてくれたことで、その危機を乗り越えることができました」

「先生がいなかったら、さっきの人たちに学校を乗っ取られてしまったかもしれませんし、感謝してもしきれません…」

”…対策委員会?それに危機?”

「そうですよね、ご説明いたします。対策委員会とは…このアビドスを蘇らせるために有志が集った部活です」

「うんうん!全校生徒で構成される、校内唯一の部活なのです!全校生徒といっても、私たち5人だけなんですけどね」

…は?

「他の生徒は転校したり、学校を退学したりして町を出て行った。学校がこのありさまだから、学園都市の住民もほとんどいなくなってカタカタヘルメット団みたいな三流のチンピラに学校を襲われてる始末なの。現状、私たちだけじゃ学校を守り切るのが難しい。在校生としては恥ずかしい限りだけど......」

確かに仕方ないことだが…それだけでこの有り様なのか?

「もしシャーレからの支援がなかったら…今度こそ、万事休すってところでしたね」

やっぱギリギリだったじゃねぇか!あっぶないなホントに!

「だねー。補給品も底をついてたし、さすがに覚悟したね。なかなかいいタイミングに現れてくれたよ、先生」

「うんうん!もうヘルメット団なんてへっちゃらですね。大人の力ってすごいです★」

「かといって、攻撃を止めるような奴らじゃないけど」

「あー、確かに。しつこいもんね、あいつら」

「こんな消耗戦を、いつまで続けなきゃいけないのでしょうか…。ヘルメット団以外にもたくさん問題を抱えているのに…」

”…私に考えがある”

「え、どんなものですか?」

”今彼女らは襲撃により消耗…さらには敗北により士気も低下気味にあるはずだ。だからここで本拠地叩いてぶっ潰そうっていう作戦さ。こっちには補給された物資もあるしね”

要注意団体はさっさと潰すに限る。財団で死ぬほど学んだ。

「…うへ〜おじさんとおんなじこと考えてたんだね…」

”お、ホシノも同じ意見か”

………やっぱりか。

「なるほど。ヘルメット団の前哨基地はここから30kmくらいだし、今から出発しよっか」

「良いと思います。あちらも、まさか今から反撃されるなんて、夢にも思っていないでしょう」

「そうですね…じゃあやりましょうか」

”よし!総員!攻撃準備!目標はヘルメット団前哨基地!”

 


 

「カタカタヘルメット団のアジトがあるとされるエリアに入りました。半径15km圏内に、敵のシグナルを多数検知。おそらく敵もこちらが来たことに気付いているでしょう。ここからは実力行使です!」

”よし!やるか!”

…今度は調整するかな…

”!セリカ!右からくるよ!”

「わかってるわよ!」

”ノノミ!そこの裏にいる!炙り出すから集中砲火!頼むぞ、ペツァディレーシュ…!”

「!本当に出てきた……!」

”このまま押し切るよ!”

「「「「「はい!」」」」」

 


 

「敵の退却を確認!並びに、カタカタヘルメット団の補給所、アジト、弾薬庫の破壊を確認」

チンピラアジト爆破30分切り余裕でしたっと…

「これでしばらくはおとなしくなるはずそれじゃ、学校に戻ろっかー」

”だね”

…煙草吸いてぇ。

 


 

「ただいま〜」

「アヤネちゃんも、オペレーターお疲れ」

”あぁ。お陰で楽に動けたよ。ありがとう”

「火急の事案だったカタカタヘルメット団の件が片付きましたね。これで一息つけそうです」

「そうだね。これでやっと、重要な問題に集中できる」

「うん!先生のおかげだね、これで心置きなく全力で借金返済に取り掛かれるわ!ありがとう、先生!この恩は一生忘れないから!」

”………借金返済?”

あ〜さっき言ってたのってコレかぁ…

「....あ、わわっ!」

「そ、それは....」

「ま、待って!!アヤネちゃん、それ以上は!」

…なんかデリケートな話題だったか?

「いいんじゃない、セリカちゃん。隠すようなことじゃあるまいし」

「か、かといって、わざわざ話すようなことでもないでしょ!」

「別に罪を犯したとかじゃないでしょー?それに先生は私たちを助けてくれた大人でしょー?」

…罪人、か…いや、今はそんな考え事する暇なんてないか。

「ホシノ先輩の言う通りだよ。セリカ、先生は言頼していいと思う」

「そ、そりゃそうだけど、先生だって結局部外者だし!」

”そこで部外者って単語出すなら、今日の襲撃のサポートも部外者がやったって話になるけど?”

”さらに言うとさっきの襲撃提案も部外者の策に乗ったってことになるけど?”

「そ、それは…」

……やっぱ彼女、理詰めに弱いな?

「確かに先生がパパっと解決してくれるような問題じゃないかもしれないけどさ。でも、この問題に耳を傾けてくれる大人は、先生くらいしかいないじゃーん?悩みを打ち明けてみたら、何か解決法が見つかるかもよー?それとも何か他にいい方法があるのかなー、セリカちゃん?」

「う、うう…」

「でっ、でも、さっき来たばっかりの大人でしょ!今まで大人たちが、この学校がどうなるかなんて気に留めたことなんてあった!?この学校の問題は、ずっと私たちだけでどうにかしてきたじゃん!なのに今更、大人が首を突っ込んでくるなんて....私は認めない!!」

”!”

「セリカちゃん!?」

「私、様子を見てきます」

………そうだよな。いつも我々(SCP財団)は色々なことに首を突っ込んで、勝手に解決した気になっていた。根本が解決したわけでもないのに。

………私も彼ら財団職員(自身が嫌うあの組織)と、同じなのだろうか…

「…えーと、簡単に説明すると…この学校、借金があるんだー。まあ、ありふれた話だけどさ。でも問題はその金額で…9億円ぐらいあるんだよねー」

……は?

「…9億6235万円、です。アビドス…いえ、私たち「対策委員会」が返済しなくてはならない金額です。これが返済できないと、学校は銀行の手に渡り、廃校手続きを取らさるを得なくなります」

…………ハァ?

「ですが、実際に完済できる可能性は0%に近く…ほとんどの生徒は諦めて、この学校と街を捨てて、去ってしまいました…」

「そして私たちだけが残った」

「学校が廃校の危機に追いやられたのも、生徒がいなくなったのも、街がゴーストタウンになりつつあるのも、実はすべてこの借金のせいです」

いやいや、9億6千万??なんだよそんな損失!財団でも聞いたこと……あったわ。しかもウチ(ペツァディレーシュ)絡み。

 


 

『先輩。コレ見てください』

『?SCP-938-JP?…あれこれパスワードとかでゴリゴリに固められてない?』

『解析並びにハックしました。あとエリア-8199管理者からも承諾を』

『えぇ…えぇっと…?なになに…?え、ナニコレ?』

『先輩も現実改変能力者だから認識災害の耐性あるんですよね?………先輩』

『う〜んなんか察したけど一応聞こうか天戸くん』

『この箱ぶっ壊しましょう』

『よし気に入った。やろうか』

『まず電源装置を爆撃しましょう。補助電源ごと殺れば楽になるはずです』

『いいねぇ。あと君の音声使って事前に伝えて弾丸破棄してもらおうか』

『あとは最後の鬼門核爆弾ですが…先輩無力化できます?』

『爆弾をあの金属に変質させろってこと?全くめちゃくちゃな発想するね…よゆーよゆー。めっちゃ余裕。ウランなんて簡単簡単』

『流石先輩!よし!計画もっと練りましょう!』

『いいねぇ楽しくなってきた!』

 


 

…懐かしいなぁ…からばこSCP-938-JP破壊事件…結局秘匿電源の爆破が出来てなかったり弾丸が破棄しきれてなかったり現実錨に手を焼いたり挙げ句には核爆弾の無力化がギリッギリになったりで…最後は二人であの箱燃やしてその火でマシュマロ焼いたな…あの一件の功績が認められられて、昇進と給料アップがあったんだっけ…

「先生?」

”ん?あぁ。なんでもない。ちょっと考え事をね”

”で、どうしてそんなことに?”

「借金をすることになった理由ですか?それは…数十年前、この学区の郊外にある砂漠で、砂嵐が起きたのです。この地域では以前から頻繁に砂嵐が起きていたのですが、その時の砂嵐は想像を絶する規模のものでした。学区のいたる所が砂に埋もれ、砂嵐が去ってからも砂が溜まり続けてしまい。その自然災害を克服するために、我が校は多額の資金を投入せざるを得ませんでした…。

しかしこのような片田舎の学校に、巨額の融資をしてくれる銀行はなかなか見つからず…」

「結局、悪徳金融業者に頼るしかなかった」

「…はい。最初のうちは、すぐに返済できる算段だったと思います。しかし砂嵐はその後も、毎年更に巨大な規模で発生し…学校の努力も虚しく、学区の状況は手が付けられないほど悪化の一途をたどりました…。…そしてついに、アビドスの半分以上が砂に呑まれて砂漠と化し、借金はみるみる膨れ上がっていったのです....」

”……なるほど”

「私たちの力だけでは、毎月の利息を返済するので精一杯で…弾薬も補給品も、底をついてしまっています」

「セリカがあそこまで神経質になってるのは、これまで誰もこの問題にまともに向き合わなかったから。話を聞いてくれたのは、先生、あなたが初めて」

”…こういうのから、目を背けたくはないからね”

箱庭の平和を享受していた(オブジェクトから守られていた)側の人間だった時も、箱庭の平和を作っていた(オブジェクトから守っていた)側の人間だった時も…見て見ぬ振りしか出来なかった時はあった。そうしか出来なかったから。

「…まあ、そういうつまらない話だよ。で、先生のおかげでヘルメット団っていう介な問題が解決したから、これからは借金返済に全力投球できるようになったってわけー。もしこの委員会の顧問になってくれるとしても、借金のことは気にしなくていいからねー。話を聞いてくれただけでもありがたいし」

だから、私は守れなかったんだろうと、今更ながら思う。それが正解かどうかは、わからないが。

「そうだね。先生はもう十分力になってくれた。これ以上迷惑はかけられない」

今はもう、助けれるなら、いや、助けきれなくても、最後まで手を差し伸べよう。それが、一人取り残された私の役目だ。

”いや、君達を手伝おう。こんなの見捨てて帰るなんて、夢見悪くて出来ないよ”

「そ、それって...。あ、はいっ!よろしくお願いします、先生!」

「へえ、先生も変わり者だねー。こんな面倒なことに自分から首を突っ込もうなんて」

”面倒事なら、もう人生10回分くらい首突っ込んだからね”

財団職員なんて命無限にあっても足りやしないからな。

「良かった…シャーレが力になってくれるなんて。これで私たちも、希望を持っていいんですよね?」

「そうだね。希望が見えてくるかもしれない」

…希望か…

”『何故希望はパンドラの箱の底にあったと思う?それは絶望を知らないと希望は見れないからさ』…でしたっけね。先輩…”

そんな戯言を、自分の中の空箱に閉まった。

 


 

この世界線のオブジェクト解説。

SCP-938-JP - からばこ

オブジェクトクラス Safe → Euclid → Neutralized

説明 完璧に収容しないといけない、と認識させるただの箱。箱が何の変哲もない箱だということには気がつくが、完璧に収容しないといけないと認識をねじ曲げられる。本家報告書ではガッチガチに収容されているということが見て取れる。

この世界線では、ペツァディレーシュの二人がこのオブジェクトを紆余曲折あって破壊。本来なら破壊するのはダメなことだが、オブジェクトの異常性が異常性なので今回は逆に褒賞された。このインシデントがきっかけで、ペツァディレーシュが正式に特別収容補助チームと認められた。




SCP-938-JP - からばこ
作者 oruto
ソース http://ja.scp-wiki.net/scp-938-jp
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